中央アジア散歩

第9回模擬国連ワークショップ(2025年3月4日)開催報告

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。


日時:2025年3月4日(火)14時~17時
場所:東京大学駒場Ⅰキャンパス17号館KALS
参加者数:30名
登壇者:
■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任講師)セッション1・2
■ 渡邊真也(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科修士課程)セッション2
■ 岡田智七永(東京大学文科二類)セッション2

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。
①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる
(セッション1に相当)
②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる
(セッション1に相当)
③模擬国連の授業への導入事例を踏まえて自身の授業・学習等に適した模擬国連をデザインできるようになる
(セッション1に相当)
④模擬国連受講者の経験を踏まえて自身の授業・学習等に適した模擬国連をデザインできるようになる
(セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 )
ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機をグループワークによって言語化していただきました。

【2】 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」(14:10~15:30)

まず、ロールプレイを参加者の方々に簡易的に体験していただき、その意義や留意点についてグループワークを通して検討しました。その後、模擬国連の概要と東京大学教養学部の授業への導入例について授業担当教員の中村からお話しました。模擬国連を導入する目的(中村の授業の場合は、国際関係論の知識を使いこなせるようになることや、利害や価値観が異なる人々と合意を形成できるようになること)を明確化する必要があり、模擬国連はあくまでも手段であるという点を再確認する機会となりました。「模擬国連は学びのフルコース」だといわれることもある程学べることが多岐にわたる手法であるがゆえに、明確な導入目的を受講者にあらかじめ伝えたうえで実施する必要があるという点を特に強調しました。

セッション1の様子

セッション1の様子

【3】セッション2「模擬国連受講者の経験から学ぶ」(15:40~16:50)
セッション1では教員の観点から事例を紹介しましたが、セッション2では学生の観点から模擬国連を経験した感想について率直に話してもらいました。模擬国連から学んだことはもちろんのこと、大変であったことや、教員のサポートによって乗り越えられたことが具体的に挙げられたことで、導入に際して留意すべき点がより明確になったように思われます。

セッション2の様子

セッション2の様子

【4】まとめ(16:50~17:00)
まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。

  • 「模擬国連はフルコースであるがゆえに、あれもこれもとならないように、可処分時間、受講者の既有知識に応じて導入目的を絞りらなければならない」という言葉が印象に残りました。
  • 登壇された学生さん達のお話がとても理路整然としていて、そこにも模擬国連の効果があらわれているかもしれないと思いました。
  • 同じテーブルになった同じ教科の先生と帰り路も話し込み、意気投合しました。ネットワークづくりの場ともなりました。

お問合せ先

教養教育高度化機構 EX部門
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

AL NEWSLETTER Vol.10, No.4(2025年3月発行)

ワークショップ 第5回東大生がつくるSDGsの授業(2025年3月23日開催)

カテゴリー: News, イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構EX部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを2020年度より開催しております。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業ですので、是非ご参加ください。 

※チラシのPDFはこちら

日時

2025年3月23日(日)13:00-16:00

場所

東京大学駒場Iキャンパス 17号館2階KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)
駒場Iキャンパスへのアクセス・キャンパスマップ:https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/visitors/maps-directions/index.html
※赤門がある本郷キャンパスでの開催ではございませんのでご注意ください。

対象・定員

高校生(定員30名)
※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

12:30開場 ※12:50までに会場にお越しください。
13:00-13:30 駒場キャンパスツアー 
13:30-14:00 趣旨説明(中澤明子 東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授) 
14:00-14:50 授業「さまざまな立場で考えるSDGs」(中山昊 教養学部1年) 
14:50-15:00 休憩
15:00-15:40 ミニレクチャ(中村長史 東京大学大学院総合文化研究科 特任講師) 
15:40-16:00 まとめ(中村長史) 

お申込み

以下のフォームより必要事項をご記入の上、ご登録ください。
https://forms.gle/PBTHge6gGfFaNn5e7

申込締切

2025年3月16日(日)23:59 3月20日(木)23:59 ※締切延長しました!

連絡・注意事項

  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

北海道大学・北海道医療大学を訪問しました

EX部門では、生成AIやメタバース・VRといった先端技術の教育活用について検討しています。その参考とするため、2月18日に北海道大学の高等教育研修センター、オープンエデュケーションセンター、360度VRシアターを、2月19日に北海道医療大学の情報センターを訪問しました。

北海道大学の高等教育研修センターでは、AI関連のトピックを扱うFDについてのお話や初年次における少人数ゼミナール形式授業、学習相談体制についてのお話を伺いました。

北海道大学オープンエデュケーションセンターでは、教職員のニーズに応じたオープン教材の共同開発などについてご説明いただき、映像教材の撮影環境・機材についても紹介していただきました。

北海道大学360度VRシアターではVRシアターを活用した研究や教育活動についてご紹介いただき、実際の映像教材も体験させていただきました。

北海道医療大学情報センターでは授業動画をAIに処理させて、学生の事前・事後学習に役立てる活動や、学生のレポート執筆にAIを活用させる取り組みについてご紹介いただきました。

北海道大学高等教育研修センターへの訪問
北海道大学オープンエデュケーションセンターへの訪問
北海道大学360度VRシアターへの訪問
北海道医療大学情報センターへの訪問

今回の訪問では訪問先の先生方と多くの意見を交わし、認識や理解を共有することができました。また、先端技術の有効的な活用方法についてご紹介いただき、そのために必要な人材や機材の実際など、非常に参考となるお話を聞くことができました。訪問先の先生方につきましては、お忙しい中、ご対応くださり誠にありがとうございました。

東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターを訪問しました

EX部門では、メタバースやVR技術を教養教育に活用することを検討しています。その参考として、2月6日に東京大学本郷キャンパスのバーチャルリアリティ教育研究センターを訪問しました。

VR教育研究センターの事業について、授業でメタバースを活用する際のメリットや、対面授業との比較、実際に利用する上での具体的な問題点などを紹介いただきました。

体験型の学習を行う上でVRを活用した教材が有用的であることや、アバターを活用することで対面とは異なる教育効果を狙えることなど、非常に参考となるお話を伺うことができました。バーチャルリアリティ教育研究センターの先生方につきましては、お忙しい中、ご対応くださり誠にありがとうございました。

バーチャルリアリティ教育研究センターへの訪問

第9回模擬国連ワークショップ(2025年3月4日)

カテゴリー: News, イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構EX部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。

模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月より定期的に開催しており、今回が9回目の開催となります。

1.日時

2025年3月4日(火)14時~17時

2.場所

東京大学駒場Ⅰキャンパス17号館KALS

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など
[定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】
学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる
・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる
(セッション1に相当)
・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる
(セッション1に相当)
・ 模擬国連の授業事例を踏まえて自身の授業・学習に適した模擬国連をデザインできるようになる
(セッション1に相当)
・ 模擬国連受講者の経験を踏まえて自身の授業・学習に適した模擬国連をデザインできるようになる
(セッション2に相当)

【本ワークショップのスケジュール】
14:00~14:10 趣旨説明
14:10~15:40 セッション1「模擬国連の授業事例から学ぶ」
15:50~16:50 セッション2「模擬国連受講者の経験から学ぶ」
16:50~17:00 まとめ

【参考:過去のワークショップ当日の様子】
第1回(2020年3月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=1753
第2回(2020年9月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=2524
第3回(2021年9月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=3213
第4回(2022年3月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=3457
第5回(2022年9月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=3575
第6回(2023年3月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=3768
第7回(2023年9月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=3889
第8回(2024年2月)https://komex-ex.c.u-tokyo.ac.jp/ja/event/?p=3920

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任講師)
学生時代に模擬国連を経験し、現在は模擬国連を授業に導入している立場からお話します

渡邊真也(上智大学大学院グローバル・スタディズ研究科修士課程)
岡田智七永(東京大学教養学部文科二類)
模擬国連を経験した学生の立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/6YRcs9frbuE652d16

お問合せ先

教養教育高度化機構 EX部門(担当:中村長史)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングの試行錯誤〜つくって学ぶ授業を事例にして考える」(2025年3月19日開催)

カテゴリー: News, イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施をテーマとした「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。これまで、アクティブラーニングの授業デザインの方法や、生成AIの活用などをテーマにワークショップを実施し、東京大学の教員を対象にアクティブラーニングに関する知見を伝えてきました。 

また、授業を開講し、アクティブラーニングの授業モデルを開発してきました。その成果の一つである「つくって学ぶアクティブラーニング」をまとめ、このたび書籍として出版する運びとなりました。 

今回の駒場アクティブラーニングワークショップでは、書籍の出版を記念し、内容をより深めるワークショップを開催します。特に、アクティブラーニングを実践する際の試行錯誤に焦点を当て、「どのような工夫をしているか」、「どのような困難があり、それにどのように対処しているか」について情報提供を行います。ワークショップでは、書籍の執筆者による実践例の紹介に加え、フロアとのディスカッション、参加者自身の授業実践について考えるワークや意見交換を行います。 

今回は、東京大学の教員に限らず、他大学や小・中・高等学校に所属する教員の皆様、さらには教育関係者の皆様にもご参加いただけるワークショップです。ぜひ奮ってご参加ください。

チラシPDFはこちら

日時

2025年3月19日(水)13:30〜16:30 

場所

東京大学 駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS
駒場Iキャンパスへのアクセス・キャンパスマップ:https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/visitors/maps-directions/index.html

対象

大学教員、小・中・高等学校教員、教育関係者

定員

30名
※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

13:30 開会挨拶・趣旨説明
13:45 自己紹介・導入ワーク
14:00 実践事例紹介
※実践事例紹介者:重田勝介(北海道大学・教授)、標葉靖子(実践女子大学・准教授)、福山佑樹(関西学院大学・教授)、中村長史(東京大学・特任講師)、中澤明子(東京大学・特任准教授)
14:50 休憩 
15:00 グループディスカッション
16:10 ふり返りワーク
16:25 閉会の挨拶 
16:30 終了 
(16:40 情報交換会:参加者・登壇者が互いの授業実践や工夫・悩みなどについて自由に語らう情報交換会を行います。)

司会・進行: 中澤明子(東京大学・特任准教授)、中村長史(東京大学・特任講師)
※参加者数などによりプログラムに変更が生じる可能性がございます。

申込方法

以下のフォームより必要事項をご記入の上、ご登録ください。
https://forms.gle/uQx9AbwSpBqZnLTR8

申込締切

連絡・注意事項

  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

東洋大学情報連携学部を訪問しました

EX部門では、生成AIのような先端技術を教育に活用することを検討しています。その参考とするため、1月7日に東洋大学情報連携学部を訪問しました。

東洋大学情報連携学部で行われているカリキュラムの特徴や、IoT、生成AIの利用の実際についてご紹介いただきました。

生成AIを教育活用する実例をご紹介いただき、当部門の今後の取り組みに参考となる情報を得ることができました。東洋大学の先生方につきましては、お忙しい中、ご対応くださり誠にありがとうございました。

東洋大学情報連携学部への訪問

AL NEWSLETTER Vol.10, No.3(2024年12月発行)

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業での生成AI活用の試行錯誤と学習活動のデザイン」(2024年9月13日)開催報告

カテゴリー: News, イベント

教養教育高度化機構EX部門では、東大で授業を担当されている先生方を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「授業での生成AI活用の試行錯誤と学習活動のデザイン」を開催しました。当日は、14名の方が参加されました。その様子をご報告します。

目的

2023年度の開催では、授業での学習を深める生成AIの活用について検討・議論を行いました。今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げました。授業での生成AIの活用について、講師自身の取り組み、とくに昨年度の実践を踏まえて改善した今年度の実践、学習活動をデザインする際の注意点・課題を共有し、生成AIを活用する際の学習活動や教材(ワークシートなど)のデザインについて参加者考えるワークを行い、参加者どうしで共有・議論することを目的としました。

内容

ワークショップの趣旨説明を行った後、自己紹介と導入ワークを行いました。導入ワークでは、参加者が、授業をする時に大切にしているポイントを生成AIに尋ね、得られた回答について自分考えと合致するもの、そうでないものを考えてもらい、自己紹介と合わせてグループで共有しました。

その後、ミニレクチャとしてアクティブラーニングでの生成AIの活用の方針と昨年度からの実践での試行錯誤を講師の中澤が説明しました。具体的には、生成AIを使用した学習活動を行うためのワークシートの変更と今年度の実践での学生の反応や講師の感想を共有しました。休憩を挟んで後半は、学習活動と教材をデザインする際のポイントを確認した上で、参加者自身が自分の授業の1コマもしくは課題を想定して、どのような目的で生成AIを使い、どのようなワークやワークシートを用意するのかを考えました。その後、参加者は考えた内容をグループで共有し、互いにコメントし合いました。最後にワークショップのふり返りとして、参加者が新たに出てきた疑問・知りたいことをグループで共有し、ワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケート(13名が回答)では、どのような場面で活用しようと考えているかについて「次学期の授業で活かしたい」、「授業で叩き台のアイディアを出すときに活用したい」など、具体的な記述が見られました。一方、後半のワークをより充実することや、3時間というワークショップの所要時間が長く感じたといった改善点も挙げられました。今後も引き続き先生方に有用な情報を提供していければと思います。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください  

EX部門の横沢特任助教が令和6年度の日本生化学大会において「若手優秀発表賞」を受賞しました。

カテゴリー: News

令和6年11月6日~8日に開催された第97回日本生化学大会において、EX部門の横沢匠特任助教が若手優秀発表賞を受賞しました。

若手優秀発表賞は、在学中または学位(学士、修士、博士のいずれか)取得後3年以内の若手発表者による口頭発表の中から、特に優れた発表に授与されます。

発表題目は「免疫寛容を誘導する高親和性トリプトファン取り込みにはTrpRSによるトリプトファニルAMP合成が重要である」です。

第97回生化学大会HP:https://aeplan.jp/jbs2024/

受賞者一覧:https://aeplan.jp/jbs2024/pdf/top_list2024.pdf

EXセミナーの開催(11月20日、12月4日)

教養教育高度化機構EX部門では、11月20日・12月4日に東京大学の教職員・学生を対象としたEXセミナーを開催いたします。

以下のとおり、AIの教育利用について2名の講師の方にお話しいただきます。
ご都合つく方はぜひご参加いただけますと幸いです。

なお、本セミナーは、全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「AI社会を生き抜くための教育・学習を考える」第7回・第8回授業を学内に限り聴講可能とするものです。質疑応答などにおいては履修生優先となる旨を予めご了承ください。

■第1回EXセミナー(11月20日(水)5限 17:05-18:35)
講師:讃井康智 氏(ライフイズテック株式会社 取締役 CEAIO)
タイトル:生成AIの教育利用の現状と課題〜AIネイティブ世代の可能性を引き出す教育とは〜
場所:駒場Iキャンパス17号館 2階 KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)
お申込み:https://forms.gle/ir9MeutkW7YLs3BW7

■第2回EXセミナー(12月4日(水)5限 17:05-18:35)
講師:田中冴 氏(東京大学大学院 学際情報学府 博士課程1年)
タイトル:人間の学びの道具としてAIを利用するー学習支援システム開発研究の視点から
場所:駒場Iキャンパス17号館 2階 KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)
お申込み:https://forms.gle/kjqhPnivz52CsCdW9

■主催・お問い合わせ
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門
担当:中澤(dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp [at]を@に変更してお送りください)


AL NEWSLETTER Vol.10, No.2(2024年10月発行)

2024年度Sセメスター 授業「オープン教材をつくろう!」で作成した学生の教材を公開しました

カテゴリー: News

2024年度Sセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材をつくろう!」で学生が作成した、オープンエデュケーションについて学べる教材を公開しました。

この授業では、学生は3つのグループ分かれてオープンエデュケーションやオープン教材(Open Educational Resources)に関するスライドもしくはテキスト教材を作成しました。そのうち、ウェブサイトでの公開を希望するグループの教材を公開しました。

以下よりご覧ください。

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(1)(2024年度 Sセメスター)

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(2)(2024年度 Sセメスター)

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(2)(2024年度 Sセメスター)

はじめに

2024年度Sセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材をつくろう!」で学生が作成した教材の公開第2弾です。

授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

あなたにピッタリのオープンコンテンツを見つけよう!

学びの宝箱グループの安部正健さん、A. S.さん、Z. H.さん、山本笙太さんが作成した教材「あなたにピッタリのオープンコンテンツを見つけよう!」です。

オープン教材(Open Educational Resources)は、一般的にはアクセスできるだけでなく再編集なども可能なものを指します。しかし、この教材では、「アクセスできること」に焦点をあてています。再編集は許可されていなくても、「誰もがアクセスして学べる教材」は多数あります。それらに焦点を当てています。実際にそういった教材を見つけられることを目標に挙げています。作成者である学生の感想を紹介します。

教材をつくるのはこの授業が初めてでした。私は教える内容を学ぶところから始めました。そして、教材づくりそれ自体の手法も学びました。 教材づくりを通じて感じたのは、教材をつくることで対象の自分の理解も深まるということです。やはり、他者に教えられる状態になるためには、いろいろな角度から対象をきちんと理解する必要がありました。また学習者の疑問点を想定してわからない箇所が無いように工夫したり、誤解が無いように言葉をひとつひとつ吟味していったり、レイアウトやデザインを最後まで調整をしていく経験は骨が折れるものでしたが、逆に言うと今まで使ってきたたくさんの教材は、製作者の試行錯誤の結晶だということがわかりました。 最後に、この授業ではグループで教材を制作しました。「学びの宝箱」のメンバー全員が協力して本教材を完成させることができました。メンバーにも、先生にも恵まれました。ありがとうございました。(安部正健)

この授業をきっかけにOCWに興味を持ち、Courseraを受講するプログラムに参加することにしました。また、学習目標の設定を動作で行うことやガニェの9教授事象について学べたことも大変良かったです。SDGsについての出前授業を高校生向けに行う機会があり、授業設計の際に構造が見えるようになりました。 これからも、本授業で得た学びをたくさん活かしていきたいと思います!(A.S)

「オープン・エデュケーション」について、学習者としてのみならず教材作成者として関わってみて、5Rに代表される足枷にさえ感じられたオープン教材であるための諸要素が実は重要な役割を占めていることを痛感しました。また、一般的に役立てられる教材作成や教授法の知見も学べて、とても有意義な授業でした。ありがとうございました。(Z.H.)

学校教育に留まらない教育の可能性が広がり求められてきてもいる中で、オープンエデュケーションの発想を学んだことは有意義でした。教材作成の理論を知ることで、今まで使ってきた教材に施されていた工夫にも気がつくようになり楽しかったです。(山本笙太)

教材は以下よりご覧ください。

あなたにピッタリのオープンコンテンツを見つけよう! by 安部正健,A. S.,Z. H.,山本笙太 is licensed under CC BY-NC 4.0

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(1)(2024年度 Sセメスター)

はじめに

2024年度Sセメスターも全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材をつくろう!」を開講しました。

授業では、全部で3グループがオープンエデュケーションに関する教材を作成しました。そのうち、公開を希望するグループの教材を公開することになりました。

7月中旬に授業が終了した後、教材の著作権や内容について授業担当教員等で確認し、必要な場合は学生たちが修正しました。これらを経て、最終版の教材を公開します。 授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

A Crash Guide to Moocs: Unlocking the World of Open Education

Louis HORIGOMEさん、Kaho SHIMIZUさんが作成した教材”A Crash Guide to Moocs: Unlocking the World of Open Education”です。

これまで公開してきた教材は、すべて日本語で作成されたものでしたが、この教材はなんと全編英語です!!作成したお二人の強みを活かした仕上がりになっています。テキスト教材でデザインにも注意を払っていますし、さまざまな情報をコンパクトにまとめてわかりやすいものになっています。なお、教材の表紙には、グループ名”H₂S”が記載されています。なぜこのグループ名にしたのかの理由も興味深いのですが、少し切ない話にもなるので割愛します。作成者である学生の感想を紹介します。

I’ve been using leaning materials without thinking too much about how they were made. Troughout this course though, by creating materials myself and learning the essentials such as the 9 steps of instruction, I realised that it completely changed how I see learning materials. I have a much better understanding of how I should be using them and what the different sections are intend for.
The following is the final version of our work. If you are familiar with the essentials of creating teaching materials, it might help to try to find them in our work, to further understand our intentions. I really hope you’ll enjoy! (Louis HORIGOME)

This was my first experience creating educational materials, and I aimed to make them enjoyable and easy to read, so that learning would be a pleasant experience. Although this material was originally created in Japan, I took on the challenge of translating it into English with the hope of reaching a wider audience. I sincerely hope that these materials contribute to a more fulfilling learning environment and happier study experiences for many people. (Kaho SHIMIZU)

教材は以下よりご覧ください。

A Crash Guide To Moocs: Unlocking the World of Open Education by Louis HORIGOME and Kaho SHIMIZU is licensed under CC BY-NC-ND 4.0

大阪大学・関西大学を訪問しました

EX部門では、生成AIやメタバース・VRといった先端技術の教育活用について検討しています。その参考とするため、今年度は取り組みを行っている大学を訪問し、情報収集・意見交換を行っています。またEX部門に関連する取り組みについても併せて情報収集を行っています。

9月11日に、大阪大学全学教育推進機構、関西大学教育推進部、関西大学国際部を訪問しました。

大阪大学全学教育推進機構では、生成AIの教育活用に関する大阪大学の取り組みについてお話を伺いました。また、EX部門に関連する取り組みとして、初年次少人数セミナー型導入科目「学問への扉」についてもお話を伺いました。関西大学教育推進部では、ラーニング・コモンズやライティング・ラボの取り組みについての意見交換・見学を行いました。関西大学国際部では、教育DXの取り組みやメタバース・VRを活用した教育実践についてお話を伺いました。

大阪大学の先生方との会議
関西大学教育推進部への訪問
関西大学国際部への訪問

今回の訪問では、共通する課題・困難があることがわかったことに加え、EX部門の今後の取り組みについて参考となる情報を得られました。訪問先の先生方につきましては、お忙しい中、ご対応くださり誠にありがとうございました。

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業での生成AI活用の試行錯誤と学習活動のデザイン」(2024年9月13日開催)

カテゴリー: News, イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。

2023年度の開催では、授業での学習を深める生成AIの活用について検討・議論を行いました。今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げます。

ワークショップでは、授業での生成AIの活用について、講師自身の取り組み、とくに昨年度の実践を踏まえて改善した今年度の実践、学習活動をデザインする際の注意点・課題を共有します。さらに、生成AIを活用する際の学習活動や教材(ワークシートなど)のデザインについて参加者考えるワークを行い、参加者どうしで共有・議論します。 

昨年度のワークショップに参加された方も、今回初めての方もぜひご参加ください。

チラシPDFはこちら

※本ワークショップでは、アクティブラーニング手法については紹介しません。手法などについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2024年9月13日(金)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS

会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付
  • 13:30〜13:45 開催挨拶、趣旨説明
  • 13:45〜14:00 自己紹介、導入ワーク
  • 14:00〜14:45 ミニレクチャ、ディスカッション
  • 14:45〜14:55 休憩
  • 14:55〜16:10 個人ワーク、グループディスカッション
  • 16:10〜16:25 ワークショップのまとめ、ふり返り
  • 16:25〜16:30 閉会の挨拶

司会・進行:中澤明子(EX部門 特任准教授)、中村長史(EX部門 特任講師)

※参加者数などによりプログラムに変更が生じる可能性がございます。

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。
https://forms.gle/JqcLBRdZQqmgWVK8A

申込締切

2024年9月1日(日)23:59

連絡・注意事項

  • 生成AIを使ったワークを行います。ChatGPT、Copilot、Geminiなどいずれかのテキスト生成AIを使えるようご準備ください(例:ChatGPTのアカウントを作っておく、Edgeをインストールしておく等)。
  • 当日はパソコンを使いますので、ご自身でお持ちいただくPCか、会場の貸出しPCをお使いください。貸出しPCを使う場合は、ECCSクラウドメールにログインできるようにしておいてください
  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

AL NEWSLETTER Vol.10, No.1(2024年6月発行)

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する:事例の共有と検討」(2024年3月19日)開催報告

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、東大で授業を担当されている先生方を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する:事例の共有と検討」を開催しました。当日は、19名の方が参加されました。その様子をご報告します。

目的

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。昨年9月には、駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催しました。

今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げました。活用事例の共有や、アクティブラーニングの授業デザインや効果的な実施のポイントを踏まえ、参加者自身が生成AIの活用を検討し、ほかの参加者との意見交換を交えながら議論することを目的としました。

内容

ワークショップの趣旨説明を行った後、自己紹介と導入ワークを行いました。導入のワークでは、差参加者はワークショップへの参加動機を生成AIに尋ね、得られた回答に賛成/反対なのかや感想を考えてもらい、グループで共有しました。その後、ミニレクチャとしてアクティブラーニングの定義やアクティブラーニングで生成AIを活用する際のポイント、活用事例を講師の中澤が説明しました。説明の最後に導入ワークは紹介した活用事例の活動であったことを述べ、参加者は活用事例の学習活動を体験して感じた良かった点や課題をグループで議論しました。

ディスカッション後は、中村長史特任講師、岡田晃枝特任准教授から、授業での活用事例を紹介していただきました。岡田先生は初年次ゼミナール文科での活用、中村先生は全学自由研究ゼミナールでの活用を説明しました。

休憩を挟んだ後半は、授業デザインワークを行いました。授業デザインの流れを確認したうえで、参加者自身の授業目的・学習目標を思い出してもらい、授業をアクティブにする方法やアクティブにするために生成AIを使えそうか、どのように使うかを参加者が考えました。個人で考えた後、参加者は考えた内容をグループで共有しました。

最後に、教える方法は学習目標に到達するための手段であり、生成AIも手段に過ぎないことや、生成AIの利用が始まっているからこそ「人間ChatGPT」、つまり他者に問うことや対話することの意義が見直されることを説明しました。そして、ワークショップのふり返りとして新たに出てきた疑問・知りたいことを付箋に書き出してグループで共有し、ワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケート(17名が回答)では、「本ワークショップで学んだことを自分の授業準備・実施で活用できると思う」という質問に対して、まったく当てはまらない〜かなり当てはまるの5件法で尋ねたところ、17名中11名がかなり当てはまる、6名がまあまあ当てはまると回答しました。 一方、ワークショップで改善したほうがよい点については、時間配分や、具体的な生成AIの活用に関するワークの要望が挙げられました。今後もワークショップの開催やウェブサイトなどを通じて、アクティブラーニング、生成AIの活用について先生方に有用な情報を提供していければと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください  

「オープン教材」をつくろう!:学生による教材の公開(2)(2023年度Aセメスター)

はじめに

2023年度Aセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習『「オープン教材」をつくろう!』で学生が作成した教材の公開第2弾です。

授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

「オープン教育・教材」について知ろう!

Y.Aさん、蔵田渉さん、T.Tさんが作成した教材『「オープン教育・教材」について知ろう!』です。

教材では、自作のペンギンのイラストがガイド役を務めます。教材では、事前・事後テストを含みますが、この教材では、教材中にそれが埋め込まれています。たとえば、8ページ目下にある黄色字の「①オープンとはどういう状態を指すのでしょうか?」などです。教材の作成者である学生の感想を紹介します。

教材1つをとっても、ライセンスやガニェの9教授事象など考慮するべきことが想像以上に多く、物を作ることの難しさを実感した。だが、同時に自分たちで考えた物が出来上がってゆくことへの期待感は何にも代えがたく、物作りの面白さも難しさ以上に体験することができた。
この教材が、自分で興味のあることを調べるという活動への第一歩になれば幸いです。(Y.Aさん)

これまでの人生でたくさん見てきた教材を、決められたテーマで作るという活動は自分にとって新鮮でした。視覚的な工夫や情報量、項目の順番など、学習目標を達成出来る教材を作るには考えることがたくさんありましたが、それをチームメイトと話し合って進めていくのが楽しかったです!(蔵田渉さん)

過去に外国語の独学のためにオープン教材を用いたことがあったので、オープン教材に興味を持ち、教材作成にチャレンジしました。 作成に当たり「自分ならこの教材上の情報をどうインプットするだろうか」という視点を常に持ち、細部に気を遣うのは大変ではありましたが、とても良い経験になりました。(T.Tさん)

教材は以下よりご覧ください。

「オープン教育・教材」について知ろう! by Y.A, 蔵田渉, T.T is licensed under CC BY-NC-ND 4.0

授業「オープン教材をつくろう!」で作成した学生の教材を公開しました

カテゴリー: News

2023年度Aセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材」をつくろう!で学生が作成した、オープンエデュケーションについて学べる教材を公開しました。

この授業では、学生は5つのグループ分かれてオープンエデュケーションやオープン教材(Open Educational Resources)に関するスライドもしくはテキスト教材を作成しました。そのうち、ウェブサイトでの公開を希望するグループの教材を公開しました。

以下よりご覧ください。

「オープン教材」をつくろう!:学生による教材の公開(1)(2023年度Aセメスター)

はじめに

2023年度Aセメスターも全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習『「オープン教材」をつくろう!』を開講しました。

授業では、全部で5グループがオープンエデュケーションに関する教材を作成しました。そのうち、公開を希望するグループの教材を公開することになりました。

1月中旬に授業が終了した後、教材の著作権や内容について授業担当教員等で確認し、必要な場合は学生たちが修正しました。これらを経て、最終版の教材を公開します。 授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

MOOCとOCWって何だろう?〜オープンエデュケーション教材の強みと課題〜

佐野真途さん、Y.M.さん、金井貴広さんが作成した教材「MOOCとOCWって何だろう?〜オープンエデュケーション教材の強みと課題〜」です。

授業では自分たちのグループ名を考えてもらったのですが、このグループは「だんご3兄弟」という名前でした。それを受けて、教材では串団子のイラスト(自作)がガイド役として登場し、学習を伴走します。作成者である学生の感想を紹介します。

教材を作るということは一見とても簡単に思えますが、構成は勿論のこと、色や文字の大きさひとつで学習者に与える影響が大きく変わる、大変難しいものだと知ることが出来ました。
そういった中でも構成や伝え方等をできる限り工夫しました。(Y. M.さん)

教材の作り方について丁寧なレクチャーがあったので、教材作成を円滑に進めることができました。また、他の受講生と頻繁に意見交換を行い、教材の質を高めることができました。私たちが作成した教材では、MOOC、OCWという取り組みについて、事前知識がない人でも関心を持って学べるように工夫されています。是非ご活用ください。(佐野真途さん)

教材は以下よりご覧ください。

MOOCとOCWって何だろう? 〜オープンエデュケーション教材の強みと課題〜 by 佐野真途, Y.M., 金井貴広 is licensed under CC BY-NC-ND 4.0

ほかにも公開を準備しているグループがありますので、順次公開いたします。

AL NEWSLETTER Vol.9, No.4(2024年3月発行)

AL NEWSLETTER Vol.9, No.3(2023年12月発行)

カテゴリー: ニュースレター

AL NEWSLETTER Vol.9, No.2(2023年9月発行)

カテゴリー: ニュースレター

AL NEWSLETTER Vol.9, No.1(2023年6月発行)

カテゴリー: ニュースレター

『科学の技法 第2版』がこの3月出版されます

カテゴリー: News, 書籍

『科学の技法』は、初年次ゼミナール理科で教科書として使われています。初版が2017年3月に発刊されてから、7年近く経過しました。このたび基礎編ではアクティブラーニング関連の内容の刷新、実践編では現在行われている授業の取材内容を加えて、第2版を出版する運びになりました。

初年次ゼミナール理科で行われてきた、様々なテーマの授業での教員と学生の取り組みが紹介されています。書店に並ぶのは3月後半になると思いますが、ぜひ手に取ってみてください!

駒場で「食」を考えるpost

EX部門ウェブサイトを公開しました

カテゴリー: News

EX部門ウェブサイトを公開しました。

EX部門の活動を知りたい場合は「活動を知る」、開講授業を知りたい場合は「授業で学ぶ」、授業の方法や実践などを知りたい場合は「授業を実践する」をご覧ください。

2022年度以前のAL NEWSLETTER

カテゴリー: ニュースレター

教養学部の教員を対象にした調査を実施しています

生成AI(ChatGPT, Bing AI, Bardなど)の利用が様々な場面で行われています。教養教育高度化機構Educational Transformation (EX)部門、GFD (グローバル・ファカルティ・ディベロップメント・イニシアチブ)では、教育・研究活動で生成AIを利用する教員や学生を対象とした教育・学習支援の在り方を検討しています。 

そこで、教養学部所属あるいは教養学部の授業を担当されている先生方を対象に生成AIへの認識や利用状況の実態などを2024年2月上旬からウェブフォームを用いて調査しています。調査で得られた回答を教育・学習支援の検討に役立てたいと考えています。

調査結果については、本ウェブサイトなどで公表する予定です。

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する:事例の共有と検討」(2024年3月19日開催)

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。昨年9月には、駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催しました。

今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げます。ワークショップでは、2名の教員が活用事例を紹介します。また、アクティブラーニングの授業デザインや効果的な実施のポイントを踏まえ、参加者自身が生成AIの活用を検討し、ほかの参加者との意見交換を交えながら議論します。

昨年9月に参加された方も、今回初めての方もぜひご参加ください。

チラシPDFはこちら

※本ワークショップでは、アクティブラーニング手法については紹介しません。手法などについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2024年3月19日(火)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS 会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付
  • 13:30〜13:45 開会挨拶、趣旨説明
  • 13:45〜14:00 参加者どうしの自己紹介
  • 14:00〜14:20 ミニレクチャ
  • 14:20〜15:00 事例報告:岡田晃枝(EX部門 特任准教授)、中村長史(EX部門 特任講師)
  • 15:00〜15:10 休憩
  • 15:10〜16:10 授業デザインワーク
  • 16:10〜16:30 まとめ、閉会の挨拶
司会・進行:中澤明子(EX部門 特任准教授) ※参加者数などにより変更が生じる可能性がございます

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/6bbTAz5t3Lb47t4WA

申込締切

2024年3月10日(日)23:59締切

連絡・注意事項

  • 生成AIを使ったワークを行います。ChatGPT、Bing AI、Bardなどいずれかのテキスト生成AIを使えるようご準備ください(例:ChatGPTのアカウントを作っておく、Edgeをインストールしておく等)。
  • 当日はパソコンを使いますので、ご自身でお持ちいただくPCか会場の貸出しPCをお使いください。貸出しPCを使う場合は、ECCSクラウドメールにログインできるようにしておいてください。
  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

ツール:アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート

本シートは、授業デザインの考え方に基づいたポイントや、アクティブラーニングを導入する際のポイントについて、授業デザイン前・中・後、授業後のタイミングにわけて、質問に答える形式あるいはチェックリストの形式で確認できるようにいたしました。

PDFの形式ですが、入力できるように設定しており、印刷物だけでなくパソコン上でも使用いただける仕様になっています。

授業設計・運営の参考にしていただければと思います。

冊子:オンラインでもアクティブラーニング

カテゴリー: 書籍

オンラインでもアクティブラーニング

2020年度から2年間のオンライン授業でのアクティブラーニングについて、ウェブサイトやニュースレター、ワークショップなどで発信してきた内容を中心にまとめたものです。

第一部では、授業形態を問わず授業デザインの基本的な考え方や授業をアクティブにする授業デザイン、オンライン授業をアクティブにするポイント、オンライン授業でのTA(Teaching Assistant)を掲載しています。

第二部では、アクティブラーニング手法について、実際にオンライン授業で行う際の手順や注意点、実践した感想を掲載しています。

冊子:+15 minutes 実践編

カテゴリー: 書籍

+15 minutes 実践編

アクティブラーニング手法の具体的な実践例を紹介しています。

冊子:+15 minutes

カテゴリー: 書籍

アクティブラーニングの手法の解説および実践紹介の冊子をダウンロードいただけます。

+15 minutes

アクティブラーニング手法を紹介しています。

初版

第2版

第8回 模擬国連ワークショップ(2024年2月22日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構EX部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月より定期的に開催しており、今回が8回目の開催となります。

1.日時

2024年2月22日(木)14時~17時

2.場所

東京大学駒場Ⅰキャンパス17号館KALS

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 時間や受講者の既有知識によって模擬国連の実施方法を使い分けられるようになる (セッション1に相当) ・ 国連外交における実務の一例を説明できるようになる (セッション2に相当) ・ 国際外交における実務で必要とされる知識・技能・態度を説明できるようになる (セッション2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~15:30 セッション1「模擬国連の授業事例から学ぶ」 15:40~16:50 セッション2「国連外交の実践事例から学ぶ」 16:50~17:00 まとめ 【参考:過去のワークショップ当日の様子】 第1回(2020年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws1/ 第2回(2020年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws2/ 第3回(2021年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws3/ 第4回(2022年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws4/ 第5回(2022年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws5/ 第6回(2023年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws6/ 第7回(2023年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws7/

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任講師) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は模擬国連を授業に導入している立場からお話します 嘉治美佐子(外務省科学技術協力担当大使、元国際労働機関(ILO)理事会議長、元東京大学教授) 国連等において政府代表として多国間外交に当たってきた立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/q7Uho7yaXdW4AdwR8

お問合せ先

教養教育高度化機構 EX部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」(2023年9月8日)開催報告

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、東大で授業を担当されている先生方を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催しました。当日は、14名の方が参加されました。その様子をご報告します。

目的

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。 そこで、今回の「駒場アクティブラーニングワークショップ」では「生成AI」を取り上げ、学習を深める生成AIの活用を検討することを目的としました。

内容

ワークショップの趣旨説明や参加者どうしの自己紹介を行った後、生成AIの概要(定義、生成AIサービスの特徴)と文部科学省や東京大学での対応方針のミニレクチャーを行いました。また参加者が実際に生成AIを操作するワークに取り組み、生成AIサービスごとの特徴を把握したり、得られた回答例の共有を行いました。 次に、一般的な授業デザインの方法のミニレクチャーを踏まえて、参加者が自身の授業について学習目標・評価方法・学習内容を検討しました。休憩を挟んだ後、アクティブラーニングでの効果的な生成AI活用のポイントと、生成AI活用事例のミニレクチャーを行いました。活用事例では、4つの活用方法が紹介されました。 その後、それまでのレクチャー内容を踏まえて、先ほど考えた自身の授業をアクティブにする方法と生成AIの活用を参加者が検討しました。また検討した内容をグループで共有し、互いにコメントし合いました。 最後に、ワークショップのふり返りとして、ワークショップを通じて新しく知ったことを書き出して共有してワークショップを終えました。 ふり返りワークの様子

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケートでは、「本ワークショップで学んだことを自分の授業準備・実施で活用できると思う」という質問に対して、まったく当てはまらない〜かなり当てはまるの5件法で尋ねたところ、14名中10名がかなり当てはまる、4名がまあまあ当てはまると回答しました。またどのように活用しようと考えているかについては、「授業で時間がなくて説明できないことを調べさせ小レポートの提出機会を設け、リテラシーと深い理解の両方を高める」、「ディスカッションのポイントを生成A Iを使って出してみるなど、学生が授業テーマについて深めく考えるためのツールとして使いたいと思います」といった具体的な内容が書かれていました。 一方、「本ワークショップによって、今後の授業への不安が軽減された」については、かなり当てはまる3名、まあまあ当てはまる9名、どちらとも言えない2名の回答でした。アクティブラーニングや生成AIの活用に関する不安はすべて解消されたわけではないと思いますし、今後もワークショップの開催やウェブサイトなどを通じて、アクティブラーニング、生成AIの活用について先生方に有用な情報を提供していければと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください  

第7回模擬国連ワークショップ(2023年9月21日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2023年9月21日(金)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:27名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任講師)セッション1・2 ■ 平野実晴(立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部助教)セッション2 ■ 根岸陽太(西南学院大学法学部准教授)セッション2 ■ 二杉健斗(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)セッション2

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③模擬裁判の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション2に相当) ④模擬裁判の実施の手順を説明できるようになる(セッション1, 2に相当) (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」(14:10~15:20) 模擬国連の概要と東京大学教養学部の授業への導入例について授業担当教員の中村からお話しました。模擬国連を導入する目的(中村の授業の場合は、国際関係論の知識を使いこなせるようになることや、利害や価値観が異なる人々と合意を形成できるようになること)を明確化する必要があり、模擬国連はあくまでも手段であるという点を再確認する機会となりました。「模擬国連は学びのフルコース」だといわれることもある程学べることが多岐にわたる手法であるがゆえに、明確な導入目的を受講者にあらかじめ伝えたうえで実施する必要があるという点を特に強調しました。

セッション1の様子

【3】セッション2「模擬裁判導入事例から学ぶ」(15:40~16:50) セッション1で確認したように、模擬国連はあくまでも手段です。授業の目的によっては模擬国連以外の手法が適切な場合もあり得ます。そこで、3人の先生から、模擬裁判を授業に導入する場合の留意点について具体例とともにご紹介いただきました。勝敗がつく裁判を模擬の対象とする以上、(合意形成に向けて論理のみならず妥協も重視する模擬国連とは異なり)法的論理の構築が最重要だとお話になったのが印象的でした。セッション1で紹介した模擬国連との異同を意識しながら模擬裁判についてご紹介いただけたことで、各人の導入目的や環境に合った「Taylor-madeの模擬国連/模擬裁判」を目指そうという本ワークショップの趣旨が一層クリアになったように思われます。

セッション2の様子

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • 模擬国連や模擬裁判についてあまり知らなかったが、両者の違いや目的、準備や実際の流れなどを具体的に知ることができてよかった
  • 模擬国連は『フルコース』であるがゆえに、導入目的を明確化し、優先順位をつけながら準備をすすめていく大切さを学ばせていただきました
  • 改めて、模擬国連は魅力的な取り組みだと感じましたので、参加する生徒のサポートを最大限できるように、私もさらに勉強しようと思いました

4.次回予告

引き続き定期的(9月・3月予定)に開催していければと考えています。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 EX部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

ワークショップ「第4回東大生がつくるSDGsの授業」(2023年9月3日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日開催しました下記のワークショップに関して、当日の模様を簡略ながらご報告します。 チラシPDF 日時:2023年9月3日(日)14時~17時 場所:オンライン 参加者数:6名

1.概要

東京大学総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構EX部門では、2023年度Sセメスターに全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」を開講しました。本イベントは、その授業の中で特に優れた授業案を設計した学生が、高校生を対象とした授業を実施するものです。2020年度より毎年開催しており、4回目の開催となりました。オンライン(Zoom)での開催でしたが、講師の学生は可能な限り双方向性を保てるような授業案を設計してイベントに臨みました。

2.プログラム

14:00~14:30 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任講師) 14:30~15:20 授業「SDGs in Japan~企業にできることはなんだろう~」:平野沙也加(東京大学教養学部2年) 15:20~15:40 休憩 15:40~16:30 授業「SDGsマスターへの道~”達成”に向けてできることを考えてみよう~」:大石菜月(東京大学教養学部1年) 16:30~17:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

3.授業の内容

「SDGs in Japan〜企業にできることはなんだろう〜」は、SDGs達成に向けた企業の取り組みについて考えることを中心に据えた授業でした。まず、参加者はクイズや概説を通じて日本のSDGs達成状況を確認した後、具体例を交えながら日本企業の取り組みやSDGsウォッシュ問題について学びました。続いて、自身が企業の一社員となったことを想定し、「製造業」と「小売業」の2グループに分かれて、SDGsの目標12〜15にアプローチできる取り組みを考えるグループワークを行いました。 「SDGsマスターへの道〜“達成”に向けてできることを考えてみよう〜」は、SDGsの“達成”をひとつの側面として取り上げた授業でした。授業内では、①SDGs“達成”について自分の言葉で説明できる、②“達成”に向けて自分たちにできることを考える、という2つの目標を達成するべく、講師からの講義の後、参加者がそれぞれ考えた“達成”に近付くために、グループで自分たちにできることを話し合い、それを全体で共有しました。

4.授業を行った学生の声

授業を行った2人の学生に、参加者の反応はどのようなものであったか、そして授業を実施した感想を聞いてみました。 一から授業を組み立て、さらに実践するというのは初めての経験で、準備段階から本番に至るまで様々な失敗や苦労もありましたが、無事に授業を完成させることができて嬉しく思います。参加人数はあまり多くはなかったものの、その分、グループワークやアイディア共有が積極的に行われた印象があり、参加者同士が密に交流することができるワークショップになったのではないかと思います。私自身、「このトークテーマは難しすぎるかも…」「まとまりのある話し合いができるかな」など不安を抱えつつのワークショップだったのですが、いざ蓋を開けてみると、参加者の皆さんが高い意欲と発想力でたくさんの魅力的なアイディアを出してくださって安心しました。この授業を通じて、SDGsへの関心を高め、自分もSDGs達成に貢献できる社会の一員なんだ!という自覚を持っていただけていたら幸いです。(平野沙也加) 「授業はひとつのストーリー!」。Sセメスターに開講された、全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」を受講した際に私が学んだことの一つです。授業準備では、このストーリーをつくるということに最も頭を悩ませました。講師としての自分の頭の中では授業の自然な流れができているつもりでも、参加者の目線で授業を見直すと、飛躍があって分かりづらい。授業内で伝えたい知識や技能だけでなく、それらをいかにストーリーとして構成するか、ということも、授業には必要不可欠なことだと気付きました。ストーリーをつくるなかで、「このワークでは参加者はどんな意見を出すだろう?」と想定する必要がある場面もありました。いくつか想定していたのですが、実際に授業内で参加者同士のグループワークを覗いてみると、私が想定していた答えを遥かに超える質と量の意見がたくさん出ていて、私自身も大変勉強になりました。講師としても学習者としても、貴重な学びの機会を得ることができ、非常に嬉しく思います。(大石菜月)

お問合せ先

教養教育高度化機構 EX部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「ジグソー法を授業で活用する」(2023年3月17日)開催報告

カテゴリー: イベント

2023年3月17日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、駒場アクティブラーニングワークショップ「ジグソー法を授業で活用する」を対面で開催しました。当日は 10 名の方が参加されました。当日の様子を報告します。

目的

本ワークショッフは、アクティブラーニングの手法の一つとしてよく知られるジグソー法を取り上げ、ジグソー法の基本的なやり方や効果、アクティブラーニング部門が開講した授業でのジグソー法導入の実例に関する情報提供とご自身の授業での活用について検討することを目的としました。

内容

アクティブラーニングの授業モデル開発として部門開講授業で検討してきたジグソー法の手順に則っ て、ワークショップそのものもジグソー法を用いて実施しました。具体的には、
  1. 個人での問いの思考
  2. 資料の読解
  3. エキスパート活動(資料ごとのグループで内容の確認、説明内容の検討)
  4. ジグソー活動(担当資料の相互説明、問いに関する議論)
  5. 個人での問いの思考
という手順で休憩やミニレクチャを挟みつつワークショップを進めました。 ワークショップの様子
資料は、ジグソー法の背景、バリエーション、効 果・メリットの三種類を用意しました。「どのような目的・場面でジグソー法を活用できそうか」という問いについて、個人での問いの思考(手順1, 5)、ジグソー活動でのグループでの議論(手順4)を行いました。ジグソー活動での議論内容を全体で共有した後、ミニレクチャではジグソー法の活用の実例として、部門開講授業の事例を紹介しました。その後、個人での問いの思考(手順5)では、参加者自身の授業について、どのような目的・場面でジグソー法を活用できそうかを思考してもらい、その内容をグループで共有しました。最後に、ワークショップのふり返りとしてジグソー法について新しく知ったことを書き出してもらいました。
ふり返りワークの様子

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケート(5名が回答)の結果を簡単にご紹介します。 「今後の授業準備・実施に役立つものでしたか」、「本ワークショップで扱った内容をご自身の授業で活用できると思いますか」については、とてもそう思うが3 名、そう思う1 名、どちらとも言えない 1 名という回答でした。 「本ワークショップへの参加を周りの教員に勧めた いと思いますか」に対しては、とてもそう思う 3 名、そう思う 2 名でした。全体的に好評価を得たと考えられるものの、「本ワークショップは、ご自身の授業準備・実施に関連していると思いましたか」 という質問について、そう思わないという回答が1 名ありました。ご自身の授業目的を踏まえた検討の結果、このように感じられたのかもしれません。 ジグソー法は、分野を問わず活用可能な手法です。また、学生による発表をジグソーグループの枠組み(異なるグループのメンバーから成るグループで発表)で行うこともできます。授業目的や学習目標に応じて授業手法の選択をすることは当然ではありますけれども、その授業手法の選択肢としてジグソー法を加えてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

教養教育高度化機構EX部門(旧アクティブラーニング部門) アクティブラーニング普及促進プロジェクト dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください    

ワークショップ「第4回 東大生がつくるSDGsの授業」(2023年9月3日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを2020年度より開催しております。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業ですので、是非ご参加ください。 チラシPDF

1.日時

2023年9月3日(日)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします) ※授業ではペアワークやグループワークの場面が多くあります。可能な限りカメラをオンにして参加していただければ幸いです。 ※参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

3.対象者

高校生 [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

14:00~14:30 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任講師) 14:30~15:20 授業「SDGs in Japan~企業にできることはなんだろう~」:平野沙也加(東京大学教養学部2年) 15:20~15:40 休憩 15:40~16:30 授業「SDGsマスターへの道~”達成”に向けてできることを考えてみよう~」:大石菜月(東京大学教養学部1年) 16:30~17:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

6.お申し込み

以下の申込フォームよりお申込ください。 https://forms.gle/dUkx5vL8Y4gReyfK7 主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」(2023年9月8日開催)

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。  そこで、今回の「駒場アクティブラーニングワークショップ」では「生成AI」を取り上げます。授業での生成AI活用は、学生の学習を深めるために使うことが大切です。本ワークショップでは、学習を深める生成AIの活用を検討するため、まずアクティブラーニング型授業をデザインする際のポイントと、アクティブラーニングでの生成AIの活用事例を紹介します。そして、アクティブラーニングの観点からご自身の授業を検討し、授業目的・学習目標に適した生成AIの活用について、ほかの参加者との意見交換を交えながら議論します。

チラシPDFはこちら

※本ワークショップでは、アクティブラーニング手法については紹介しません。手法などについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2023年9月8日(金)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS 会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付
  • 13:30〜13:50 開会挨拶、趣旨説明
  • 13:50〜14:05 参加者どうしの自己紹介
  • 14:05〜14:40 ミニレクチャ、ワーク
  • 14:40〜14:50 休憩
  • 14:50〜16:10 ミニレクチャ、ワーク
  • 16:10〜16:30 まとめ、閉会の挨拶
※参加者数などにより変更が生じる可能性がございます

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/iShdH4vmsL28Bds17

申込締切

2023年8月27日(月)23:59締切

連絡・注意事項

  • 生成AIを使ったワークを行います。ChatGPT、Bing AI、Bardなどいずれかのテキスト生成AIを使えるようご準備ください(例:ChatGPTのアカウントを作っておく、Edgeをインストールしておく等)。
  • 当日はパソコンを使いますので、ご自身でお持ちいただくPCか会場の貸出しPCをお使いください。貸出しPCを使う場合は、ECCSクラウドメールにログインできるようにしておいてください。
  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

第7回 模擬国連ワークショップ(2023年9月21日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。  この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月より定期的に開催しており、今回が7回目の開催となります。

1.日時

2023年9月21日(木)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします)

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員50名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 時間や受講者の既有知識によって模擬国連の方法を使い分けられるようになる (セッション1に相当) ・ 他のロールプレイの教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション2に相当) ・ 他のロールプレイの実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~15:25 セッション1「模擬国連導入事例」 15:35~16:50 セッション2「模擬裁判を用いた国際法教育」 16:50~17:00 まとめ 【参考:過去のワークショップ当日の様子】 第1回(2020年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws1/ 第2回(2020年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws2/ 第3回(2021年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws3/ 第4回(2022年3月18日)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws4/ 第5回(2022年9月9日)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws5/ 第6回(2023年3月24日)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws6/

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任講師) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は国際政治学を専門とする教員として模擬国連を授業に導入している立場からお話します 平野実晴(立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部助教) 国際法学を専門とする教員として模擬裁判を授業に導入している立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/JDEPEb1VTiaNcqYu5

お問合せ先

教養教育高度化機構 EX部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

雑誌『生物の科学 遺伝』に紹介されました|🧬🐟🌳🐝身近な生命科学実習

カテゴリー: 開講科目

第6回模擬国連ワークショップ(2023年3月24日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2023年3月24日(金)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:37名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任助教)セッション1・2 ■ 生田祐子(文教大学国際学部教授)セッション2

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③模擬国連を英語で実施する場合の留意点を説明できるようになる (セッション2に相当) ④時間や受講者の既有知識によって模擬国連の方法を使い分けられるようになる(セッション1, 2に相当) (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」(14:10~15:20) 模擬国連の概要と東京大学教養学部の授業への導入例について授業担当教員の中村からお話しました。模擬国連を導入する目的(中村の授業の場合は、国際関係論の知識を使いこなせるようになることや、利害や価値観が異なる人々と合意を形成できるようになること)を明確化する必要があり、模擬国連はあくまでも手段であるという点を再確認する機会となりました。

セッション1の様子

【3】セッション2「英語での模擬国連導入事例から学ぶ」(15:40~16:50) セッション1で確認したように、模擬国連はあくまでも手段です。授業の目的によって様々な模擬国連の進め方があり得ます。そこで、生田祐子先生から、英語で模擬国連を実施する場合の留意点について具体例とともにご紹介いただきました。言語(英語)教育をご専門に研究されている立場から、国際社会における言語観を踏まえ、「リンガフランカとしての英語」を模擬国連を通して学ぶことを意識しているとお話になったのが印象的でした。セッション1で紹介した中村の授業とはまた異なる目的を明確に持っていらっしゃる生田先生の授業事例をご紹介いただいたことで、各人の導入目的や環境に合った「Taylor-madeの模擬国連」を目指そうという本ワークショップの趣旨が一層クリアになったように思われます。

セッション2の様子

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • 模擬国連について再発見するところがありました。模擬国連での発言やポリシーペーパー、決議案では、本日のお話を拝聴して、logos(論理)、 pathos(情熱)も大切ですが、もしかしたらethos(信頼)が大切なのかなと思いました。ありがとうございました。
  • 教育現場で実践されている「学び合い」の基本姿勢と親和性があり、高校での実現可能性が高いと感じられた。
  • 私の経験では、従来の模擬国連は何より「会議」中心で、中村先生が話した会議前・会議後がそれほど重視されていません。私はそれが教育ツールとしての模擬国連のポテンシャルを限られたものにしてしまうと思いますから、会議前・会議後に積極的に重点を置くことが素晴らしいと思います。
  • 自身の専門が英語ですので、自身の授業改善にも大変参考になりました。生徒への動機付けにも大変役に立ちます。
  • 模擬国連を英語の授業で試してみたいというときにワークショップを受講でき、有意義でした。

4.次回予告

2023年度も引き続き定期的(9月・3月予定)に開催していければと考えています。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「オープン教材」をつくろう!:学生による教材の公開(2022年度Aセメスター)

はじめに

2021年度に引き続いて、2022年度Aセメスターも開講しました。 授業では、全部で6グループ(うち2グループは一人ずつ)がオープンエデュケーションに関する教材を作成しました。そのうち、公開を希望するグループの教材をここで公開することになりました。 1月中旬に授業が終了した後、教材の著作権や内容について授業担当教員等で確認し、必要な場合は学生たちが修正しました。これらを経て、最終版の教材を公開します。 授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

教材① Open Education for Everyone

中村莉久さんが作成した教材『Open Education for Everyone 〜「誰もが」学ぶ新しい教育』です。オープンエデュケーションの定義や事例といった基本的な内容がまとめられています。 中村さんからは、授業や教材づくりについて次の感想が届いています。
オープンエデュケーションという取り組みについて時に話し合いなどを介して、様々な視点から学ぶことができた。また教材づくりでは、どうまとめるかを考えながら知識の伝え方を学ぶことができた。
教材は下記リンクよりご覧ください。 教材はこちらから。

教材② それOERっぽくね?

Yさん、AGさん、福井雄真さん、たつきさんという4人によるグループが作成した教材『それOERっぽくね?』です。Open Educational Resourcesの定義を踏まえた上で、自分たちなりに観点を設けてウェブ上のサービスを評価するという教材です。 グループの皆さんからは、次の感想が届いています。
法的概念の理解が必要だと感じた。理解の一助になれば幸いです。(Y)
アクティブラーニングの取り入れられたこの授業では、一般的な教室とは空間から異なる場所で、他の学生との意見交換も頻繁に行いながら学習が進み、楽しんで受講できました。作成した教材は短いスライドで簡潔にまとめることが意識されているので、OERを初めて学ぶ方に役立てていただければと思います。(AG)
OERについて予備知識の無いところから受講を開始し、チームの方々や他の受講者の方、そして担当頂いた先生のご助力のおかげで公開することができました。お礼申し上げます。授業を通じては、OER”的”なものは身近に既に存在している一方、OERの定義や存在意義を十分に満たすものは中々見つかりづらいという点に驚きました。学習者の皆様とも、この教材を通じて私の驚きを共有できれば幸いです。(福井雄真)
統一感のあるデザインをこころがけました。オープン教材は身近なところに転がっているが、その度合いはさまざまであることがわかりました。(たつき)
教材は下記リンクよりご覧ください。 教材はこちらから。

おわりに

教材をご覧いただき、ありがとうございました。また、いかがでしたでしょうか? これらの教材は、授業で理解した内容を学生なりにまとめたものです。学術的な定義を扱いつつも、独自の視点でまとめ直しています。異なる解釈がある点や、別のまとめ方ができる点もあるかと思います。いずれの教材も、CCライセンスを明記しており、その範囲内でご利用いただけます。OER(Open Educational Resources)では、教材の改善が行われますし、それにより教育改善が促される可能性があります。ここで公開している教材についても、教材の改善や教育改善に資することができれば良いなと考えています。

お問い合わせ

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 中澤明子

「国際紛争ケースブックをつくろう」教員・SA・受講生インタビュー【2】

【1】の続きです。

4.元受講生がSAを務める意義と留意点

中澤 ありがとうございます。では、そういった八尾さんのような、受講生だった学生が翌年度以降にSAを担当することの意義についてもお伺いしたいなと思うのですけれども、まず中村先生からお願いします。 中村 今八尾さんの一連のお話を聞いていても改めて思ったのですが、元受講生だからこそ、学生がつまずきやすいところに気付きやすいのだろうなと思います。もちろん、僕も気を付けてグループワークを見ているつもりなのですけれども、年々自分が学生だったときの感覚が薄れていくということもあり、ケアしきれないところがどうしても出てきてしまいます。例えば、今年度も、もう自明のことだと思っていた文献の調べ方については割合軽く流してやっていたのですけれども、あるグループはそこの時点からちょっとつまずきかけていたところを八尾さんが素早く察知してくれるということがありました。そこで、僕と相談のうえで、こういう文献の調べ方がありますよと「SAからのお知らせ」という形で連絡してもらったりしました。そういったことができるのは、SAなのだけれども、学生だから学生目線も持っているがゆえですよね。それはもちろん元受講生じゃなくても、SAであれば言えることではあるのですけれども、自分自身が前の年とか前の前の年に受けていたということで、より学生のつまずきやすいところが分かるのではないかなと。 それから、八尾さんのような元受講生で今SAやっている方の姿を今の受講生が見て、自分もああいうふうな先輩になろうと頑張るという、ある種のロールモデルとしてほしいという思いもあります。 中澤 ありがとうございます。八尾さんは、受講生がSAになることについてどんな意義があると考えていますか。 八尾 ほとんど中村先生が言っていただいたことと同じなのですが、SAの立場からの利点を挙げれば、受講生の目線で見えていたこととSAの目線から見えることとは若干違っているので、そういった意味で常に新しい学びを得られるということがあります。受講生の立場からは、SAが全く違う分野の人や、その授業についてあまり詳しくない人である場合よりも履修経験のある人のほうが相談しやすいという利点があるのではないでしょうか。 中澤 ありがとうございます。今は受講生がSAをすることのメリットの面をお伺いしたのですけれども、ほかに何か困ったことや留意すべき点があったかどうかというのをまず八尾さんから教えてください。 八尾 困った点は特にありませんが、留意すべき点としては、自分に履修経験があるために、思い入れが強くなり過ぎるという部分があります。この授業はある程度学生の自律性を尊重する授業であり、あまりSAや先生が口出しをし過ぎるのは望ましくないので、その辺りのバランスを見極めるのは思い入れのある人ほど難しいことだと思います。 中澤 八尾さんはそのあたりは、どういった感じで判断されていたんですか。 八尾 先程のように、文献の調べ方が分からないといった基本的なところでつまずいていたら積極的にヘルプに入りましたが、それ以外のケースブックの内容に関するところは、結構受講生の皆さんの自律性にお任せするところが多かったと記憶しています。 中澤 ありがとうございます。今度は中村さん、何か困ったことや留意すべき点はありましたか。 中村 実はそれがなかなか僕のほうでは見つからなくて、今日ご本人の話を聞いてみて、次年度以降の改善につなげられたらと思っていたところです。なので、今おっしゃったことに引き付けて言うと、思い入れが強くなり過ぎてというところで、なるほどと思いました。SAをお願いする側の教員としては、SA業務とご自身の研究・学習とのバランスに配慮して、業務が過度の負担にならないように留意する必要がありそうですね。 中澤 ちなみに、「SAの八尾さんです」と受講生に紹介する時に、中村先生は「元受講生です」ということも付け加えているのですよね。 中村 はい、そういった紹介をしています。その意図としては、もちろん過度の負担にはならないようにという前提でですけれども、教員だけでなくSAさんにも積極的に質問したり、困っていることを相談したりしていいんだよという雰囲気を作りたいためです。また、先程いったように、ある種のロールモデルとして捉えてほしいということもあるので、「元受講者です」というのは積極的に紹介しています。 中澤 特に授業を支援する学生スタッフの研究ですと、教員が学生スタッフにロールモデルになってほしいと求めることが言及されているので、まさにその話だなと聞いていて思いました。 中村 なるほど、そういった研究があるのですね。面白いです。 中澤 そうなんです。思い入れが強くなるというのも、すごく分かるなと思いました。やはり元受講生には授業のゴールが見えているので、SAとして学生がやっているのを見ている時に、これがいい、悪いというのが判断しやすいと思うのです。そうすると、もっとこうすればいいのに…といったことがあったとしても、そこは授業の様子を見ながらSAとして適度な関わり方をするというのは確かに難しいのかもしれないなと聞いていて思いました。

5.学生が教材をつくる意義と留意点

中澤 では、最後に受講生自身が教材をつくるという授業の意義について聞ければと思います。まずは、中村先生、教員の観点からお願いします。 中村 教員のほうのねらいということでいくと、作っていく過程であれこれ調べたり考えたりすることになるし、記憶にも定着しやすいという点ですね。先程八尾さんも言ってくれましたけれども、授業外の時間をかなり使って調べてこないと授業中にグループワークができないので、自ずと勉強しますよね。そこは大きいかなと思います。ただし、受講生の負担は大きいので、そのあたりのケアがきちんとできないと、こういった授業の形式は嫌だと敬遠してしまう学生が多くなってしまうと思います。 中澤 その時に足場かけとして、先程八尾さんが初年度の時に中村先生がフォーマットを準備してくださっていたという、そういった足場かけが必要なのかなと思います。 中村 本当におっしゃるとおりで、セメスター前半を「改訂」の部、後半を「新規作成」としているのも、そういった意図があります。いきなり作るというところからいかないのは、いくら東大生といっても、いきなりケースブック作ってくださいと言われても、ハードルが高過ぎて心が折れちゃうかもしれないので、まずは既存のものに手を加えて良くしていくという、ちょっとジャンプすれば届くぐらいのゴール設定から始めています。まさしく足場かけですよね。 中澤 ありがとうございます。では、作ることで学ぶ授業の意義を今度は受講者・SAとしての観点で、八尾さん、いかがでしょうか。 八尾 中村先生がすでにおっしゃったように、自分で調べてケースブックにまとめるという作業をすることで、忘れにくい知識として蓄積されやすいのではないかと思います。ただし、この授業は全学自由研究ゼミナールと高度教養特殊演習との合併で、学部も学年もばらばらの学生が集まって何か一つのものを作るという授業なので、知識に差が出がちです。そこは授業外に視聴できる動画配信という形で中村先生が補ってくださいました。そういった意味で、適切な配慮があれば、とてもいい学びになるだろうというのが私の意見です。 中澤 ありがとうございます。では、今度は、受講生自身が教材をつくるという授業の注意すべき点について何か感じていることがあれば教えてください。八尾さん、いかがですか。 八尾 先程も申し上げましたが、やはり質の担保が難しいですね。例えば文献の調べ方が分からないといったところでつまずいてしまうと、その後がうまく立ち行かないので、適度に助け舟を出すことが必要だと思います。また、かなりのコミットメントが求められる授業なので、受講生の忙しさに左右されてしまうことは否めません。 中澤 ありがとうございます。中村先生はどうですか。 中村 学びを得るためには当然一定の労力を投じることは必要なのですけれども、この授業だけを学生たちは受けているわけでなくて、日本の場合は本当に1学期間に何コマも履修しなきゃいけないというのがあるので、そのあたりの配慮は教員として必要になりますよね。 中澤 学生の授業時間外の作業量をどのくらいにするかは難しいですよね。 中村 そうですね。グループ作業なので、受講生たちは授業外で予定を合わせて打ち合わせをしているのですけれども、日程を合わせるのがなかなか大変なようで、イマドキの学生は本当に忙しそうだなと思って見ています。 中澤 本当に忙しそうですよね。 中村 なので、あまりそういった部分でストレスにならないような配慮が教員の方で可能なようならば、してあげてもいいのかもしれないですね。 中澤 そうですね。先程の足場かけやそういった支援がこういったタイプの授業だと重要になるのかなということを、今日お話を聞いていて思いました。中村先生、八尾さん、本日はどうもありがとうございました。 中村・八尾 ありがとうございました。

「国際紛争ケースブックをつくろう」教員・SA・受講生インタビュー【1】

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「国際紛争ケースブックをつくろう」では、国際紛争に関するケースブック(教材)を学生自身がつくるというアクティブラーニングが導入されています。導入のねらいや授業の様子について、担当教員である中村長史先生と、元受講生でその後スチューデントアシスタント(SA)を務めた八尾佳凜さんに、お話を伺いました。 【インタビュー概要】 日時:2023年1月23日 話し手:中村長史(教養学部附属教養教育高度化機構)、八尾佳凜(教養学部4年生) 聞き手:中澤明子(教養学部附属教養教育高度化機構) 【インタビュー目次】 1.授業の概要と目的・到達目標 2.受講生の感想 3.SAの感想 4.元受講生がSAを務める意義と留意点 5.学生が教材をつくる意義と留意点

1.授業の概要と目的・到達目標

中澤 「国際紛争ケースブックをつくろう」とは、どういった授業なのでしょうか。 中村 この授業は、学生自身が国際紛争ケースブックというものを作成することによって国際紛争について学ぶという授業です。複数の国際紛争の経緯や構図、原因等について調査・分析し、最終的にケースブックを作成します。その過程で、ある国際紛争に対する見方は決して一様ではないことに気づき、できる限り客観的に紛争を捉えるための方法を習得することを期待しています。 国際紛争ケースブックというのはちょっと聞きなじみがないものだと思いますけれども、法学部における判例や医学部における症例がたくさん載っている教材の国際紛争版といえばイメージが沸きやすいでしょうか。ただ、この授業では、そうした教材を学生自身がグループで作成するところに特徴があります。作っていく過程で紛争についていろいろなことを調べたり考えたりするので、それが一番学びになるだろうということで、2020年度に全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習として初めて開講し、これまで3回開講してきました。 中澤 ケースブックを作った後は、どういうふうに活用するのでしょうか。 中村 活用法は大きく二つありまして、一つは自身が作成したケースブックや他のグループが作成したケースブックを他の授業での学習や卒論執筆の際に参照するというものです。 もう一つが、これはこの授業の大きな特徴かなと思いますけれども、次の年度のこの授業にケースブックを引き継いで、さらなる改善を次年度の受講生がやることになります。例えば、今日お越しの八尾さんは2020年度にボスニア紛争についてケースブックを作ってくださったのですけれども、それを2021年度の受講生のグループが改善をかけて、さらに2022年度も改善をかけてという形で―八尾さんはそれをSAとして今度は見守っていらっしゃったのですけれども―そういった形で学年を横断して引き継いでいきます。先輩が作ったもので学んで、さらにそれをより良くしていこうとするところが特徴かなと思います。 中澤 改善とは具体的にはどのようになされるのですか。情報が足されるとかでしょうか。 中村 大きくは二つありまして、一つはおっしゃるように情報が足されるということです。みんな頑張っていいものを作ってくれていますけれども、紛争の多くは複雑ですし、紛争に関する資料や書籍、論文は膨大にあるので、限られた期間内では調べきれないものです。実は他にも参考にすべき文献があるよということで、そうした文献に基づく情報を次の年度のグループが足してくれる例はよくみられます。 もう一つが、実は、情報を削るということです。みんな熱心に調べてくれて情報が盛りだくさんのケースブックが仕上がってくるのですけれども、ちょっとそれが難し過ぎて、その紛争のことをあまり知らない人が読むと何が何やらかえって分からなくなるみたいなことが起きがちです。ケースブックはあくまでも教材なので、これは成果物としては望ましくないものですから、先程とは逆に、情報を削ぎ落として整理するといった方向の改善をかけてくれるグループもあります。これも大事な改善だと思います。 中澤 面白いですね。各グループで作ったケースブックの評価は、教員だけではなく受講生相互にも行うのですか。 中村 大体いつも90分の授業の前半で、各グループ内でケースブック完成に向けたディスカッションをやるのですが、授業の後半ではグループ間のディスカッションをやります。大体毎学期4つとか5つのグループがあって異なる紛争を扱っているので、他のグループの人と意見交換をする時間を設けています。 ねらいとしては、まず自分達のグループが担当してない紛争についても多少なりとも知ることができるというのは、知識が増えるという意味で単純によいことかなと。それから、その紛争についてはあまり知らない人達からのコメントによって、自分達がやっていることは細かいことに走り過ぎていて大局的なところがつかみにくくなっているとか、先程言ったような改善のポイントに気付けることがあります。そういった効果を期待して、グループ間のディスカッションにも時間を割いているところです。

本授業の目的と到達目標

2.受講生の感想

中澤 授業やケースブックについてだいぶん分かってきました。では、2020年度に受講生だった八尾さんに当時のことをお伺いしたいなと思います。当時どういった気付きとか学びがあったかを教えてください。 八尾 紛争について調べるとき、レポート等ですと、この主体がどうこうして…といった結構細かいことに注意が向きがちだと思います。もちろん、紛争ケースブックでもそういったところは大事ですが、それだけでなく、紛争の構造的要因と直接的要因とを分けて考えたり、他の紛争とのつながりについても考えたりといったマクロな視点を得ることができるというのは紛争ケースブックのいいところですね。 他方で、授業までに参考文献から学んだことをまとめておくことが授業中のグループワークの前提とされるので、負担としては決して軽くないし、その辺りは覚悟の上で履修するべきだとも感じました。 中澤 2020年度ということは、この授業の初年度に受講されているのですね。先程の中村先生のお話に「引き継いで改善する」というのがありましたけれども、初年度だと引き継ぐものがないのかなと。新規作成の苦労や難しさはありましたか。 八尾 私の受講時は確かに初年度でしたが、元となるフォーマットは中村先生が既に作成してくださっていて、それを改訂するという形で進めました。そのため、完全にゼロの状態から始めたわけではなく、ケースブックをどういうふうに作ったらいいのか分からないということはありませんでした。 ただ、「ケースブックの改訂」を学期前半で済ませた後には「ケースブックの作成」という作業が始まります。改訂はプロトタイプがある分、どのくらいの分量で、どういった情報を盛り込むかということが分かりますが、新規作成は自分たちで最初から構成を考えなくてはならないので、やはり一味違った難しさがあるのではないかと思います。

本授業のスケジュール

3.SAの感想

中澤 その後、八尾さんは2021年度、2022年度とSAとして今度は授業に関わられたということですけれども、SAの立場としては何か気付いたことはありましたか。 八尾 実は「ケースブック改訂」について、年度を重ねていくごとに良いものができていくことを考えると、だんだん手を加えるのが難しくなってくるのではないかと懸念していました。しかしこれは杞憂で、どの年度でも鋭い観点からの追記や修正がなされていたことが非常に印象深かったです。 一方、この授業は全学自由研究ゼミナール(学部1・2年生)と高度教養特殊演習(学部3・4年生、大学院生)との合併なので、学年や学部による知識の差、それに起因する資料へのアクセス力という部分が、他の授業と比べて特に影響しやすいのかなとも感じました。 中澤 八尾さんは普段この授業でSAとしてどのようなサポートをされているのですか。 八尾 大きく分けて技術面のサポートと内容面のサポートの2つがあります。技術面では、発表の時にこういうものを用意してきてくださいといったような、連絡係のようなことをしていました。内容面に関しては、グループワークの巡回中に質問をお受けしたり、ケースブック提出前のグループでの発表に対してコメントや質問をさせていただいたりしました。 中澤 SAとしての八尾さん自身に何か学びはありましたか。 八尾 個別の紛争についての知識を深めるという意味での学びもありますが、それ以上に、「改訂」にせよ「作成」にせよ、学生の皆さんならではの新しい観点が毎年出てくるのが非常に面白いところだなと感じます。

【2】に続く

第6回 模擬国連ワークショップ(2023年3月24日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。  この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月より定期的に開催しており、今回が6回目の開催となります。

1.日時

2023年3月24日(金)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします)

3.対象

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員50名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる(セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる(セッション1に相当) ・ 模擬国連を英語で実施する場合の留意点を説明できるようになる(セッション2に相当) ・ 時間や受講者の既有知識によって模擬国連の方法を使い分けられるようになる(セッション1, 2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~15:25 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」 15:35~16:50 セッション2「英語での模擬国連導入事例から学ぶ」 16:50~17:00 まとめ 【参考:過去のワークショップ当日の様子】 第1回(2020年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws1/ 第2回(2020年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws2/ 第3回(2021年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws3/ 第4回(2022年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws4/ 第5回(2022年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws5/

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任助教) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は国際政治学を専門とする教員として模擬国連を授業に導入している立場からお話します 生田祐子(文教大学国際学部教授) 英語教育学を専門とし、英語での模擬国連実施に関わってきた立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/QxrSn1WBAXnn3NJ3A

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「ジグソー法を授業で活用する」(2023年3月17日開催)

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。 今回は、アクティブラーニングの手法の一つとしてよく知られるジグソー法を取り上げ、ジグソー法の基本的なやり方や効果、アクティブラーニング部門が開講した授業でのジグソー法導入の実例に関する情報提供をした後、ご自身の授業で活用することについて検討を行います。 授業をアクティブにされたい方、ジグシー法を取り入れてみたい方、すでに導入しているけれども効果を高めたい方といった幅広い皆様にご参加いただき、次セメスターの授業準備の参考にしていただければと思います。 ※本ワークショップでは、ジグソー法に焦点をあてており、ほかの手法については紹介しません。ほかの手法やアクティブラーニングのポイントについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2023年3月17日(金)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS 会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。 ※当日は、アルコールによる手指消毒、換気等の感染拡大予防対策を実施の上、開催いたします。なお、COVID-19の感染状況によってはオンラインでの開催に変更する可能性がございます。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付開始
  • 13:30〜13:50 開会挨拶、趣旨説明
  • 13:50〜14:00 参加者どうしの自己紹介
  • 14:00〜14:35 ジグソー法のミニレクチャ、体験
  • 14:35〜14:45 休憩
  • 14:45〜16:20 ジグソー法の体験、ミニレクチャ、授業での活用を考える
  • 16:20〜16:30 まとめ、閉会の挨拶
※参加者数などにより変更が生じる可能性がございます

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/Kq8PozGua9JwLMKw5

申込締切

3月5日(日)23:59締切

注意事項

  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影することがあります。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門    

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅱ」(2022年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅱ」(2022年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスターから毎期開講しており、今回は7期目の開講となりましたが、受講者は15名(1年生8名、2年生5名、3年生1名、4年生1名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合い、決議案の作成や投票を行ないます。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】 ③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

授業スケジュール ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。なお、今セメスターも、前セメスターに続き、全回ZOOMミーティングを用いたオンライン授業となりました。 模擬国連会議:シリア人道危機(第2回~第7回) 2010年代を通して続いているシリア人道危機についての国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(シリア政府擁護派)、フランス(シリア政府批判派)、ロシア(シリア政府擁護派)、英国(シリア政府批判派)、米国(シリア政府批判派)の5つの常任理事国に「中間派」の南アフリカを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を2・3人で担当しました。現実の会議と同様、拒否権が行使され、決議案は廃案となりました。 第7回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。 模擬国連会議:女性、平和、安全保障(第8回~第12回) 国連安全保障理事会では、シリアのような特定の事態のみならず、「テーマ別会合」と呼ばれる一般的な議題も扱われます。そこで、今セメスター後半は、この「テーマ別会合」の一つである「女性、平和、安全保障」のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(現実世界では棄権)、フランス(賛成)、ロシア(棄権)、英国(賛成)、米国(賛成)の5つの常任理事国にドイツ(賛成)、インドネシア(賛成)を加えた7ヶ国を設定し、1ヶ国を2・3人で担当しました。多様な文化・宗教・利害を持つ国々の間でリプロダクティブヘルス/ライツや、安保理で人権問題を話し合うことの是非等をめぐって議論・交渉が繰り広げられましたが、現実世界とは異なり、全会一致で決議案が採択される結果となりました。 第12回では、シリア人道危機の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。

4.受講者の感想

  • 西側と東側など、どうしても簡単な構図を思い描いてしまうが、実際はもっと多様な立場があり、一枚岩では無いことを学んだ。
  • 各国首脳の演説について今までは抽象的で曖昧な発言と思っていたが、リサーチをしてみると、その演説のなかにその国の方針や思惑が反映されていることを学んだ。
  • 全ての国が自国の利益を最大化しようとするとどうしても議論が平行線になってしまうことがあるということを学んだ。そのため、合意を形成するためにはお互いがボトムラインを基準に多少の妥協を行う必要があると感じた。
  • ただ国際関係や合意形成について学ぼうとするよりも、ある特定の国の大使の立場に立って会議に参加することで、より深くそれらを学ぶことができると感じたため学習効果はあると思う。Policy Paperも多様な価値観を意識しながら作成することができたので国際関係の理解に役立った。
  • ホワイトボードで行った振り返りに加えて会議後などの他国のPolicy Paperを参照できると、議題についての多面的な捉え方がより深まり学習効果がより大きかったかもしれない

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「国際紛争ケースブックをつくろう」(2022年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「国際紛争ケースブックをつくろう」(2022年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。2020年度以来開講しており今回が3度目の開講となりましたが、受講者は12名(1年生7名、2年生2名、3年生2名、4年生1名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:八尾佳凛(教養学部教養学科国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、複数の国際紛争の経緯や構図、原因等について調査し、最終的にケースブックを作成することを目指しました。その過程で、ある国際紛争に対する見方は決して一様ではないことに気づき、できる限り客観的に各紛争を捉えるための方法を習得することを期待しました。

2.授業の目的・到達目標

目的 本講義で学んだ国際紛争の経緯や構図、原因等に関する知識を使いこなして、国際紛争の発生や激化を防ぐ策を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際紛争に関する資料・文献を適切に収集できる【成果物で評価】 ②国際紛争の経緯を説明できる【成果物で評価】 ③国際紛争の構図を説明できる【成果物で評価】 ④国際紛争が発生・激化の原因を説明できる【成果物で評価】 ⑤国際紛争の発生・激化を防ぐ策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【成果物で評価】

3.授業の流れ

授業スケジュール ガイダンスーケースブックづくりから学べること(第1回) 国際紛争に関するケースブックをクラス全体でつくることで学べることを考えました。担当する紛争の5W1H、すなわち主体(who)、争点(why)、時期区分(when)、民族・宗教・政治体制・経済状況(where)、当事者・第三者の行動(what&how)について正確に理解するために複数の文献・資料にあたって丁寧に情報収集をするのはもちろんのこと、他の紛争を担当するクラスメイトとの意見交換を通じて、紛争間の関係性や前例が後例に与える影響についても学べることを確認しました。 ケースブックの改訂(第2回~第6回) いきなりケースブックをゼロから作ることは難しいので、まずは練習として、昨年度までの受講生が作成したケースブックの改訂から始めることにしました。ソマリア、ルワンダ、ボスニア、アフガニスタンの4つの紛争を扱うグループに分かれ、グループ内・グループ間のディスカッション、教員・TAからのフィードバックを繰り返し、ケースブックの改訂を進めていきました。第6回では、グループごとに、その最終成果を報告しました。なお、第2回では、紛争の原因について、理論的な知見を学びました。 ケースブックの作成(第7回~第12回) 改訂作業で学んだことを踏まえて、ケースブックをゼロから作る段階へと入っていきました。イラク、東ティモール、シリア、ミャンマーの4つの紛争を扱う2・3人のグループに分かれ、グループ内・グループ間のディスカッション、教員・TAからのフィードバックを繰り返し、その最終成果を第12回で報告しました。改訂作業の段階に比べて、事例(紛争)間の関係にも目を向けるグループが多くなるなど、確かな成長が感じられました。なお、第7回では、紛争の防止策(平和政策)について、理論的な知見を学びました。 まとめーケースブックづくりから学んだこと(第13回) 各自がケースブックづくりから学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降のケースブックの授業をよりよくしていくための方法を検討しました。

4.受講者の感想

  • 前後に起こった異なる紛争間の関係を学ぶことができて印象深かった。大局的な視点・細かい視点を両方持ち合わせてバランス感覚を持ってまとめることが重要だと感じた。個人的には時代背景であったり、前後の紛争とのつながりといった大きな視点でものを捉えるのが好きで、どちらかというと細かい点は見逃しがちであるため、自分の思考のくせを知ることができ大きな発見になったと思う。
  • 紛争を考えるとき、どんなに複雑な紛争を考える上でも、5W1Hに立ち返ることで整理することができることを学んだ。
  • 紛争の分析の手法(5W1H)を今後も活用できると感じました。
  • 担当した紛争について周囲の人に説明を行う上で具体例を挙げながら詳細に述べられるほど学べたので人生の経験としてためになった。
  • ミクロレベルから多面的に把握するために、今後は社会心理的な側面(憎悪の増長など)を勉強したい。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

SGDsを学べる授業をつくろう(2022年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」(2022年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は、受講生は7名(2年生2名、3年生3名、4年生2名)でした。 担当教員:中澤明子・中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

概要

持続可能な開発目標(SDGs)は、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継として2015年の国連総会で採択され、17の目標が定められています。MDGsが途上国の貧困削減や社会開発に焦点を当てていたのに対し、SDGsは世界中の国々の経済・社会・環境といったより広い問題を扱うものです。その広さゆえ総花的であるという批判もある一方、多くのアクターを巻き込めるという利点も指摘されています。 この授業では、このようなSDGsについて高校生が効果的に学べるオンライン授業を設計してみることで、SDGsについての自分自身の学びを深めることを目指します。

授業の目的・目標

この授業の目的は、SDGsについて高校生が効果的に学べるオンライン授業を設計してみることで、SDGsについての自分自身の学びを深めることでした。他者に教えることそのものや、オンライン授業を設計する過程での調査や議論は、本人にとって最も身につく学びとなります。また、この授業では「効果的に学べる」ためにアクティブラーニングという手法を用いたオンライン授業を設計することを目指しました。 授業の目標は、以下の6点でした。
  1. SDGsが作成された背景について説明することができる
  2. SDGsの意義について説明することができる
  3. SDGsの課題について説明することができる
  4. SDGsの17の目標について説明することができる
  5. 学習者の学びを深める授業の方法について説明できる
  6. SDGsについて学習者の学びを深める50分間のオンライン授業を設計することができる

授業の流れ

本授業は、大きく二つの内容から構成されています。

第1部:SDGsを学ぶ

第2回〜第4回の授業は、SDGs概説として、SDGsに関する講義と議論を行いました。 第2回授業では、SDGsの全体像を把握することを目的としました。まずSDGsの各目標とターゲットを確認しました。その後、各目標やターゲットの関係(結びつきの強弱)と理由を考えて個人で書き出し、それをグループで共有して関係性を話し合って示しました。さらに、関係性を参考にしながらSDGsの意義と課題について議論し、内容をクラス全体で共有しました。 第3回授業では、SDGsの17の目標間の関係を再考することを目的としました。17(も)の目標か定められた経緯を踏まえた上で、17の目標間にどのような関係性があるのかを複数の観点から示した図を引用しつつ、説明しました。また、17の目標間にシナジーやトレードオフがあるかどうかをグループで考えました。 第4回授業では、SDGsの特定の目標について理解することを目的に、目標1(貧困をなくそう)と目標10(人や国の不平等をなくそう)に焦点を当てました。貧困や不平等の現状をデータで確認した後、そうした事態を招いている原因や、対策としての開発援助のありかたについてグループで議論しました。  

第2部:SDGsを教える

第5回以降の授業では、高校生がSDGsについて学べる授業をつくりました。 第5回・第6回授業は、授業設計概説として、授業設計の理論や手順を説明しました。第5回では、授業づくりに必要な知識を確認した後、授業設計の手順の概要を説明しました。その後、ジグソー法を用いて授業設計手順の詳細を相互説明し、練習として「食堂の使い方を理解する授業」を考えました。第6回授業では、教え方に焦点を当て、学習意欲を高める方法やアクティブラーニングの技法について説明とディスカッションを行いました。 第7回・第8回授業からは、授業のデザインをグループごとに開始しました。授業づくりのワークシートに沿って、「高校生40名が、SDGsについて学べる50分間のオンライン授業」の授業案を考えました。 第9回の中間発表では、グループごとに作成した授業案を発表しました。また発表した内容に対して、「よりよい授業にするには」という観点から相互評価を行い、互いにコメントしました。中間発表後は、相互評価に基づきグループごとに改善点の確認と議論を行いました。 第10回・第11回では、中間発表に基づいた授業案の修正と、講義スライドづくりを行いました。最終発表では、最終的な授業案に加えて、50分間の授業を行う時に使う講義スライドや教材を発表します。そのため、授業案で考えた授業の流れや講義・活動を、講義スライドという形で具体化しました。 第12回では、最終発表を行いました。グループごとに最終的な授業案と講義スライドを提示して発表し相互評価しました。実際の授業は50分間ですが、最終発表では10分間で講義スライドを提示しながら受講生が授業の概要を発表しました。発表後には「よりよい授業にするには」という観点から相互評価を行いました。 第13回の授業では、授業のふり返りを行いました。前半は最終発表に対する相互評価の結果をグループごとに確認し最終発表について良かった点・改善点を話し合いました。授業の後半では、この授業の学習目標である、SDGsの背景・意義・課題についてグループに分かれて考えを整理しました。どのグループも授業全体を踏まえて議論・整理していました。その後、13回の授業を通した一人ひとりの学びを振り返る時間を設けました。具体的には、大福帳を開いて過去の自分の疑問などを確認しながら、授業を通じて何ができるようになったのかを学生一人ひとりが考え、その内容をペアで共有して授業を終えました。  

受講者の感想

第1回授業からの変化

第1回授業と第13回授業終了時とで、SDGsに対する考えや関心の変化、気付きがあったかどうかを尋ねたところ(回答者5名)、次の感想がありました(一部抜粋)。
  • SDGsを所与のものや最終ゴールとしてではなく、世界中の課題を解決するための通過点、今後時代に合わせて別の目標や方法に改善されうるものとして捉えるようになった。
  • SDGsのそれぞれの目標には関連性があることがわかった。
  • 授業前は、SDGsに対して「何となく良いもの」という印象を持っていたが、もちろん意義はある一方で、さまざまな課題点も孕むものであるということに気付かされた。
  • 少なくとも自分が発表で扱った目標に対する理解は深まり、SDGsに関する知識も初回よりは格段に身についたと思います。
  • ただの理想論だと思っていたが、政治的妥協やステークホルダーなどの具体的数値目標や活動などの地に足のついた活動であることが分かった。ただSDGsと口にしたり知識としてもつだけではなく、やはり自分も活動しないとなと感じた。
学生たちなりに、SDGsに対する考えに変化があり、また学習目標である意義と課題についての理解が深まったようです。

SDGsの理解に対する授業づくりの影響

授業づくりがSDGsへの理解を深めることに対して役立ったかどうかを聞いたところ次の感想が得られました。
  • 教えるためには自分が理解していなければならず、授業づくりの中で概論や具体例に触れ、SDGsへの理解が深まった。
  • 自分で理解していることを前提として授業を設計しなければならなかったので、自分でSDGsを理解することとSDGsに関する授業設計を行うことは全くの別作業であると思った。実際に自分の頭の中で体系的にSDGsのそれぞれの目標を整理できる授業設計演習はSDGsへの理解を深めることに大変役立った。
  • 50分の授業1つを設計するという特性上、扱えたのは1つの目標のみだった。そのため、授業で取り上げた目標に対する理解は深まったといえるが、SDGs全体の理解に寄与していたか、と言われると少し微妙な印象を受けた。ただ、時間的制約がある中では仕方のないことだと思うし、全体としてはとても有意義な時間だったと感じている。
  • 誰かに教えるためにはまずSDGsに関する知識を身につけ、生徒にも分かりやすいよう身につけた知識を噛み砕く必要があると感じ、実践しようと試みた。その結果、自分自身のSDGsへの理解も深まったと思う。
  • 授業内で使う具体例を調べる過程でより詳細な情報や周辺情報、自分がターゲットにした目標以外の目標との関係を知ることになった。さらに、分かりやすい授業にしようという中で、SDGsに関する知識が自分の中で一度整理されたこともよかったと思いました。
授業をつくる過程で、自分で調査をすることにより、SDGsに関する情報を得て理解を深めたという記述がありました。一方で、50分の授業をつくったため、授業の中で扱える量に限りがあり、SDGs全体の理解というよりは授業で取り上げた目標への理解が深まったという意見がありました。たしかに、50分の授業では扱える量が少ないため、設定する学習目標によっては一つの内容を深く掘り下げるにとどまってしまうかもしれません。この授業では、SDGsが作成された背景や意義と課題について説明できることが学習目標に含まれています。これらの学習目標と50分の授業づくりとの関連や、授業づくりの焦点の明確化には検討の余地があるかもしれません。 この授業の成果報告として「第3回 東大生がつくるSDGsの授業」を2022年9月に開催しました。1名の受講生がオンラインで実際に高校生に授業を行いました。開催報告はこちらからご覧いただけます。
 

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子・中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

未来の学びを考える【文献講読編】(2022年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える【文献購読編】」(2022年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は8名(2年生5名、3年生1名、4年生2名)でした。 担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

授業の概要

小学校から大学まで、教育・学習を取り巻く状況は日々変化しています。2000年以降、大学では「アクティブラーニング」や「国際化」などの取り組みが多く行われるようになりました。また初等中等教育(小学・中学・高等学校)でも、「アクティブラーニング」や「GIGAスクール構想」などの取り組みが行われています。それでは、未来の学びはどうなるのでしょうか。 この授業では、教育・学習に関する文献を読み、文献の内容や自身の経験(過去・現在)の意味を理解した上で、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について自分なりに考えます。考えた内容をレポートにまとめて提出します。

授業の目的・目標

目的は、本授業の目的は、文献の内容や自身の経験(過去・現在)の意味を理解した上で、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について自分なりに考えることです。 目標は以下の4点でした。
  1. 教育・学習に関する文献を読み内容を説明できる
  2. 自分の教育・学習経験を、文献の内容と関連づけて示せる
  3. 「未来の学び」について、クラスのメンバーと議論し、自分の意見を示せる
  4. 文献や自身の経験、学期を通じた議論を踏まえ、自分なりの未来(10年後を想定)の学びのあり方を示せる

授業の流れ

本授業は、大きく三つの内容・活動から構成されています。

1. 学習前の準備

教育・学習に関する文献を読む前の準備として、授業のガイダンス(初回)と「未来の学び」プレ議論(第2回)を行いました。 「未来の学び」プレ議論では、21世紀型スキルやキー・コンピテンシーなどの新しい能力についいてミニレクチャーをした後、「10年後の未来(の学校)では、①生徒は、何を身につける必要があるか?、②教師は、どんな役割を担うのか?、③地域・社会、家庭・保護者、学校・生徒との関係は?」について、ワールドカフェ形式で議論を行いました。議論の後、クラス全体で内容を共有しました。また、ディスカッションの問いを補完する内容として、OECD Learning Compass 2030の内容を紹介しました。

2. 文献講読と「未来の学び」議論

第3回〜第9回の授業では、未来の学びを考える手がかりとなる情報を集めることを目的として、教育・学習の文献をジグソー法で講読し、未来の学びに関する問いについて議論を行いました。読んだ文献は次のものです。
  • 第3回:美馬のゆり・山内祐平(2005)「未来の学び」をデザインする:空間・活動・共同体. 東京大学出版会 の一部
  • 第4回:A.コリンズ・R. ハルバーソン 著、稲垣忠 編訳(2020)デジタル社会の学びのかたち Ver.2. 北大路書房 の一部
  • 第5回:溝上慎一(2018)学習とパーソナリティー「あの子はおとなしいけど成績はいんですよね!」をどう見るか. 東信堂、溝上慎一(2020)社会に生きる個性:自己と他者・拡張的パーソナリティー・エージェンシー. 東信堂、松下佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター(2015)ディープ・アクティブラーニング:大学授業を深化させるために. 勁草書房 の一部
  • 第6回:奈須正裕(2021)個別最適な学びと協働的な学び. 東洋館出版社 の一部
  • 第7回:三宅なほみ・東京大学 CoREF・河合塾 編著(2016)協調学習とは:対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業. 北大路書房 の一部
  • 第8回:山内祐平 編(2010)デジタル教材の教育学. 東京大学出版会、重田勝介(2014)ネットで学ぶ世界の大学MOOC入門. 実業之日本社、ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ 著、上原裕美子 訳、山内祐平・大浦弘樹 監修(2014)反転授業:基本を宿題で学んでから、授業で追う応力を身につける. オデッセイコミュニケーションズ の一部
  • 第9回:脇本健弘・町支大祐 著、中原淳 監修(2015)教師の学びを科学する:データから見える若手の育成と熟達のモデル. 北大路書房、千々布敏弥(2021)先生たちのリフレクション:主体的・対話的で深い学びに近づく、たった一つの習慣. 教育開発研究所、奈須正裕(2021)個別最適な学びと協働的な学び. 東洋館出版社 の一部
各回で読む資料を三種類用意し、担当資料を決めて読みました。読んだ後、資料ごとにグループを作りエキスパート活動を行いました。その後、ジグソーグループを組んでジグソー活動を行いました。第3回以降の授業は対面授業で行ったため、ジグソー活動での議論の内容をホワイトボードに記入し、それをクラス全体に共有・発表してもらいました。

3. 「未来の学び」を考える

第10回以降の授業では、これまでの自身の経験や文献・議論の内容を踏まえて一人ひとりが「未来の学び」に関する自分の考えを深めていきました。 まず、第10回の授業では、自身の教育・学習に関する経験を、ブロックを使って可視化して相互に説明した後、それまでの授業で扱った文献の内容との関連づけを行いました。文献に出てきたキーワードやトピックをカードにし、ブロックの作品の学びに置くことで関連づけを行いました。この詳細については、こちらのページをご覧ください。 第11回、第12回の授業は、ワールドカフェ風のグループディスカッションを行いました。一人ひとりが、他の人たちに意見をもらいたい問いを提示し、それについてグループメンバーを変えながら複数回の議論を行いました。 この授業の最終的な学習成果物は、全授業終了後に提出してもらうレポートでした。第13回の授業は、最終成果物に向けた状況共有として、その時点で考えている未来の学びを各自が発表し、相互にコメントしあいました。その後、13回の授業全体のふり返りとして、各自が大福帳を見直し、「自分が授業内容に対して何を感じたのか」、「どんな疑問・質問を持っていたのか」、「その疑問・質問は解消されたのか」、「13回の授業を通じて、自分は何ができるようになったのか」を一人ひとりが考え、内容をペアで共有して、授業を終えました。

受講者の感想

最終授業後にアンケートに回答してもらいました(回答者 8名)。 「第3回〜第9回のジグソー法での文献講読は、教育・学習に関するトピックや内容の理解に役立った」(とてもあてはまる〜全くあてはまらないの5件法で回答)については、「とてもあてはまる」5名、「あてはまる」3名でした。また、「授業を受ける前と比べて、教育・学習への興味関心が高まった」という質問については「とてもあてはまる」5名、「あてはまる」3名でした。これらの結果から、授業により内容の理解が深まったことに加え、興味関心が高まったことが窺えます。 一方、「第11回、第12回のワールドカフェ風ディスカッションは、自身の未来の学びを考えるのに役立った」については、「とてもあてはまる」6名、「あてはまる」2名でした。加えてワールドカフェ風ディスカッションへの感想を自由記述で聞いたところ、「回によって新しい視点や議題が登るため、おもしろい。(原文ママ)」、「たくさんの意見を短時間で効率よく収集できること」、「一つの問いに対しても、各セッションにおける他の議論を活かすことができたのが良かった。」、「学生たちが各自異なるテーマを取り上げていたので、自分が普段重きを置かなかったテーマに関しても改めて考えを深めるきっかけとなりました。」といった肯定的なものがあった一方、「ホストの人同士はお互いの考えを聞けない。」、「表面的な乾燥に終わってしまうことも想定される(原文ママ)」、「自分と同じタイミングで司会をやる人の意見が聞けなかったり、別グループの人とのディスカッションができなかったりと、文字通り全員の意見が聞けなかったのが少々物足りなかったです。」といった改善点が挙げられました。特に今回の授業では、受講者が8名と少人数だったため、ワールドカフェ風ディスカッションの利点を最大限に活かすことができませんでした。次に実施する際は、セッション数を増やしたり時間を長くとる等の改善を行いたいと考えています。

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業をアクティブにするためのふり返り」【開催報告】

カテゴリー: イベント

2022年9月14日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、駒場アクティブラーニングワークショップ「授業をアクティブにするためのふり返り」を開催しました。当日は、5名の方にご参加いただきました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

アクティブラーニング部門では、昨年度末に「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」をウェブサイトで公開しました。今回のワークショップでは、授業デザイン確認シートに基づいて、アクティブラーニングの観点から授業づくりの方法やポイントを確認します。また、これまで行った授業あるいはこれから行う授業のデザインを、アクティブラーニングの観点からふり返り、参加者どうしで共有し授業をアクティブにするための検討やより良い授業にするための意見交換を行うことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者どうしで自己紹介を行いました。自己紹介では、ワークショップで知りたいことや興味があること、達成したい目標を共有いただきました。 次に、授業づくりのステップを確認しました。学習目標の立て方や、あわせて評価方法も決めること、その後に教え方を検討するという流れを確認しました。その後、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」の「授業をつくる前」に参加者自身の授業のデザインについて記入しました。 休憩を挟んだ後、アクティブラーニングの定義についてミニレクチャを行いました。また、アクティブラーニングの手法として知っているものを書き出したり、授業をアクティブにするための工夫やうまくいったと感じた取り組みを共有していただきました。その後、アクティブラーニングのためのポイントや授業構成の仕方のミニレクチャを行いました。それを踏まえて、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」の「授業をつくりながら」に参加者一人ひとりが検討した内容を記入しました。それから、記入した「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」をグループに分かれて共有し、チャックの観点に基づいて互いにコメントしました。 グループでのワーク後は、ワークショップ全体をふり返り、ワークショップで感じたこと(新しく知ったこと、印象的だったこと、もっと知りたいと思ったこと、疑問・質問)を書き出しました。最後に閉会の挨拶を行ってワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

当日は、参加者5名と少人数ではありましたが、グループでの議論の時間を多くとり意見交換を十分におこなっていただけたように思います。また、ワークショップ後のアンケートでは、「本ワークショップで扱った内容をご自身の授業に活用できると思いますか」、「本ワークショップによって、今後の授業をアクティブにできそうですか」という質問に対して参加者全員が「とてもそう思う」と回答くださいました。加えて、本ワークショップで学んだことをどのように活用しようと考えているかという質問について、学生が一人で考える時間をもう少し与えたいや、小テストやワークをGoogleドキュメントに書き込むといった具体的な回答がありました。 また、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」の改善点も挙げられましたので、今後はシートを改善し第2版を公開したいと考えています。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

はじめての「大福帳」

これまで、アクティブラーニング部門のウェブサイトなどで「大福帳」についてご紹介してきました(オンライン授業で大福帳を使うオンライン授業で大福帳を使う:運用のふり返りと改善)。

今回は、2022年度Sセメスターにアクティブラーニング部門で開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」で、初めて「大福帳」を使った中村長史先生(アクティブラーニング部門 特任助教)に「大福帳」のメリットなどをお伺いしました。

「大福帳」を使ったメリット

中澤 大福帳を使ってみて感じたメリットはありますか?

中村 メリットとしては2つあるかなと思っています。1つ目は学生に対して“見守ってるよ感”を出すのはメリットかなと思ったんですよね。僕たちのやってた授業って、そんなに人数も多くなかったですし、かなりアクティブラーニングの授業で、もちろん授業中もかなりコミュニケーションを学生と取れてたと思うんです。けれども、次の授業までの間にもコミュニケーションを取る機会があるっていうのは、すごく良かったんじゃないかなと。学生からしてもきっと“見守られてる感”みたいなのがあって良かったんじゃないかなと思ってます。

もう1つは、学生にとっても僕たち教員にとっても、授業で学んだことを振り返って可視化する機会になることです。これは、僕が想像してた以上に大きいんだなと思っていて。アクティブラーニング型の授業だから、そういう機会をわざわざ明示的に設けなくても大丈夫だろうという気持ちがどこかにあったんですけれども、実際やってみると、―まあ学生がどう感じているかは学生に聞かないと分からないですけども―僕自身が、自分が授業でやったことについてのフィードバックをある種もらうわけなので。それを基に、じゃあ次の授業こういうふうにしようって、すぐに反映できるという意味で良かったなと思ってます。学期末のアンケートも活かすようにしてるつもりなんですけど、それを活かせるのは次の年なので。すぐにフィードバックがある、活かせる機会があるという意味で良かったのかなと思ってますね。

中澤 これまで、他の授業ではコメントペーパーやミニッツペーパーを使用されたことはないんですか?

中村 毎週課題を出して、課題に対してコメントすることはあるんですけども、学生が授業を受けた感想についてコミュニケーションを取るってことはなかったんですよね。それをできたのが、2つ目のメリットですよね。1つ目の“見守ってるよ感”は、課題にフィードバックをしてたら感じられるんでしょうけれども。実は、自分が学生の時にミニッツペーパーを書いたことがあるんですが、その時にフィードバックを特に先生がなさらなかったんで、毎回ただ書かされてるだけと感じたんです。「めんどくさいな、またこの時間に書くんでしょ」と、惰性でやってたのが頭にあったので、自分が教員になってからも敬遠してたんです。今回、中澤先生と一緒にやる授業の中で導入してみて、効果を確かめられたということです。学生が本音を書いてるかどうかは分かんないですけど、彼ら彼女らの感想っていうものが出てきて、それについてこっちもフィードバックする過程で考えられるっていうのは良かったなって思ったってことですね。

中澤 ミニッツペーパーは、出席代わりで出させてるっていう先生が多いですよね。確かに、学生のメリットっていう点だと少ない感じはしますね。

「大福帳」のデメリットや運用の工夫

中澤 逆に、デメリットとか、改善点は何か感じられましたか?

多人数への対応

中村 人数が多いと大変だなと思いました。他にもいろんな授業とか業務がある中で、どこまでそこに時間を割けるかっていうのは、人数が増えた時にはちょっと分からないなと思ってて。これまでにもずっとやってこられて人数が多い時もあったと思うので、何か工夫されてることとかがあれば逆に教えてほしいですね。

中澤 そうですね。大福帳は先行研究でも色々なことが言われていて。人数が多い場合とかだと「見ました」というスタンプを押すとか。コメントは書かなくても、さきほどの“見守ってるよ感”を出す簡易的な方法を取るのは一つの手だっていうのはありますね。人数が多い場合はそういうものでもいいのかなと思いますね。あとはコメントをする人数をあらかじめ決めておくとか。

中村 ああ、なるほど。

中澤 たとえば、100人学生がいたら毎回20人ずつコメントを書き、他の学生はスタンプにするのも一つの手かなと思いますし。あるいは、質問にはコメントを書いて、感想だけの場合はスタンプでというやり方もあるのかなと思いましたね。

中村 ありがとうございます。今そのお話聞いてて、僕が最初に挙げた2つのメリットってのは、どっちも活かせるなと思って。スタンプであっても見てることには変わりはないので、“見守ってるよ感“っていうのは感じてもらえると思いますし。それから、教員が詳細にコメントするしないにかかわらず、学生が書くこと自体には変わりがないので、学生自身の振り返り、イメージ的に可視化できることにはなりますし。コメントしないにしても読むことには変わりはないので、教員にとっての振り返りや授業改善に活かすこともできるので。そういう意味では、人数が多い場合は無理に全員にコメントバックしようとせずに、おっしゃったようなやり方でやっても、同様の効果を得られるのかなと思いました。

学生からのコメントや質問を共有する

中村 あと今思い出したのは、一つ自分なりに工夫したことがあって。学生から出てきたコメントや質問でいいなと思ったものを、次の授業の冒頭で紹介するようにしていて。そうすると取り上げられてうれしいって気持ちも、もしかしたらあるかもしれないし。あと同じクラスメイトから出てきたもので、「あ、こんなこと考えてる人もいるんだ」みたいなことで他の学生の刺激にもなると思ったので。それは、自分なりに工夫をしてみたつもりですね。そうしないと何か学生から、何か毎回書かされて、書けって言われるから書くみたいな、なんかちょっとそういう、義務だから書くみたいなになっちゃうともったいないなと思ったので、そういう仕掛けをしてみたつもりです。

中澤 そうですね。私は、学生が大福帳に書いた質問のうち、これは全員に共有しておいたほうがいい質問だなっていう場合は授業で紹介しますね。ただ、授業で紹介できるのって時間の都合で1つだけだったりとかするので、Googleスプレッドシートに質問とそれに対する回答を書き出して、それを共有するっていうふうにもしてますね。

中村 あ、なるほど。

中澤 他の人から出てきた質問で皆さんにも知ってもらいたいことはここに載ってるので見てくださいと案内をします。どの程度見ているかは分からないですけど、スプレッドシートに質問と回答が蓄積されているということですね。

中村 それはすごくいいですよね。次の年に授業をする際にも、去年どんな反応があったかなって見る時も、そうやって整理されてるといいので。確かにそれはちょっと僕もやってみようかなと思います。

中澤 そうですね。あと、そういったことができるのはオンラインでの大福帳だからだと思っていて。これが紙の、―対面だと昔は紙でやってたんですけど―そうするとなかなか手書きでコメントを書くのも大変なので。学生も大変だと思うんですけど。

中村 回収も大変ですもんね、大人数だと。それ用のTAさんがいたりとかね。

中澤 そうそうそう。授業時間中に大福帳を書く時間を取らなくちゃいけなかったりするので。オンライン大福帳というのも、それ自体がメリットかなと思いますね。

あらゆる授業で活用できる

中澤 どのような授業で活用できそうというアイデアはありますか?

中村 そうですね。導入する前の僕の感覚としては、大人数の、ちょっと工夫してても一方向にどうしてもなりがちな授業で導入するといいんじゃないか、もう何ならそれだけで導入しとけばいいんじゃないのって思ってたんです。それ以外のいわゆるアクティブラーニング型の授業の場合は、それをするまでもなく学生とコミュニケーションを取ったりする機会もあるし、と思ってたんですけど。今回、少人数のアクティブラーニング型の授業で導入してみてとても効果を実感できたので、今となってはどの授業でも導入するといいのではないかなと思いますね。どの授業で導入する必要性も高いんじゃないかなと思ってます。気になってたのは、人数が多いとちょっと先生が大変っていう問題ですけど。それも工夫次第で乗り越えられる、同様の効果を得られるってことも分かったので。そういう意味で、今となってはすっかり大福教、大福教? 大福帳。大福教とか言っちゃった(笑)。大福帳信者になってしまったかもしれない。

中澤 ミニッツペーパーだとやっぱり1回限りで終わっちゃうのは悲しいなって、すごく私は思っていて。13回分が載ってるっていうのは、こちらにとっても学生にとってもいいし。やはりそれが大福帳のメリットなのかなっていうのは思いますね。

中村 そうですよね。逆に言うと、ミニッツペーパーでも問題ないですよってなる場合は、その先生の授業をちゃんと構造化できてますかみたいなことがあるのかなって、今伺ってて思ったんですよね。ある程度構造化されてると、学生の反応がその回によってどうなるのかっていうのが気になるわけなので。ぶつ切りだと、困るっていうところがありますから。そういう意味でも、自分の授業がちゃんと構造化されてるのかしらっていう判断する一つの材料かもしれないです。

中澤 確かに、13回の大きな流れでの授業づくりがどうなってるかっていう、点検にもなりますね。

中村 そうですよね。

中澤 今回の授業では、最終回の授業で大福帳を読み返してみましょうという時間をつくって、学生に授業自体の振り返りをしてもらったんですけど。なかなかミニッツペーパーだとそれが難しいかなっていうことがありますよね。Googleフォームで毎回コメントを出してもらって、それを何らかの形で見てもらうとかは、もしかしたらできるかもしれないけですが。大福帳はプライベート感があるというのも、私は個人的にはいいかなと思いますね。

中村 そうですね。連絡帳みたいな感じがあっていいかもしれないですね。

中澤 そうですね、交換日記みたいな感じで。

中村 交換日記みたいな、そうそう。

中澤 あと何か補足などありますか?

中村 そうですね。これを読んでる先生も、大福帳は自分の授業では関係ないかなと思ってる人も、1回ちょっとだまされたと思って。そんなに手間は思ったほどはかからないので、やってみるといいんではないでしょうかというのが、1回初めてやってみた僕からのメッセージです。

中澤 そうですね、私はもう大福帳信者で、どんな授業でも基本使ってしまっているので、新しい視点から話を聞けて良かったです。ありがとうございます。

中村 ありがとうございました。

同期型ハイブリッド授業でのアクティブラーニング:初年次ゼミナール文科 岡田晃枝先生インタビュー(2)

SセメスターにKALSで同期型ハイブリッド授業を実施されていた岡田晃枝先生(大学院総合文化研究科 准教授)に、授業の様子や授業運営のポイントをお伺いしたインタビューのつづきです。一つ目の記事は、こちらからどうぞ。

授業運営の様子やポイント

対面授業と変わらない運営を心がける

中澤 ファシリテーションはどうでしたか?

岡田 ハイブリッドになったことで大きく変えるということはしませんでした。その日だけ変えると、オンライン参加の子たちが「自分のせいで」と萎縮してしまったり、教室で受けてる子たちが、自分がハイブリッドをお願いしたらこんなふうに授業の構成変わるんだと思うと不安になるかなと。ですからあえて変えないようにして、いつも通りの授業を行えるようにと考えました。私の場合は、全体に対して私とTAからのワンポイントアドバイスと、学生どうしのグループディスカッションを交互に行うというのがルーティンの形です。授業の回によって構成が違うといったことはなくて、毎回ほぼ同じ流れなので、同期型ハイブリッド授業があるかないかで授業回を入れ替えるような必要はなくて、その点では楽でした。もしかしたら講義型の授業で、グループディスカッションを取り入れる回と取り入れない回があるような場合は、オンライン参加の子がいるかどうかで構成を変える必要が出てくるのかもしれないですね。手間やトラブルのリスクを考えると、オンライン参加の子がいる時にはグループディスカッションを入れずに講義だけにしたいと思われる先生もいらっしゃると思うので、そうなると13回全体の流れが、オンライン参加の子がいるかいないかで変わってきますよね。コロナ欠席の学生が出るかどうかは授業直前にならないとわからないことが多いから、それだと大変だろうなと思いますし、授業全体の構成という面から見ると好ましい状況ではないですよね。

そう考えると、今後もハイブリッドでの対応が継続的に必要になるのであれば、いつどの回でハイブリッドが入っても大丈夫なように備えておくことが必要になるかもしれないですね。でもその結果、全部が講義型の、受動的な学びの授業ばかりになるのは学部教育全体から考えて良いことではないと思います。

中澤 対面だとグループディスカッションの様子を見に行ったりされると思うんですけれども、同期型ハイブリッド授業の場合は、どのようにされていましたか?

岡田 教卓に自分のパソコンとKALSのパソコンを用意して、KALSのパソコンでブレイクアウトルームに入っていました。ブレイクアウトのほうに入るパソコンと、全体を見るパソコンの2台を置いていたということです。

教室の中のグループは観察していれば声や学生たちの行動で介入が必要かどうかわかりやすいですよね。先ほど言ったようにオンライン参加の学生がいるグループのテーブルをウェイティングルームにセットしていたので、そのグループの声は教室内にいると聞こえません。だから教室全体を見回しながら、ブレイクアウトルームに入っているほうのパソコンで時折小さい音声でウェイティングルームのグループの状況を確認していました。ただ、隔てているのがガラスなので視覚的な観察はできますし、扉を半開きにしていたので教室内を机間巡視するついでにウェイティングルームのグループにも直接声を掛けられる状況でもあったので、それほど問題はなかったです。

別の教室で行った時は、オンライン参加の学生がいるグループのテーブルを、他のグループから少し話して教卓の近くにセットすることで、ディスカッション用のミーティングオウルのマイクで私の声も拾えるし、グループディスカッションの時にそのグループが使っているPCのモニターを教卓から確認できたので、教室が狭ければ狭いなりに、グループディスカッションと全体での講義の移り変わりをうまくやる工夫は可能でした。

中澤 グループディスカッションのモニタリングやフィードバックは普段教室で行ってるのと同じような感じでできたというところですか?

岡田 そうですね。グループのところに行ってできましたし、時々教卓のパソコンでモニタリングもできたので、そういった意味ではいつも以上に観察ができたように思います。

同期型ハイブリッド授業に求められること

中澤 同期型ハイブリッド授業の運営などについて、改善したほうがよいと感じていることはありますか?

TAの育成

岡田 実は、対面授業になったことによってTAたちは結構苦労している面があります。2020年度に全面オンライン授業が始まったときに、それまでと全く勝手が違うからTAたちは苦労しているだろうなと思って、初年次ゼミ文科の授業TAたちにどんなサポートが必要かを尋ねるアンケートをしたところ、なんとオンラインになってものすごく楽になりましたという回答が多かったんです。何が楽になったかというと、機器のセッティングでした。初年次ゼミ文科はプレゼンテーションが重要な授業ですので、毎回機材ボックスの鍵を開けてパソコンをつないで、モニターに出力できるようにして・・・とやっていても、とくに1号館なんかでは機材トラブルがけっこう発生していて何度もパソコンを操作し直したり接続し直したり、それでもトラブルが解決しないで時間を食ったあげくスライドなしで発表といったようなこともあったようです。機器に詳しいTAの方が少ないですから、自分が悪いのか持ち込んだパソコンが悪いのか、それとも教室の機械が故障しているのかわからなくて、非常勤講師控室に教室機材点検の依頼も出せないでそのままになってしまったという話も聞きました。さらに、せっかく先生のパソコンをつないで動作確認していても、学生が自分のパソコンをつないでほしいと言ってきて、接続しようとしたら特別な端子が必要で非常勤講師控室に走った、なんていう報告もありました。機材トラブルによる授業の中断というのは履修生にとって大きな損失なので、TAたちはそれをとても恐れていたけれど、対面授業の教室ではそれなりの頻度で生じていたんですね。それがZoomでの画面共有になったらなくなった、ほんとに楽だと言ってきたんです。

中澤 そうなんですね。

岡田 今回対面授業になったことによって、それが復活しただけではなく、ハイブリッドになったらさらに別の機材も接続しなくちゃいけなくなるんですよね。そういった意味で、TAたちの苦労は計り知れない。授業内容と研究の専門性から先生たちはTAを選んでいるので、文系の院生だととくにそれと機器関連の知識・経験とが一致しないことが多くて、授業形態の多様化はTAたちには負担になります。それに備えて学術的な専門性だけでなく臨機応変な機器対応もできるようにTA全体の底上げをすることが適切なのか、あるいは複雑な機器対応の部分だけ切り取って別の人をあてがうのが適切なのか。もちろん大学・学部のほうでもそれを認識してくれていて、業者さんに加えて特定の機器専門のTAも学内に待機するようになってはいます。授業を受けながらその授業での機材関連のサポートをしてくれる学生に謝金を支払うクラスサポーターという制度もできていて、それも面白い人材の利用の仕方だと思いますが、そういう下支えをする人たちをどう育てていくかですよね。特定の人だけができるようになるのではなくて、できるだけ多くの学生たち、院生たちが何かあった時にすぐに機器の接続を確認して直したり、授業で使える便利なツールを機器が苦手な先生に提示できるようになるのがいいのだとはと思うんですが、それは一体どの組織や部署の役割なのか、どの範囲を対象にするのか、ですね。

それに関連して、授業の中でミーティングオウルを使って接続をしてると、他の授業で使ったっていう子もいましたが、初めて見る子もいて、声を出したらカメラが回るというのにものすごく興味を示して自分も試させてくれと言ってくる子もいました。ミーティングオウルだけでなく、授業でどんどんいろんなツールを取り上げて、学生たちに使う機会をあげるとか、その仕組みを知る機会をあげることが、長い目で見るとそういった人材を育成することにつながるのかなという気もしています。

グループへの介入の程度を同じにする

中澤 TAの仕事ですけれども、グループディスカッションのファシリテーションや介入は、ハイブリッドになったから変わったっていうところはなさそうでしょうか?

岡田 私の授業に関してはないですね。今学期実施した同期型ハイブリッド授業では、オンライン参加の学生が入ったグループはどの授業も1グループだけだったので。そこに近づいてTAや私がコメントをしたりすれば、カメラにも入りますしマイクも音を拾うので、オンラインの子にもちゃんと反映されました。TAのミニ講義も、私の講義パートと同じくいつもどおりに行いました。

中澤 なるほど。

岡田 KALSでのハイブリッド授業では、オンライン参加の学生がいるグループはウェイティングルームに置き、対面参加の学生だけのグループはスタジオに配置した、と先ほどお話しました。私の授業のTAはとても優秀かつベテランなので、私がとくに指示をしなくても、スタジオ教室の中のグループだけでなくウェイティングルームのグループにも同じ回数、足を運んで、オンラインで接続している学生にもきちんと観察と声かけをしてくれました。でも慣れていないTAだと、もしかしたらスタジオ教室の一角にとどまってしまってウェイティングルームの子たちに目を配るのを忘れてしまうといったこともあるかもしれません。ハイブリッドのところにはこんなふうに関与して欲しいと教員から指示する必要があったかもしれません。

抵抗なく同期型ハイブリッド授業を行えるように

中澤 ほかには何かありますか?

岡田 KALSは環境が良過ぎます(笑)。KALSの環境を使ってスムーズなハイブリッド授業が行えたとしたら、それをどうやって通常の教室に落とし込んでいけるかというところ、そこの橋渡しが重要なのではないかなと思います。私が担当している初年次ゼミナール文科では、自分で研究計画を立てて少しずつ研究を進めて、それを授業に持ち寄ってお互いにコメントし合うのがとても重要な部分です。コロナで欠席した場合、濃厚接触からの発症のような場合、下手すると2回、3回連続で教室に来れない学生も出てきます。その場合に、資料配布と質疑応答という対応で十分にフォローできるのかどうか、私は不安に思っています。なので、ハイブリッドの授業がもっと楽に行えるといいですね。もちろん、学部も色々とお世話をしてくださっていて、困ったら頼れるベースはかなりできているとは思うんですけども、誰かを頼らなくても、機械に慣れていない先生でもハイブリッド授業をもう少し抵抗なく導入できるように、アクティブラーニング部門の先生たち中心に、ハイブリッド導入のハードルを下げるような発信をしていただくといいんじゃないかと思います。同期型ハイブリッドで授業をするのに適していないタイプの授業、あるいはそう思い込まれているような分野の授業なんかもあると思うので、そういったところに同期型ハイブリッドを入れたときの効果的な授業方法や運営のフォローになるような情報を発信してもらえるとうれしいです。

授業の様子

中澤 オンラインで参加されてた学生からの感想や学習環境に対するフィードバックはありましたか。

岡田 今のところは特に問題や不満は出てきていないですね。KALSとは別の教室で同期型ハイブリッド授業を行ったときには、終了の合図をしてもオンライン参加の学生がいるグループはディスカッションが終わらなくて、議論が盛り上がってるからもうちょっと時間をくださいと言われてしまいました。対面でやるのと同じぐらいの熱量で参加できていたようでした。

中澤 ありがとうございます。今日、お話をお伺いして、岡田先生が学生のことを第一に考えられて授業を運営されていることがとてもよくわかりました。また、抵抗なく同期型ハイブリッド授業を行うための授業方法・運営に関する情報発信という宿題をいただきました。今後のアクティブラーニング部門の活動の中で取り組みたいと思います。

同期型ハイブリッド授業でのアクティブラーニング:初年次ゼミナール文科 岡田晃枝先生インタビュー(1)

2022年度は原則対面授業となりました。とは言え、COVID-19への感染や濃厚接触者になる等により、オンライン授業も併用されています。とりわけ、教室で行われる対面授業を同時にオンライン配信する、同期型ハイブリッド授業(ハイフレックス授業とも言われることがあります)を経験された先生も少なくないのではないでしょうか。同期型ハイブリッド授業では、どのようにアクティブラーニングを取り入れることができるでしょうか?

SセメスターにKALSで同期型ハイブリッド授業を実施されていた岡田晃枝先生(大学院総合文化研究科 准教授)に、授業の様子や授業運営のポイントをお伺いしました。

授業の概要

中澤(聞き手、アクティブラーニング部門教員) KALSをお使いいただいた授業は、初年次ゼミナール文科注1を2コマだったと思います。授業の概要を教えていただけますか?

岡田 ハイブリッド授業を実施したのは金曜1限の授業でしたね。「紛争と介入をめぐる諸問題」というタイトルの初年次ゼミナールです。国際政治の中で中核的に重要なイシューである武力紛争に注目するのですが、その中でも第三国や地域機構、国際機関など、紛争当事者ではなく他のアクターによる当該紛争への関わりのほうに主眼を置き、自分でテーマを設定して研究発表をする授業です。理想主義的な平和観を持っている大学の1年生は安易に「正しさ」を求めたり、十分な観察なしに「効果があった」「不十分だった」といった短絡的な結論に陥りがちです。そうならないよう、複数のアクターの視点から現象を見る努力をし、国際政治の現実を見据えつつ結論を導き出せるように、教員やTAからいろいろなヒントを与えつつ、学生個々に研究を進めてもらいます。外国語の資料を含め、広い範囲でたくさんの資料を各自で探し、それらをできるだけ客観的な視点で丁寧に確認して議論を立ててもらいます。

とはいっても、みんな何かしら自分が考える「正しさ」というものが心の中にあって、紛争の片方の当事者に同情的・共感的なスタンスを取ってしまいがちです。断片的な情報から予断を持ったり先入観にとらわれたりといったことも起きやすいテーマです。ですから、自分が考えた研究計画に客観的に突っ込みをしてもらうことがとても重要になってきます。もちろん全体発表で私やTAが突っ込みをすることもありますが、そうすると「ダメだから先生が指摘したんだ」と考えてその部分を簡単に削除して別のテーマに飛びつくといった傾向が往々にして見られます。立てた仮説を簡単に捨ててしまわず、批判的なコメントをされても何とか立証できないかと別の資料を探したり再度ロジックを点検したりと真剣に考える癖をつけるためには、まずは学生同士でのピアレビューが効果的だと思います。批判的かつ建設的なコメントをするつもりで他の人の発表を聞く練習をすれば、自分の研究も客観的に振り返ることにつながりますから、二重の意味で勉強になります。ですから私が担当する初年次ゼミナールではピアレビューを非常に重視しています。少しずつ確実に研究を進めてもらいたいですし、絶対にコメントをしなくてはいけない状況を作ることも大事なので、毎回、全体を3-4人のグループに分け、そのグループ内で全員が研究計画と進捗状況を発表し、批判的かつ建設的にコメントをし合います。

中澤 ピアレビューやグループディスカッションでの相互コメントが授業の核ということですね。

学習環境の設定の大切さ

中澤 同期型ハイブリッド授業を経験された感想はいかがでしょうか?

岡田 講義パートとグループディスカッションのパートの両方が滞りなく行えるようにするための環境を、KALSという空間を活かしてどう作るかが焦点でした。アクティブラーニング部門の先生たちに相談に乗っていただきながらレイアウトや接続手順を決め、そのおかげで授業をスムーズに実施できました。コロナに感染して心細い中、オンラインで参加する学生が聞き取れなくて置いてけぼりになってしまうような結果にならないためにも、KALSをよく知り、機器に精通し、さまざまな形態の授業例を見ているアクティブラーニングの「プロ」の先生に相談できるというのはとても心強かったです。

中澤 ありがとうございます。

岡田 KALSは、ウェイティングルームとスタジオがありますね注2。オンライン参加者のいるグループのテーブルを、ガラス戸で教室と隔てられたウェイティングルームに配置することで、他のグループの音声が入らない形でグループディスカッションをさせることができました。他のグループがいる教室との間が全面のガラスだったので、当該グループが孤立感を感じることもありませんでした。

マイクスピーカーや複数のパソコンがあったので、全体で私やTAが話す部分とグループディスカッションとで使うマイクスピーカーを手元で切替えることで、スムーズに場面転換ができたという点もありがたかったです。一度その環境で授業を行ったことで、各機器の特性、とくにミーティングオウル注3の「癖」を把握できたので、KALS以外の教室でのハイブリッド授業の際に応用が効きそちらもスムーズに行うことができました。

中澤 学習環境や機材の設定で、気を付けたり、意識されたことっていうのはありますか?

岡田 ミーティングオウルは学期開始前に試行的に使ってみた上で、実際に教室で使った先生たちからの情報もいくつか収集していました。そこで他のグループの音声を拾ってしまってうまく機能しないという話を聞いていたのです。それが先ほどお話した「他のグループの音声が入らない形」につながります。声の大きさを制御しにくい学生もいますから、その点にはとくに注意しました。

それからグループにオンライン参加の学生と対面参加の学生がいる場合に教室のモニターをどのようにセットするかという点も結構重要だと思います。KALSの場合はウェイティングルームに可動式の大きなモニターがありましたから、オンライン参加の学生が含まれるグループにはそのモニターを使わせることで、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、無理のない姿勢で、活発に意見交換させることができました。

授業運営の様子やポイント

中澤 オンライン参加の学生とのコミュニケーションや、グループディスカッションでの介入など、授業運営で気を付けられたことや工夫はありますか?

オンライン参加の学生の不安を取り除く

岡田 先ほども言いましたが、オンライン参加の学生は、自分だけ教室に行けないということで強い不安を感じていると思うんですよね。例えば先生に余計な手間をかけてるんじゃないかとか、自分のせいで授業の手順が変わって他の学生に迷惑をかけているんじゃないかとか、そういうところを気にする学生たちは多いみたいです。ですからコロナに感染しても授業に参加できるくらいの健康状態であったり、濃厚接触のために健康に問題はないのに外出できないといった場合は遠慮なくオンラインの申請をして欲しいとITC-LMSのオンライン授業欄に書き、最初の授業時にもそう伝えていました。それから、教室だけでなくSlackも利用してできるだけ学生たちとコミュニケーションを取るようにして、オンライン参加の要求をするハードルをできるだけ下げるための工夫をしていました。コロナ感染や濃厚接触で授業を欠席するという通知をしてきた学生に、ハイブリッドで受けられますよって私から言ってあげたケースもありましたね。そうすると、もう熱が下がっていた子とか、濃厚接触で自分は元気だった子はとても喜んで、ぜひお願いしますと言ってくれました。ハイブリッドで参加させてほしいと学生が言ってこれるような関係構築の種を蒔いておくのがとても大事だと思いました。


注1
初年次ゼミナール文科についてはこちらをご覧ください。
http://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/programmes

注2
KALSの構成はこちらをご覧ください。
https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/kals/facilities/

注3
ミーティングオウルは360度カメラとマイク、スピーカーの一体型機材。

(2)につづく。

第5回模擬国連ワークショップ(2022年9月19日)

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2020年9月9日(金)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:37名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)セッション1・2 ■ 冨田早紀(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria; 元国際移住機関 [IOM] )セッション2 ■ 八尾佳凛(東京大学教養学部生)セッション1 ■ 竹本陽(東京大学教養学部生)セッション1

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③国際機関での実務の一例を説明できるようになる (セッション2に相当) ④国際機関で必要とされる知識・技能・態度を説明できるようになる (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:20 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連導入事例から」(14:20~15:30) 模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、①教員が模擬国連の導入目的(中村の授業の場合は、国際関係論の知識を使いこなせるようになることや、利害や価値観が異なる人々と合意を形成できるようになること)を明確化すること、②導入の意義を受講者に伝えること、③目的に照らしてより適切な教育手法がある場合には、模擬国連にこだわらずにそちらを選ぶこと、などを、授業担当教員の中村と受講者からお伝えしました。参加者の方との質疑応答も含め、「どのような学生・生徒に育ってほしいのか」という教育理念がまずあるべきで、模擬国連はあくまでも一手段であることについて考えを深める機会となりました。

セッション1.  授業担当者・受講者の説明

【3】セッション2「国際機関での実務から学ぶ」(15:40~16:50) 冨田早紀氏より、複数の国際機関での実務経験に基づいて、国際機関で必要とされる知識・技能・態度についてご紹介いただきました。模擬国連で学ぶ知識・技能・態度が実社会でどのように役立ち得るかの一例を学ぼうという趣旨でしたが、セッション1との関係を意識した冨田氏のお話のおかげで、模擬国連の特徴を改めて確認する機会ともなりました。

セッション2. 冨田さんのお話

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • 内容が分かりやすくとても興味深く感じました。具体的な説明や事例紹介もあり、多くの情報を教えて頂き、ありがとうございました。実際に参加した学生からの話もあったのが好かったです。
  • Policy Paperがとても参考になりました。一から主張をまとめるのは難しいのですが、このフォームに則って考えをまとめてみようと思います。
  • 模擬国連について疑問に思っていたことをわかりやすく説明してくださり、腑に落ちました。具体的には、所与の国益に制限されており、革新的な議論がしにくいということです。ロジックが成り立てば、担当国の政策や立場を少し変えてもよいという点がなるほどと思いました。また、Policy Paperのフォーマットについて、これまで見たことがあるものに比べて、論点の整理・政策を考える上で、非常にわかりやすかったです。

4.次回予告

今後も半年ごとを目安に定期的に開催していきたいと考えております。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

ワークショップ「第3回東大生がつくるSDGsの授業」(2022年9月4日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日開催しました下記のワークショップに関して、当日の模様を簡略ながらご報告します。 チラシPDF 日時:2022年9月4日(日)14時~16時 場所:オンライン 参加者数:10名

1.概要

東京大学総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、2022年度Sセメスターに全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」を開講しました。本イベントは、その授業の中で特に優れた授業案を設計した学生が、高校生を対象とした授業を実施するものです。2020年度より毎年開催しており、3回目の開催となりました。新型コロナウイルスの流行状況を踏まえてオンライン(Zoom)での開催でしたが、講師の学生は可能な限り双方向性を保てるような授業案を設計してイベントに臨みました。

2.プログラム

14:00~14:30 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:30 授業「貧困ってなに?知らないことは解決できない」:宮部裕貴(東京大学教養学部 2年) 15:30~16:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

3.授業の内容

「貧困ってなに?知らないことは解決できない」は、SDGsの目標1「貧困をなくそう」に関する授業でした。①貧困の現状を具体的な指標で説明できる、②現在取られている解決策の長所・短所を述べられるようになる、③以上を踏まえて、個人でも実践可能な貧困解決策を提示することができるようになる、という3つの目標を達成するべく、講師からの問いかけに対して参加者が1人あるいはグループでGoogleフォームに記入し、講師がそれにフィードバックをするという双方向的な形で進められました。

4.授業を行った学生の声

授業を行った学生に、参加者の反応はどのようなものであったか、そして授業を実施した感想を聞いてみました。 授業準備に関しては、「知っている」ことと、それを「教える」ことの隔たりの大きさを痛感しました。当初は可能な限り多くの知識を伝えるのが良い授業だと思っていましたが、必ずしもそれが正解とは限らず、生徒の目線から授業内容を見つめ直すことの必要性を学びました。こうした受け手の視点も勘案する姿勢は、授業に限らず、情報伝達全般において、今後とも意識していきたいです。 授業では、高校生の方々の発想力・思考力にとても驚きました。実際、高校生の皆さんには、授業の最後に「個人でも実践可能な貧困解決策の立案」という、この授業の最終目標でもある課題に取り組んでもらったのですが、そこであがった解答は、私の解説を反映しつつも、私も想定していなかったような視点が加えられた素晴らしい案ばかりでした。授業後に頂いた感想でも、この授業を通して新たに知ったことや生じた疑問を挙げて頂き、参加者の方々のSDGsに対する関心を少しでも深めることができたのだなと達成感がありました。準備も含めて「授業」することは大きな苦労が伴うなと感じましたが、一方で、自分自身の成長や受講者の方の反応も勘案すると、それだけの価値は十分にある営みだと思いました(宮部裕貴)

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2022年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2021年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスターから毎期開講しており、今回が6期目の開講となりましたが、受講者は9名(1年生2名、2年生6名、3年生1名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】 ③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。 模擬国連会議:イラク戦争(第2回~第7回) 2003年3月のイラク戦争開戦直前の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(査察継続派)、フランス(査察継続派)、ロシア(査察継続派)、英国(即時開戦派)、米国(即時開戦派)の5つの常任理事国に「中間派」のチリを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1~2名で担当しました。現実の会議と異なり決議案が投票にかけられ、即時開戦を避けつつも、査察期限を明確に設け、その結果次第では武力行使への道が開かれる内容の決議案が採択される結果となりました。 第7回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。TAを務めてくれた学生が前年度の受講者であったことから、前年度の模擬国連会議との比較といった観点から議論することもできました。 模擬国連会議:DPRKの核開発(第8回~第12回) 2017年9月のDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)による6度目の核実験後の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(圧力強化消極派)、フランス(圧力強化積極派)、ロシア(消極派)、英国(積極派)、米国(積極派)の5つの常任理事国に日本(積極派)を加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1~2名で担当しました。現実の会議と同様、経済制裁の強化を盛り込んだ決議案が採択される結果となりました。 第12回では、イラク戦争の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについて、①国際関係の知識・技能面、②合意形成の知識・技能面の両面からふりかえりました。教員からは、2000年代のイラク情勢が2010年代以降のDPRK情勢、ひいては大量破壊兵器全般をめぐる問題に、どのような影響を与えているかを問題提起し、受講者間の議論を促しました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。 授業スケジュール

4.受講者の感想

  • 議題についてはもちろんのこと、自分がその国の立場で意見を言わなくてはならないため、担当国について詳しく調べることに繋がった。
  • 私は自分自身国際情勢に興味のある方だと思っていたけれど、いざ模擬国連で議論するということとなると、知らないことが多いのだなということがわかりました。決議案や参考文献の精読を通じて学んだ知識や、実際の会議で学んだ合意形成の手法により、私の外交を見る目が養われたように感じます。また、国際関係論や国際法で学んだことをこの模擬国連の場で活かすことによって学びが深まったので、かなり学習効果があったと思います。
  • 非公式会合では使えなかったりする情報などもたくさんあったが、自分の知らない事実や事件などが自分で調べた中で知れた。また、実際に模擬国連をしている中で、様々な国が自国の利益を求めて、発言をしたり、交渉したりする様子を見て実際の国際関係の様子がつかめた気がした。
  • 英語で多くの資料を読む必要があり、授業準備は大変だった。また、会議中でも、自分の予想から外れた他国の発言や要求に対処して簡潔に返答することがとても難しかった。それでも、要求が通った時の達成感は大きく、国際関係や会議行動について多くのことを学べたので、授業はとても楽しかった。受講して良かったと思う。
  • 講義方式での学びと比べると頭に入る知識量は少ないとは思いますが、知識の定着度は圧倒的に高いと思います。実際に交渉に使うために自分で情報を探すことが多かったので、本を読むときにも普通に読むよりも頭に定着するように感じました。
  • 日々ニュースで見るような大国同士の対立が必ずしも安保理会議の舞台裏でそのまま作用しているわけではないことや国力がそのまま発言の重みとしてあらわれることが興味深かった。また、国連のHPで実際の決議案を見ることは初めてだったので、このような機会があってよかった。
  • 達成したいことの優先順位をつけ、場合によっては最優先事項を通すために他の事項を諦める手法は様々なことに応用できそうだと思った。また、決議案を書く中で、あえて通らなさそうな要求を先に提示することで譲歩の材料にすることの有効性も学べた。
  • いかに拒否権を使わせないラインまで妥協を引き出せるかが大事だと思った。自分側のボトムラインと同様に相手側のボトムラインについても考慮する必要がある。会議においては伝えたい要点が相手にしっかり伝わる話し方をする必要がある。早口になったり自分の知識をひけらかすような話し方では議論を進めるといった観点においては意味がないと思った。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

【再募集】ワークショップ「第3回 東大生がつくるSDGsの授業」(2022年9月4日)開催

カテゴリー: イベント

*お申込み締切を9月2日(金)まで延長いたします。 *8月26日(金)まで提示されていたお申込みフォームに不備がございました。同日までにお申し込みいただいた方は、お手数をお掛けしまして大変恐縮ですが、再度フォームへの記入をよろしくお願い申し上げます。   東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを2020年度より開催しております。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業ですので、是非ご参加ください。 チラシPDF

1.日時

2022年9月4日(日)14時~16時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします) ※お申込みいただいたにもかかわらず、ZOOMのURLについて連絡が来ない場合は、お手数をお掛けしまして恐縮ですが、下記のお問い合わせ先までご一報ください。 ※授業ではペアワークやグループワークの場面が多くあります。可能な限りカメラをオンにして参加していただければ幸いです。 ※参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

3.対象者

高校生 [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

14:00~14:30 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:30 授業「貧困ってなに?知らないことは解決できない」:宮部裕貴(東京大学教養学部 2年) 15:30~16:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

6.お申し込み

以下の申込フォームよりお申込ください。 https://forms.gle/9yb7pSensaw3rc8Y6 ※締切 9/2(金)23:59

お問合せ先

主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

第5回 模擬国連ワークショップ(2022年9月9日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月より定期的に開催しており、今回が5回目の開催となります。

1.日時

2022年9月9日(金)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします)

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員50名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 時間や受講者の既有知識によって模擬国連の方法を使い分けられるようになる (セッション1に相当) ・ 国際機関での実務の一例を説明できるようになる(セッション2に相当) ・ 国際機関で必要とされる知識・技能・態度を説明できるようになる (セッション2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:20 趣旨説明 14:20~15:30 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」 15:40~16:40 セッション2「国際機関での実務から学ぶ」 16:40~17:00 まとめ 【参考:過去のワークショップ当日の様子】 第1回(2020年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws1/ 第2回(2020年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws2/ 第3回(2021年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws3/ 第4回(2022年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws4/

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任助教) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は模擬国連を授業に導入している立場からお話します 冨田早紀(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria; 元国際移住機関[IOM]) 複数の国際機関で実務に当たってきた立場からお話します 八尾佳凛(東京大学教養学部生)、竹本陽(東京大学教養学部生) 模擬国連を導入した授業の受講者の立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/SJ2tK1pJf8iLCzjHA

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業をアクティブにするためのふり返り」(2022年9月14日開催)

カテゴリー: イベント

昨年度、一昨年度は、オンライン授業でのアクティブラーニングの導入に焦点をあてたワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング」を開催してきました。2022年度より原則対面授業となりましたが、授業によっては、オンラインを活用したりハイブリッドで行うものもあるかと思います。そこで、今年度は、オンラインや対面といった授業形態にかかわらず授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催することとなりました。 アクティブラーニング部門では、昨年度末に「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」をウェブサイトで公開しました。今回のワークショップでは、授業デザイン確認シートを使って、これまで行った授業、あるいは、これから行う授業のデザインをふり返り、授業をアクティブにするための検討やより良い授業にするための意見交換を行います。 授業デザインの基本的な事項を確認されたい方、授業をアクティブにされたい方、すでにアクティブラーニングを導入しているけれどもさらに考えを深めたい方といった、幅広い皆様にご参加いただき、次セメスターの授業準備の参考にしていただければと思います。 チラシPDF なお、本ワークショップでは、いくつかのアクティブラーニング手法・事例を深く掘り下げて紹介することは行いません。参加者どうしで具体的な手法やテクノロジーの活用方法などを議論の過程で共有することはあります。個別のアクティブラーニング手法や事例について知りたい方は、以下のページで情報を発信していますのでご覧ください。  

プログラム

  • 14:00-14:15 開会の挨拶・趣旨説明
  • 14:15-14:40 自己紹介
  • 14:30-15:10 ワーク、ミニレクチャ
  • 15:10-15:20 休憩
  • 15:20-16:20 ワーク、相互コメント
  • 16:20-16:35 休憩
  • 16:35-16:55 質疑応答、全体ディスカッション
  • 16:55-17:00 閉会の挨拶、アンケート
(司会進行:教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 中澤明子・中村長史) ※参加人数などによりプログラムに変更が生じる可能性がございます。

日時

2022年9月14日(水)14:00〜17:00

場所

Zoomミーティングでのオンライン開催 ※参加者に後日URLをお知らせします

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/7MTokugPH9vkzQPU7

申込締切

9月4日(日)23:59締切 9月11日(日)23:59締切(締切延長)

注意事項

  • 授業デザイン確認シートへの記入や共有を行いますので、これまでにご自身が行った授業、あるいはこれから行う授業のシラバスや概要がわかる資料をお手元にご用意ください。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • オンラインツールを使った個人やグループでのワークを行いますので、パソコンでの参加を推奨します。
  • 参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門

「オープン教材」をつくろう!(2021年度Sセメスター、Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」(2021年度Sセメスター、Aセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は、Sセメスターが20名(2年生15名、4年生5名)、Aセメスターが18名(2年生15名、3年生1名、4年生2名)でした。 担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

概要

インターネットには、さまざまな教材(テキストや動画など)があふれています。また自分で教材を作成して公開することも容易になっています。 「オープン教材」は、インターネットで公開されている、大学や個人などが作成した誰でも自由に使える教材のことです。なぜこのような教材がインターネットで公開されるようになったのでしょうか。そして、わかりやすい教材を作るには、どのような点に気をつけ、どのように作成すればよいのでしょうか。 この授業では、オープンエデュケーションと教材設計の理論や手順について学んだ後、オープンエデュケーションに関する教材をつくります。教材づくりを通じてオープンエデュケーションに関する理解を深めます。

授業の目的・目標

本授業の目的は、オープン教材やその背景となるオープンエデュケーション(教育のオープン化)、教材設計の理論・方法について理解することでした。また、それらの知識をより深く理解するため、オープンエデュケーションやオープン教材について学べ、インターネットで誰でも自由に使えることを想定した教材(オープン教材)を作成しました。 目標は、以下の6点でした。
  1. オープンエデュケーションやオープン教材の定義を説明できる
  2. オープンエデュケーションやオープン教材の事例を列挙できる
  3. 教材設計の理論と手順、注意点を説明できる
  4. グループで作成する教材を設計できる
  5. グループで教材を作成できる
  6. 教材設計の理論に基づいて他者の教材を評価できる

授業の流れ

本授業は、大きく三つの内容・活動から構成されています。

1. オープンエデュケーションの概要

Sセメスターでは、第2回、第3回の授業において、オープンエデュケーションやオープン教材の定義や事例に関する講義と議論を行いました。 Aセメスターでは、Sセメスターの内容に加えて、第4回の授業においてオープンエデュケーションの第一人者である重田勝介氏(北海道大学情報基盤センター准教授)によるゲスト講義を行いました。ゲスト講義では、オープンエデュケーションの最新の動向について国内外のプロジェクトや事例の紹介や意義と課題について紹介いただきました。

2. 教材設計の理論・手順

教材設計の理論と手順についてジグソー法を用いながら学びました。教材設計の理論と手順を3つの資料に分けて内容を説明し、それぞれをジグソー資料として学生に読んでもらいました。担当している資料ごとにエキスパート活動を行い、どのように他者に説明するかを議論してもらった後、ジグソーグループに分かれて相互説明を行いました。ジグソーグループでは、相互説明の後で「教材をつくる際に最も重要だと思うこと」について議論してもらいました。最後に議論した内容をクラス全体で共有しました。 また、教材をつくる上で重要となる、第三者の著作物の使用やライセンスについても扱いました。教材をつくり公開する際には、自分たちがつくった教材にどのようなライセンスを持たせるかを考えることが必要になります。オープン教材として公開するには、再編集などを許可する必要がありますし、その場合、教材の中で第三者の著作物を使用する際に注意がもとめられます。CCライセンスやパブリックドメインといった、教材の作成と公開に関わる著作権やライセンスについて、ワークを交えながら学びました。 ※オンライン授業でのジグソー法については、こちらをご覧ください。  

3. 教材の設計・作成

Sセメスターでは第6回以降、Aセメスターでは第7回以降の授業で、教材の設計と作成を行いました。 何もないところから教材をつくるのはとても大変です。またこの授業では、オープンエデュケーションやオープン教材について理解を深めることを目的としています。これらの理由から、オープンエデュケーションやオープン教材について学べる教材をつくることを目指しました。さらに、教材を使用する場面や対象者を絞りやすくするため、教員が4つのストーリー(右図)を用意し、学生はその中から一つのストーリーを選びストーリーに示されている課題を解決する教材を作ることにしました。これにより、教材の学習目標や対象者を検討しやすくしました。個人もしくはグループでストーリーを選択した後、設計書の作成を行いました。設計書はワークシートになっており、すでに学習した教材設計の理論・手順に沿った項目で構成されています。学習目標や教え方などの各項目について、個人やグループで考え、ワークシートへの記入を行いました。 設計書の作成を行った後、中間発表を行いました。中間発表では設計書の内容を発表し、教材設計の理論・手順に基づいた評価シートを使って相互評価を行いました。互いに良い点や改善したほうがよい点などをコメントしあい、設計書の改善につなげました。 中間発表後は、修正した設計書に基づいて教材を作成しました。そして、作成した教材を最終発表で共有し、相互評価を行って授業を終えました。 なお、Sセメスターはすべてオンラインでの授業、Aセメスターは中間発表までをオンラインでその後は対面で授業を行いました。  

受講者の感想

Sセメスター

「教材づくりが、オープンエデュケーションへの理解を深めることに対して、役立った/役立たなかったか」についての履修者からの感想をいくつか紹介します。まず、「教材を作る上で内容に誤りがあってはならないので、しっかり確認する必要があり、その点で理解が深まった」や「教材を作る中で、自らオープンエデュケーションの資料を探し、 まとめなければならなかったので、そうしているうちに理解が深まりました」のように作成過程で内容を調べることでより深く知ることができたという感想がありました。次に、「教材作りにおいて初めて学んだことを人に説明しなくてはならない立場になるのでもう一度学び直すきっかけになった」や「自分で作る際に復習することもあり、理解を深めることに役立ったと感じております」のように、教材作りが授業前半で扱ったオープンエデュケーションの内容を復習する機会となり、理解が深まったという感想が見られました。ほかにも教材づくりが内容の理解に寄与していることが窺える感想が多数ありました。

Aセメスター

13 回の授業終了時、受講生にアンケート調査を行いました(回答者 15 名)。授業前半のオープンエデュケーションやオープン教材の定義等に関する授業と、授業後半の教材設計書・教材づくりがそれぞれオープンエデュケーションについて理解するのに役立ったかどうか(とてもあてはまる〜まったくあて はまらないの 5 件法での回答)については、11 名かが「とてもあてはまる」、4 名が「ある程度あてはまる」と回答しました。また、教材づくりがオープンエデュケーションへの理解を深めることに対しての感想として「とても役立ちました。実際にオープンエデュケーションについてのオープン教材を作成する中で、改めて授業で学んだ内容を振り返ったり、 それでも理解しにくいところは自分で調べて考えたりできました」、「話を聞くだけではあまり頭に入りませんし、すぐ忘れてしまうと思うので、実際に教材を作ってみるというのは定着するという意味で役に立ったと思います」といったものが見られました。これらは S セメスターの感想とも共通しており、教材づくりを通じた理解が示唆されます。 Sセメスターと異なるのは、授業後半で行う教材づくりを対面授業で行った点です。対面授業の際は、オンラインで参加する学生もおり、ハイブリッド授業(教室とオンラインとで同時に授業を進行) を実施しました。とりわけ、グループワーク、グループディスカッションをハイブリッド授業で行うのには工夫が必要でしたし、ネットワーク不調で学生がコミュニケーションとれないといったこともありました。そのため、対面(教室)とオンラインとでコミュニケーションがとりにくいといった声が見られました。ハイブリッド授業でアクティブラーニング型授業をどのように行うかについては、今後の検討課題になると思われます。
 

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「未来の学びを考える」(2021年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」(2021年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は14名(1年生5名、2年生6名、3年生3名)でした。 担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

授業の概要

小学校から大学まで、教育・学習を取り巻く状況は日々変化しています。2000年以降、大学では「アクティブラーニング」や「国際化」などの取り組みが多く行われるようになりました。また初等中等教育(小学・中学・高等学校)でも、「アクティブラーニング」や「GIGAスクール構想」などの取り組みが行われています。それでは、未来の学びはどうなるのでしょうか。 この授業では、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について、教育・学習の過去や現在の状況を理解した上で自分なりに考えます。そのために、教育・学習の理論やトピックや、ゲスト講義による教育・学習の事例を学んだ後、自身の教育・学習に関する経験をふり返り、グループでの議論と発表を行いました。 また、第1回から第8回まではオンライン授業、第9回から第13回は対面授業で実施しました。

授業の目的・目標

目的は、本授業の目的は、教育・学習について過去や現在の状況を理解した上で、未来の学びがどうなるかを自分なりに考えることです。 目標は以下の4点でした。
  1. 教育・学習に関する理論や定義について説明できる
  2. 過去や現在の教育・学習に関するトピックや事例を列挙できる
  3. 自分の教育・学習経験を、理論や事例と関連づけて示せる
  4. 教育・学習の理論や事例を踏まえ、自分なりの未来(10年後を想定)の学びのあり方を示せる

授業の流れ

本授業は、大きく四つの内容・活動から構成されています。

1. 未来を考える手がかり:教育・学習の理論やトピック

未来の学びを考える手がかりとして、教育・学習の理論やトピックについて学びます。 第2回から第5回の授業では、ジグソー法を用いて教育・学習の理論やトピックへの理解を深めました。扱った理論・トピックは、学習観、空間・活動・共同体、新しい能力、アクティブラーニング、学校でのテクノロジ活用、オンライン環境での学び、ノンフォーマルな学び、大人の学びといったものでした。 ジグソー法を用いた授業のやり方については、こちらの記事をご覧ください。

2. 未来を考える手がかり:学びの事例

未来の学びを考える手がかりとして、教育・学習の事例について学びます。 第6回から第8回の授業では、ゲスト講師をお招きし、学びの事例について講義していただきました。 第6回は西武台新座中学校の河野芳人教諭によるアクティブラーニングやテクノロジ活用の事例、第7回は森秀樹 昭和女子大学准教授によるワークショップやプログラミング教育の事例、第8回は福山佑樹 関西学院大学准教授によるゲーム学習の理論と実際についてご講義いただきました。

3. 未来を考える手がかり:自身の経験をふり返る

第9回の授業では、自身の教育・学習に関する経験を、ブロックを使って可視化して相互に説明した後、それまでの授業で扱ったトピックや事例との関連づけを行いました。 本授業では、未来の学びを考えるヒントは、過去や現在の事例や自身の経験、理論やトピックにあると考えます。そこで、自分自身がどのような経験をしてのかを思い出し、その経験を本授業で学んだ内容と関連づけ、経験を抽象的に捉える活動を行いました。この詳細は、こちらの記事にまとめましたのでご覧ください。

4. 未来の学びはどうなるのか:議論と最終発表

第10回から第13回の授業は、未来の学びに関するグループでの議論と発表を行いました。 誰の学びについて考えたいかという希望に応じて受講者を4つのグループに分け、グループごとに未来の学びについて議論してもらい、その内容を最後に発表してもらいました。 第10回から第12回の授業では、グループで議論した後、ほかのグループとの進捗共有を行いました。そこでも意見交換が行われ、一つの未来の学びについて多様な視点から議論できるように工夫しました。 また、最終発表の形式は自由としました。スライドを使ったプレゼンテーションでもいいですし、スキット(劇)やイラストでもよいのです。ただし、「どこで、誰が、何を、どうやって学んでいるのか」と「社会状況や背景」という要素を内容に含めること、時間は3〜5分程度という条件を付しました。 最終発表では、スライドによるプレゼンテーション、スキットでの発表がありました。発表の内容は、中学校の授業における個別最適化、10年後の高校における総合的な探究の時間、高校生や様々な属性の大学生や社会人の学校以外の場での学び、10年後の大学といったものでした。 そして、発表後には、13回の授業を通じた自分自身の学びを大福帳を通してふり返りました。

受講者の感想

  • 最後に大福帳を振り返ってみて、自分がどんなことに興味を持っていたのか、それに対して今の自分がどういう考えや答えを出しているのかを考えるのがすごく面白かったです。日記をつけるのにも近いような感覚でした。
  • 毎週書くときは面倒くさいなあと思うことも正直ありましたが、今振り返ってめちゃくちゃいいなと思いました。自分でやるとなると継続性が怪しいので、全授業で大福帳システムがあればなあ!と思いました。
  • 大福帳を書くことによって授業の復習をする必要が生まれ、各週の内容の整理が可能になる。また、授業で聞くことができなかった質問や後に生まれた疑問点などを教員に遠慮なく聞ける機会としての意義があったと思う。感想を書くにあたって自身の経験と結びつけることができたこともメリットの一つであった。デメリットとしてはgoogledocsがタブレット系端末での使い勝手がよくなく、記入の際はパソコンを使うので問題ないがフィードバックを閲覧したいときに毎度パソコンを立ち上げる必要があった。
  • 自分の2Aで取っている授業の中で、他にもディスカッションを要求する授業がある一方で、これが一番受講者と活発な議論を交わせた授業でした。その理由を考えるに、「ジグソー法を用いることによって各人が半ば強制的に役割を与えられ、発言する必要性があったこと 」、「対面でのディスカッションやグループ発表が設けられていたこと」によって、目標に向けて協力し合うベースが作られていたこと などがあるかなと思いました。 主体的に取り組めたおかげで、授業内容もよく身についたと思います。
  • 大学に入って初めて講義形式ではない授業を受けられたことがとても印象的でした。またKALSの存在も知らなかったので、大学内にこういった施設があることも知ることができました。

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

つくることで、ふりかえる

皆さんは、ご自身の経験をどのようにしてふり返りますか? 日記などの記録を読み返したり、映像の記録を見たり、出来事を思い出して誰かに話す…など、様々な方法をとられているかと思います。ここでは、作品をつくって行うふり返りを紹介します。

概要

アクティブラーニング部門で開講した、2021年度Aセメ開講の全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」、2022年度Sセメ開講の全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える【文献講読編】」では、それぞれ第9回、第10回の授業において、学生自身が経験した教育・学習経験をふり返り、それまでの授業で扱った教育・学習の理論や知見・事例と結びつけてその意味を考える活動を行いました。

やり方

活動は次の手順で行いました。

ワークショップをデザインする際のモデルに「TKFモデル」というものがあります。「T:つくって、K:かたって、F:ふりかえる」という流れでワークショップの活動を構成するというものです(茂木2014)。本授業では、このモデルを援用して、上記の流れで授業を進めました。どのように各ステップを行い、どのような様子だったのか説明します。

(1)つくる

これまでの自分の「学び」について最も印象に残っている場面をブロックでつくるよう伝えました。おもしろかったことやインパクトがあったことなど、「印象に残っている」ということの定義も学生に任せました。学生たちは、約7分間で作品をつくりました。高校や大学入学後の出来事で自分の学びになった経験を表現する学生もいれば、これまでの自身の学びのプロセス全体をつくる学生もいました。

(2)かたる①

次に、つくった場面をほかの人に説明してもらいました。いつ、どこで、何をしている場面かの情報を含んで説明するよう伝えました。また、説明者の左隣に座っている学生が「なぜ印象に残っているか」、「その時、どんな気持ちだったか」、「さらに聞きたいこと」を説明後にインタビューするように伝えました。

(3)ふりかえる①

これまでの授業で扱ったトピックと作品とを関連づけます。トピックカードを事前に用意しておき、関連するものを作品の周囲に配置してもらいました。また、関連すると考える理由や補足説明をふせんに書き出して貼付してもらいました。トピックカードを配置するには、トピックの内容を思い出さなければなりません。どの学生も、それまでの授業の資料を何度も読み返し、懸命に内容を思い出そうとしていました。

活動で使用したブロックとトピックカード

(4)かたる②

どんなトピックカードを置いたのか、なぜ関連してると考えたのかをほかの人に説明してもらいました。

(5)ふりかえる②

作品とトピックとの関連づけについて、未来の学びを考える上でヒントになりそうなことがあったかどうかを考えてもらいました。

学生の反応と感想

作品づくりと可視化

学生たちの様子をみていると、ブロックで作品をつくりあげ、それを媒介として自身の経験を説明できていたように思えます。また、作品について質問することで、経験の語りを深めていたように思われました。実際のところ、作品づくりについて学生たちはどのように感じていたのでしょうか?

2022年度Sセメの授業において、この活動について質問してみました(6名の学生が回答)。

「ブロックで作品を作るのが大変だった」という質問に対して、「まったくあてはまらない」〜「とてもあてはまる」の5件法で尋ねたところ、1名の学生がとてもあてはまる、3名がある程度あてはまる、2名があまりあてはまらないと回答しました。大変さを感じた学生が多かったようです。

また、「自分の経験をブロックで可視化できた」という質問に対しては、とてもあてはまる、ある程度あてはまるともに3名ずつが回答しており、全員が可視化できたと感じていたようです。

総じて、大変さを感じつつも、経験を可視化できたと感じていたことがわかります。

授業内容のふりかえり

トピックカードとの関連づけの際、予想以上に学生たちが資料を何度も確認し、授業内容をふりかえっていました。この活動は自身の経験のふりかえりや意味づけをねらいにしていましたが、学習内容をふりかえるのにも有効だったのではと感じます。

学生にこれまで扱った文献・トピックとの関連づけは大変だったかを尋ねてみたところ、とてもあてはまる1名、ある程度あてはまる1名、どちらでもない2名、あまりあてはまらない2名と、回答がわかれました。

一方、ブロックでの作品づくりは自分の教育・学習経験のふり返りに役立ったという質問については、とてもあてはまる3名、ある程度あてはまる2名、どちらでもない1名となりました。役立ったと感じている学生がほとんどでしたが、どのような経験を取り上げたかで意味あるものになるかどうかが決まると思われます。意味あるものになるよう、つくる作品の観点を細かく設定する(例:自分にとってポジティブな経験など)ことが必要かもしれません。

この授業では、最終的に未来の学びがどうなるかについて考え発表します。「未来の学びについて考えよう」といきなり言われてもなかなかできません。未来は過去・現在と繋がっており、過去や現在の経験には未来を考えるヒントがあります。未来の学びを考えるための手がかりとして、過去・現在を参考にするためにこの活動を行いました。ブロックで作品をつくることで自分の中のメージを具体化し、さらに他者に説明することでそのイメージが吟味されます(茂木2014)。

また、本授業では、トピックカードとの関連づけを行うことで、教育学的な観点から自身の経験を捉え直すことができると考えました。学生の感想では、「自分の経験を客観視すると自分の学習経験がどのような意味を持っていたか分かりやすくなりました。そのような形で具体的に認識すること自体がとても意義あることと感じました」といった記述があったことから、活動のねらいを達成できたのではと思います。

皆さんも、「つくって・かたって・ふりかえる」活動を授業に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献

茂木一司(編集代表)(2014)協同と表現のワークショップ ―学びのための環境のデザイン―[第2版].東信堂

※本記事は、AL NEWSLETTER Vol.7, No.4 の記事を加筆・再構成したものです。

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:オンライン授業の経験から対面授業を考える」(開催報告)

2022年3月9日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:オンライン授業の経験から対面授業を考える」を開催しました。当日は15名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

これまで2回にわたって開催したオンラインワークショップでは、オンライン授業に焦点を当て、課題解決や双方向性の確保について検討しました。一方、2022年度は対面授業の実施が見込まれています。オンライン授業の経験は、対面授業のデザインや運営にも活かせるところが多いと考えられます。 そこで本オンラインワークショップでは、オンライン授業の経験に基づいて、対面授業をアクティブにするための授業設計や運営について検討しました。ご自身のオンライン授業の取り組みをふり返りほかの参加者と共有し、授業デザインの基礎や授業をアクティブにする際のポイント・留意点を確認した上で、対面授業に活かせる要素や手法などについて議論し、対面授業に活かしてもらうことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いの自己紹介とワークに取り組みました。ワークでは、オンライン授業のふり返りとして、満足した取り組み、手応えがあった取り組み、課題の解決方法を書き出し、ほかの人と共有して相互にコメントを行いました。 休憩を挟んだ後半は、対面授業について考える手がかりとミニレクチャで伝えました。ミニレクチャでは、一般的な授業デザインの流れを説明した後、アクティブラーニングを取り入れる際のポイントとして、インプットとアウトプット、個人とペアやグループの学習活動のサイクルを回すことを紹介しました。また、アクティブラーニング型授業の進め方の例や、オンライン授業・対面授業・ハイブリッド授業の違いやハイブリッド授業の実施のポイントを説明しました。 その後、二つ目のワークとして、「オンライン授業のうち、対面授業に活かせるところ」、「対面授業の課題や不安、悩みの解決策」を個人とグループで考え議論しました。 最後に全体で議論内容を共有しました。また、個人でワークショップのふり返りとして、ワークショップで新しく知ったことや気づいたことを「五・七・五」で表現してもらいました。

当日の様子と参加者の反応

「ヒントになる内容が多い」、「ワークがあり、アウトプットしながら進めることができた」、「他の分野の方と交流できたお陰で、自分の授業計画を十分に振り返ることができた」、「不安が緩和しました」といった感想をいただきました。 一方で、グループワークの時間が短いことや、ツールの操作説明の仕方といった改善点も挙げられました。ワークショップで使用したツールやワークのルールに戸惑われた方もいらっしゃいましたため、今後のワークショップデザインや運営で改善していきたいと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」作成

アクティブラーニング部門では、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」を作成いたしました。

本シートは、授業デザインの考え方に基づいたポイントや、アクティブラーニングを導入する際のポイントについて、授業デザイン前・中・後、授業後のタイミングにわけて、質問に答える形式あるいはチェックリストの形式で確認できるようにいたしました。

PDFの形式ですが、入力できるように設定しており、印刷物だけでなくパソコン上でも使用いただける仕様になっています。

皆さまの授業設計・運営の参考にしていただけますと幸いです。

冊子「オンラインでもアクティブラーニング」発行

アクティブラーニング部門では、冊子「オンラインでもアクティブラーニング」を発行いたしました。   本冊子は、この2年間のオンライン授業でのアクティブラーニングについて、本ウェブサイトやニュースレター、ワークショップなどで発信してきた内容を中心にまとめたものです。 本冊子は、第一部と第二部に分かれています。
  • 第一部:授業をアクティブにする授業設計と運営
  • 第二部:オンライン授業でのアクティブラーニング手法と実践
  第一部では、授業形態を問わず授業デザインの基本的な考え方や授業をアクティブにする授業デザイン、オンライン授業をアクティブにするポイント、オンライン授業でのTA(Teaching Assistant)を掲載しています。 第二部では、アクティブラーニング手法について、実際にオンライン授業で行う際の手順や注意点、実践してみての感想を掲載しています。 本冊子は、この2年間のオンライン授業に関する当部門の取り組みを集約した内容になっています。オンライン授業に焦点をあてていますが、対面授業でも活用可能な内容が盛り込まれています。 皆さまの授業設計・運営の参考にしていただけますと幸いです。

音声プログラム「アクティブラーニングの部屋」

これまで、本ウェブサイトやニュースレターなどを通じてアクティブラーニングに関する情報を発信してきました。また、ワークショップを開催し、多くの教員の皆さまからご質問・ご意見を承ってきました。様々な情報発信・共有をしてきたつもりではありますが、十分にお答えできていない点やお伝えしきれていない点があります。 そこで、音声プログラム「アクティブラーニングの部屋」を作成いたしました。 このプログラムは、これまでお伝えできていなかった点を「音声」の形でお届けするものです。第1回の音声プログラムでは、この2年間のオンライン授業をふり返り、苦労した点やうまくいった点、対面授業に活かせそうな点をアクティブラーニング部門の特任教員3名でお話します。 ラジオを聴くような感じで、お聴きいただけますと幸いです。    

第4回模擬国連ワークショップ(2022年3月18日)

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2022年3月18日(日)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:58名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)セッション1・2 ■ 小林綾子(上智大学総合グローバル学部 特任助教)セッション2

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③他のロールプレイの教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション2に相当) ④他のロールプレイの実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」(14:10~15:20) 模擬国連の概要と東京大学教養学部の授業への導入例について授業担当教員の中村からお話しました。模擬国連を導入する目的(中村の授業の場合は、国際関係論の知識を使いこなせるようになることや、利害や価値観が異なる人々と合意を形成できるようになること)を明確化する必要があり、模擬国連はあくまでも手段であるという点を再確認する機会となりました。

セッション1の様子

【3】セッション2「ロールプレイ導入事例から学ぶ」(15:40~16:50) セッション1で確認したように、模擬国連はあくまでも手段です。授業の目的によっては、他の手法がより適していることもあります。そこで、小林綾子先生から、人権についてワークショップ形式で学ぶという模擬国連以外の手法についてご紹介いただきました。模擬国連はあくまでも手段であるため、授業の目的により適したロールプレイがあれば、それを学ぼうという趣旨でしたが、模擬国連との異同を意識した小林先生のお話のおかげで、模擬国連の特徴を改めて確認する機会ともなりました。

セッション2の様子

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • Taylor-madeの模擬国連という考え方を教わったことで、授業にどのように模擬国連を取り入れたいのか、自分なりに考えることができるようになった
  • 模擬国連以外の方法も学んだことで、自分のやりたいこと(目的)を達成するためには必ずしも模擬国連だけが最適の方法ではない、ということもわかりました
  • 模擬国連の授業を受講している学生の声も聞いてみたい

4.次回予告

受講者の生の声を聞いてみたいという参加者の方からのご要望が複数ありましたので、次回以降はそうした機会も改めて設けたい(第1回・第2回では設けていました)と考えています。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

第4回 模擬国連ワークショップ(2022年3月18日)開催

カテゴリー: イベント

 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。  模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。  この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月の第1回、2020年9月の第2回、2021年9月の第3回に続き、4回目の開催となります。今回は、これまでの参加者アンケートでいただいた声を踏まえ、模擬国連の「始め方」と「深め方」を意識して、授業時間や受講者の既有知識に応じた模擬国連の「使い分け」を検討したいと考えております。また、前回同様に模擬国連以外のロールプレイ導入事例についてもご紹介いたします。

1.日時

2022年3月18日(金)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします)

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員50名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 時間や受講者の既有知識によって模擬国連の方法を使い分けられるようになる (セッション1に相当) ・ 他のロールプレイの教育手法としての特徴を説明できるようになる(セッション2に相当) ・ 他のロールプレイの実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~15:30 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」 15:40~16:50 セッション2「ロールプレイ導入事例から学ぶ」 16:50~17:00 まとめ 【参考:過去のワークショップ当日の様子】 第1回(2020年3月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws1/ 第2回(2020年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws2/ 第3回(2021年9月)https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws3/

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任助教) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は模擬国連を大学の授業に導入している立場からお話します 小林綾子(上智大学総合グローバル学部特任助教) 米国留学や在スーダン日本国大使館専門調査員を経験した後、現在はロールプレイを導入した授業を実施している立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/CwYgZxMdaFLy7rvp6

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

アトリエとしてのKALS――O JUN先生インタビュウ【2】

【1】の続きです。

4.プロの作家による実技指導

中村 今、先生の普段の作家としてのお話がありました。先生ご自身の創作活動と授業とは、どちらかがどちらかに影響するといったことはあるのでしょうか。
O JUN 藝大のときもそうでしたけれども、東大でも学生たちのドローイングの中に、絶対どう逆立ちしても僕には描けないなというのはありますね。一人一人の見ていることや―それに手が付いていくかというのは置いておいても―見ているものについて描くことでもって何とかそれを表現しようという、その道筋を何とか自分でつけようという部分というのは、本当にそれぞれ100人いれば100通りあるわけで。絶対に自分はこの道筋は通らないなというものを描いたり表現してきたりする学生はいますね。それは見る度に、じゃあおまえはどうなのだというふうに突き付けられる感じがありますね。
中村 面白いですね。構図の切り取り方や感性みたいなことなのでしょうか。
O JUN そうです、そうです。他にも、色鉛筆一本の使い方とか、こういう筆圧や筆触で自分は描いたことがなかったとか。何十年も使っているにもかかわらずですね。
中村 それは、学生がまだ若くて経験が少ないからなのでしょうか。あるいは、個人差というか、感じ方が人それぞれで違うからということなのでしょうか。
O JUN どちらもあると思います。もう少しトレーニングを積んで、例えば再現性のトレーニングとか、もっと描写的なトレーニングとかを積んでいくと、逆に今のそういう部分は消えていくかもしれないですよね。だけども、かつてそのときに描き表した物っていうのは、物として残っているので、それをまたずっと自分が先にいったときに見返す機会があります。僕なんかもしょっちゅうあります。当時は、ただひたすらうまくなろうと思って描いていたわけですが、何か図らずも出ていた雰囲気とか表情みたいなものに気づきます。それからもう何年も何年も制作を続けていって、もうとっくにそういうものを忘れてしまって、見返すと、こんな見方をしていたのかということに気づくわけです。それをもう一度やろうというわけではなくて、それを見たことが刺激になって、別の道筋がちょっと見えてきたり。そういったことが起きている気がするのです。
中村 そういえば、昔自分が書いた小説を読み直して、そこに刺激を受けて新しい作品を生み出すという小説家のお話を聞いたことがあります。
O JUN それと同じようなことだと思います。時間が経って他人事のように見えるわけですね。とりあえずどういうようなかたちでもいいから、今これを描きとどめておくということが大事かなと思います。
中村 そういった意味では、今学生達がこのコロナ禍という特殊な状況下で描いていたものが残っていて、この後卒業してから見返したりする機会があるというのは大事なことのように思います。
O JUN そうですね、そういう機会があれば幸いじゃないかなと思います。

5.授業設計・実施における工夫

中村 最後の回に展覧会をやるということもありますし、そういった意味でも作品がきちんと残るわけですね。
O JUN 展覧会については、どういう形にしようかなと、今それを考えています。美術館とか博物館で企画展があるときに、その動線に沿っていろんな什器や壁を作ったり展覧会の器を作る知人がいます。いろいろな展覧会を手がけている人なのですけれども、その方に来ていただいて展覧会を作る話をしてもらおうかなと。
中村 僕は、展覧会を見に行ったときも、それがどのように作られているかといった舞台裏までは考えたことがなかったです。
O JUN そういった話をしてもらうと、今まであまり意識しなかったところにも目が向くかなと。限られた時間の中での授業ですけれども、なるべく毎回いろいろと楽しんでもらえたらなという思いもあります。
中村 そういった工夫に関していえば、先生の授業では円になる回があったりして、回毎にレイアウトを変えられていますけれども、その辺りの意図はどういったところにあるのでしょうか。今の毎回楽しんでもらいたいというのもあるとは思いますが。
O JUN KALSの、何ていうのですかね、非常に動かしやすい机。
中村 まがたまテーブルと呼んでおります。
O JUN とても組み替えやすいので、じゃあここで3人1組になったり2人1組になったりして、共通の課題をちょっとやってごらんとか交換してごらんとか、教員にとっても授業のヒントになっていることが多いのではないかなと思います。

KALSのまがたまテーブル

中村 水彩を使えるのがwaiting roomのみだからというのもありますけれども、教室空間についてもメインのstudio以外も含めて広く使っていただいていますね。
O JUN もし実技そのものをきちんとやろうとなったら、美大藝大のような施設は無理でも、1部屋でもアトリエみたいなものが東大にも必要になると思います。けれども、既にKALSがあって十分活用できていて、逆にそれによって今まで美大や藝大の中でできなかったような授業形態みたいなものが模索できているのもいいのかなと思っています。

KALSの空間配置図

中村 反対に、何かこれがKALSにあったらもっといいなといったものはありますか。
O JUN 例えば、机を全部なくして床だけで、ただ、だだっ広いだけの部屋という使い方もしてみたいなと思っています。床一面に大きなロール紙をだーっと広げたときには、かなり大きな画面になるので、協働的にドローイングをやっていくっていう、そういう何か遊びのようなことも可能なのかなと。
中村 藝大だと当然そういう部屋があるわけですものね。
O JUN 水場があって、それであともうがらんとしていて、椅子などは、いつもあるところから各自持ってくるっていう。基本的にただの箱なので。
中村 実は机と椅子をstorage roomに全て収納することもできるので、KALSでもそういった使い方をしていただくことも可能ですよね。
中澤 はい、可能です。それに関して、先生が先ほどKALSだからこそできる活動とかもあるということをおっしゃっていましたけれども、藝大・美大のアトリエにここの学習環境を近づけようとされているのか、それともここはこことして、アトリエ的なこともできたり、あるいは他のこともできたりといった意図があるのかというのをお聞きしたく思います。
O JUN ここの空間を授業の中でどうアトリエ化するかということが大事かなと。学生達にも言ったのですけれども、ここは、5時5分から6時35分までは、それぞれのアトリエだと。なので、各自でいろいろと使い方を工夫してくださいと。基本、絵を描くというのはどこでも描けるのですよね。僕も、もう大学を辞めて天井の高い研究室はないので、本当に自宅の中の4畳半か、そのぐらいのところで描けるものを描いたり、作れるものを作ったりしているのですけれども、それでも組み合わせて大きくすることもできますし。ここのところずっと展覧会が続いていて自転車操業的にやっているので、家の中が大変なことになっていますが、それでも使い方を工夫すればできるので、絵というのはそういうもの。物を作るというのはそういうこと。人の行為というのも、やはりそうなのだろうなと思います。
中澤 面白いですね。
O JUN だから、物理的な場所の大きい小さいということは必ずしも制限にならないのではないかなと。学生達がこの教室でどういう使い方の工夫をするか。もう少し自由に席を移動してくれてもいいのですけれども、そこら辺はまだちょっと遠慮しているのかもしれません。例えば、こっちの大きいほうの部屋 [studio]で大きいものを描いて、水彩を使うときにはこっち[waiting room]に来るとか。それができる部屋なので。
中澤 学生達に自分自身の学習環境を作ってほしいというのは、すごく面白いなと。先生側が学習環境をデザインして用意する授業が多いですよね。
中村 この授業ならではという感じがしますね。
中澤 実はKALSをつくる際にお手本の一つにした、はこだて未来大学の教室は、美大のアトリエをヒントに学習環境をデザインされています。アトリエのよさというのは、教育工学的には、例えば学生がキャンバスに向かっていて、そこを先生が歩きながら学生と対話をして、その様子が他の学生も分かるといったところにあると言われています。
O JUN 僕、絵描きなものですから、自分の制作メディウムは絵画ですけれども、もし映像をやっておられる方が講師として授業をされるならば、この大きな4面スクリーンを使って、いろいろな形での展示も可能だろうなと。一部屋全部を映像作品の空間にするとか、これからそういう作家を講師として迎えられるのもいいかなと思います。

(文責:中村長史)

アトリエとしてのKALS――O JUN先生インタビュウ【1】

Aセメスター木曜日5限の駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)。窓の外が暗くなっていくなか、20名ほどの学生達が一心不乱に絵を描いています。文理融合ゼミナール「絵の授業」の時間です。授業が進むにつれ、KALSが、さながらアトリエの様相を呈してきました――こうしたユニークな授業を担当されているO JUN先生に、お話を伺いました。

【インタビュウ概要】
日時:2021年12月9日
話し手:O JUN(文理融合ゼミナール「絵の授業」担当、東京藝術大学名誉教授、画家)
聞き手:中村長史、中澤明子(教養学部附属教養教育高度化機構)

【インタビュウ目次】
1.授業の目的・到達目標
2.評価の方法
3.東大教養学部という環境
4.プロの作家による実技指導
5.授業設計・実施における工夫

 

1.授業の目的・到達目標

中村 東京大学の教養学部で実技指導の授業をご担当いただくのは初めてですが、これまで先生が教えてこられた藝大や美大と何か勝手が違うといった点はあるでしょうか。
O JUN 恐らく、受講している学生たちの動機は様々だろうと思います。中学校高校とずっと絵が好きで描いてきて、かなり技術的に高い学生も若干いますし、イラストが好きで描くことに興味を持っているので受講しているという学生もいますし、そういうものからずっとかけ離れたことをやっていたので、ちょっと受講してみるという学生もいます。美大を受験するとか、美術機関のようなところに作家として入っていくためのトレーニングとなると、別なカリキュラムが必要になってくると思いますけども、この授業では、自分の体と素材、画材とを接触させることの体験に重きを置いています。そういった身体的・感覚的な体験をするのにはドローイングが最適だろうということで、今やっています。
中村 今まさしく授業を通して学生に学んでほしいこと、授業の目的や到達目標をおっしゃっていただいたかと思います。学生の動機や知識、技量がばらばらな中で、共通して目指すのはそういった身体的・感覚的なことの体験で、細かい技術についてはまた別の機会にということでしょうか。
O JUN そうですね。あとは、一般的な美術の知識や絵の見方については授業の中で少しフォローできればなと。幸いこのKALSという教室には大きなスクリーンが四面にありますので、いろいろな画像や動画を資料として引用して、これから学生たちに紹介していこうかなと思っています。
中村 そういった知識の面と、体験の面とは、学生達の様子を見ながらバランスよく。
O JUN そうですね。それが理想です。

KALSのスクリーン

2.評価の方法

中村 そういった目的・到達目標を踏まえて学生のパフォーマンスをどう評価するかについても伺いたいと思います。素人考えだと、知識の方は問い方次第では評価しやすいのかもしれないですけれども、体験の方はなかなか評価するのが難しいのではないかなと。
O JUN 作品のテクニカルな面での出来不出来で成績を付けるとすれば非常に楽です。ただ、この授業で一番大切な部分というのは、もうちょっと下のほうに潜んでいるという感じがします。モティベーションの問題であるとか、身体性の問題とか。たかだか1枚の紙の上に、鉛筆なり何なり簡単な素材でそれが表れているかを見たいなと。1週間ごとの授業にまず出席してもらって、頭を切り替えてリラックスして線を描いたり点を打ってみたりという―非常に単純素朴な制作行為ですけれども―そうしたことを毎週やっていくなかで描くものの中に変化がもたらされているかどうか。1人ずつの制作の進捗状況を毎週眺めていって、最終的にドローイング展のようなことをできればと思っています。
中村 学生の作品の展示ということですね。
O JUN はい。最後の授業で「1日だけの展覧会」ということで行ってみたいと。基本的には、授業に出て一生懸命毎回毎回描いて―うまくいこうがいくまいが―いろんなものに興味を持ってやってくれていれば僕は高評価します。美術というものはそういうものかなと思います。不可というのは普通に出ていればありえません。また、見事に描けたとか、そっくりに描けたから優というものでもありませんし。一人一人の学生が、自分が描こうとしているものとか、描きたいという気持ちとどう向き合っているかという部分を評価してあげたいなと思います。
中村 共通のものさしで測るというよりは一人一人の制作姿勢を見てということですかね。
O JUN そう思います。ええ。
中澤 見るときのポイントは、どういったところにあるのでしょうか。
O JUN 今日1日やったらここまで進んだ、また次の週やればここまで進んだというふうに非常にリニアな矢印が描ける部分も制作の中にはあるのですけれども、むしろ先週はちょっと見つからなかったのだけれども今日こういうことが気になったとか、そういう部分が見られたらそれは非常に評価したいですね。必ずしもちゃんとれんがを積むようにはいかなかったのだけれども、今日見つかったことに対して一生懸命いろいろなところからアプローチしてみたという。
中澤 それは学生と対話する中で先生ご自身が把握されていくのか、あるいはもう作品だけを見ていたら分かるものなのでしょうか。
O JUN いや、やっぱり作品だけでは、描かれたものっていうものだけで全て分かるものではなくて。だからこれが例えばコンクールとか、そういったコンペのようなものでしたら作品しかないのですけども、目的がまずそれではないっていうことと、この授業というのは一応指導する私がいて学生がいてという、同じ時間を同じ場所で共有しているので、そのやりとりがやはり重要だろうと。
中村 20人いる学生の一人一人をきちんと、成果物だけではなくてプロセスも見るというのは大変ですね。
O JUN 美術というものはあってないような枠組みなので。絵を描いていれば美術ではあるけれども、日常の生活の中でも、ものを見るということ、それから触るということが常にあるわけです。それが絵を描いたりものを作ったりという創造的な行為に返ってくるものですから。
中村 授業の中だけでは完結しないということですかね。学生が教室の外でも、道を歩いているときでも、今までは気付かなかったこと、例えば葉っぱの色が少し変わったのではないかしらんと敏感になるとか。
O JUN おっしゃるとおりだと思います。だからこれによって、この授業によって作家になるとか美術のほうに進むとかってことではなくても、日常的なものの見方とか感じ方とか、そういったものに少し影響なり反映するようなことがあれば、小さいことのようで結構大きいのかなという気がします。今は気付きとか学びとか、ちょっと耳にたこができるぐらいよく聞く言葉ではありますけれども、どこで何を気付くのかは大事かなと思います。自分が今いる空間だとか、もうちょっと広がって社会であるとか、その中で見つけたもの、触れたものが、どう自分の考え方を刺激するか。人は移動するものですから、移動した先でまた違った体験をする。そういうことの何かトレーニングみたいな部分が大きいのではないのかなと。そういう当たり前のことをちょっと取り出して、それを授業の中で絵を描くという行為に変換させて、それをもう一度また家に帰って全然違うことをやったときに、どこかでぴんときたり、これは覚えがあるのだけれど何かしらみたいな感じで振り返ったり、そういう時間がちょっとでもあるとまた違うのかなと。


3.東大教養学部という環境

中村 冒頭でも様々なタイプの学生が授業を受けているというお話がありましたが、教養学部で授業を始められて何かお感じになることはありますか。
O JUN ガイダンス後に受講者数を制限しなくちゃいけないということで、こちらから受講希望理由等について質問を出してそれに対して答えをくださいと。それに対しての答えが、質問の意図を汲んだものになっていて、なかなかやっぱりしっかりしているなと。内省的なことだけではなくて、もうちょっと外在的なことも含めて、これこれこういう理由で受講してみたいと。そこら辺が総じてしっかりとした回答が届いたものですから、1人も落としたくないなと思いました。
中村 動機は人それぞれだったけれども、動機を明確に伝えてきてくれるという点では皆同じだったと。
O JUN そうです。そういうところはさすがだなと思いましたね。そういう学生達を見て、今度は慣れない絵を描くということを始めたときに、どういう変化や戸惑いが起こるのかな、少しは新鮮な体験になるのかなと期待しています。美術というものは、相手に伝えるということだけが使命じゃないので。伝わらなくても、何かが見えたり感じたりすることで面白い。そういった体験もしてもらいたいなと思います。
中村 僕は政治学者として社会科学系の論文を書くゼミを担当してまして、僕なぞの授業だと、一定の知識を有する読者であれば誰が読んでも一つの理解に達するような文章を書きましょうという指導をするわけですが、美術の場合、当然それに閉じないわけですね。
O JUN そうですね。
中村 そういった意味では文理融合ゼミナールで美術の授業があるのはいいことですね。
中澤 そうですね。私の授業でもディスカッションをしてもらうと、答えのない議論が難しいという反応があったので、それともちょっと通じるのかなと。アートにも答えがあるわけではなくて、自分の中との対話のようなものが必要になってくるので、東大生にはいい経験なのかなと思いました。
O JUN 絵を描くとかドローイングするということは、事前のトレーニングがない状態で始めた場合、習熟していないですから、描き間違えとか描き切れないとか技術的な点は、学生の中でストレスになる部分があるかと思います。それでも描いてしまったものというのは、1つの答えなのですよね。出来が悪いなと自分で思っていれば、そこから、じゃあ次どうするのかという。描法だとか、あるいはものの見方をもうちょっと変えてみるとか工夫が必要だなというところにいけば、また変化もしてくるだろうし。そういった間違いみたいなものというのはむしろ大歓迎といいますか、一つの結果なので、そこから次のことが始まる、見えてくるということを体験してもらいたいなと。僕らもそうなので。

【2】に続く

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅱ」(2021年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅱ」(2021年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスターから毎期開講しており、今回は5期目の開講となりましたが、受講者は8名(1年生2名、2年生5名、3年生1名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:北村優成(法学部)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

授業スケジュール ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。なお、今セメスターも、前セメスターに続き、全回ZOOMミーティングを用いたオンライン授業となりました。 模擬国連会議:シリア人道危機(第2回~第7回) 2010年代を通して続いているシリア人道危機についての国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(シリア政府擁護派)、フランス(シリア政府批判派)、ロシア(シリア政府擁護派)、英国(シリア政府批判派)、米国(シリア政府批判派)の5つの常任理事国に「中間派」の南アフリカを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1・2人で担当しました。現実の会議と同様、拒否権が行使され、決議案は廃案となりました。 第7回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。 なお、第6回には、冨田早紀氏(The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria; 元国際移住機関[IOM])がゲスト講師としてお越しくださり、会議を講評してくださるとともに、国連職員の役割について紹介してくださりました。 模擬国連会議:女性、平和、安全保障(第8回~第12回) 国連安全保障理事会では、シリアのような特定の事態のみならず、「テーマ別会合」と呼ばれる一般的な議題も扱われます。そこで、今セメスター後半は、この「テーマ別会合」の一つである「女性、平和、安全保障」のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(現実世界では棄権)、フランス(賛成)、ロシア(棄権)、英国(賛成)、米国(賛成)の5つの常任理事国にドイツ(賛成)、インドネシア(賛成)を加えた7ヶ国を設定し、1ヶ国を1・2人で担当しました。多様な文化・宗教・利害を持つ国々の間でリプロダクティブヘルス/ライツや、安保理で人権問題を話し合うことの是非等をめぐって議論・交渉が繰り広げられましたが、現実世界とは異なり、全会一致で決議案が採択される結果となりました。 第12回では、シリア人道危機の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。

4.受講者の感想

  • 過去の議事録や決議案の中で表出される国家間の利害関係・外交関係や、行動の裏にある政治的意図の汲み取り方を学んだ。
  • 国際社会には多様な立場、考え方があり、そうした違いを埋めるのが大変であるということを知った。特に最初のシリア問題をめぐる議論では、各国の間に「埋められない溝」があるように感じ、利害調整をすることの難しさをひしひしと感じた。
  • 国連で革新的な決議を採択することの難しさを学び、どうして会議が進まないように見えてしまうのかがわかった。
  • 利害対立する国々同士で合意形成、妥協点を見出すことの難しさを実践的な経験として学ぶことができた。相手の立場を理解して交渉にあたることが重要だと感じた。
  • 同じ問題に対する他の国の意見を知ることができるため、なぜその問題が解決されないのか、なかなか議論が前に進まないのか、など問題の裏事情も含めて知ることができる。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンライン授業で大福帳を使う:運用のふり返りと改善

こちらの記事では、オンライン授業での大福帳を使用・運用方法を紹介しました。実際に一学期間(2021年度Sセメスター)運用してみてどうだったのか、学生の感想を紹介しながら、ふり返りたいと思います。またふり返りを受けての改善点についても紹介します。

学生の感想

授業の最終回に、受講した学生に対して大福帳について感想を尋ねました。学生に提示した質問は「この授業では、大福帳を使いました。大福帳を使った感想(メリット、デメリット、使い勝手など)を教えてください。」です。16名の学生から回答を得られました。得られた回答を内容ごとにカテゴリ化しました。一人の学生の記述に、二つ以上の内容が含まれる場合は、それぞれを別々のカテゴリに入れました。 以下では、どのような感想があったのかを紹介します。

ふり返りの機会

授業の内容を整理し、ふり返る機会になったという記述が6件見られました。たとえば、下記のような記述です。
  • 落ち着いて授業を振り返る助けになったかと思います.
  • 授業が終わったらそのままのような状態がなく、必ず1回振り返りをする機会があったのはすごく良かった。
  • 授業内容を整理することができて良かった。
このように、毎回の授業後に大福帳にコメントを記入することで、その日の授業の内容を整理する機会になっていたようです。大福帳を活用する目的の一つに、授業内容の理解と定着が挙げられます。授業内容を整理し、ふり返ることで深い理解に至れる可能性が、ほかの大福帳の実践と同様、今回の運用において示されました。

やり取りの一覧性

大福帳では、第1回から第13回の授業までの学生のコメントと教員からのコメントを一覧として見ることができます。この特徴について7件の記述が見られました。たとえば、下記のような記述です。
  • 手軽だし今までの自分の感想が一眼で見られるのでよかった。
  • 自分が各授業回で何を考えていたかをあとから見られて振り返りには適している。
  • 前回(あるいはもっと前)に何を学習したか、簡単に思い出すきっかけになるので、毎回のアンケートとそれに対するフィードバックよりも良いと思った。
  • 改めて大福帳を振り返ってみると、懐かしいなと思いつつ、学習の進歩が知ることができて良かったです。
このように、過去の自分のコメントを確認したり、学習内容を思い出すきっかけとして見る学生がいたようです。どのように学習を辿ってきたのかがわかるのは、自分自身の学びを自覚することになるのでよかったのではと思います。

教員とのコミュニケーション

大福帳では、学生がコメントを書くだけでなく教員も返事を書きます。そのやり取りに対する記述が2件見られました。
  • 全体の授業内で発言するのがあまり得意でなく、大福帳で先生とやりとりができたのはとても良かったです。
  • メリットとしては、毎回フィードバックをもらえる
大福帳は、学生と教員との個人どうしのやり取りになるため、授業中に質問できなかった学生が大福帳を使って質問したり、意見を述べることが可能です。また、コメントや質問に対する返事を書くことは、フィードバックを与えることになります。間違った理解をしていると思ったら返事の中で補足説明を行うこともあります。このように学生と教員とのコミュニケーションを行えるのは、やはり大福帳の大きな特徴です。学生もそれを実感していたようです。

大福帳の設問内容

今回運用した大福帳では、下の画像のように「新しく知ったこと」、「質問、もっと知りたいこと、そのほかコメント」の2つについて、毎回学生が記入していました。これについて、下記のような記述が7件見られました。
  • 教材作りに入ってからは新しく何かを学ぶというより作業が中心で大福帳に書く内容が少し困った。
  • 作業のパートなどで特に新しいことが起こらないときは書くことに困った。
大福帳を運用した授業では、授業の後半はグループでの議論や作業が中心になります。そのため、「新しく知ったこと」という質問に戸惑う学生が多くいたようです。もちろん、作業をする中で何かを新しく知ることもあると思いますが、そうでない場合が多かったということになります。 どのような設問にするかは要検討です。

提出の手間と操作性

今回の大福帳は、Google ClassroomとGoogleスプレッドシートを用いて運用しました。大福帳提出の手間や操作性について、4件の記述がありました。たとえば、下記のような記述です。
  • ファイルを毎回提出するのは若干手間に感じた。
  • 単純にスプレッドシートへの入力がしにくかったというのはありました
提出の際にGoogle Drivemのファイルを探す手間や、スプレッドシートに慣れていないといった点が操作性の課題として挙げられました。一方で下記のような記述もありました。
マイドライブから提出することに慣れると、スマホからも提出できたので便利だった。
ファイルの選択といった操作に慣れると、記入や提出が容易になるようです。

スケジュール

提出までの期間について、下記の1件の記述がありました。
もう少し猶予があると夜型の人間としては嬉しい。
この授業では、授業が水曜、大福帳の提出締切を金曜にしていました。この期間が短いという指摘です。これについては、締切まで時間があれば良い/悪いという問題でもないように思えます。教員としては授業の内容を忘れぬうちに、なるべく早くふり返りをして欲しいという想いもあります。難しいところです。

運用の改善

学生からのフィードバックを受け、運用を改善すべく、2021年度Aセメスターに開講する同一授業での大福帳の運用を下記のように変更しました。

設問内容

グループでの作業中心になると「新しく知ったこと」への記入が難しくなるとのことでしたので、設問を変更しました。 具体的には、「新しく知ったこと」を、「新しく知ったこと、作業のみの場合は その日やったことや感想」という設問に変更し、作業のみ行った授業回でも、学生自身が何をしたのかという、自身の経験をふり返られるようにしました。まだ作業のみの授業回はないので、この変更により戸惑いがなくなるかどうかはわかりません。今学期も学生に感想を求め、検証してみたいと思います。

提出方法

ファイルを探す手間や、スプレッドシートの操作性といった課題が挙げられました。スプレッドシートでの運用から、エクセルファイルの配布での運用に変更しました。 第1回授業時に、エクセルファイルで作成した大福帳のテンプレートを、Google Classroomの「課題」で「全員にコピーを作成」で学生に配布し、記入、提出してもらいます。ファイルへの記入については、
配布したエクセルファイルをGoogleスプレッドシートで編集してもよいし、ファイルをダウンロードしてパソコンで記入してからファイルをアップロードして提出でもOK
と学生に教示して、学生自身のやりやすい方法で記入・提出してもらうことにしました。この方法についても、学生に意見を聞いてみたいと思います。

おわりに

今回は、一学期間運用した大福帳について、学生の感想をもとに変更した内容を紹介しました。この変更が本当に「改善」となったのかどうかは、現時点ではまだわかりません。また学生に感想を尋ね、運用が改善されたのかどうかを確かめたいと思います。

第3回模擬国連ワークショップ(2021年9月12日)

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2021年9月12日(日)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:57名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)セッション1・2 ■ 小山淑子(東洋大学国際学部 准教授)セッション2 ■ 室田大樹(青山学院高等部教諭)セッション1

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③他のロールプレイの教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション2に相当) ④他のロールプレイの実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」(14:10~15:20) 模擬国連の概要と東京大学教養学部の授業への導入例について授業担当教員の中村からお話した後、青山学院高等部での導入例について同校の室田大樹教諭からお話いただきました。高校・大学それぞれでの導入例を検討する趣旨でしたが、導入目的を明確化する必要があり、模擬国連はあくまでも手段であるという最重要の点は共通していることを再確認する機会となりました。

セッション1の様子

【3】セッション2「ロールプレイ導入事例から学ぶ」(15:40~16:50) セッション1で確認したように、模擬国連はあくまでも手段です。授業の目的によっては、他の手法がより適していることもあります。そこで、小山淑子先生から、演劇等をとりいれた模擬国連以外のロールプレイ手法についてご紹介いただきました。模擬国連はあくまでも手段であるため、授業の目的により適したロールプレイがあれば、それを学ぼうという趣旨でしたが、模擬国連との異同を意識した小山先生のお話のおかげで、模擬国連の特徴を改めて確認する機会ともなりました。

セッション2の様子

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • 実際に授業で使用されている資料も提供いただけたので、実践に向けてかなりハードルが下がりました。
  • 基礎的なことから、具体的な事例・運用方法まで、十分な情報を得られました。ロールプレイをどのように授業に取り入れることができるのか、イメージしながら学習することができました。
  • 高校や大学での実践事例を紹介してくださって、具体的にイメージが沸いてきました。
  • 先生方が試行錯誤しながら、模擬国連などの手法を授業に取り入れている点についてもうかがえて、ありがたく思いました。
  • 「高校・大学教員を参加者とする」模擬国連などご企画いただけると、高校・大学生のように気づきが大きくなるかもしれない、と思いました。

4.次回予告

次回も今回同様、①模擬国連導入事例共有、②模擬国連以外のロールプレイやシミュレーションの導入事例共有を主な内容として開催していく予定です。模擬国連導入のハードルを下げる工夫をより知りたいといった声もありましたので、次回はそうしたTipsについても共有できればと考えています。皆様のご参加をお待ちしております。

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教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:アクティブで双方向的な授業のヒント」開催報告

2021年9月8日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:アクティブで双方向的な授業のヒント」を開催しました。定員を超える方々の申込みがあり、当日は13名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

3月に開催したオンラインワークショップでは、「オンライン授業では学生の様子がわかりにくいこと」や「学生の状態を把握しにくいこと」、「学生からの反応がないこと」、「学生との信頼構築」など、教員と学生とのコミュニケーションや双方向性の確保に関する課題が多く挙げられました。 そこで、本ワークショップでは、オンライン授業における学生の状況把握やコミュニケーションといった双方向性を保ち、授業をアクティブにするためのポイ ントや手法について理解すること、具体的な手法や研究知見を参考にしつつ、グループでのディスカッションやワークを通じて情報共有や課題解決を目指すことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いの自己紹介とワークに取り組みました。ワークでは、教員と学生とのコミュニケーションや双方向性の確保に関する3つの課題への対処法について、参加者の経験やアイデアに基づきGoogleスライドを使いながら議論しました。全体での共有の後、ミニレクチャではTPACK(Technological Pedagogical Content Knowledge)の枠組みを紹介し、テクノロジに関する知識だけでなく教育学的な知識も重要であることを確認しました。そして、ワーク2では、ジグソー法を使ってアクティブラーニングに関する教育学的な知識を学ぶことを伝え、各自が担当する資料を決めました。 休憩を挟んで後半は、ジグソー法を用いたワーク2を行いました。まず、アクティブラーニングの手法、アクティブラーニングに関連する理論や知見、授業運営のポイントの3つの資料のグループに分かれてエキスパート活動を行いました。その後、ワーク1のグループに戻ってジグソー活動を行い、ワーク1と同じ課題への対処法を検討しました。 最後に全体で議論内容を共有し、オンライン授業と対面授業との接続やワークショップ全体のふり返りを行ってワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップでは、どのグループも活発に議論していました。参加者からは、「同じ悩みを共有しているあらゆる分野の先生方とお話しできてよかったです」や「さまざまな先生が色々ご苦労されていることを知って孤独感からは解放されました」といったコメントがあり、本ワークショップが、オンライン授業で陥りやすい教員の孤独感の解消の一助となったと思われます。 また、「自分の授業を振り返り、改善点は多々あるはずだと自覚はあったものの、想像以上に改善方法を学ぶことができました」や「授業のデザインが重要だということは初めて意識するようになりました」、「様々なテクノロジーを組み合わせればオンラインの特徴を生かしたアクティブラーニングができることがよくわかり、そのショーケースとして、このワークショップは非常に参考になりました」といった声が聞かれ、ワークショップそのものや内容が、授業デザインや授業改善、オンライン授業におけるアクティブラーニングの導入に役立った可能性が示されました。 一方で、「グループワークの時間が短く感じた」、「参加者同士の対話を長く」といった声が聞かれました。グループワークでは参加者どうしの意見交換が非常に活発で、それゆえ、時間が足りないという感想に繋がったものと思われます。また、さらに実践的な内容を望む声もいくつか聞かれました。こうしたご意見は、今後のワークショップや情報発信の検討に役立てていきたいと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

ワークショップ「第2回東大生がつくるSDGsの授業」(2021年8月29日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日開催しました下記のワークショップに関して、当日の模様を簡略ながらご報告します。 チラシPDF 日時:2021年8月29日(日)14時~17時 場所:オンライン 参加者数:28名

1.目的

アクティブラーニング部門では、2021年度Sセメスターに、全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」という授業を開講しました。本イベントは、その授業の中で特に優れた授業案を設計した学生たちが、高校生を対象とした授業を実施するもので、2020年度に続き、第2回目の開催となりました。

2.概要

新型コロナウイルスの流行状況を踏まえて、オンライン(Zoom)での開催でしたが、講師の学生たちは可能な限り双方向性を保つために、授業案を設計してイベントに臨みました。

3.プログラム

14:00~14:30 司会挨拶:伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 吉田莉々(東京大学教養学部 2年) 黒瀬淳平(東京大学教養学部 1年) 15:20~15:40 休憩 15:40~16:30 目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を考える〜」 辻美波(東京大学教養学部2年) 山本佳明(東京大学教養学部1年) 16:30~17:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

4.ワークショップの内容

(1)SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 「俯瞰的に見るSDGs〜17の目標間の関係性を考える〜」では、SDGsの成立背景とその理念を念頭に置きながら、社会におけるSDGsの捉え方を考えました。SDGsは個別の目標が極めて真っ当なことを言っているが故に、それぞれの目標が17つ全体としてどの様に達成されるべきかという視点が抜けがちです。目標間のシナジーとトレードオフに着目することで、SDGsというある意味では「不完全な」ゴールを達成していく方法について取り扱いました。授業では、レクチャーに加えて、Jamboard等のオンライン教材を使用したブレイクアウトセッションを挟み、インプットとアウトプットのバランスを重視したスタイルにしました。 (2) 目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を考える〜」 目標4が日本では達成済み扱いではあるものの、実はさまざまな面で格差が残っていることに高校生たちに気づいてほしいと思い、「隠された格差」というタイトルで授業を行いました。まず最初に、目標4の概要や意義、他のSDGsの目標とのつながりについて、チャット機能で発言してもらいながら確認しました。次に、ブレイクアウトルームに分かれて、自分たちの身近なところから、「質の高い教育」とは何か、そこから取り残されてしまう人はどのような人かを考えてもらいました。その後、話し合った内容をグループごとに発表し、考えを共有する時間を設けました。最後にはまとめを行い、気づいた身近な格差について高校生が考えをより深められるようにしました。

5.授業を行った学生の声

授業を行った学生に、参加者の反応はどのようなものであったか、そして授業を実施した感想を聞いてみました。 (1)SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 参加して下さった皆さんが、SDGsが完璧なものではないという視点が斬新で面白かった、と言ってくれたお陰で、自分たちの授業で伝えたかったメッセージを届けられた気がして非常に達成感がありました。また、大学生の自分にはない視点で意見を言ってくれる高校生が沢山いて、自分自身も大変刺激になりました。 SDGsのことを深く学べただけでなく、どの様な準備を行えばより伝わる授業が出来るのかを実践的なワークショップを通じて学ぶことが出来、非常に勉強になりました。SDGsへの興味が深まっただけでなく、それらをどの様に解釈して発信していくか、という視点も必要だなと気付かされました。授業を受けるだけでなく、授業を作るという過程に隠された多くの学びがあることは意外だったし、今後の自分の学習姿勢でも大切にしたいです。(吉田莉々) 受講生の皆さんがSDGsについて興味を持ち、新しい観点や考え方を積極的に学び考える姿勢が印象的でした。受講生の方々とは少しの年の差しかありませんが、自分たちの想定していた反応とは全く異なる意見や、高校生だからこそ出てくる観点というのも多く、非常に勉強になりました。 限られた時間で授業をするためには膨大なプロセスを踏み、試行錯誤をしなければならないということが驚きでした。また、実際に授業をしてみると予想していなかった反応が返ってきたりするので、対応が難しかったです。一方で、授業を通して伝えたかった「SDGsは完璧なものではない」という観点を受講生の皆さんに伝えられたことは達成感があり、とても良かったです。(黒瀬淳平) (2)目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を考える〜」 高校生の、学びたいというまっすぐな思いに心動かされました。授業中は積極的に発言してくれて本当に嬉しかったです。グループワークではそれぞれ興味分野や問題意識は違えど、お互いをリスペクトしあい、他のメンバーの意見から自分の考えを深めようとする姿勢から私自身が多くの刺激をいただきました。 初めて授業設計を行ってみて、その難しさ・奥深さを知り、これまで自分が受けてきた無数の「授業」が、どれほどの労力と愛情をこめてつくられてきたのかについて考える機会になりました。SDGsに関しても、各目標のつながり、その中での目標4の意義など、これまであまり触れてこなかった多くのことを学ぶことができました。(辻美波) 高校生の皆さんが、グループ活動でお互いに活発に学び合う姿が印象的でした。さまざまな地域・高校から参加してくださっていることによって、私たちからだけでなく、受講生どうしからも新しい考え方や気づきを多く得られていたと思います。また自分自身も、高校生の皆さんからそういったものを得ることができ、大変勉強になりました。 授業を設計する時は、受講生に何を伝え何を学んでほしいのか、それをどう表現するのかを考え続け、実際に授業をしている際は、受講生がどのような反応をしているか、それに私たちはどう対応しどう伝えるかを考え続けていました。終えてみると、授業の中にコミュニケーションがあるというより、授業の設計から実施まで全体が一つのコミュニケーションだったと感じ、SDGsや授業作りに加えてたくさんの学びを得られました。そしてなにより、とても楽しかったです。(山本佳明) 文責:アクティブラーニング部門 伊勢坊 綾

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第3回 模擬国連ワークショップ(2021年9月12日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤(https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/classes/class-report/mun_semi_2020s_teacher-2/を踏まえ、参加者とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月の第1回(http://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/mun_ws_2020_03_06_report/)、2020年9月の第2回(https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/event/event-report/mun_ws2/)に続き、3回目の開催となりますが、今回は高校の授業への模擬国連導入事例や模擬国連以外のロールプレイ手法導入事例についても、ご紹介いたします。

1.日時

2021年9月12日(日)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします)

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員50名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連等の授業への効果的導入法について学び、自身の授業や学習にとりいれる ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 他のロールプレイの教育手法としての特徴を説明できるようになる(セッション2に相当) ・ 他のロールプレイの実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~15:30 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」 15:40~16:50 セッション2「ロールプレイ導入事例から学ぶ」 16:50~17:00 まとめ

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科特任助教) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は模擬国連を大学の授業に導入している立場からお話します 小山淑子(東洋大学国際学部准教授) 国連職員として勤務した後、現在はロールプレイを導入した授業を実施している立場からお話します 室田大樹(青山学院高等部教諭) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は模擬国連を高校の授業に導入している立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/T28FNETBpXf72M4L6

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

ワークショップ「東大生がつくるSDGsの授業」(2021年8月29日)開催

カテゴリー: イベント

  東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを昨年度に引き続き開催いたします。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生達が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業が揃っておりますので、是非ご参加ください。 チラシPDF

1.日時

2021年8月29日(日)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします) ※授業ではペアワークやグループワークの場面が多くあります。可能な限りカメラをオンにして参加していただければ幸いです。 ※参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

3.対象者

高校生 [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

14:00~14:30 司会挨拶:伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 吉田莉々(東京大学教養学部 2年) 黒瀬淳平(東京大学教養学部 1年) 15:20~15:40 休憩 15:40~16:30 目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を 考える〜」 辻美波(東京大学教養学部2年) 山本佳明(東京大学教養学部1年) 16:30~17:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

6.お申し込み

以下の申込フォームよりお申込ください。 https://forms.gle/yTDgas3DAy9nVj2n9 ※締切 8/11(水)23:59 ※定員を超える申し込みがあった場合は抽選となります。

お問合せ先

主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 2021-sdgs@kals.c.u-tokyo.ac.jp  

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2021年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2021年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスターから毎期開講しており、今回が4期目の開講となりましたが、受講者は6名(2年生3名、3年生1名、4年生2名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:八尾佳凛(教養学部教養学科国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】 ③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。なお、今セメスターも、前々セメスター・前セメスターに続き、全回ZOOMミーティングを用いたオンライン授業となりました。 模擬国連会議:イラク戦争(第2回~第7回) 2003年3月のイラク戦争開戦直前の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(査察継続派)、フランス(査察継続派)、ロシア(査察継続派)、英国(即時開戦派)、米国(即時開戦派)の5つの常任理事国に「中間派」のチリを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1人で担当しました。現実の会議と異なり決議案が投票にかけられ、即時開戦を避けつつも、査察期限を明確に設け、その結果次第では武力行使への道が開かれる内容の決議案が採択される結果となりました。 第7回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。TAを務めてくれた学生が前年度の受講者であったことから、前年度の模擬国連会議との比較といった観点から議論することもできました。 模擬国連会議:DPRKの核開発(第8回~第12回) 2017年9月のDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)による6度目の核実験後の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(圧力強化消極派)、フランス(圧力強化積極派)、ロシア(消極派)、英国(積極派)、米国(積極派)の5つの常任理事国に日本(積極派)を加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1人で担当しました。現実の会議と同様、経済制裁の強化を盛り込んだ決議案が採択される結果となりました。 第12回では、イラク戦争の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについて、①国際関係の知識・技能面、②合意形成の知識・技能面の両面からふりかえりました。教員からは、2000年代のイラク情勢が2010年代以降のDPRK情勢、ひいては大量破壊兵器全般をめぐる問題に、どのような影響を与えているかを問題提起し、受講者間の議論を促しました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。 授業スケジュール

4.受講者の感想

  • Policy Paperを準備する中で、公式会合の発言では出てこないようなより深い利害関係や、意図などをある程度汲み取ることができた。また、各国の態度は多いに国内情勢の影響・拘束を受けることがわかった。
  • 安心供与のような国際関係論の理論を使いつつ学べた。
  • 自国にとってはあまり重要性の高くない国・地域の課題について、安保理におけるプレゼンスや大国との関係性を維持しながら関わる必要があることを学んだ。
  • 五大国とそうでない国のどちらも経験したことで、国連安保理において様々な国がどういったモチベーションをもって臨んでいるのか少し体験できた。
  • 交渉の中ではしばしば妥協することが必要となる。ゆえに、これ以上は譲ってはいけないというボトムラインを設定し、それを会議中も明確に意識することが重要だと学んだ。
  • オンラインのため、対面での交渉に伴う緊張感のようなものを味わえなかった。言葉だけでなく、表情や仕草からも相手の意図を察知する経験が積めればなおよかった。
  • Policy Paperで問いがすでに立てられていて、またフローチャートみたいな形で授業が展開されていて、参加している身としても授業の流れが非常にわかりやすかったです。

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教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンライン授業でポスターセッションアレンジ版で発表

オンライン授業での学生による成果物発表、どのようにされていますか?少人数のクラスであれば、Zoomのメインセッションでグループもしくは学生が交代で画面共有などして発表するかもしれません。大人数でのクラスの場合、いくつかのグループに分けてブレイクアウトルームを設定し、そのグループ内で発表してもらうこともあるかもしれません。 対面授業での発表形式の一つに、ポスターセッションがあります。ポスターセッションは、学生が一人ずつ、もしくはグループでポスターを作り、ポスター発表と他のポスターへのコメントを授業中に行う活動です(+15 minutes pp.40-41)。特に、グループでポスターを作成した場合は、一人のメンバーを説明者としてポスター前に配置し、残りのメンバーは他のグループのポスターを閲覧して内容を検討するやり方を行うこともあります。 今回は、グループでポスターを作成した時のポスターセッションのやり方を援用した、オンライン授業での学生による成果物発表のやり方を紹介します。

発表方法の概要

ここでは、クラスに5グループ(1グループ3〜4名)ある授業での発表方法を想定します。各グループで作成している成果物の中間発表を行い、各グループの成果物について進捗状況の共有や工夫している点、困っている点を発表を通じて共有し、他グループの学生からコメントをもらったり、他グループの成果物の良い点に気づけるような機会を設定します。さらに、それらを踏まえて自分たちの成果物の改善点を明らかにすることを目的とします。またグループのメンバー全員が発表に関わってもらえるよう、全員に発表機会を与えることも目指します。 これらをまとめると、発表方法を検討する際の要件は下記になります。
  • クラスには、5グループ(1グループ3〜4名)ある
  • 他の学生からのコメントを得られるようにする
  • なるべく多くのグループの様子を見てもらえるようにする
  • 全員が何かしらの発表や質問への回答を行える
  この要件を満たすため、ポスターセッションのやり方を援用し、次のような発表を行うことにしました。
  • クラスを3つの大グループにわける→1グループ4名の場合、1つの大グループに同じグループの学生が2名いる場合もあり、その時は1人は発表、もう1人は発表の補足や質問への回答を行う
  • それぞれの大グループには、5グループの学生が一人ずつ入る→1つの大グループは、グループA, B, C, D, Eの各メンバーで構成される
  • 大グループごとにブレイクアウトルームを設定する
  • ブレイクアウトルームでは、5グループの学生が順番に発表し、その発表に対して互いにコメントし合う
  • 大グループでの発表・相互コメントの後、自分のグループに戻り、得たコメントや質問、他グループの成果物に対する感想や参考になる点を共有し、自分たちの成果物の改善点について議論する
なお、大グループでの発表については、相互評価を行えるチェックシートを使います。その詳細については、こちらをご覧ください。

授業前の準備

発表時間を決める

1コマで発表を行う場合、どのくらいの時間を発表時間に使えるか、時間配分を検討します。たとえば、90分の授業のうち、中間発表に使える時間が50分だとすると、1グループ10分が持ち時間になります。その10分のうち、4分で発表、6分で質問・相互コメントを行う…といった設定を行います。 今回は、中間発表後に各グループに戻ってコメント共有をしますので、たとえば、90分を次のように配分します。
時間配分 授業内容
15分 導入(学習目標・授業の流れの説明、発表方法の説明など)
55分 中間発表(大グループでの発表、質問・相互コメント)
15分 各グループでの情報共有
5分 まとめ、次回授業の予告など
導入は実質10分の予定ですが、ブレイクアウトの準備のため余裕を持って15分としました。中間発表も同様に、実質50分ですが余裕を持って55分を想定しています。

大グループでの運営方法を決める

3つの大グループに分かれた後、発表がスムーズにいくような運営方法を検討しておく必要があります。1グループあたり「4分で発表、6分で質問・相互コメント」であることを学生に伝えることはもちろんのこと、発表順や進行役を決めておくことも欠かせません。 また、この形式を取る場合、TAがいるかどうかが運営に大きく影響します。TAがいる場合は、大グループに入ってもらい、進行役を担ってもらうとよいでしょう。TAがいない場合が大変です。教室ですと、教員一人でも問題なく進められますね。オンライン授業ですと、大変です。 実は今回は、TAがいない状況でこの発表方法を実施しました。なにかトラブルがあった場合、あるいは発表運営がうまくいかない場合にすぐにフォローできるようにしておかねばなりません。そのため、今回は、3台の端末(パソコン/タブレット)を使いました。3つの大グループのうち、1つのグループはメインセッションで発表などしてもらい、残りの2グループを2つのブレイクアウトルームに割り当てます。3台の端末のうち、2台の端末でそれぞれのブレイクアウトルームに参加し、状況をモニタリングすることにしました。

相互評価のためのチェックシートを用意する

相互コメントの観点を明確にするため、相互評価チェックシートを用意しました。これについての詳細は、こちらをご覧ください。

成果物の共有方法を決める

学生は、自分のグループで作成した成果物について発表します。その成果物をどのようにほかの学生たちと共有するかを決めておきます。成果物の内容・種類によっても共有方法は異なると思いますが、たとえば、発表時に画面共有で提示してもらう、というのも一つの方法です。 今回は、Google Driveにすべての成果物がありましたので、授業開始前の時点の成果物を「中間発表用フォルダ」にコピーし、相互閲覧できるようにしました。その時、コピーした成果物の編集権限を「閲覧のみ(コメント可)」に設定しました。これは、中間発表前までの成果物と、その後の改善した成果物との違いがわかるようにするためです。授業の最終回で学生たちが学習プロセスを振り返ることを予定していたため、中間発表時点での成果物が確実に残るようにしたのです。

授業中の運営

中間発表用の大グループを設定する

中間発表では3つの大グループにわかれます。授業開始後、各グループから最低1人のメンバーがそれぞれの大グループに入るよう、ブレイクアウトを設定します。

中間発表の様子をモニタリングする

3台の端末を駆使して(?)、それぞれの大グループの様子をモニタリングします。うまく進んでいない場合は、適宜介入します。 またトラブルなど起きた場合は、「ヘルプを求める」を押してもらうように学生に伝えておきます。ヘルプを求められた場合は、その大グループにいき、対処します。

時間管理について通知する

発表を時間どおりに進めるため、1グループ目の発表時間が終わる頃にブレイクアウトの機能を使って全員にメッセージを通知します。同様に、次のグループに移るぐらいの時間にも通知を出します。

各グループのブレイクアウトを設定する

中間発表後、各グループに戻って情報共有しますので、そのためのブレイクアウトを設定します。TAがいない場合は、ブレイクアウトを設定している間は、「中間発表でもらったコメントや他グループの様子をふり返ってください。グループに戻ったらどんなことを共有するか考えておいてください。」と学生に伝え、考える時間を作ります。

授業後にやること

授業中は、中間発表に対して、教員から十分にフィードバックすることができません。そのため、授業後に各グループの成果物にコメントなどするとよいでしょう。また、各ブレイクアウトルームの様子を各端末でレコーディングすることもできます。各ブレイクアウトルームでの中間発表をレコーディングしておき、授業後に改めて様子を確認したり、フィードバックの参考にすることもできるでしょう。

この方法を使った感想

多くのグループの発表に触れられる

この方法を試行した授業での成果物は、ほかのグループの成果物を見ることで自分たちの成果物の質を高められる性質のものでした。そのため、なるべく多くのグループの成果物を見る機会を作ることが、最終的な成果物作成に有用でした。 学生からの授業後のコメントでもほかのグループの進捗や成果物が参考になったという意見が得られており、この方法で中間発表を行ったことで、その目的は達成できたと考えられます。

全員が発表の機会を持てる

オンライン授業に限らず対面授業においても、グループワークに積極的に参加しない、フリーライダーになってしまう問題があります。全員が発表することは、自分のグループの活動内容を把握し、グループワークを自分事と捉えられる機会になりえます。その点において、この方法は良いなと思いました。

グループの数が多い場合どうするか

今回は、クラスに5つのグループがありました。もし、10以上のグループがあった場合、どのように運営するのかについては検討が必要です。特に、大グループの組み方を工夫する必要があるのですが、場合によっては大グループ自体が5つなど多くなる可能性もあります。大グループが多くなると、TAがいたとしても発表運営が難しくなるでしょう。 グループの数が多い場合は、授業の学習目標到達のために、何を優先するかを見定めて運営方法を決める必要があります。たとえば、より多くのグループに触れることを優先するのか、それとも全員が発表する機会を優先するのかで、運営方法が変わってきます。それらが学習目標到達のためにどのように影響するのかを検討して運営方法を決めるのがよいでしょう。 一方で、対面授業の場合は状況が変わります。対面授業では、教員が一人で授業運営していたとしても、それぞれの大グループの様子を俯瞰的に見ることが可能です。もちろんグループ数にもよりますが、オンライン授業とは異なり、グループの数が多くなっても運営しやすいと考えられます。

モニタリングが大変

上記のグループの数が多い場合や、TAの活用にも関連することですが、複数のブレイクアウトルームをモニタリングするのはなかなか大変です。3台の端末の音量を小さくしたり、大きくしたりして、優先的に視聴するブレイクアウトルームを切り替えてモニタリングするのですが、トラブルが生じたりすると混乱しがちです。TAや、手助けしてくれる人がいる方が、安心です。

TAがいたほうが良い

大グループでの発表運営を円滑に行うためには、TAがいたほうがよいです。大グループの数によっては、教員一人でも運営できます。大グループが多くなればなるほど、TAがいたほうが、トラブル時に対処しやすくなりますし、安心です。また発表に対するフィードバックという観点でも、TAがいて学生の発表にコメントしてもらえるようにしておくと、学生の学びを深めることに繋がると思います。   今回は、ポスターセッションのやり方を援用したオンライン授業での発表方法を紹介しました。発表の目的や、学習目標との関連によって、どのような方法がいいのかを検討・決定していくことが重要だと思われます。

オンライン授業で相互評価

オンライン授業で相互評価を行うにはどのようにすればよいでしょうか?学生どうしの教え合い・学びあいの手法の一つとして、相互評価があります。相互評価は、レポートのピア・レビューとして行われることが多いですね(+15 minutes p.23)。 ここでは、オンライン授業での学生による口頭発表の相互評価を行う方法について紹介します。

授業前の準備

やり方を考える

発表の方法を決めた後、相互評価の方法を決めます。 発表は、個人なのかグループなのか、1人(1グループ)あたりの発表時間はどれくらいなのか、何を発表してもらうのか…といった発表の概要を決めた後、相互評価を行う時間と手順を来ます。 実際にオンライン授業で行った際は、こちらの記事で紹介したポスターセッションアレンジ版での発表の際、相互評価を行いました。具体的には、1グループが口頭で発表した後、学生一人ひとりが評価シートに記入する時間を設け、さらにその後でコメント・議論を行うという流れで実施しました。

評価シートを作る

発表内容や方法にあわせて、相互評価に用いる評価シートを作成します。 評価シートは、発表の目的によっても項目が変わってきます。今回はポスターセッションアレンジ版での発表の際を具体的には取り上げます。この時は最終的な学習成果物の中間発表という位置づけでした。そのため、学習成果物の質的な評価の項目に加えて、改善したほうが良い点といった自由記述の項目も設定しました。 また、学習成果物の質的な評価の項目は、すでに授業で扱った内容に基づいて設定しました。今回の授業では、最終的な学習成果物は「教材づくり」でした。教材開発の理論やポイントを授業でも扱っていましたので、中間発表の評価項目には教材開発のポイントを押さえているかどうかを相互評価してもらいました。

評価シートの配布方法を決める

今回は、グループでの成果物の発表に対する相互評価でしたので、グループごとに評価シートとなるGoogleスプレッドシートを設定しました。そのスプレッドシートに評価シートをコピーして、発表者以外の学生や教員が評価できるようにしました。少しわかりにくいので例を出します。 こちらの画像のように、発表を行うグループごとにスプレッドシートを用意し、さらにその中に評価者ごとにシートを作り(画像下部の「評価者名」のあたり参照)、相互評価できるようにしました。スプレッドシートなので、多肢選択式の評価を行う時は「データの入力規則」を設定すれば、プルダウンで選択肢を選択できます。雛形となるシートを作った後、評価者の人数分そのシートをコピーすれば相互評価の準備は完了です。 ※選択肢をプルダウンで設定する方法はこちらをご覧ください。

学生への教示内容を決める

相互評価の手順をどのように学生に伝えるかを考えます。グループごとに評価シートがあることや、学生自身がどの評価シートを使えばよいのか…といったことが少し複雑ですのでわかりやすく手順を説明できるようにしっかりと考えておきます。

授業中の運営

学生に相互評価の手順を説明する

発表の仕方と併せて、相互評価の方法を学生に伝えます。また発表や相互評価の目的も伝えます。今回の場合では、「教材設計の理論やポイントに則って教材を開発できているか(質を確保できているか)の確認と改善点を明らかにすること」を目的としていました。

評価シートのリンクを共有して開いてもらう

相互評価の手順とともに、評価シートのリンクを共有して開いてもらいます。実際の評価シートを見てもらうことで、手順もよりわかりやすくなります。

トラブルがあれば対応する

うまく評価シートを開けない、誤った評価シートを使ってしまう等あれば、都度対応します。

この方法を使った感想

発表を能動的に聞ける

集中して聴ける場づくりのコツとして、発表へのコメントを求めるというものがあります。相互評価はまさにこれにあたります。評価シートを書くために能動的に他者の発表を聞く姿勢になります。 また、学生からは、他者の発表を聞いて評価することで、自分たちの学習成果物の改善点に気づくことができたといった感想が得られました。能動的に発表を聞き、相互評価を行うと、評価される側は意見を得られますし、評価する側も自身の学びをふり返り気づきを得られます。

評価シートの記入時間を考慮する

評価シートの項目が多すぎると、たとえそれが「はい」「いいえ」での選択式だったとしても想定以上に時間がかかります。評価シートの記入時間を多めに確保しておいたり、評価項目の数を絞っておくといった工夫が必要です。 学習成果物によっては評価の観点を明示することが必要な場合があります。できればそれらの観点を評価シートに組み込むのが理想ではありますが、評価項目の数を絞りたい時は、観点を別途学生に伝え、コメントのみを記入してもらう、という方法もあるでしょう。

フィードバックのタイミングでツールを選ぶ

今回の授業では、相互評価の内容をすぐに学生にフィードバック(共有)したいという希望がありました。そのため、Googleスプレッドシートを直接学生たちと共有し、評価してもらう方法を選びました。 相互評価の結果を学生とすぐに共有する必要がない場合であれば、Googleフォームなどフォームを使って評価やコメントを送信してもらう方が楽かもしれません。その場合、授業後に、フォームで送られた内容をグループや個人ごとに分けたり、共有したり…といった作業が必要になります。 フィードバックのタイミングや作業の手間を踏まえて、相互評価のツールや手順を検討するとよいでしょう。  

オンライン授業でジグソー法を行う

「ジグソー法(ジグソー・メソッド)」は、あるトピックやテーマについて複数の視点で書かれた資料をグループに分かれて読み、自分なりに納得できた範囲で説明を作って他の人とその情報を交換し、交換した知識を統合してテーマ全体の理解を構築する手法です(+15 minutes p.34)。具体的な実施手順は、こちらの動画をご覧いただくとわかるかと思います。 教室で行われる授業では、複数の資料を紙に印刷してそれぞれの資料を担当する学生(エキスパートグループ)に配布し、読み込んでもらった後、グループを組み替えて(ジグソーグループ)、テーマについて議論を行います。 オンライン授業でもジグソー法を実践することはできるでしょうか。ここでは、具体的な方法をお伝えします。

授業前の準備

資料の準備と問いの設定

エキスパートグループで使う資料を準備します。またジグソーグループで議論するテーマや問いを考えます。これらは、教室で行う場合と同様です。

ジグソーグループでの議論のアウトプット方法を考える

教室で行う授業の場合は、ジグソーグループで議論した内容をワークシートや模造紙、ホワイトボードなどに書き出すことが多いと思います。オンライン授業で行う場合も、アウトプットしてもらうことがあるでしょう。特に、オンライン授業で各グループの進捗状況を把握するには、何らかのアウトプットをしてもらい、教員やTAがそれを見て把握することが、介入に有効だと思われます。 たとえば、Google ドキュメントやGoogleスライドなどを学生と共有、共同編集可能な状態にして、そこに議論した内容を書き出してもらうことができます。あらかじめ、議論してもらう問いを記入しておくと、ブレイクアウトでグループにわかれ、教員の指示が届きにくくなったとしても、学生はスムーズに議論を進められるでしょう。 また、議論をオンライン上にアウトプットする際、対面授業での議論とは異なる注意点があります。それは、「しっかりと口頭で議論してからGoogleドキュメントなどにまとめること」です。学生のグループによっては、口頭での議論を行わずに、問いに対する自分の考えをGoogleドキュメント上に書き出したり・・・といった状態になるかもしれません。もちろん思考の可視化という点では有効ではありますが、議論して考えを深めるという点では十分ではないと思われます。 そのため、「まず最初に口頭で議論してからドキュメントにまとめる」という指示を出したり、あるいは、ドキュメントにまとめる役割の人を設けたりするとよいでしょう。

資料の共有方法、アウトプットのファイルの共有方法を考える

どのように資料などを共有するかを考えましょう。 多くの場合は、LMSにアップロードするのではないかと思います。ご自身の授業の環境にあわせて方法を考えてみてください。

授業中の運営

手順の説明

ジグソー法は、エキスパート活動とジグソー活動とでグループの組替えを行います。少し複雑になりますので、手順をしっかりと学生たちに伝えることが大切です。 たとえば、下記のような図を使うとわかりやすいかもしれません。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス このジグソー法の手順を説明するイラストは クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。 ※ 本ウェブサイトのコンテンツのうち、このイラストについては、CC-BY 4.0 の下で利用いただけます。どうぞご自身の授業などでお使いください。

資料の選択

学生に資料を選択してもらいます。資料のタイトルを提示し、必要であれば口頭で説明した上で、担当を希望する資料を選んでもらいます。 その時、Zoomなどの表示名を変更してもらうとよいでしょう。たとえば下の画像のように、「資料名_氏名」といった表示名にしてもらうと、誰がどの資料を希望しているのか、担当しているのかがすぐにわかります。 人数に偏りがある場合は、別の資料に変更してくれるボランティアを募るなどして調整しましょう。

ブレイクアウトルームの準備

エキスパート活動のブレイクアウトの準備を行います。表示名を参考に、同じ資料の学生どうしでグループを組むように設定します。1グループ 3〜4名だと、学生も話しやすいでしょう。 TAがいる場合は、TAにブレイクアウトの準備を行ってもらうと、すぐにブレイクアウトの活動=エキスパート活動に移れます。TAがいない場合は、自分が担当の資料を読んでもらい、その間に教員がブレイクアウトを準備すると、時間のロスがなくなります。

エキスパート活動のアウトプット

エキスパート活動では、資料の内容について、何が書かれていたかの確認や、ジグソー活動でどのように説明するか、といったことを議論します。エキスパート活動でも議論内容をメモできるドキュメントを用意しておくと、ジグソー活動での説明を行いやすくなります。

ジグソー活動の説明とブレイクアウトルームの準備

エキスパート活動が終わったら、いったんクラス全体(メインルーム)に戻り、ジグソー活動に移ることを説明します。 そして、教員はジグソー活動のブレイクアウトルームを準備します。各資料が組み合わさるように、表示名を参考にしてグループを組みます。TAがいない場合は、時間のロスを防ぐため、「ジグソー活動で自分の資料についてどのように説明すればよいか考えて準備する」ことを学生に指示し、その間にブレイクアウトルームを準備します。 そして、ジグソー活動に移ってもらいます。

この方法を使った感想

学生を待たせない工夫

初めてオンライン授業でジグソー法を行った時は、ブレイクアウトの準備に手間取り、学生が待機してしまうことがありました。途中で、学生への指示(資料を読む or 説明の準備)をするようにしたので、「学生がボーッと何もしない時間」というのをなくすことができました。

学生の状況がわかる

予備端末でブレイクアウトルームを巡回すると、グループでの話し合いの様子がわかります。また、アウトプット(Googleドキュメントなど)の状況を確認することでも、進捗やどのような議論が行われているのかを把握することができます。 対面授業とは異なるやり方ではありますが、必要最低限の状況は把握できそうです。

反転授業として行える

各自の資料の読み込みを事前学習として行い、授業ではエキスパート活動の議論から始めることもできます。特に、資料を読むだけでなく調べ学習も必要な場合は、事前学習として資料の読み込みと調査を行ってもらうとスムーズに授業を進められそうです。

資料の媒体を選ばない可能性

教室でジグソー法を行う時は、プリント教材、テキスト教材を資料として使うことが多いのではないでしょうか。一方、オンライン授業の場合、学生たちの手元にはパソコンやスマホがありますので、資料として使える媒体が多様になるでしょう。 たとえば、動画をエキスパート活動の資料として各自の端末で視聴してもらう・・・といったことを行えます。教室で行う場合は複数のパソコン等の端末が必要になりますし、手間という観点では、オンライン授業でのジグソー法のほうが少ないかもしれません。

人数が多いとブレイクアウトルームの準備が大変

今回は、15〜20名のオンライン授業でジグソー法を使いました。エキスパート活動、ジグソー活動ともに5〜6グループでしたので、ブレイクアウトルームの準備は容易でした。 人数が多くなると、その準備が大変になりそうです。TAに準備してもらったり、学生を待たせない工夫がより重要になるかもしれません。

オンライン授業でも十分行える

「オンライン授業でジグソー法」と聞くと、「できるのかな?」「無理じゃないの?」と感じられる方もいるかもしれません。実際にやってみると、オンライン授業でも十分に行えるということを実感しました。 オンライン授業では、対面授業以上に授業をアクティブにすることが大切です。講義ばかりですと、学生の集中力は持ちません。そんな時にジグソー法はとても有効だなと感じました。講義しようと思っている内容を分割してジグソー法で学生どうしで情報共有や意見交換してもらうことで、学生は集中して授業に参加できます。 また学生どうしの説明について内容の正確性に不安があるのであれば、補足資料として講義動画を用意しオンデマンド配信することもできます。 オンライン授業での講義・説明をアクティブにする方法として、ジグソー法を使ってみてはいかがでしょうか?  

オンライン授業で大福帳を使う

「大福帳」は、学生が授業をふり返ったり、学生と教員がコミュニケーションできる手法で、出席の促進や積極的な受講態度、信頼関係の形成、授業内容の理解と定着を図れます(参考:「+15 minutes」p.26)。 教室で行われる授業では、13回の授業分の記入欄を作ったカードを学生に配布し、学生がコメントを記入して提出、そこに教員が短い返事を書いて次回授業時に返却…ということを繰り返します(参考:13回用の大福帳(Excelファイル))。 それでは、オンライン授業では、大福帳は活用できないのでしょうか。オンライン授業は、教員と学生のコミュニケーションが不足しがちです。オンライン授業でも大福帳を取り入れることで、学生の理解度や質問を把握して回答でき、さらにコミュニケーション機会を得ることもできるでしょう。 須曽野ら(2006)は、ウェブでコメントを読み書きでき、学習者どうしもコミュニケーションできる「電子大福帳」を開発しています。向後(2007)は、eラーニングシステムのテスト機能を使った「e大福帳」をeラーニング授業に導入し、学生が感じる孤独感の軽減などの効果を述べています。一方で、自分の履歴を一覧で確認できないといった改善点を挙げています。また、伊豆原・向後(2009)では、大福帳の機能を「レビューシート」という名前でLMSに実装してeラーニング授業で利用し、授業評価への効果を検討しています。さらに、早川(2017)は、「オンライン版大福帳」のウェブアプリケーションを開発しており、サービスとして提供しています。  

オンライン大福帳に必要な要件

「オンライン版大福帳」は便利に使えそうです。しかしここでは、大学で提供されているプラットフォームを使うことを目指したので、今回は使わないことにしました。(補足:オンライン版大福帳は、LMSとの連携も行えるそうです。これを行えば、大学で提供されているLMSでも利用できそうです。) ここで求めるオンライン大福帳の要件は下記になります。
  • 大学で提供されているプラットフォームを使って行える(登録などのレクチャーを減らしたい!)
  • 学生がコメントなどを記入できる
  • 教員が返事のコメントを記入できる
  • 学生のコメント、教員のコメントの履歴が1枚にまとまっている
  • 大福帳を閲覧できるのは、その学生と教員だけ
  • 終了した回のコメントは編集できないようにしたい
  これを満たす方法はないものか…エクセルを毎回提出してもらう方法、Google スプレッドシートを提出してもらう方法、LMS(東大の場合ITC-LMS)の掲示板での投稿など、様々な方法を考えました。そして最終的に、Google ClassroomとGoogle スプレッドシートを使った大福帳を試すことにしました。

Google Classroomを使った大福帳の実施手順

手順について説明します。 1.Google スプレッドシートで大福帳のテンプレートを作成する   2.【初回授業】Google Classroomの課題で大福帳のテンプレートを配布する   3.提出された大福帳にコメントを書く 4.すでに終わった授業回のコメント欄のセルを「保護」し、教員のみに編集権限を設定する   5.大福帳(課題)を返却する 6.【2回目以降の授業】Google Classroomで大福帳提出の課題を設ける →すでにスプレッドシートは初回授業で配布してますので、Google ドライブ上の初回授業で使った大福帳のスプレッドシートを提出するように指示します。 7. 3.〜5.を行う

この方法を使った感想

実際にこの方法を試してみて、気づいた点、良いなと思った点を紹介します。

スプレッドシート(テンプレート)の配布が容易

Google Classroomの「課題」では課題作成のページで、Google スプレッドシートをどのように提供するかを選択できます。そこで「各生徒にコピーを作成」を選択すると、テンプレート(Google スプレッドシート)が自動的に学生のGoogleドライブにコピーされ、そこに学生は記入など行えます(参考ページ)。 配布後に体裁を整える指示をしたり、コピーして保存することを求めるといったことをしなくて良いので楽だなと感じました。

権限の自動変更が便利

Google Classroomでは、課題の提出や返却を行うと自動的にドキュメントの権限が変更されます。課題提出後は教員だけが編集可能になります。その際に、コメント欄(セル)の「保護」を設定することができます。 これは、単にスプレッドシートを共有するだけではなかなか難しいので(教員がオーナーで各学生と共有すればできますが手間が発生します)、Google Classroomを使うことで得られるメリットだと思います。

返事のコメント記入の負担軽減

この方法での大福帳に限らず、電子的な大福帳を行う場合はすべて当てはまりますが、紙ベースの大福帳よりも返事を書くのが早く、楽にできます。今回は受講者20名ほどの授業で使いました。大講義の場合は、定型文を用意するなどすることで、負担増加を抑えられるでしょう。

コメントの分量に制限がない

また分量を気にしなくてよいのも利点です。手書きの場合だとコメント欄の「枠」が決まっていましたが、その制限がなくなるので学生も教員も長文のコメントを記入できます。 しかし、長過ぎるコメントは、読む側の学生のことを考えると避けたほうがよいでしょう。

Google Classroomのメイン使用

この大福帳を運用するならば、授業で使うプラットフォームはGoogle Classroomになるでしょう。大学が提供するLMS(東大の場合ITC-LMS)と併用することもできますが、複数のプラットフォームを行き来することになってしまいますし、使用するプラットフォームは一つにしておいたほうが混乱は少なくなると思います。 教員がGoogle Classroomを使ったことがない場合などは、このやり方はハードルが高くなるかもしれません。 また中国からのアクセスができないといった状況もありますので、授業によっては利用できないことがありそうです。

今後の予定

この大福帳は、Sセメの授業で使い始めたばかりです。運用上の課題など出てきましたら追記します。 また、学生にも使い勝手など感想を聞いてみたいと思っています。その結果もいずれこのサイトでお知らせします。  

参考文献

  • 須曽野仁志・下村勉・織田揮準・小山史己(2006)授業での学習交流を目指した「電子大福帳」の開発と実践. 三重大学教育実践総合センター紀要, 26, pp.67-72
  • 向後千春(2007)eラーニング授業でコミュニケーションカード「e大福帳」を使う. 日本教育工学会研究報告集, JSET07-5, pp.297-300
  • 伊豆原久美子・向後千春(2009)eラーニング授業におけるレビューシートの利用が授業評価に及ぼす効果. 日本教育工学会論文誌, 33(Suppl.), pp.53-56
  • 早川美徳(2017)オンライン版「大福帳」を用いた授業改善. 大学ICT推進協議会 年次大会論文集 https://axies.jp/report/publications/papers/papers2017/
 

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:1年間のふりかえりと課題解決のヒント」

2021年3月10日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:1年間のふりかえりと課題解決のヒント」を開催しました。定員を超える方々の申込みがあり、当日は17名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

本ワークショップは、1年間のご自身の取り組みをふり返り、授業でうまくできたことや課題を思い出して共有し、さらにオンライン授業をアクティブにすることについて検討することを目的としました。また、本ワークショップを通じて、オンライン授業をアクティブにすることについてのヒントを参加者が持ち帰り、2021年度のオンライン授業への不安軽減を目指しました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いに自己紹介を行いました。そして、オンライン授業の課題をグループごとに共有しました。「アクティブラーニング」や「アクティブにすること」についてのミニレクチャを挟んだ後、課題の分類と解決方法についての議論を行い、グループごとに議論の内容を発表しました。最後に、オンライン授業をアクティブにすることについてミニレクチャを行い、ワークショップを終えました。
  1. 開会の挨拶・趣旨説明 14:00-14:10
  2. 自己紹介 14:10-14:25
  3. ワーク(課題の共有と分類)、ミニレクチャ(アクティブにするとは?) 14:25-15:20
  4. 休憩 15:20-15:35
  5. ワーク(課題解決の議論と発表)、ミニレクチャ(課題解決のヒント) 15:35-16:25
  6. 閉会の挨拶 16:25-16:30

当日の様子と参加者の反応

ワークショップでは、どのグループも活発に議論していました。参加者からは、「同じ問題に悩んでいることがわかってほっとした」や「いいアイディアをもらった」といった感想が聞かれました。オンライン授業の運営は孤独になりがちです。本ワークショップでの課題共有や議論がそれを解消する一つの機会になったのであれば幸いです。 ワークショップ後にアンケートを実施しました(参加者17名のうち14名が回答)。「本ワークショップに満足されましたか」という質問に対しては全員の方が「とてもあてはまる」もしくは「ややあてはまる」のいずれかに回答されました(とてもあてはまる/ややあてはまる/あまりあてはまらない/まったくあてはまらないの選択肢から1つ選択)。また、「授業のふり返りに役立った」、「2021年度の授業準備・実施に向けて役立つものだった」、「本ワークショップへの参加を周りの教員に勧めたいか」という質問についても、全員の方が「とてもあてはまる」もしくは「ややあてはまる」のいずれかに回答されました。これらのことから、本ワークショップの目的はある程度達成されたと考えられます。 一方で、「2021年度の授業をアクティブにすることができそうか」、「不安が軽減されたか」という質問に対しては「あまりあてはまらない」という回答がありました。併せて、教員の実践状況にあわせたワークショップ(たとえば初級編や上級編など)や、手法の実践方法や事例といった、より個別テーマを深めるワークショップのご要望もありました。こうした結果を踏まえ、今後は、授業をアクティブにすることに寄与し、授業への不安軽減につながるワークショップを企画していきたいと考えています。 また、運営という観点では、グループワークにおける作業手順や時間の伝達といった点において不備がありました。ワークショップ中に改善できる点は改善しましたが、改めてオンラインでのワークショップ運営の困難さを痛感しました。今後のオンラインワークショップの運営に活かしたいと思います。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

『東京大学のアクティブラーニング』(東京大学出版会、2021年)刊行

刊行のお知らせ

東京大学教養教育高度化機構アクティブラーニング部門編『東京大学のアクティブラーニング―教室・オンラインでの授業実施と支援』(東京大学出版会、2021年)が3月24日に刊行されます。 東京大学におけるアクティブラーニング型授業の事例(人文・社会科学、自然科学、教育手法開発の各分野から3授業ずつ計9授業)や、アクティブラーニング授業を支える取り組み(ティーチングアシスタント・専門スタッフによる支援、アクティブラーニング教材開発など)を紹介する1冊です。対面授業に加えて、オンライン授業での試行錯誤についても触れています。詳細は、http://www.utp.or.jp/book/b555753.html(東京大学出版会)をご覧ください。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンライン授業でのアクティブラーニングに関するAL NEWSLETTERを公開しました!

アクティブラーニング部門では、AL NEWSLETTERを発行しています。 この度、オンライン授業におけるアクティブラーニングの課題や対策・工夫、授業支援、学びを深めるポイントなどについて執筆したAL NEWSLETTERを公開しました。 こちらよりご覧いただけます!! 2021年度の授業を考えるご参考にしていただければ幸いです。

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅱ」(2020年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅱ」(2020年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスター、2020年度Sセメスターに続いて3期目の開講となりましたが、受講者は7名(2年生3名、3年生3名、4年生1名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:九島佳織(総合文化研究科国際社会科学専攻国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

授業スケジュール ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。なお、今セメスターも、前セメスターに続き、全回ZOOMミーティングを用いたオンライン授業となりました。 模擬国連会議:シリア人道危機(第2回~第7回) 2010年代を通して続いているシリア人道危機についての国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(シリア政府擁護派)、フランス(シリア政府批判派)、ロシア(シリア政府擁護派)、英国(シリア政府批判派)、米国(シリア政府批判派)の5つの常任理事国に「中間派」の南アフリカを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1・2人で担当しました。現実の会議と異なり、棄権はあったものの反対票が投じられることはなく、決議案が採択されることとなりました。 第8回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。 模擬国連会議:女性、平和、安全保障(第8回~第12回) 国連安全保障理事会では、シリアのような特定の事態のみならず、「テーマ別会合」と呼ばれる一般的な議題も扱われます。そこで、今セメスター後半は、この「テーマ別会合」の一つである「女性、平和、安全保障」のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(現実世界では棄権)、フランス(賛成)、ロシア(棄権)、英国(賛成)、米国(賛成)の5つの常任理事国にインドネシア(賛成)、南アフリカ(賛成)を加えた7ヶ国を設定し、1ヶ国を1人で担当しました。多様な文化・宗教・利害を持つ国々の間でリプロダクティブヘルス/ライツや、安保理で人権問題を話し合うことの是非等をめぐって議論・交渉が繰り広げられましたが、現実世界とは異なり、全会一致で決議案が採択される結果となりました。 第12回では、シリア人道危機の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。

4.受講者の感想

  • 非常任理事国の重要性及びその振る舞いの難しさを学びました。特にシリア問題の際に感じましたが、対立軸が明確な問題に関しては双方の陣営が非常任理事国を自陣に引き入れようと協調的な姿勢を見せるので、非常任理事国の立ち居振る舞いによっては両陣営間の橋渡しもできそうだと感じました。一方で対立軸が明確でない場合や、対立軸自体は明確であるものの両者が既に妥協の姿勢を見せている場合はどうしても常任理事国間での話し合いが中心となって、非常任理事国が存在感を発揮する機会は少なくなってしまい、その際にどう振舞うかは非常任理事国特有の難しさかな、と感じました。
  • 自分の担当国だけではなく他国についても調べないと、交渉材料がなく、議論を優位に進めることができないので、自然と勉強した。
  • 妥協点を探していくこと,また,どの部分を妥協して,どの部分を妥協しないかを考えるために,行動において優先順位が重要であることが学べた.また,合意形成が難しい場合においては他の機関,会議を使用することの重要性を感じた.
  • 本音と建前を自分自身の中で区別して確立すること、さらにそれを「誰に」「どちらを」「どこまで」見せるかという観点から効果的に使うことの重要性を学びました。
  • 国際社会の目を気にすることの重要性を学びました。今回の授業における模擬国連が外部に公表されることはありませんが、本来の国連の場では各国の主張が全て議事録や決議という形で国際社会に公表されます。公表されたデータは記録という形で後世にまで継承されることを思うと、自国の国益だけでなく、国際社会からの目というのも気にしつつ各国は発言する必要があるのだと改めて実感しました。
  • 「国際会議をオンラインで行うのは難しい…」という外交官の悩みを、部分的ではありますが経験できたように思います。今回できなかったが昨年度(対面)はできてよかったという点から見ると、「一緒にがんばりましょうね」といったさり気ない声かけや、誰と誰が今話しているのか、自分のいないグループからどんなワードが聞こえてくるのかを知ることは、会議行動を決定する上で重要な要素であったように感じます。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「国際紛争ケースブックをつくろう」(2020年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「国際紛争ケースブックをつくろう」(2020年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。今セメスターが初めての開講となりましたが、受講者は11名(1年生1名、2年生3名、3年生4名、4年生2名、修士1年生1名)でした。全回オンライン授業(ZOOMミーティングを利用)となりました。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:由地莉子(教養学部教養学科国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、複数の国際紛争の経緯や構図、原因等について調査し、最終的にケースブックを作成することを目指しました。その過程で、ある国際紛争に対する見方は決して一様ではないことに気づき、できる限り客観的に各紛争を捉えるための方法を習得することを期待しました。

2.授業の目的・到達目標

目的 本講義で学んだ国際紛争の経緯や構図、原因等に関する知識を使いこなして、国際紛争の発生や激化を防ぐ策を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際紛争に関する資料・文献を適切に収集できる【成果物で評価】 ②国際紛争の経緯を説明できる【成果物で評価】 ③国際紛争の構図を説明できる【成果物で評価】 ④国際紛争が発生・激化の原因を説明できる【成果物で評価】 ⑤国際紛争の発生・激化を防ぐ策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【成果物で評価】

3.授業の流れ

授業スケジュール ガイダンスーケースブックづくりから学べること(第1回) 国際紛争に関するケースブックをクラス全体でつくることで学べることを考えました。担当する紛争の5W1H、すなわち主体(who)、争点(why)、時期区分(when)、民族・宗教・政治体制・経済状況(where)、当事者・第三者の行動(what&how)について正確に理解するために複数の文献・資料にあたって丁寧に情報収集をするのはもちろんのこと、他の紛争を担当するクラスメイトとの意見交換を通じて、紛争間の関係性や前例が後例に与える影響についても学べることを確認しました。 ケースブックの改訂(第2回~第7回) いきなりケースブックをゼロから作ることは難しいので、まずは練習として、教員の方で概略のみを記したものを作り、その改訂から始めることにしました(今年度が初めての開講のため、教員の方で「たたき台」を準備したわけですが、次年度以降は、前年度までの授業で作成されたものを改訂していくことを予定しています)。ソマリア、ルワンダ、ボスニア、アフガニスタン、リビアの5つの紛争を扱う2・3人のグループに分かれ、グループ内・グループ間のディスカッション、教員・TAからのフィードバックを繰り返し、ケースブックの改訂を進めていきました。第7回では、グループごとに、その最終成果を報告しました。 なお、第3回には、国際連合政務・平和構築局 政務官の高橋尚子氏がゲスト講師としてお越しくださり、国連事務局における紛争の分析方法について紹介してくださいました。国連に研究・キャリア上の関心を有する学生が多くいることもあり、画面越しとはなりましたが、活発な質疑応答がなされました。 ケースブックの新規作成(第8回~第12回) 改訂作業で学んだことを踏まえて、ケースブックをゼロから作る段階へと入っていきました。コソボ、イラク、シリア、イエメンの4つの紛争を扱う2・3人のグループに分かれ、グループ内・グループ間のディスカッション、教員・TAからのフィードバックを繰り返し、その最終成果を第12回で報告しました。改訂作業の段階に比べて、事例(紛争)間の関係にも目を向けるグループが多くなるなど、確かな成長が感じられました。 まとめーケースブックづくりから学んだこと(第13回) 各自がケースブックづくりから学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降のケースブックの授業をよりよくしていくための方法を検討しました。

4.受講者の感想

  • 紛争の記述というのは、あらゆる点において政治性を伴うものだということを痛感しました。犠牲者数、取り上げるアクターの扱い(主体とするか、介入主体とするか等)などに関しても、書き手の価値観が図らずも反映されることは否めないように思います。したがって、報道のみならず学術論文などから情報を得る際にも常に上記の点に留意しながら分析を心掛けたいと考えています。
  • 前史・社会構造が紛争発生の素地を作っている場合が多いことや、紛争を始めるのは簡単だが終わらせるのは困難なことを学んだ。
  • 他者が読むことを想定している点では論文と似ているものの、一読して紛争構図が掴めるように要点に絞って記述する作業はむしろかなりの労力を要しますが、だからこそ情報収集及び取捨選択の方法に関しては一定のスキルが身についたように感じます。また、他班のケースブックとの関連を意識することにより、自ずと自分が記述している紛争へのアナロジーを見出したり、前例の後例への影響を発見したりすることができたため大きな学習効果があったと思います。
  • 一つのケースブックを作るのに時間がかかる分複数の紛争について調べることは難しいですが、この授業のように複数グループでお互いに学び合うことでその欠点もカバーできると思いました。
  • 一人で学ぶよりもはるかに作業効率や吸収が良かったと感じます。誰かとお互い助け合ってチェックし合いながら一つの紛争について学んでいくことで、自分では気づかなかった論点や情報までカバーできました。ただ受け身で情報を得るのではなく自分たちで整理してケースブックを作るという経験は、紛争理解にはかなり効果的なのではないかと感じました。

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「働きがいやジェンダーを考える」(2020年度Aセメスター 第12回)

全学自由研究ゼミナール及び高度教養特殊演習「働きがいやジェンダーを考える」のTAによる感想です。

授業の概要

アクティブラーニング部門開講授業「働きがいやジェンダーを考える」(担当教員:伊勢坊綾)では、学生の興味関心に基づき、働きがい、働く上でのジェンダーの問題に関する論文や文献を輪読し、ディスカッションを行っています。

ゲスト講師の紹介

第12回のゲストは、お茶の水女子大学/日本学術振興会・特別研究員(RPD)の小原優貴先生です。小原先生の専門は、比較教育学です。途上国・新興国のNGOや起業家が主導する教育活動に関心をもち、インドをフィールドに、各アクター(政府、教育機関、NGO・起業家等)が果たす役割やそれらの相互関係について研究されています。2020年9月まで、アクティブラーニング部門の特任准教授としてご勤務されていらっしゃいました。

文献紹介

今回の授業で輪読した論文は、以下です。 篠原さやか(2020)「女性研究者のキャリア形成とワーク・ライフ・バランス」,『日本労働研究雑誌』,62(9), pp.4-17. 上記論文は、日本における⼥性研究者数および研究者に占める⼥性の割合が低⽔準で、特に⾃然科学分野では、⼥性が研究職としてのキャリアから徐々に退出する傾向があることを指摘しています。その理由として、ジェンダー・バイアスに起因する⾃信の⽋如やロールモデルの不⾜のみならず、ワーク・ライフ・バランスにおける課題を挙げながら、女性研究者のキャリア形成の困難さを描いています。

小原先生のキャリア形成・質疑応答

小原先生からは、キャリア形成の中で自分が注力することがどのように変化したか、研究・教育・学務という大学教員の仕事と家庭での役割を両立するために具体的にどのような行動をとったか、RPDを希望した理由等についてお話いただきました。 小原先生からお話を伺った後、受講した学生さんたちから質問が寄せられました。たとえば、以下のような質問がありました。 ●民間企業を離れてアカデミックの分野に戻ろうと思った理由 ●ストレートで研究者になる/社会人を経て研究者になる場合の、就職への影響の違い ●RPDの研究奨励費や研究費、3年という期間はキャリアへの円満な復帰やワーク・ライフ・バランスに十分だと思うか? ●アカデミックな職場では、(もともと志す女性の割合が低いとはいえ、)ジェンダー問題に興味や知識がある人が多く、育休産休がとりやすいのではというイメージ(希望?)があるが、実際のところどうなのか 小原先生からは、「ライフコースのどの時点でも常にワーク・ライフ・バランスが取れている状況にあるというのは理想であり、現実的にはなかなか難しい。その都度、取り組んできたことを後々振り返った時に、長い目で見るとそれなりにバランスをとってきたな、と自分で納得がいけばそれで良いのではないかと思っている」とのお考えをお示しいただき、ワーク・ライフ・バランスの実現を、柔軟に考える視点に気づかせていただきました。

感想

TAとして授業を見させていただき、学生さんたちが研究者のキャリアという専門的なテーマに関心を示し、積極的に質問をされていることに驚きました。学部生の頃の私は、恥ずかしながらRPDの制度の存在を知りませんでしたが、ワーク・ライフ・バランスにやさしい制度が多くの人に知られるようになっていることは歓迎すべき傾向と感じております。 また、私はゲストの小原先生がKALSに勤務されていた頃に、研究、教育、育児などにお忙しくされている姿を見て、漠然と、大変そうだなと思っていましたが、授業では、先生が、具体的にどのような工夫をされ、ワーク・ライフ・バランスを実現しようとされているのかがわかり、その姿勢に感銘を受けました。 (KALS TA 総合文化研究科博士課程 宮川慎司  

ワークショップ「東大生がつくるSDGsの授業」(2020年11月28日、12月13日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日開催しました下記のワークショップに関して、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2020年11月28日(土)14時~17時、12月13日(日)14時~17時 場所:オンライン 参加者数:25名(11/28)、30名(12/13)

1.目的

アクティブラーニング部門では、2020年度Sセメスターに、全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」という授業を開講しました。本イベントは、その授業の中で特に優れた授業案を設計した学生たちが、高校生を対象とした授業を実施するものです。

2.概要

当初の予定では、学生たちが双方向性を重視するアクティブラーニング形式で授業を設計し、東京大学駒場キャンパスのKALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)にて対面の授業を実施することを想定しておりました。しかし、新型コロナウイルスの流行状況を踏まえて、オンライン(Zoom)での開催と変更されました。オンラインでの開催となりましたが、講師の学生たちは可能な限り双方向性を保つために、授業案を再設計してイベントに臨みました。

3.プログラム

【11月28日】 14:00~14:30 趣旨説明 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 17の目標を包括的に扱う授業「明日から自分たちにできること」 小林雄香(東京大学大学院新領域創成科学研究科生) 上岡稀生子(東京大学教養学部生) 15:40~16:30 目標7(エネルギー)を扱う授業「日本の再エネを“正しく”知ろう」 屋田春希(東京大学大学院総合文化研究科生) 坪井友里香(東京大学文学部生) 16:30~17:00 まとめ 伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 【12月13日】 14:00~14:30 趣旨説明 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 17の目標を包括的に扱う授業「SDGsの“s”の意味を考えよう」 堤文音(東京大学教養学部生) 15:40~16:30 目標5(ジェンダー)を扱う授業「“あたりまえ”を疑え!」 石澤由佳(東京大学教養学部生) 鎌田康生(東京大学教養学部生) 三輪千恵(東京大学教養学部生) 16:30~17:00 まとめ 伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)

4.ワークショップの内容

【11月28日】 (1)17の目標を包括的に扱う授業「明日から自分たちにできること」 「明⽇から⾃分にできる取り組み」をテーマとし、⾼校⽣にSDGs を⾝近に感じてもらう授業を実施しました。⽣徒を飽きさせないように授業は話を聞く時間とワークの時間を交互に構成しました。⽣徒同⼠で今⾃分がSDGs 達成のために⾏っている取り組みを話し合ったり、こちらから取り組み例を取り組みやすさや関連⽬標と合わせて提⽰したりしました。最後に取り上げたレジ袋有料化の話を通して、他者からの情報を鵜呑みにせず⾃分で考えることの重要性と、誰⼀⼈取り残さないというSDGs の掲げる本質を伝えました。 (2)目標7(エネルギー)を扱う授業「日本の再エネを“正しく”知ろう」 SDGsのターゲット7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」をテーマに、再生可能エネルギーに関する授業を行いました。漠然とした知識ではなく、再生可能エネルギーを増やしたくても一筋縄にはいかない現状を”正しく”理解してもらうことを目標にしました。まず再生可能エネルギーの種類や国際的な発電比率から日本の現状を紹介しました。その後、日本でメジャーな太陽光発電を例に、変動性や適地が限定的といった特徴や導入を促進させた制度を説明しました。その後、それらをふまえた課題と解決策をグループワークで考えてもらいました。最後にフィードバックを行うとともに、課題への取り組みとして実際に考えられている例として水素を使った蓄電等を紹介して理解を深めてもらいました。 【12月13日】 (1)17の目標を包括的に扱う授業「SDGsの“s”の意味を考えよう」 「SDGsの“s”の意味を考えよう!-達成のために大切なこと-」というタイトルで授業を行いました。本授業の目的として、SDGsについての知識の習得、及び17のゴールの関連性に気付くことの2点を設定しました。前者についてはできるだけ一方向の知識提供にならないよう、ゴールの数や各ゴールの目標などSDGsの概念形成の部分では参加者が主体的に考えられるよう設計しました。後者については、具体的な事例を一つ取り上げた後、各ゴールの関連性に目を向けるという具体から抽象の流れを意識して設計しました。最後に簡単な確認セッションを設け、2つの目的の達成度を測りました。 (2)目標5(ジェンダー)を扱う授業「“あたりまえ”を疑え!」 私達の班では身近に潜むジェンダーにまつわるステレオイプに目を向けてほしい、という思いから「“あたりまえ”を疑え!」というタイトルで授業を行いました。授業の構成としては、大きく3つのパートに分けました。具体的には、初めにSDGs及びジェンダーという概念について説明を行ったのち、ジェンダーにまつわるステレオタイプに関して、なぜそのようなステレオイプを持つに至ったかの原因をロジックツリーというワークを通じて深掘りし、最後に各班でロジックツリーを交流するという形で授業を行いました。ツールに関しては、基本的にパワポを使用し、ロジックツリーのワークを行う際にはzoomのブレイクアウトルーム機能に加えてmiroと呼ばれるオンラインホワイトボードソフトを使用しました。

5.授業を行った学生の声

授業を行った学生に、参加者の反応はどのようなものであったか、そして授業を実施した感想を聞いてみました。 【11月28日】                                   (1)17の目標を包括的に扱う授業「明日から自分たちにできること」 終始積極的な姿勢で、予習をしてきてくれたり、質問をしてくれたりと真剣に授業に向き合って吸収してくれていました。⾃主的にこういったプログラムに参加してくる⾼校⽣は向上⼼や学びへの意識の⾼い⽅ばかりで、それでいて⾃分の知識に⽢んじることなく素直な態度がとても印象的でした。 何に注意して授業を設計するのかという道筋に沿って計画しましたが、それはあくまで計画でした。実際には参加者の皆さんからの反応(最初のクイズの正解率、各個⼈の取り組みの状況、疑問点など)を受けて、臨機応変にこちらが対応していく部分が強いように感じました。こちらの伝えたいことを掴み取ろうとする意識が伝わってきて、こちらも伝えようという思いが⼀層強くなり、とても刺激的で有意義な時間を経験させてもらうことができました。準備の時間はとてもかかりましたが、それ以上のものを得られる貴重な機会だったと思います。(小林雄香) グループワークや全体でのチャットを使った共有にも積極的に参加してくれました。最終ワークでも、こちらのメッセージに対応した意見が多く見られました。 事前知識も豊富な参加者が多く、驚きました。高校生がこちらの想定以上の学びをしてくれて、とても嬉しかったです。(上岡稀生子) (2)目標7(エネルギー)を扱う授業「日本の再エネを“正しく”知ろう」 オンライン開催ということもあり、参加者がレスポンスしにくいのではないかと懸念していましたが、プライベートチャット等を利用して沢山の質問を頂けたため、むしろ質問・コメントは直接発言するよりも活発であったのではないかと思います。日頃、詳しくは学ばない再エネについて知れる機会は貴重であり、学校でもこのようなことを学べる機会があればいいと言ってくれていた参加者もおり、嬉しかったです。 普段耳にしない話題である上、少し技術的な内容も含む難しめのテーマであったため、興味を持ってもらえるか不安に思っていました。しかし、意欲的な参加者が多く、沢山の質問やコメントを頂きながらアクティブに授業をすることが出来、とても有意義な時間でした。講師側としても学びの多い時間となりました。(屋田春希) 【12月13日】 (1)17の目標を包括的に扱う授業「SDGsの“s”の意味を考えよう」 発言や反応、チャットなどを通じて、全体として非常に積極的に参加してくれた。また、本授業で一番伝えたかったメッセージである「17のゴールの関連性」についてもしっかり理解してもらえたようで大変嬉しく思った。 授業を実施するということは、実施側がSDGsに関して十分学んでおく必要があるだけでなく、それを通じて考えたことや伝えたいことを自身の中で明確にしておく必要があることに気が付いた。50分という限られた時間の中で、メッセージとして何を伝えたいのか、どの順番でどの方法で授業を設計するとそのメッセージが最も伝わるのか、など考えていく中で、私自身のSDGsに関する知識が更に深まっただけでなく、SDGsに対する考えも醸成されたように思った。当日の授業では、こちらの意図が伝わった際には大変嬉しく、また想定外の回答が来た際にも、新たな考えや意見を学ぶことができ、全体として非常に貴重な経験であった。(堤文音) (2)目標5(ジェンダー)を扱う授業「“あたりまえ”を疑え!」 ブレイクアウトに移行した際にも活発に議論が行えていた。授業が終了してからも、複数人の生徒が積極的に質問してくれた。 機材トラブルなどで参加できない一部の生徒への対応が難しかった。普段、なかなか会う機会のない高校生の“生の声”がたくさん聞けて楽しかった。(石澤由佳) 視野が広がったとの声を多くいただけて良かった。どの班も積極的に意見交換をしながらワークショップに取り組んでもらえていて、楽しみつつ学べていた。 初めて授業をしたのですが、想定外のトラブルが起きたり、想定以上に時間がかかったりと大変でした。オンラインだったためなおさらだったと思います。ただ、最後までやりきって非常に達成感があり、こちらも学ばせていただきました。もっと授業を受けてくれた高校生と関わりたい、と思えました。 (鎌田康生) 授業はただ教えればいいというわけではなくて、様々な場合に対応できるよう⼊念に準備をして、⽣徒がより学びを深める⽅法を授業前はもちろん授業を展開している時も考え続けなくてはならないということを強く実感しました。 また、オンラインという形に苦しめられたなというのが率直な気持ちです。対⾯であればもっとロジックツリーを深める時間が取れたり、授業内や授業後にでも⽣徒と話したり、質問に答えられたりするのに…と悔しく思いました。ジェンダーに関⼼がある⽣徒さんが多かったのですが、あまり新鮮な視点を与えることができなかったようなので反省しています。⽣徒を実際に相⼿にした授業を⾏えたために「よくわかってほしい」、「授業を楽しんでほしい」と⼼底感じました。(三輪千恵) 文責:KALS TA 総合文化研究科博士課程 宮川慎司

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「働きがいやジェンダーを考える」(2020年度Aセメスター 第8回)

全学自由研究ゼミナール及び高度教養特殊演習「働きがいやジェンダーを考える」のTAによる感想です。

授業の概要

アクティブラーニング部門開講授業「働きがいやジェンダーを考える」(担当教員:伊勢坊綾)では、学生の興味関心に基づき、働きがい、働く上でのジェンダーの問題に関する論文や文献を輪読し、ディスカッションを行っています。

ゲスト講師の紹介

第8回のゲストは、東京都立大学子ども・若者貧困研究センター 特任助教の川口遼先生です。川口先生は、ジェンダー・セクシュアリティ研究、男性性研究及び家族・労働・福祉の社会学をご専門とされています。また、子どもの貧困に関する調査・政策提言、貧困であることが男児・女児に与える影響の違いについての研究にも従事していらっしゃいます。

川口先生の講義内容

男性学/男性性研究を主題としてご講義いただきました。男性学/男性性研究が、女性学を踏まえた誕生の経緯により、男性性への省察を行うメンズ・フェミニズムと男性自身が抱える問題に着目するメンズリブの2軸をもって発達してきたこと、およびジェンダー秩序論などの理論が提示されてきたことなどをご説明いただきました。その後ディスカッションに向けて、男性学/男性性研究において生じてきた論争をご紹介いただきました。

グループでのディスカッションと発表、質疑応答

川口先生の講義後、グループに分かれて、男性の稼得役割追求の自己脅迫性や、男性であることの特権性および被抑圧性について、意見交換を行いました。活発なグループディスカッションの後、以下のような発表がありました。 ●男性の方が稼ぎが多い方がいいかと言えば、(女性の声として)そうは思わない。自分が稼げていればよく、世帯としての合計で考えればよい ● 稼得役割への過度な期待によって、男性は苦しい ● 労働市場における性差別の問題を抜きにして議論できない ● 労働市場から降りることのリスクは、男性の方が大きい社会構造になっていることが問題 ● 辛いなら降りればよいとなると、降りた男性に向けられる目が女性に比べてきついのではないか。その差が降りにくさに繋がるのではないか ● 降りる際の“ストーリー”を社会で準備することが大事なのではないか ● 地域や学歴によって、“望ましい”/“求められる”男性性が異なるのではないか。筋力等の身体的有能さと、頭脳や仕事上での有能さがあるのではないか ● マッチョイズムに対してコンプレックスを持ちつつ捨てられない男性が多い。そういう人たちはフェミニズムと親和性が低いと感じる。そのプライドを捨てればいいのでは?というのは論理的には正しいけれど、アイデンティティを紐づけていたマッチョイズムに変わる何かを与える必要があるのではないか。 川口先生からは、それぞれの意見や質問に対する応答と、関連する書籍のご紹介をいただきました。最後に、マジョリティ的な立場から問題に関わっていこうとする際、当然のように存在し見えづらい特権と抑圧について意識してほしいとのお言葉をいただき、授業は締めくくられました。

感想

熱心な議論や質問・応答が繰り広げられ、学生さんたちの関心が高いテーマであることがうかがえました。男性性に関する議論は、一般書やメディアで取り上げられることが増えている一方、女性学に比べれば学問として学ぶ機会はまだ決して多くないと思うので、今回川口先生から男性学/男性性研究の概要や理論について盛りだくさんの内容を教えていただけたことで、学術的にこのテーマについて考えるきっかけを掴めた学生さんが多かったのではないかと感じています。 また、この研究分野で生じている論争についても、川口先生は様々な立場からの論を取り上げ、「あなたはどう思う?」と問いかけるようにお話してくださったため、学生さんたちは思考を刺激され、ディスカッションも盛り上がったのだと思います。 これからまさに稼得役割というものを担うようになる学生さんたちにとって、問題や違和感に直面したときに状況を理解し対処していくためのよすがとなり、また他者の困難に気づくためのヒントともなるような知を得られた授業だったのではないかと思います。 (KALS TA 総合文化研究科博士課程 田中李歩  

「働きがいやジェンダーを考える」(2020年度Aセメスター 第7回)

全学自由研究ゼミナール及び高度教養特殊演習「働きがいやジェンダーを考える」のTAによる感想です。

授業の概要

アクティブラーニング部門開講授業「働きがいやジェンダーを考える」(担当教員:伊勢坊綾)では、学生の興味関心に基づき、働きがい、働く上でのジェンダーの問題に関する論文や文献を輪読し、ディスカッションを行っています。

ゲスト講師の紹介

第7回のゲストは、ジャーナリストであり、東京大学教育学研究科博士課程で研究活動をされている中野円佳さんです。中野さんは、東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社に入社されました。育休中に立命館大学で修士号を取得された後、2015年には東京大学の博士課程に入学され、2017年からはシンガポールにお住まいになっています。

文献紹介

今回の授業で輪読した『「育休世代」のジレンマ:女性活用はなぜ失敗するのか?』は、中野さんの修士論文の内容がもとになっています。この本は、産休や育休といった制度が整えられつつあるように見えるにもかかわらず、総合職に就職した多くの女性が出産を機に離職してしまうことの原因を、総合職として入社し、出産を経験した15人の女性へのインタビューから解明したものです。

文献発表と質疑応答

4名の学生が文献発表し、その後、受講した学生さんたち一人一人から、たくさんの質問が寄せられました。たとえば、以下のような質問がありました。 ●育児に関する問題には、教育や意識の変化といった長い時間かかる方策が必要となるが、たとえば科学技術などを使った短期間での解決策はあるか? ●家事を夫に任せるより母親が行ってしまった方が早い、という本書の一部分に関して、インタビューをした母親たちはこれに関して問題意識を持っていたのか? ●女性は優秀でないと企業に残ることは難しいのか? 最後に中野さんからは、新型コロナウイルスの流行で在宅勤務が進んだ側面やMeTooなどの動きも経て声をあげるということがしやすくなってきたという変化もあるので、本には様々な場面で抑圧がかかると書いたが企業のことをよく調べて選び取ったり変えて行ったりしていってほしいという言葉をいただき、授業は締めくくられました。

感想

学生からの「読みたい」というリクエストで決定した文献で、その著者がゲスト講師としてお越しになり学生からの問いに答えるという、意義深い授業でした。 授業では、学生さんたちの熱意にとても驚かされました。みなさん本の内容をよく読みこんだ上で質問しており、また授業終了後も残って質問をする方が多く、育児にまつわる問題への関心の高さを実感しました。 また、「私自身が就職活動をする中で、ある会社の育休などの制度が、実際にどの程度機能しているかをどう見分ければいいのか」など、本の内容を自分事に引き付けて質問している方も多く見られました。講師の先生から得た知見をもとに自分の意見を発展させる、というこの授業の狙いがよく達成されていると感じました。 (KALS TA 総合文化研究科博士課程 宮川慎司  

ワークショップ「東大生がつくるSDGsの授業」(2020年11月28日、12月13日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを開催いたします。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生達が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業が揃っておりますので、是非ご参加ください。

1.日時

2020年11月28日(土)14時~17時 12月13日(日)14時~17時 ※いずれかの回のみへのご参加も歓迎いたします

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします) ※授業ではペアワークやグループワークの場面が多くあります。可能な限りカメラをオンにして参加していただければ幸いです。 ※参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

3.対象者

高校生 [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【11月28日(土)】 14:00~14:30 趣旨説明 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 17の目標を包括的に扱う授業「明日から自分たちにできること」 小林雄香(東京大学大学院新領域創成科学研究科生) 上岡稀生子(東京大学教養学部生) 15:40~16:30 目標7(エネルギー)を扱う授業「日本の再エネを“正しく”知ろう」 屋田春希(東京大学大学院総合文化研究科生) 坪井友里香(東京大学文学部生) 16:30~17:00 まとめ 伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 【12月13日(日)】 14:00~14:30 趣旨説明 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 17の目標を包括的に扱う授業「SDGsの“s”の意味を考えよう」 堤文音(東京大学教養学部生) 15:40~16:30 目標5(ジェンダー)を扱う授業「“あたりまえ”を疑え!」 石澤由佳(東京大学教養学部生) 鎌田康生(東京大学教養学部生) 三輪千恵(東京大学教養学部生) 16:30~17:00 まとめ 伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)

6.お申し込み

以下の申込フォームよりお申込ください。 【11/28】https://forms.gle/McP7j5eY9MDrAemo7 【12/13】https://forms.gle/EBmNzuyi6qQihnzr9 ※両日参加いただける方は恐れ入りますが、2つのフォームにご記入ください。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

第2回模擬国連ワークショップ(2020年9月19日)

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2020年9月19日(土)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:40名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)セッション1・2 ■ 山崎茉莉亜(外務省大臣官房総務課 課長補佐)セッション2 ■ 北村優成(東京大学法部生)セッション1 ■ 八尾佳凛(東京大学教養学部生)セッション1

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③模擬国連で学んだことの社会での活用例を説明できるようになる (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連のできること・できないこと」(14:10~15:20) 模擬国連のオンライン授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤(https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/classes/class-report/mun_semi_2020s_teacher-2/を踏まえ、①教員が模擬国連の導入目的を明確化すること、②導入の意義を受講者に伝えること、③目的に照らしてより適切な教育手法がある場合には、模擬国連にこだわらずにそちらを選ぶこと、④オンライン授業であっても工夫次第で一定の臨場感をもって模擬国連の会議を実施できることなどを、授業担当者と受講者からお伝えしました。参加者の方との質疑応答も含め、「どのような学生・生徒に育ってほしいのか」という教育理念がまずあるべきで、模擬国連はあくまでも一手段であることについて考えを深める機会となりました。

セッション1.  授業担当者・受講者の説明

【3】セッション2「社会で役立つ模擬国連」(15:40~16:50) セッション1で確認した「どのような学生・生徒に育ってほしいのか」という教育理念の重要性を踏まえ、学生時代に模擬国連を経験し、現在は実際の外交に関わっていらっしゃる外務省の山崎課長補佐と授業担当者との対談を行ないました。①会議での外交交渉、②会議以外の外交に関するお仕事、③それらと模擬国連との関係、といった点について、参加者の方との質疑応答もまじえて進めました。

セッション2. 山崎課長補佐と授業担当者の対談

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • セッション1とセッション2両方があることで、参加者自身が、「授業としての模擬国連」と「模擬国連から得られる経験・知見の現実的適用」について学ぶことができた。
  • どちらのセッションでも、大変丁寧にお話しくださり、また具体的で実践的な内容だった。
  • 現役の外務省官僚の方の話を聞けたことは大変貴重でした。属人的な部分が実際の国際会議等で重要な位置を占めるという点が印象的でした。
  • 実際に授業を受けている学生の方々のお話も聴けて、導入した場合のイメージが湧きやすかったです。
  • 現役の外交官や,模擬国連を授業で実践されている講師の生の話を聞くことのできたことが,将来 模擬国連を自身で企画する際の具体的なイメージの助けとなった。私は,普段「ディベート」的な議論をすることが多いため,今回、妥協点を探し相手にも花を持たせる「模擬国連」的な議論の方法があることを知れたのは良かった。
  • 模擬国連サークル、大学ゼミでの模擬国連、それぞれの取り組みの特徴と意義を学ばせてもらい自分の講義での取り組みにいろいろと啓発をされた。
  • 模擬国連を導入するきっかけをいただけました。

4.次回予告

次回以降は、①各校での模擬国連導入事例共有、②模擬国連以外のロールプレイやシミュレーションの導入事例共有といったように内容を増やして定期的に開催していきたいと考えております。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

第2回 模擬国連ワークショップ(2020年9月19日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤(https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/mun_semi_2019a_teacher/を踏まえ、授業担当者・履修者、そして現役外交官とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開きます。2020年3月のワークショップ(http://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/mun_ws_2020_03_06_report/)に続き、2回目の開催となりますが、今回はオンライン授業での経験も踏まえて効果的導入法について意見交換をできればと考えております。

1.日時

2020年9月19日(土)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします)

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連で学んだことの社会での活用例を説明できるようになる (セッション2に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~15:20 セッション1「模擬国連のできること・できないこと」 15:40~16:50 セッション2「社会で役立つ模擬国連」 16:50~17:00 まとめ

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 模擬国連を導入した授業の実施者として、その意義や注意点、工夫のしどころ等についてお話します 山崎茉莉亜(外務省大臣官房総務課 課長補佐) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は実際の外交に関わっている立場からお話します 北村優成(東京大学法学部生)、八尾佳凛(東京大学教養学部生) 模擬国連を導入した授業の受講者の立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/gwn8jYKjiTJ6U4ZW8

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

【KALS TAによる振り返り】オンライン授業支援②

2020年度Sセメスターは駒場キャンパス全体でオンライン授業となり、KALSのTAも通常の授業支援ではなく、オンラインでの授業支援となりました。Sセメスター終了後、アクティブラーニング部門のスタッフとTAでオンライン授業支援業務を振り返り、メリット/デメリット、オンライン授業の可能性や限界等について検討しました。 前回は第1弾として、TAから挙げられたオンライン授業支援のメリットについてお伝えしましたが、今回は第2弾として、TAから挙げられたオンライン授業支援でのデメリットについて紹介します。Zoomを用いたオンライン授業でアクティブラーニングの手法を導入する場合、ブレイクアウトセッションという機能を使用して学生をグループにわけ、ワークやディスカッションを行うことがあります。TAからは学生をグループに分けた後、つまりブレークアウトセッションでの授業支援が難しいと感じたという声が聞かれました。今回は、特にグループワークのオンライン授業支援のデメリットについて紹介します。

デメリット1:グループに分かれた後のタイムマネジメントが難しい

教室での授業では、教室にある大きな時計をみながらタイムマネジメントができますし、他のグループの進捗も把握できるでしょう。しかしながら、ブレイクアウトセッションに分けると、各セッションに「閉じた」状態でワークやディスカッションが進み、その他のグループの様子を伺い知ることはできません。ホストが「あと〇分です」とメッセージを送ることはできるので残り時間をアナウンスすることはできますが、メッセージが明示される時間が短く、活発にワークしているグループは見逃すこともあるかと思います。そのような場合、どういったことが対策となるでしょうか?

対策1-1:グループ内でタイムマネジメントをする人を決める仕組みをつくる

ブレイクアウトセッションに分かれたワークやディスカッションの場合、教員が学生に対し「まず、タイムマネジメントをする人を決めてからワークを始めてください」等の明確な指示をだすことが対策として挙げられます。オンライン授業では、教員が役割を明示しない場合、教員にとっては学生の役割把握が困難であり、学生にとっては役割を決定することが困難になります。そのような場合、少なくともタイムマネジメントをする人さえ決めておけば、その人は、残り時間がどの程度時間が残っているかはわかりますし、グループの進捗について把握することもできるでしょう。

対策1-2:時間をアナウンスするために教員・TAが巡回し、ブレイクアウトルーム内のチャットで伝える

ブレイクアウトセッションに分かれたら、セッション内メンバーでのチャットは可能です。その機能を利用し、教員やTAがセッションに入り、チャットに「あと〇分です」と書き込むと、セッションにいるグループのメンバー全員が目にしますし、メッセージが消えることもありません。教員やTAがグループを巡回できるように、ホスト以外の教員やTAを共同ホストにし、自由にセッションを巡回できる設定が必要です。

対策1-3:他のツールを併用する

ブレイクアウトセッションに分かれた後、「あと〇分です」といった簡単なメッセージを全体に伝えたい場合、ホストが全体にメッセージを送る以外に、Zoom以外のツールを使って連絡することも対策になります。学生のメールアドレスを把握しているならば、メールでの連絡でもよいでしょう。また、Slack(https://slack.com/intl/ja-jp/)などのチャットツールもビジネスの現場ではよく使われています。しかし、Zoomに慣れ始めた学生の皆さんにまた新たなツールの使用を強いることは負担にもなるので、これらの導入には丁寧な説明と使用方法のレクチャーが必要でしょう。

デメリット2:グループに分かれた後の状況把握が難しい

教室での授業におけるグループワークの場合、教員やTAは全体を見て「あのグループはディスカッションが円滑ではなさそうだ」「あのグループはワークが少し難航しているかもしれない」等と察し、グループに足を運び、声をかけることができます。しかし、オンライン授業では、教員やTAも、各ルームでワークやディスカッションしているグループの状況を事前に把握できずに各ルームを巡回することになるので、「介入すべきグループに介入すべきタイミングで入ることができない」逆に「介入の必要がないグループに介入してしまう」といった現象が起こり得ます。また、同時並行で行われている他のルームのワークに関する進捗は把握できません。このような場合、どのような対策が考えられるでしょうか?

対策2-1:教員やTAの巡回の頻度を上げる

オンラインでの授業では、各ルームに入らなければグループの状況を把握できないため、把握のために巡回の頻度を上げることが対策となり得ると思われます。問題がないと判断したルームへの滞在時間を短くし、問題がありそうなグループを把握したら、教員やTAの巡回頻度を多くしたり、滞在時間を長くする等、適切な介入が可能になるでしょう。

対策2-2:教員に質問・連絡・相談できるツールやタイミングを準備する

教員に質問、連絡、相談できるツール(例:google form等)を作成し、セッション内でのグループワーク中でも教員に連絡できる手段をつくっておくことは、対策となるでしょう。授業時間中あるいは時間外に相談時間を確保するのも有効です。例えば、授業が終わった後すぐにZoomを閉じるのではなく、「質問がある方はこのまま残っていただいて結構です」とアナウンスすれば、授業内容や課題に関する質問もできますし、グループワークを行っていく上での悩みを相談することも可能になります。それでも、他の学生がいる場では相談しにくい場合もあると思いますので、困ったとき、わからないときに教員が対応できるということを、学生に示しておくことが大切ではないかと考えます。具体的には、授業スライドの最終ページに「個別の相談や質問はXXX@kals~にご連絡ください」等と連絡先を提示したり、Zoomでのオフィスアワーの時間帯を設定してアナウンスすること等が挙げられます。これらは、グループに分かれた後の状況把握の難しさに対する対策のみならず、受講生全体の状況把握に対しても有効でしょう。 以上、グループワークのオンライン授業支援における2点のデメリットとそれぞれへの対策について、挙げました。 KALS TAの5名が感じた上記のデメリットは、教員も感じた点ですが、教員が授業運営の仕組みを工夫することによって対策できるものも多いと感じました。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 小原優貴、伊勢坊綾、中村長史 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2020年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2020年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスターに続いて2期目の開講となりましたが、受講者は18名(1年生7名、2年生4名、3年生3名、4年生4名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:九島佳織(総合文化研究科国際社会科学専攻国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

ガイダンスー模擬国連から学べること(第1-3回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。なお、今セメスターは、COVID19の影響で急遽オンライン授業となったため、ガイダンスの回数を2回増やし、オンラインで模擬国連の会議を行なうための練習会を行ないました。これにより、昨年度のようにゲスト講師から会議への講評をいただく時間をつくれなくなったため、授業外で任意参加の機会を設けることとしました。 模擬国連会議:イラク戦争(第4回~第8回) 2003年3月のイラク戦争開戦直前の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第4回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第5回から第7回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(査察継続派)、フランス(査察継続派)、ロシア(査察継続派)、英国(即時開戦派)、米国(即時開戦派)の5つの常任理事国に「中間派」のチリ・パキスタンを加えた7ヶ国を設定し、1ヶ国を2・3人で担当しました。現実の会議と異なり決議案が投票にかけられましたが、英米案・仏露案双方に対して対立する常任理事国が拒否権を行使することとなり、廃案となりました。 第8回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 模擬国連会議:北朝鮮の核開発(第9回~第12回) 2017年9月の北朝鮮による6度目の核実験後の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第9回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第10回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(圧力強化消極派)、フランス(圧力強化積極派)、ロシア(消極派)、英国(積極派)、米国(積極派)の5つの常任理事国に日本(積極派)、カザフスタン(消極派)、ウクライナ(積極派)を加えた8ヶ国を設定し、1ヶ国を2・3人で担当しました。現実の会議と同様、経済制裁の強化を盛り込んだ決議案が採択される結果となりました。 第12回では、イラク戦争の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについてふりかえりました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。 授業スケジュール

4.受講者の感想

  • 会議をする前提として議題に関する知識が必要で、また会議自体が知識の活用の場となるため、座学よりも知識が身につきやすいと思いました。また、非公式会議での発言やコーカスの交渉など知識の活用の際にはその場その場で頭を使うため、その練習にもなったように思います。さらに、模擬国連で実践して得た交渉のノウハウが、実際に合意形成が必要な話し合いをする際に応用できるのではないかと思いました。
  • 実際に利害が存在する当事者の立場で問題と向き合うことで、「正論が最適であるとは限らないこと」「パフォーマンスとしての外交(会議行動が他国の目にどのように映るか)」について学ぶことができた。
  • 模擬国連を通して、今まで高校で世界史を習ってはいたものの、国際関係に関してやはり日本中心の見方をしていたことを実感し、また複数の視点に立って国際関係を考えられるようになったと感じました。合意形成を目指す中で自然と自身が担当した国だけではなく、他国の目線でも問題を見ることができるようになったことには大変驚きました。
  • 今回扱われたテーマに関わる、国際政治や国際関係論における概念や理論の一部(特に外交・安全保障について、安心供与など)や、国連安保理の仕組み・役割・限界などについて学べました。会議をするにあたり、議題に関わる国連憲章や安保理決議、安保理議事録といった国連の文書の一部を初めて見て、それがどういうものなのかを知ることができて良かったです。
  • 以前まで私は国連をいわば「世界の警察」のように捉えており、どんな国際問題も国連に持ち込めば何かしら改善はするのであろう、なぜ国連はこんなに多くの国際問題を未だ解決できないのだろうか、などと思っていた。しかし、今回実際にやってみることで多国間での合意形成の難しさや国連の万能でないところなどを知ることができ、国連任せの姿勢でいてはよくないのだとよくわかった。
  • 模擬国連を通して、今まで高校で世界史を習ってはいたものの、国際関係に関してやはり日本中心の見方をしていたことを実感し、また複数の視点に立って国際関係を考えられるようになったと感じました。合意形成を目指す中で自然と自身が担当した国だけではなく、他国の目線でも問題を見ることができるようになったことには大変驚きました。
  • 初めは「一つのセメスターで二つの事象についてしか学べないのか」と非常に限定的な学習であるように感じた。しかし、一連の調査や会合を通して各国がどのようなロジックで行動をするのか、そして自国の意図を示すためにどのような言葉や手段を選ぶのか、といった一般的な理解にも繋がった。
  • 大使として発言する際には、細かいワードチョイスにまで注意する必要があることを学びました。
  • オフラインであった方が、相手とface to faceで交渉をする際に隠れた意図を察したりすることがより容易だったのではないかと思う。一方で顔を合わせていないことで他の学生が他人であるような感じが強かったが、そのことで先輩後輩関係などを抜きに対等な会議ができたのはメリットと言えると感じた。

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【KALS TAによる振り返り】オンライン授業支援①

2020年度Sセメスターは駒場キャンパス全体でオンライン授業となり、KALSのTAも通常の授業支援ではなく、オンラインでの授業支援となりました。Sセメスター終了後、アクティブラーニング部門のスタッフとTAでオンライン授業支援業務を振り返り、メリット/デメリット、オンライン授業の可能性や限界等について検討しました。 今回は第1弾として、TAから挙げられたオンライン授業支援のメリットについて掲載します。

メリット1:どこのキャンパスの授業でも支援できる

TAは、駒場だけでなく本郷や柏を本拠地として研究をしているケースがあります。自分の専門領域に近い授業でも地理的に遠い場所で開講される授業の支援であれば、TAを諦めざるを得ない状況があります。しかし、オンラインの場合、どこのキャンパスの授業でも、つまり、どこから配信される授業でも支援が可能です。2020年度のSセメスターも、本郷を拠点とする院生がKALS TAとして活躍してくれました。研究時間の合間を縫ってTA業務に従事する院生にとって、移動時間がないことは、最大のメリットの一つでもあることがわかりました。

メリット2:グループワークの巡回がやりやすい

アクティブラーニングの手法を導入する授業は、グループワークを採用することが多くあります。KALS TAはアクティブラーニングの手法を用いた授業の支援を行うため、業務の一つにグループワークの巡回がある場合が多いです。対面の場合、TAがグループワークに入ることで話が中断するケースがあるようですが、オンラインの場合、TAの出入りがグループワークを邪魔しないことがよいという感想が聞かれました。TAによっては、対面のグループワーク中、次のグループに動くタイミングに迷うこともあるようですが、オンラインの場合は出やすいといったこともあるようです。威圧感なくグループワークに入り、議論が活発な場合はそのまま退出でき、議論が硬直している際はアドバイスができる等、グループワークへの入りやすさ、出やすさに加えて、多くのグループを巡回できることも挙げられ、ポジティブな声が多く聞かれました。

メリット3:受講生の様子をその場で記録できる

TAはグループを巡回しながら、ワークの進捗、グループの様子、個々のメンバーの発言や関与の程度などを記録することがあります。対面の場合はその場でメモを取り辛いのですが、オンラインの場合はグループワークの様子を画面で確認しながらメモを取る、もしくはPCにメモとして残すことができるため、「メモを取られている」と学生に感じさせることなくTAは記録ができる、という声も聞かれました。 以上、オンライン授業支援におけるメリットについて3点挙げました。 KALS TAの5名全員がオンライン授業支援は初めてでしたが、滞りなくSセメスターの授業支援が終了し、ほっとしています。上記のメリット、特にメリット2やメリット3はTAならではの気づきであり、対面でのTA業務の苦労も垣間見れ、授業担当者としても勉強になりました。次回以降は、オンライン授業支援のデメリットとして挙げられた点について、ご紹介します。

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教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 小原優貴、伊勢坊綾、中村長史 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンラインでこそAL【対策5】

対策

5. 集中して聴ける場づくり

(1) 発表へのコメントを求める
発表に対してコメントすることを学生に求めることで、学生にとっては集中して聴く必要が生まれます。もちろん、発表者にとっても、教員やTA以外からも発表へのフィードバックが得られるのは、有意義な面があるでしょう。コメントシートを用意すれば、発表者以外の学生全員に、そういった場を提供することが可能になります。
(2)「自分ごと」にしてもらう
(1)のみでは、やや他律的な取り組みとなりますが、発表へのコメントを求める際には、それが自分自身の学びにとっても役立つことを理解してもらえれば、より自律的な取り組みとなります。例えば、小論文の執筆構想についての発表の際、テーマは違っても、先行研究批判の仕方や、問いの意義の示し方などについては、発表から学び自身の小論文に活かせることを伝えれば、学生にとっては他の学生の発表を「自分ごと」として捉えることができます。発表を聴くモチベーションが高まれば、自ずと集中するようになり、高い学習効果が期待できます。

オンラインでこそAL【課題5】

課題5. オンライン授業での学生の発表、他の学生は集中して聴けているだろうか…

オンライン授業においても、学生の発表の機会を設けていらっしゃる先生が多いかと思われます。その際、発表者以外の学生が集中して聴けているかが気にかかります。対面授業においても起こる問題ですが、課題3で記したようにオンラインの場合は学生の反応がわかりづらいので、より問題となり得ます。教員として、一体どういったことができるでしょうか。 ⇒対策5をご覧ください。

オンラインでこそAL【対策4】

対策

4. 発言しやすい環境づくり

(1) 問題点の特定
まず、発言する学生の偏りという現象の何が、その授業において問題なのかを改めて検討する必要があるかと思われます。あまり発言をしなくても、頭の中では授業内容について深く考えている学生もいるかもしれません。それぞれの授業の目的・到達目標、ひいては当該授業を通してどのような学生に育ってほしいかという教育理念に照らして改めて考える必要がありそうです。
(2) 理解度の確認
積極的に発言をする学生については、誤った理解をしている場合も含めて、教員が学生側の理解度を把握しやすく助かります。学生の発言を踏まえて、授業中に誤解を正すための補足説明をしたり、より高度な内容について説明したりすることができるでしょう。一方、発言の少ない学生については、たとえ頭の中では深く考えているにしても、教員側としては理解できているのかが気になります。課題3で述べたように、オンライン授業では学生の雰囲気を察することが難しいので、この点が対面授業のとき以上に気になるのは、ごく自然なことといえます。 このように「学生全体の理解度の確認がしにくいこと」が問題点なのだとすれば、オンライン上でできる理解度調査を実施することが対策になるかと思われます。対策3において、ZOOMの投票機能やチャットを利用する方法、ピア・インストラクションと呼ばれる手法などについて紹介していますので、ご覧ください。
(3) 発言しやすい環境づくり
一方、学生から多様な意見が出ることが意味を持つ授業設計がなされている際には、「発言が少ないこと」それ自体が問題点になり得ます。意見の分かれやすいテーマを扱い、様々な立場があることについて授業を通して実感してほしいといった目的・到達目標がある場合には、「発言者の偏り」が「特定の意見への偏り」につながってしまいかねないことに注意する必要があるでしょう。ここでは、できるだけ多くの学生の発言を促す仕掛けが求められます。 (a)シンク・ペア・シェア その際には、シンク・ペア・シェア(Think-pair-share)と呼ばれる方法が効果的です。教員からの問いかけについて、まず学生に一人で考えてもらい、その後ペアや少人数のグループで話し合ってもらった後に、全体で意見を共有するという方法です。ZOOMでは、ブレークアウトセッションを活用することで可能になります。いきなり全体の場で意見を求めるのではなく、考える時間や少人数で話し合う時間を設けることで、学生の発言への敷居が下がります。教員やTAがブレークアウトセッションを巡回し、「こんな意見がありましたが…」といった形で全体の場で紹介することも可能になります。 (b)ロールプレイ また、発言への敷居を下げるという意味では、ロールプレイも有効でしょう。学生からすれば、必ずしも自分自身の意見ではなく、与えられた役の観点からの意見という「留保」をつけることができるので、心理的な負担が減ります。多様な意見があることを知るという目的・到達目標を持った授業の場合には、学生がこれまで自分自身では考える機会のなかった観点から考えることができ得るというメリットもあります。  

オンラインでこそAL【課題4】

課題4. オンライン授業では発言する学生がより偏るようになった…

オンライン授業において、学生への問いかけやディスカッションの時間を設けていらっしゃる授業も多いかと思われます。双方向性や学生同士の学びあいの場を確保するために重要なことであり、決まった時間帯に教員と学生が集まる同期型授業ならではの特徴を活かした取り組みだといえます。一方、対面授業のときよりも発言する学生が偏りがちだとの悩みをよく耳にするのも事実です。教員として、一体どういったことができるでしょうか。 ⇒対策4をご覧ください。

アンケート結果公表:新入生のためのZoom講習会【第2弾】

4月7日~17日に実施した新入生のためのZoom講習会は、文科335名、理科414名、合計749名の新入生が参加されました。今回は第2弾として、講習会で実施したアンケート調査の中で、Zoom講習会を受けた感想について公表します。

1.アンケート実施の基本情報

実施日時:2020年4月7日~17日に24回開催 実施方法:授業終了後にZoom内チャットでアンケートURLを周知 質問項目:受講場所、利用端末、オンライン授業経験の有無、Zoom利用の有無、Zoom講習会の感想 等 回答者数:549名(回答率73%) 【内訳】文1: 82名、文2: 81名、文3: 106名、理1: 156名、理2: 100名、理3: 24名

2.結果

(※グラフ内の1%未満は数値表記を省略)

今回のアンケートでは ●Zoom講習会に出て使い方がわかった(受講者の96%) ●オンラインで受講する際の環境をどのように確保するか、考えるきっかけになった(受講者の74%) ●対面でなくとも、クラスの人たちと顔を合わせることができてよかった(受講生の92%) ●Zoomで授業を受ける心構えができた(受講者の95%) ●オンライン授業への導入として、この講習会は有意義だった(受講者の95%) ということがわかりました。

3.実施担当の感想

「入学直後よりオンライン授業を受講することになる新入生が、Zoomの練習を通して授業への不安を緩和するとともに、知り合いを増やし、大学生活へのスムーズな移行を果たす」という講習会の目的が一定程度達成されたことに安堵しています。他方、オンラインで受講する際の環境確保については、講習会では直接は触れられなかったこともあり、引き続き支援を検討する必要性を認識しています(中村)。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

アンケート結果公表:新入生のためのZoom講習会【第1弾】

4月7日~17日に実施した新入生のためのZoom講習会は、文科335名、理科414名、合計749名の新入生が参加されました。今回は第1弾として、講習会で実施したアンケート調査の中で、受講生の受講環境Zoom利用経験などに関する結果について公表します。

1.アンケート実施の基本情報

実施日時:2020年4月7日~17日に24回開催 実施方法:授業終了後にZoom内チャットでアンケートURLを周知 質問項目:受講場所、利用端末、オンライン授業経験の有無、Zoom利用の有無、Zoom講習会の感想 等 回答者数:549名(回答率73%) 【内訳】文1: 82名、文2: 81名、文3: 106名、理1: 156名、理2: 100名、理3: 24名

2.結果

   

(※グラフ内の1%未満は数値表記を省略)

今回のアンケートでは ●新入生の85%は、自宅から授業を受ける予定である ●新入生の約96%は、パソコンでオンライン授業を受ける予定である ●新入生の54%程度は、これまでにオンラインで授業を受けた経験がある ●新入生の95%は、Zoomの利用回数2回目以上 ということがわかりました。

次回第2弾では、Zoom講習会の感想等について、ご紹介します。

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教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンラインでこそAL【対策3】

対策

3. オンラインでできる理解度調査

(1) 投票とピア・インストラクション
授業のキーワードを理解しているかを問うような多肢選択問題を出し、Zoomの「投票」機能を用いて受講者に解答してもらうことができます。結果は、その場ですぐにわかるので、正答率が低い場合には、解説をしなおすことができます。こうした機会を定期的に設けると、受講者の集中力を維持しやすくなる効果もあります。教員にとっては、受講者が本当に理解しているのかを試せるような問題・選択肢を作ることが必要になります(バークレイ、メジャー [2020] pp.103-108)。 より体系的に行なうには、ピア・インストラクション(peer instruction)と呼ばれる手法を用いることができます(Mazur 1997)。①キーワードについての解説、②多肢選択問題での理解度確認、③<正当率が70%を超える場合>簡単に解説をして次の話題に移る、<正答率が30%-70%の場合>無作為のペアや数人のグループで、なぜ当該選択肢を選んだのかを説明し合い議論をしてもらう。その後、再度投票を行なう、<正答率が30%未満の場合>キーワードについてより丁寧に改めて解説をした後、再度投票を行なう、といったように、正答率に応じて授業の進行を変えれば、ついてこられない受講者を極力減らせます。ペアやグループでの議論を行なう場合には、Zoomのブレークアウトセッションを利用できます。
(2) チャット
Zoomの「チャット」機能を用いれば、授業内容でわからないことがある受講生に、授業中でも教員やTA宛てに伝えてもらうことができます。操作を誤ると、教員やTA宛に送ったつもりのものがクラス全体に流れてしまう可能性があるので、この機能を用いる場合には、授業のなかでも「チャット」機能の使い方について学ぶ機会を設けるのがよいと思われます。もちろん、受講者に抵抗がないのであれば、全体宛に質問を送ってもらうこともできます。 Zoomの「チャット」以外では、Slidoを用いる方法もあります。①他の受講者も質問に対して「いいね」を付けられるので、採りあげるべき質問に優先順位をつけることができる、②受講者が匿名でも送ることができる、③遅れて参加した人も参加前の質問をみることができるといった点を重視する場合には、導入を検討する価値がありそうです。Zoomに慣れるので精一杯の受講者が多い場合には、しばらく様子をみて、慣れた頃から導入するのがよいと思われます。

オンラインでこそAL【課題3】

課題3. 画面の向こうの受講者は授業についてこれているだろうか…

課題2でも記しましたように、オンラインでは、学生の雰囲気を「察する」ということが非常に難しくなります。このことは、初回のみならず、オンラインである限りは一定程度ついてまわる問題です。画面の向こうの受講者は、果たして授業の内容についてこれているのか、教員の側も不安になります。果たして、どういったことができるでしょうか。 ⇒対策3をご覧ください。

オンラインでこそAL【対策2】

対策

2.  オンラインでできる背景知識調査(2020年4月8日配信)

(1) 挙手
  「高校時代に倫理を履修していた人はいますか」や「人道的介入という言葉を聞いたことがある人はいますか」程度の簡単な質問であれば、Zoomでも「挙手」機能を使って尋ねることができます。ただし、受講者数が多い場合(目安としてZoomの参加者リストを一瞥では把握できない程度)には、「投票」を用いた方がよいかもしれません。
(2) 投票
   はい/いいえのみでは答えられず、選択肢が複数あるような質問の場合は、受講者数に限らず、「投票」を用いると便利です。
(3)アンケート
    Zoom以外の手段を併用することもできます。Googleフォーム等を用いて受講者の背景知識を尋ねるアンケートを作成し、そのリンクをITC-LMS等で共有すれば、当該クラスの受講者からのみ回答をもらうことができますし、教員の側の集計も効率的に行なえます。
(4)小テスト
   アンケートでは、受講者が自身の背景知識の有無を判断することになりますが、初回の授業で小テストを行なえば、教員が客観的に判断することができます(アンブローズ他 [2014] pp.43-45; デイビス [2002]p.33; 池田他 [2001] p.77)。期末試験と似た問題で出題し、学期を通じての受講者の成長を確かめるという方法もあります(バークレイ、メジャー [2020] pp.69-75)。    ITC-LMSで実施するのが一般的です(バークレイ、メジャー [2020] pp.71, 77)。 なお、実施に際しては、あくまでも開講時点での受講者の学力を知るためであるという実施目的を明確に伝え、成績評価には含まないようにすることが必要です。

オンラインでこそAL【課題2】

課題2. 初回からオンライン!受講者の背景知識がわからない…

初回の授業では、受講者がどのような知識を既に持っているのかを確かめながら進めることが多いかと思われます。教室では、受講者の仕草や反応から、雰囲気を察して難易度を調整することができますが、オンラインでは、この「察する」というのが非常に難しくなります。だからといって、そのまま進めてしまうと、受講者にとっては難しすぎたり易しすぎたりしたまま授業の回が重ねられることになってしまいます。では、この段階で、どういったことができるでしょうか。 ⇒対策2をご覧ください。

オンラインでこそAL【実践例1】

実践例

1.  オンラインでできるアイスブレイク

(1) 簡単な質問&挙手・投票
教員と受講者が打ち解けていくことが目的なので、あくまでも受講者が深く考えずに答えられる質問をすることになります。受講者数が少ない場合は、Zoomの参加者リストで何人が「挙手」をしているかが確認できます。 (「挙手」の様子の写真準備中) 目視では難しい場合には、下記のように「投票」機能を使った方がよいかもしれません。「投票」の質問文は授業中にも作れますが、操作に一定の時間がかかるため、なるべく授業前に準備しておくのがよいと思われます。また、匿名で尋ねることもできます。
(2) 自己紹介&他己紹介
下記スライドのように、①ペアで自己紹介をし合ってもらった後に、②そのペアを含む形で4人組をつくります(ブレークアウトセッションの割り当てを手動で行なえば可能です)。ホストや共同ホストの教員・TAは、ブレークアウトセッションを自由に行き来できますので、教室での巡回と同じように、できる限り多くのグループをまわって受講者を見守るのがよいでしょう。 なお、受講者数が多いとペアやグループの数が増え、ブレークアウトセッションへの移動に時間がかかることがありますが、その可能性を受講者にあらかじめ伝えておけば大きな混乱を防げます。 教室での初回の授業以上に、不安を感じている受講者が多いと思われます。そのような環境下でも、いやそのような環境下でこそ、受講者同士の学びあいが生まれるように促すことができれば、受講者達が教員を助けてくれることにつながるのではないでしょうか。
(3) ブレインストーミング
下記スライドのように、授業の内容と密接に関係する事項でブレインストーミングをしてもらうと、課題1-2への対策にもなり得ます。

オンラインでこそAL【対策1】

対策

1.  オンラインでできるアイスブレイク

(1) 簡単な質問&挙手・投票
この段階では、教員と受講者が打ち解けていくことが目的のため、あくまでも受講者が深く考えずに答えられる質問をするのがよいと思われます。Zoomの「挙手」機能、「投票」機能を使えば、教室の際と同じように、受講者全体に問いかけ反応を引き出すことができます。受講者数が少なければ(目安としてZoomの参加者リストを一瞥で把握できる程度)「挙手」、多い場合は「投票」といったように使い分けることができます(⇒実践例1)。
(2) 自己紹介&他己紹介
オンラインでも受講者同士が学びあうような学習空間をつくるには、まず、どのような人が授業に参加しているのかを受講者が知る必要があります。初回の授業で、自己紹介の時間を設けたいところです。 自己紹介は人数が多いと、後半になるにつれ、だれてしまいがちですので、ペアや少人数のグループで行なうのがよいでしょう(Zoomのブレークアウトセッションを使えば、グループ人数を自由に設定できます)。自己紹介の際には、教員の方から①項目(例:名前、所属、受講動機)をある程度指定し、②ペアやグループのなかの誰から話し始めるか(例:誕生月の早い順)を決めてあげると、受講者は安心して取り組むことができます。 また、自分の話を他者が傾聴してくれているという安心感(他者の話を傾聴しなければならないというある種の義務感)を受講者が持てるように、ペアでの自己紹介の後に「他己紹介」を設けるのも効果的です(⇒実践例1)。
(3) ブレインストーミング
Zoomのブレークアウトセッションを用いて、グループでブレインストーミングをしてもらい、出てきたアイディアの数を競うといった仕掛けもあります。ゲーム性があるため、盛り上がりやすいです。とはいえ、いきなりグループで取り組むとなると受講者の心理的なハードルが高くなってしまいます。まず1人で考える時間を与えたうえで、グループワークに移行するのが望ましいかと思われます。 お題は、あくまでもアイスブレイクを目的とするのならば、アイディアが複数出てき得るものでさえあれば、何でもよいかと思われます(例:本の使い方)。グループワークの際には「ばかげたアイディア」(例:枕にする)から出していくように促すのも、打ち解けていくうえでよいかもしれません。また、授業内容と密接に結び付くお題にすることも当然可能です(⇒実践例1)。
 

オンラインでこそAL【課題1】

初回からオンライン! 受講者がいつも以上に緊張している…

初回の授業では受講者はいつも緊張しているものですが、いきなりオンライン授業となると緊張感が増します。特に、今年度の新入生は友人を作れる機会が極端に少なく、不安な気持ちが強いと思われます(アクティブラーニング部門では「新入生のためのZoom講習会」を実施し、Zoomに慣れると同時に友人づくりの機会を提供しています)。こうした心理状況で学習に集中するのは、なかなか大変です。教員として、どういったことができるでしょうか。 ⇒対策1をご覧ください。

【教員対象・随時更新】「オンラインでこそアクティブラーニング」

趣旨

 Zoomの利用方法を一通り理解された先生方におかれては、次はオンラインでも受講者の学びを促すような授業設計・実施ができるのかと頭を悩ませられる段階かと思われます。教室での授業に比べて学生の反応を捉えにくいことを考慮すれば、オンラインでは、より双方向的な仕掛けが求められます。オンラインでこそアクティブラーニングが必要だといえます。    そこで、この「オンラインでこそアクティブラーニング」のページでは、オンライン授業に際しての「課題」を挙げ、それへの「対策」と「実践例」を紹介していきます。もっとも、本部門教員の多くにとっても、オンライン授業は、まだまだ未知の領域です。ここでは、マニュアルというよりも、先生方の授業設計・実施における意思決定のお役に立つような情報を紹介していくサポートブックを目指していきます。

連載

 各記事は、https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/online_class/よりご覧いただけます。

  アクティブラーニング手法を用いたオンライン授業の設計や実施に役立つ情報を、随時更新していきますので、定期的にご覧いただけますと幸いです。オンライン授業に関する先生方・TAの皆さんのご意見やご経験も参考にさせていただきたいと思っております。アクティブラーニング手法を用いたオンライン授業の設計や実施にあたって知りたいこと、具体的な実践状況や工夫・課題など、先生方・TAの皆さんからの情報提供をお待ちしております。是非こちら(https://forms.gle/DnnwewznyeM4XiPEA)までお寄せください。

 

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

『学習評価ハンドブック』(東京大学出版会、2020年3月)刊行

刊行のお知らせ

エリザベス・F・バークレイ、クレア・ハウエル・メジャー著(東京大学教養教育高度化機構アクティブラーニング部門、吉田塁監訳)『学習評価ハンドブック―アクティブラーニングを促す授業づくり』(東京大学出版会、2020年3月刊行予定)が刊行されました。 アクティブラーニングをどう評価すればよいのか。「学習目的の設定⇒評価可能な成果物の設定⇒分析と報告⇒次の授業への反映」という流れを、50の技法ごとに活用例を示しながら解説します。教員共通の悩みに答える1冊です。アクティブラーニングをどう評価すればよいのか。「学習目的の設定→評価可能な成果物の設定→分析と報告→次の授業への反映」という流れを、50の技法ごとに活用例(オンライン授業を含む)を示しながら紹介しています。教員共通の悩みに答える1冊です。 詳細は、http://www.utp.or.jp/book/b497135.html(東京大学出版会)をご覧ください。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

模擬国連ワークショップ(2020年3月6日)

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様と、次回の予告について簡略ながらご報告します。 日時:2020年3月6日(金)14時~16時30分 場所:東京大学駒場Iキャンパス 17号館2階 KALS 参加者数:20名 登壇者: 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)セッション1・2 高橋尚子(国際連合政務・平和構築局 政務官)セッション2 北村優成、高園遼太郎、高羽珠理(東京大学教養学部生)セッション1

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③模擬国連で学んだことの社会での活用例を説明できるようになる (セッション2に相当)

2.概要

今回は、飛沫感染リスクを最小限にするため、ペアワークやグループワークを省略した形で進めさせていただきました。正直なところ、開始直前まで、アクティブラーニングをとりいれた授業に関するワークショップが一方向的でよいのかという忸怩たる思いもありました。しかし、始まってみますと、シンキングタイムや質疑応答の際の参加者の皆様の積極的なご参加により、ふだんの研修同様の空気を感じながら進めることができました。 【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連のできること・できないこと」(14:10~15:10) 模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤(https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/classes/class-report/mun_semi_2019a_teacher/を踏まえ、①教員が模擬国連の導入目的を明確化すること、②導入の意義を受講者に伝えること、③目的に照らしてより適切な教育手法がある場合には、模擬国連にこだわらずにそちらを選ぶことなどを、授業担当者と受講者からお伝えしました。参加者の方との質疑応答も含め、「どのような学生・生徒に育ってほしいのか」という教育理念がまずあるべきで、模擬国連はあくまでも一手段であることについて考えを深める機会となりました。

セッション1.  授業担当者の説明

セッション1. 授業受講者の説明

【3】セッション2「社会で役立つ模擬国連」(15:20~16:20) セッション1で確認した「どのような学生・生徒に育ってほしいのか」という教育理念の重要性を踏まえ、学生時代に模擬国連を経験し、現在は実際の国連会議に関わっていらっしゃる高橋政務官と授業担当者との対談を行ないました。①ニューヨークの国連本部でのお仕事、②フィールドでのお仕事、③それらと模擬国連との関係、といった点について、参加者の方との質疑応答もまじえて進めました。なお、セッション2の模様は、東大TV(https://www.youtube.com/watch?v=OlLXT6cdZJo)から視聴できます。

セッション2. 高橋政務官と授業担当者の対談

【4】まとめ(16:20~16:30) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.次回予告

次回は、2020年8月頃の実施を予定しております(感染症関連の状況によっては変更が生じ得ます)。お申込みいただきながら今回ご参加いただけなかった方もいらっしゃることから、次回は今回の構成を踏襲しつつ、2020年度上半期の授業実践を踏まえて内容をアップデートして実施したいと考えております。詳細が決まり次第、お知らせいたします。 将来的には、①各校での模擬国連導入事例共有、②模擬国連以外のロールプレイやシミュレーションの導入事例共有といったように内容を増やして定期的に開催していきたいと考えております。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

模擬国連ワークショップ(2020年3月6日)開催

カテゴリー: イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、標題の講座を以下のとおり開催いたします。 模擬国連では、一人一人が米国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。立場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、 相手を論破することで勝利を目指すディベートと異なり、模擬国連では合意形成が目的であるため、多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するのに適したアクティブラーニングの手法といえます。この模擬国連の授業への導入について、東京大学教養学部での試行錯誤(https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/classes/class-report/mun_semi_2019a_teacher/lを踏まえ、授業担当者・履修者、そして現役国連職員とともに検討する「模擬国連ワークショップ」を開くことになりました。

1.日時

2020年3月6日(金)14時~17時

2.場所

東京大学駒場Iキャンパス 17号館2階 KALS http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

3.対象者

大学教職員、高等学校教職員、中学校教職員、学生、一般の方など [定員20名]

4.参加費

無料

5.プログラム

【本ワークショップの目的・到達目標】 学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ ・ 模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ・ 模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当) ・ 模擬国連で学んだことの社会での活用例を説明できるようになる (セッション3に相当) 【本ワークショップのスケジュール】 14:00~14:10 趣旨説明 14:10~14:55 セッション1「模擬国連のできること・できないこと」 15:00~15:40 セッション2「模擬国連のミニ体験」 15:50~16:50 セッション3「社会で役立つ模擬国連」 16:50~17:00 まとめ

6.登壇者

中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 模擬国連を導入した授業の実施者として、その意義や注意点、工夫のしどころ等についてお話します 高橋尚子(国際連合政務・平和構築局 政務官) 学生時代に模擬国連を経験し、現在は実際の国連会議に関わっている立場からお話します 北村優成、高園遼太郎、高羽珠理(東京大学教養学部生) 模擬国連を導入した授業の受講者の立場からお話します

7.お申し込み

https://forms.gle/wELTAWXwqaNdhv8C6

8.チラシ

告知用のチラシが下記よりダウンロード可能です。 https://www.dropbox.com/s/38gmu555a8a7txk/MUN_WS1%286%20Mar%202020%29_poster.pdf?dl=0 お知り合いの方々への拡散にご協力いただければ幸いです。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「模擬国連で学ぶ問題解決法」(2019年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ問題解決法」(2019年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は13名(1年生6名、2年生3名、3年生3名、4年生1名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:村田幸優(教養学部教養学科相関社会科学コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【中間レポートで評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【中間レポートで評価】③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【中間レポートで評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【期末レポートで評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【期末レポートで評価】 ⑥模擬国連会議の教育⼿法としての特徴を説明できる【期末レポートで評価】

3.授業の流れ

ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。 模擬国連会議:シリア人道危機(第2回~第7回) 2010年代を通して続いているシリア人道危機についての国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国、フランス、ロシア、英国、米国の5つの常任理事国に「中間派」の南アフリカを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を2・3人で担当しました。現実の会議と異なり合意形成が可能になった面もありましたが、最終的には拒否権が行使され、現実同様、決議案は廃案となりました。 第7回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。 なお、第4回には、国際連合政務・平和構築局 政務官の高橋尚子氏がゲスト講師としてお越しくださり、会議を講評してくださるとともに、国連職員の役割について紹介してくださりました。第6回には、外務省 政務官秘書官の山崎茉莉亜氏がゲスト講師としてお越しくださり、会議の講評とともに、外交官の役割について紹介してくださりました。高橋氏・山崎氏ともに学部生時代にサークル活動として模擬国連を経験した立場から、授業としての模擬国連についてもコメントをしてくださいました。 模擬国連会議:イラク戦争(第8回~第12回) 2003年3月のイラク戦争開戦直前の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第12回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国、フランス、ロシア、英国、米国の5つの常任理事国に「中間派」のチリを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を2・3人で担当しました。現実の会議と異なり決議案が採択され、当面の武力行使は見送られる結果となりました。 第12回では、シリアの際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。 なお、第11回には、読売新聞政治部 外務省担当記者の梁田真樹子氏がゲスト講師としてお越しくださり、会議を講評してくださるとともに、メディアの役割について紹介してくださりました。梁田氏もまた学部生時代にサークル活動として模擬国連を経験した立場から、授業としての模擬国連についてもコメントをしてくださいました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについてふりかえりました。また、来年度の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。 授業スケジュール

4.受講者の感想

・実際に一つの国を担当することによって得られた臨場感と責任感は輪読では得られず、より真剣な問題への向き合い方につながった ・座学(国際関係論など)で学んだことを実践に応用できる ・ロシアや中国の立場も彼らの利益を考えれば理解できることがわかった ・国際交渉の面白さや合意に達した時の達成感、逆に妥協の難しさ、限界を少しでも味わえたことは、今実際に社会で起きている国際問題の争点について積極的に関心を持つことに繋がった ・国連の決議を読む際に、前文・主文の区別、英語の文末の違い(現在系か現在進行形か)がどのように意味を変えているのか、等に注意して読むようになった。 ・二回会議があったので、学期を通して会議行動面での成長を感じられた

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教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「東京大学新聞」に椿本先生が取材を受けた記事が掲載されました

カテゴリー: PRESS

「東京大学新聞」(東京大学新聞社)の2019年11月19日号と26日号に、椿本弥生特任准教授が取材を受けた記事「東大の足元は今①教育編(上)(下)」が掲載されました。

教養教育高度化機構シンポジウム「東京大学初年次ゼミナールの軌跡と展望」報告書

報告書 全40ページ
2018年3月14(水)に開催された教養教育高度化機構シンポジウム「東京大学初年次ゼミナールの軌跡と展望」の報告書です。

はじめに

  • 開会挨拶  総合文化研究科長・教養学部長 石田 淳
  • シンポジウム趣旨説明  教養教育高度化機構長 西中村 浩

シンポジウム第Ⅰ部

  • 「東京大学の挑戦-学部教育の総合的改革について-」 総合文化研究科 副研究科長 森山 工
  • 「advanced でseamless な 初年次教育へ」 総合文化研究科 教授 佐藤 俊樹
  • 「初年次ゼミナール理科ーアクティブラーニングによる理系初年次教育ー」 教養教育高度化機構 初年次教育部門長 増田 建
  • 「データからみる初年次ゼミナールの学び」 教養教育高度化機構 初年次教育部門 特任准教授 椿本 弥生

シンポジウム第Ⅱ部

  • 基調講演「初年次教育は大学教育に何をもたらすのか」 関西国際大学 学長 濱名 篤
  • 「センサーとIoTのひらく教育評価の可能性」 教養教育高度化機構 初年次教育部門 特任准教授 坂口 菊恵
  • 「教育改革の認知科学的評価に向けて」 総合文化研究科 教授 開 一夫

教養教育高度化機構 部門教員紹介

「LGBT医療福祉フォーラム2018」を開催します

日時:2018年10月13日(土)・14日(日) 場所:東京大学駒場Iキャンパス 21 KOMCEE West, East http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_55_j.html 対象者:医療・福祉専門職の方およびLGBT支援に関心のある一般の方 参加費:3,500円[一般]/1,500円[学生] 2,500円[一般・事前登録]← 10/1申し込み分まで 2,000円[医療福祉従事者交流会、事前申し込み必須] 主催:カラフル@はーと、東京大学教養教育高度化機構 初年次教育部門 参加申し込み:Peatixページ イベント詳細アップデート:Facebookページ お問い合わせ先:lgbtcolourfulheart_at_gmail.com (カラフル@はーと) _at_ を@に差し替えてご送信ください。
  • すべてのセッションに手話通訳とUDトークによるサポートがつきます。

会場入口とフロアマップ


プログラム

 

10月13日(土)

「シンポジウム LGBTのいのちと暮らしを守る」は、会場1で実施し、会場2に中継する予定です。 関連書籍の現地での販売は、13日 16:00-18:00 にEast地下1階 ホワイエ(渡り廊下)で行う予定です。 [table id=10 /]

第1会場 13:00-15:10 シンポジウム 「LGBTのいのちと暮らしを守る」

「LGBTのいのちと暮らし」と聞き、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。そもそもLGBTの人々は、「いのち」や「暮らし」に困っているのでしょうか。もしそうであれば、どんなことに困っているのでしょうか。あるいは問題を解決したり、サポートできるのはいったい誰なのでしょうか。 LGBTが各ライフステージで経験する問題は多岐に渡りますが、その多くは世間一般に知られているとは言えません。学校や職場でのカミングアウト、制服やトイレ、いじめ・差別・偏見、自分を隠し続け自尊心が低くなること、法的に保証されないパートナーとの関係、老後のライフプラン・・・「いのち」や「暮らし」の大小さまざまな問題を、共に知り、考え、理解を深める場を作りたい思いで、シンポジウムを企画しました。 今回のシンポジウムでは、「LGBT」と「医療・福祉」の重なる領域で活動をされてきた3名のシンポジストを迎えます。 林直樹氏 には精神科医として臨床の現場に立ちながらLGBT支援に携わった経験を、桂木祥子氏 には精神保健福祉士としてのLGBT支援経験や社会資源のあり方について、浅沼智也氏 にはトランスジェンダーの看護師として働きながら啓発やピアサポートに携わってきた経験を、それぞれ詳しく話していただく予定です。クロストークやフロアを交えた質疑応答の時間も用意しています。ぜひご参加ください。

第1会場 15:20-17:00 「LGBT に関する医療福祉分野の専門教育」

本分科会では、日本における医療・福祉従事者へのLGBTに関する教育の現状について、医療・福祉の利用者、学生、各専門職の研究者とそれぞれの立場から共有します。更にフロアの参加者とともに今後どのような教育が必要かを論議し、教育を広めていく方法についてついても考察していきます。 <司会>  吉田絵理子 医師、 社会人大学院生として病院勤務をしながらLGBTと医療に関する研究を行っている。2018年よりLGBT当事者医師としての講演活動も開始した。 <シンポジスト> 鮫島甲太: 医学部5年生、 IFMSA-Japan(国際医学生連盟 日本) SCORA(性と生殖・エイズに関する委員会)の委員として多様な性や性感染症の啓発活動などを行っている 次六毅智:  看護師、訪問看護ステーション勤務(精神)、大学院博士前期課程看護管理学修了(看護学修士)。修士論文テーマは「セクシュアル・マイノリティが経験した不安や困難と看護師の関わり」 中島蓮:  医学部栄養学科の学生、IFMSA-Japan(国際医学生連盟 日本)SCORA(性と生殖・エイズに関する委員会) Rainbow Flag Project責任者、中学生のときにトランスジェンダー(FtM)であると自覚し、大学生としてカミングアウトをしながら生活している 佐々木 宰: 介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員。介護福祉士養成施設教員を経て、2016年より介護福祉関係の研修・研究機関に所属 松灘かずみ: カラフル@はーとのスタッフとして女性ミーティングを担当。東京YWCA「DVサバイバーと協働するための支援者トレーニング」トレーナーチームにも所属

第2会場 15:20-17:00 「LGBTと貧困」

病気で働けなくなった。非正規労働で低賃金だ。家族と折り合いが悪く、暴力を受けたことがあるので頼ることができないーー。このような現象はだれにでもおきうることですが、一般的に社会的にマイノリティである人ほど、このようなリスクに直面しやすく、またこのような状況に陥った場合のダメージが大きいと言われています。学校で、会社で、自分のことを理解してくれる人が見つからずに所属を転々としたり、そもそも家族との折り合いが悪いために困ったとき頼れなかったり、地域社会でもだれに助けを求めたらいいかわからなかったりするLGBTの人々がいます。 「貧困」とは、単にカネがない=貧乏であるだけでなく、社会的に孤立し、つながりを得ることが難しい状態のことをさします。ひとたび貧困に陥った当事者たちをどのように支援に繋げていくか、具体的な事例を交えながら、NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい理事長の 大西連 さんと、 長年レズビアンやバイセクシュアル女性の支援に関わってきたLOUD代表の 大江千束 さんのお二人に伺います。

第3会場 15:20-16:20 「マインドフルネスを体験してみよう!――こころのセルフケア実践講座」

「マインドフルネス」という言葉をご存知でしょうか。仏教にルーツを持ちながら、現在では認知行動療法のひとつとして精神科・心療内科など医療現場を中心に使われるようになった技法です。抑うつや不安の軽減に効果があり、ストレス対処にも効果的な方法です。グーグル社などで社員の心の健康対策として導入されたことも話題になりました。 LGBTの人々はメンタルヘルスの領域ではハイリスク群とされています。その理由はいくつか考えられますが、セクシュアリティを開示できないことによるストレス、セクシュアリティを開示したことによる周囲との関係性の変化、社会的偏見や差別、スティグマによる自尊心の傷つきや自己価値の低下など、主に心理社会的要因が指摘されています。こういった少数者性に起因するストレスは「マイノリティストレス」と呼ばれ、普段の生活では意識されないことも多いですが、メンタルヘルスを慢性的に低下させる要因となっています。これまでの調査では、LGBTは一般集団に比べて抑うつ傾向が強く、希死念慮や自殺企図の率も有意に高いことが明らかにされており、解決すべき喫緊の課題のひとつです。 分科会では、マインドフルネスを体験しながら、ストレスとの付き合い方について学びを深める予定です。対人援助職はストレスフルな現場に身を置くことも多いですから、参加者の皆さんのメンタルヘルス対策にも活用していただけると思います。ぜひご参加ください。  

10月14日(日)

[table id=11 /] 14日は構内の生協食堂と購買が休みですので、昼食時は混雑が予定されます。 近隣のランチマップを参考にしてください。

第1会場 10:00-12:00 「LGBTとDV/性暴力被害」

最近、LGBTsへの差別や偏見についてはメディア等でよく、取り上げられています。しかし、LGBTsのカップルの間にもDVがあり、同性間やLGBTsが被害者であったり加害者ともなる性暴力もあることはあまり知られていません。 今回は講師に 田中玲 氏と 辻雄作 氏のお二人をお招きして「DVとは何か」「性暴力とは何か」をかいつまんで説明しつつ、実際の経験談や事例などを中心に話しを進めていきます。 司会の 松灘かずみ 氏は現在カラフル@はーとスタッフ。最近はをキーワードにしたネットワークにも関わり、東京YWCA「DVサバイバーと協働するための支援者トレーニング」トレーナーチームにも所属しています。 辻雄作 氏は、LGBTs・男性・若者など相談員、性暴力・DV被害者支援員。性暴力やDVの被害者支援や加害者更生教育、LGBTs、女性、男性の相談などの活動、90年代から実践しており、ロビイングなども行っています。 田中玲 氏はかたり場malu副代表。27年前、MTFレズビアンの人に誘われコミュニティデビューをし、LGBTQを横断してきました。18年前くらいまで一緒に暮らしていた元恋人からDV、性暴力、ストーカー被害にあい、そこから匿ってくれた恋人には精神的暴力を受けた経験を持ちます。

第2会場 10:00-12:00 「LGBTの子ども若者支援」

LGBTの子どもや若者にとって、差別や偏見にさらされず安心していられる居場所があることは、自己肯定感をはぐくむうえで非常に重要です。いまの日本において、そうした居場所がすべてのLGBTの子ども若者のアクセス可能な範囲にあるとはいえませんが、近年では、学生サークルや自治体と連携した居場所づくりがすこしずつ増えてきています。 医療福祉の現場においても、多様な性をもつ子どもたちへの対応が求められます。子どもたちのニーズは一人ひとり異なっていますが、それらを正確に把握するためには、かれらがどのようなことに困りやすいのかをある程度知っておく必要があるでしょう。また、子どものニーズを実現するためには、周囲の大人の理解や協力が必要になることも多いことから、専門職としてどのように支援者を増やしていくか、周囲を巻き込んでいくかという関係調整のスキルも求められます。そこには、保護者をはじめ、学校の教員や地域の子どもにかかわる機関、LGBTの若者支援団体等との連携が含まれます。 本分科会では、LGBT若年層支援に取り組む 星野慎二 さん、児童養護施設におけるLGBTの子どもの調査をおこなっている 藤めぐみ さん、トランスジェンダーの子どもを支援する精神科医の 康純 先生のお三方から、これまでの活動や今後の課題などについてお話しをうかがいます。現在、子どもとかかわる現場で働いている方はもちろん、子ども若者支援に関心のある方は、ぜひご参加ください。

第4会場 10:00-12:00 「地域支援者のための入門セミナー――HIV・依存・セクシュアルヘルスの支援」

薬物使用などのメンタルヘルスやHIV/エイズなど性の健康に課題を抱えたLGBT当事者は、コミュニティの中でもなかなか声をあげにくく、支援を受けられないでいることがあります。元々抱えている悩みに加えて、相談先がわからない・受け入れてもらえるか不安、などと相談を躊躇してしまうこともあります。一方、司法や精神保健、高齢者・障害者福祉等の支援機関で、はじめてLGBTの課題が浮かび上がることもあり、地域の支援者の理解の促進が望まれています。 行き場を失いがちな難しさを抱えたLGBTを地域でどう支援していくのか。現場の専門家や当事者と一緒に考えます。 登壇者(敬称略) ・ 浅沼智也 カラフル@はーと共同代表。看護師。 ・ 谷山廣 機能不全家庭での虐待や依存症発症を経て、依存症自助グループに繋がり、12ステッププログラムの実践を通して回復を続ける当事者。 ・ 上岡陽江 精神保健福祉士。薬物・アルコール依存症女性の回復と自立をサポートすることを目的に設立されたダルク女性ハウス代表。著書に『生きのびるための犯罪(みち)』、共著に『その後の不自由』ほか。 ・ 生島嗣 社会福祉士。NPO法人ぷれいす東京代表。HIV陽性者、パートナー、家族のための相談支援に従事。研究活動はHIV陽性者の就労、ゲイ男性の薬物使用、メンタルヘルス、HIV啓発をテーマにしている。 司会: 大槻知子牧原信也 (ともにぷれいす東京、社会福祉士)

第1会場 13:00-14:30 「GID/トランスジェンダーと医療」

トランスジェンダー(Transgender/TG)とは出生時に法律的・社会的に割り当てられられた性別とは異なる性別を生きる人(またはそれを望んでいる人),GID(Gender Identity Disorder/性同一性障害)とは「精神障害の診断と統計マニュアル」(DSM)に表記された医学的な診断基準でこの診断を受けた人のことを指します。2013年のDSM-5からは性別違和(Gender Dysphoria/GD)という新たな基準に変更され、GIDに比べ多様な性自認の人々に幅広く当てはめることが可能になりました。 この分科会では、数多くのTG/GID(GD)当事者と臨床の現場でかかわってこられた専門家・はりまメンタルクリニックの 針間克己 院長にGIDから性別違和への変更についてをメインに現在の日本のTG/GID(GD)と医療についてお話していただきます。 また、TG/GID(GD)当事者はその治療だけではなく、日常的な医療機関の受診や医療サービスを受けることに対する壁を感じる場面が多いという話をよく耳にするため、今回独自にTG/GID(GD)当事者を対象にした医療に関するアンケート調査を行い、その中間結果を発表します。内容は、TG/GID(GD)当事者であることを理由に病院などの医療機関への受診を抑制した経験や受診・入院した際に不快な経験をしたこと、反対に配慮があって嬉しかったことなどです。TG/GID(GD)当事者も複数登壇し、実際の体験談を聞くことが出来ます。その後登壇者同士でのクロストーク、会場とのディスカッションを予定しています。 TG/GID(GD)医療の専門家や当事者の話を直接聞ける貴重な機会です。

第2会場 13:00-14:30 「事例から学ぶLGBTと医療福祉――誰が何に困っているのか」

LGBTは今やブームとまで言われ、その言葉を見聞きすることは日常的になりました。世の中の理解が少しずつ進む中で、様々な領域における課題が明らかになりつつありますが、医療・福祉の分野ではどうでしょうか。HIVなど特定の領域は先進的な理解と取り組みを始めていますが、その他の医療福祉分野ではまだ十分な理解と配慮がされておらず、私たち専門職の多くは「誰が何に困っているのか」分からずにいると言って良いでしょう。 この分科会では、「LGBT」と「医療福祉」の交わる領域で困難を経験した実際の事例を紹介します。事例を通し、医療福祉に携わる専門職がLGBTにどのような認識を持つべきか、また何を提供できるのか等、学びを深める場にしたいと思います。ベテランの方から「LGBTがまだよく分からない」という方まで、多くの方のご参加をお待ちしています。 なお、当日は多職種での簡単なグループワークも予定していますので、会場では周囲にお声がけいただき、できるだけ職種が偏らないようご着席ください。

第1会場 14:40-16:10 「地方自治体におけるLGBT支援」

昨今、地方自治体によるLGBT支援が活発になっています。これまでLGBTの人々は地域社会で暮らしていても、しばしば沈黙を強いられ見えない存在にされてきました。学校や職場、医療・福祉サービスへのアクセスなどで困りごとがあっても、当事者たちはそもそも「行政を頼っていい」という発想さえ持ちにくかったのです。それが今、少しずつ変わろうとしています。 本分科会では、LGBT支援に取り組む自治体として 横須賀市、千葉市、那覇市の担当者の3名をお招きします。横須賀市は全国に先駆けてLGBTなどの性的マイノリティ支援に取り組み、2018年5月には「全国でもっともLGBT支援施策に取り組んでいる自治体」として話題になりました。横須賀市は市立病院において、緊急搬送時の病状説明や手術への同意書への署名などの場面で同性パートナーを親族と同様に扱うことを明言しています。千葉市は今年、市職員や関係者が正しい理解のもと、適切な対応ができるように「LGBTについて知りサポートするためのガイドライン」を策定しました。那覇市はカミングアウトしにくい地域性がある中、2015年「性の多様性を尊重する都市・なは宣言」を実施。現在、戸籍上同性のカップルを対象とするパートナーシップ登録を行なっています。分科会を通して、どのようなLGBT支援施策を行っているかや、取り組みの中でどんな工夫があったかを詳しく伺います。

第2会場 14:40-16:10 「LGBTと介護 ~多様なニーズ・ともに創る介護」

だれもがたずさわる可能性のある「介護」という営み。その介護の現場での、セクシュアルマイノリティへの理解やニーズの認識は、まだ途上という現状があります。そこには、プライバシーに関わり、かつ継続的なサービスだからこそ、プライベートなことの「言いにくさ」や、セクシュアリティや生活の価値観などの違いにより、セクシュアリティやニーズの表明をするかどうか、どのようにサービスを利用したいか、などにも違いがあるという側面もあります。また、介護サービスに関わる多職種への多様なセクシュアリティについての教育・研修の必要性などの課題もあります。 その中で、セクシュアルマイノリティ当事者が、パートナーとの関係や、支援へのニーズなどを伝えて、安心して介護サービスを利用したいと望んだ時、どのようにしてともに考え、ケアプランを創っていけるでしょうか?また介護サービス従事者が、セクシュアリティや家族の在り方の多様性を理解し、ニーズに寄りそう支援を提供するために必要な取り組みとは何でしょうか? この分科会を通して、多様なニーズに寄りそう介護について、現状や課題を皆様と共有し、考えていければと思います。また、介護サービスを受ける時、自身や家族・周りの大切な人の思いを尊重するための意思表示や選択などのために、「今からできる介護・老後への備え」としての情報や制度について、共有できればと思います。

2018年教養教育高度化機構シンポジウム:「東京大学 初年次ゼミナールの軌跡と展望」を開催します

日時:2018年3月14日(水)13:00〜18:00 場所:東京大学駒場Iキャンパス

21 KOMCEE East  K011教室(講演会) 21 KOMCEE West  MMホール(ポスター発表、懇親会)

参加費:無料 申し込み方法: こちらから事前申込みをお願いいたします。 主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 初年次教育部門
東京大学では、教育の「国際化」、「実質化」、「高度化」を目標として、2015年度より学部教育の総合的教育改革が開始されました。本改革では、学事暦の変更や授業時間の延長などさまざまな取り組みが行われ、その中でも「実質化」の中で主体的な学びの促進をはかるために始められたのが、初年次・少人数チュートリアル授業である「初年次ゼミナール」です。「初年次ゼミナール」は、東京大学に入学したばかりの学生が全員履修しなければならない必修の基礎科目であり、学術的な学び(アカデミック体験)を通した、学生の学びの意識の改革と、基礎的な学術スキル習得を目的としています。 本シンポジウムでは、開始から3年を経た「初年次ゼミナール」に焦点を当てて、その成果や展望について議論します。 *ポスターセッションでは、教養教育高度化機構の各部門の活動報告および、初年次ゼミナールを履修した学生による成果発表を行います。軽食付き。

プログラム

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駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)10周年記念シンポジウム 「アクティブラーニングのこれまでとこれから ー学習環境と教育改善を考えるー」(2018年1月26日)開催

カテゴリー:

東京大学では、広い学問的視野に立って様々な課題を解決することのできる人材を育てるために、理想の教養教育の追求を目標に掲げ、学生が能動的に課題に取り組むアクティブラーニングを重視してきました。駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)は、こうした学習を実現する空間として2007年に開設されました。 アクティブラーニングは、少人数の授業に適した手法と考えられがちですが、大人数の授業にも効果的に導入することが可能です。 KALS設置10周年を記念する今回のシンポジウムでは、KALSの運営に携わる本学の各部局が、KALS設置から今日に至るまで、大人数の授業支援を含めてどのようなアクティブラーニングに関する取り組みを行ってきたのかを振り返るとともに、参加者のみなさんと、今後の大学教育におけるアクティブラーニングのあり方についてワークショップ形式で検討します。 当日は、KALSの教室空間を活用したインタラクティブなシンポジウムを予定しております。ふるってご参加ください。

時間

2018年1月26日(金) 13:30-17:00

場所

東京大学駒場Iキャンパス 17号館2階 KALS http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

対象者

学内教職員、学外関係者(ご招待)(定員40名)

プログラム

13:30~13:35 「開会の挨拶」 西中村 浩(教養教育高度化機構長)
13:35~14:05 「教養学部におけるアクティブラーニングの導入とKALS」 永田 敬(総合研究大学院大学 理事・副学長)
14:05~14:35 「KALSの学習環境とアクティブラーニングの未来」 山内 祐平(大学院情報学環・学際情報学府 教授)
14:35~15:05 「大総センターにおける取り組みー高大接続とアクティブラーニング」 中原 淳(大学総合教育研究センター 准教授)
15:05~15:20 休憩
15:20~15:50 「KALSにおけるアクティブラーニングの取り組み」 福山 佑樹(教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 特任助教)
15:50~16:50 「大学教育におけるアクティブラーニングの今後を考える」(ワークショップ) 吉田 塁(教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 特任助教)
16:50~17:00 「閉会の挨拶」 山口 和紀(教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門長)

参加申し込み

https://goo.gl/forms/pelkayTusl1o7nrw1

KALS Programmer テーマ決めワークショップ(2017年12月4日)開催

カテゴリー:

KALS Programmer テーマ決めワークショップ開催のお知らせ

KALS Programmer とは、授業に代表される教育場面で活用できるプログラム、Web サービスを開発するボランティアベースの学生のことを指します。 KALS Programmer について詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。 KALS Programmer について 今回は、KALS Programmer に興味がある学生を集い、どのようなプログラム、Webサービスがあれば授業・教育を変えられるかを発想・検討するワークショップを実施します。 このワークショップに出たからといって、KALS Programmer になることが決定するわけではないため、興味がある方は是非ご参加ください! 参加できない方でも以下のフォームに情報入力していただければ、今後 KALS Programmer に関する情報を共有いたします。 https://goo.gl/forms/OmjmLfkGM1zgmYvj2

日時

2017年12月4日(月)17:00-19:00

場所

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

対象者

本学の学生(大学生、大学院生)

講師

アクティブラーニング部門 特任助教 吉田塁

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 https://goo.gl/forms/OmjmLfkGM1zgmYvj2

問い合わせ先

kalsアットkals.c.u-tokyo.ac.jp(アットを@に変更してください) (担当者: 吉田) 以上です。 どうぞよろしくお願いいたします! (吉田塁)  

セミナー:「茶わんの湯」から"身近な生物"・”身近な化学”を考える

「LGBT世代間懇話会」を開催しました

2017年10月7日(土)に東京大学駒場I キャンパスにて、「LGBT世代間懇話会」を開催しました。 LGBTへの肯定的な論調が生まれている現在では想像もできない差別・問題が、20年前にはありました。 長年活動を続ける性的マイノリティサポート団体が、どんな問題にどう対処したか。若者世代は、今後想定される問題に上の世代の知見をどう生かすべきか。 考える場として、所属や世代を超えた新たなつながりを作り協力関係を構築する契機となるよう、LGBT世代間懇話会実行委員会との共同で本シンポジウムを開催し、当日は約80名の方々にご参加いただきました。

LGBT世代間懇話会

日時:2017年10月7日(土)

第一部 シンポジウム 13:30~16:00(開場13:15) 第二部 情報交換会  16:00~17:30

会場:東京大学駒場I キャンパス

第一部 21 KOMCEE East(2階)K211教室 第二部 21 KOMCEE West MMホール http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_55_j.html

参加費:無料 主催:東京大学教養教育高度化機構・LGBT世代間懇話会実行委員会 イベント概要:http://kokucheese.com/event/index/486978/

プログラム

13:30~16:00  第一部 シンポジウム「性的マイノリティサポート団体のこれまで・これから」

長年にわたり性的マイノリティサポート団体を運営してきた方々を招き、パネルディスカッションと質疑応答を行います。

第1セッション:これまでの各団体の歴史 各団体の歴史を通じ、上の世代が直面した差別や問題・その解決策をお話しいただきます。

第2セッション:社会的背景 性的マイノリティの活動へ影響を及ぼした、日本社会の背景を探ります。

第3セッション:LGBTを取り巻く現状 性的マイノリティへの根強い差別を知り、前2つのセッションで学んだ事例を今に当てはめて考えます。

第4セッション:これからの展望・提言 偏見と差別をなくすための、具体的取り組みを提言します。

第5セッション:フリートーク・質疑応答 若い世代の参加者の疑問に答え、世代間の闊達な議論を行います。


16:00~17:30  第二部 情報交換会 ―サポート・事業・つながりをひとりひとりへ広げる―

参加者の行っている活動・事業・研究等について話してもらい、全体でシェアすることで、新しい協力関係を作る場とします。 *活動・事業等を紹介するフライヤー等があれば、お持ちいただいて配布していただくことができます。


ガイダンス:身近な環境化学実習

カテゴリー: 開講科目

「学生がつくる大学の授業」(2017年度 第11~13回)

以下は、全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」のTAによる感想です。授業の概要の詳細はこちらをご覧ください。

第11回~第12回反転授業の実施

いよいよ反転授業の実施です!第11回では理系チームが、第12回では文系チームがそれぞれこれまで準備してきた反転授業を実施しました。授業の実施には、反転授業に興味を持っていただいた6名の参加者(学部生・院生)にそれぞれご協力いただきました。 授業開始前、学生は緊張の面持ちでしたが、一旦授業が始まると、堂々とプレゼンテーション/ファシリテーションをしていたように思います。   反転授業が終わった後、各授業に対して参加者・教員からフィードバックを行いました。反転授業を受けた経験のある参加者は少なく、新鮮さを感じた方が多かったようです。しかし一方で、「ディスカッション形式の対面授業で本当に到達目標が達成できたのか」「対面授業を行うにあたり動画の内容が不十分ではないか」といった意見もあり、アクティブラーニング形式の授業を進める上でのファシリテーションの難しさや、反転授業に特有な動画授業と対面授業の接続の難しさを学生は痛感している様子でした。

第13回 ふりかえり

本コースの最後に、これまでのふりかえりを行いました。第1回~第12回までに学んだ内容を一通り確認したのち、「大学における反転授業の導入に賛成か反対か?」という課題に取り組みました。最終的には、その場にいた学生全員が「条件付きで賛成」という結論に達しました。授業に参加した学生は、12回の授業を通じて反転授業導入における問題点(教員の準備が大変、大人数だとやりにくい、教員のモチベーションに依存する等)を十分に理解した上で、反転授業の形式に一定の効果がある(学生が楽しく主体的に学べる等)ということを肌で感じ取ることができたようです。

全体をふりかえって

この授業は「受講者が実際に反転授業をデザインし、実施する」という、学生の視点から見れば非常に「重い」授業でしたが、新しい授業スタイルを模索するべく集まった6名の学生は、授業のデザインから実施までを最後までやり遂げました。私も理系チームと一緒に授業づくりをアシストしていましたが、学生は準備のために授業外で多くの時間を割く必要があり、本当に大変だったと思います。 私自身も本授業を通じて、「学習の理解が深まる」といった反転授業導入のメリットを肌で実感しました。一方で、反転授業作成の大変さや注意しなければいけないポイントの多さは、従来型の講義を遥かに凌ぐように思いました。したがって、反転授業が成功するかどうかは、その教員のモチベーションと授業設計にかかっているといっても過言ではないように思います。 こういった新しい授業スタイルのメリットやデメリットが十分に理解された上で、ぜひこの「反転授業」という形式を活かした授業が広まって欲しいと思います。 (薬学系研究科博士課程 木崎速人

全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」の概要はこちらをご覧ください。

 

「学生がつくる大学の授業」(2017年度 第5~10回)

以下は、全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」のTAによる感想です。授業の概要の詳細はこちらをご覧ください。

第5回~第6回 ミニレクチャ

第5回、第6回は反転授業を作るための授業コンテンツを、平岡秀一先生(理系)、田村隆先生(文系)にご提供いただきました。理系は化学反応に関する内容、文系は古典に関する内容です。30分間のミニレクチャを先生からご提供いただいた後、各グループに分かれて、ミニレクチャの内容の理解に努めました。     第7回以降の授業では、受講生が2つのグループ(理系チーム、文系チーム)に分かれて、反転授業の制作と実施の準備に取り掛かります。さまざまな授業展開が考えられそうな内容ですので、どんな反転授業ができるのかがとても楽しみです!

第7回~第10回 反転授業のコンテンツ制作と実施準備

第7回以降は、いよいよ反転授業のコンテンツ制作です。ここからは私は理系チームにはりつき、授業づくりのサポートを行いました。第7回〜第10回の授業では、105分間のほぼすべての時間を反転授業制作・改善のためのディスカッションに充てました。105分間をディスカッションに使うという授業体験は私にとって初めてで、とても新鮮な体験でした。 上述の通り、理系チームの反転授業の内容は化学反応(エステル化と加水分解)を題材としたものであり、平衡や反応機構、構造の理論といったさまざまな観点から授業をつくることが可能でした。チーム内の学生が自分の考える授業デザインの意見を出し合い、ときには激しくぶつかり、ときには意見を磨り合わせながら、少しずつ授業の全体像と詳細が決まっていきました。     今回の反転授業の作成・実施に臨むにあたり、ある学生は、30分の授業のたった1つの平衡反応を理解するために、何時間もその内容を勉強したとのことでした。その学生は「対面授業で学生のリアクションに対して正しく返答できないと学生の授業の満足度が下がってしまう。したがって、1のことを教えるためにはその背景に潜む10のことを知っておく必要がある」と言っていました。理系チームにいた学生は皆同様のことを実感してくれた様子で、こういった反転授業の制作とブラッシュアップのプロセスを通じて、1つの授業をつくることの難しさ・大変さを痛感していたようです。 さて、いよいよ第11回・第12回は反転授業の実施です。学生のみなさんはさまざまな不安を抱えている様子でしたが、ぜひとも楽しんで当日の対面授業に取り組んでもらえたらと思います!ここまで準備してきた学生の努力が実を結ぶように祈っています。 (薬学系研究科博士課程 木崎速人

全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」の概要はこちらをご覧ください。

 

「学生がつくる大学の授業」(2017年度 第1~4回)

以下は、全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」のTAによる感想です。授業の概要の詳細はこちらをご覧ください。

はじめに

「学生がつくる大学の授業―反転授業をデザインしよう!」は、東京大学教養学部所属の学部1・2年生向けに開講されている授業です。この授業は、参加した学生が自ら反転授業を作成・実施することを大きな目的としています。どのように授業が展開していくのかにワクワクしながら、私は TA としてこの授業に参加しました。今回集まった6名の学生は、教員・TAの助けを借りながら、実際に反転授業をデザインし、実施することを目指します。

第1回~第4回 反転授業をつくるための準備

第1回から第4回では、「反転授業とは何か」を学ぶことからスタートし、反転授業をつくる上で必須となる授業デザインの手法やアクティブラーニング手法の基礎知識を修得することが主なテーマでした。第2回では実際に反転授業を経験することにより、より良い反転授業とは何かを考えました。 本授業の大きな特徴は、グループ単位での作業が多く取り入れた双方向型の授業であることです。大学の授業は教員→学生の一方向型の講義がほとんどで、このような形態の授業に戸惑う学生も一定数存在します。しかし、本コースに参加する学生は、このような双方向型の授業に臆することなく自分の意見を忌憚なく発信し、こういった授業に特有の学習体験を楽しんでもらえているように見受けられます。 第4回では、百人一首の理解を目的とした反転授業をつくるワークにチャレンジしました。既存の授業に対する不満や問題点を、授業を受ける側の視点から発信するのは比較的容易であっても、いざ反転授業を作成するとなると、実際に自分で授業をデザインすることに苦戦している学生が多いように見受けられました。授業をデザインする上での目的・目標の設定、構成、時間配分などは、実際に授業をつくる経験をしてみないとなかなか実感しづらい部分です。これから、実際に反転授業を作ることになりますが、その経験を通じて授業作成の面白さと難しさを体験してもらえたら嬉しいです。

授業分析のワークに取り組む学生(左)グループワークに取り組む学生(右)

次回の授業からは、実際に学生が作成する反転授業のコンテンツを2名の先生に提供していただき、これらのコンテンツを使った反転授業を2グループにわかれて作成します。学生は皆個性あふれるメンバーなので、どんな授業ができるのか今から楽しみです。そして、この反転授業の作成を通じて、学生がどのように成長していくのか、TAの立場から見守っていきたいと思います。 (薬学系研究科博士課程 木崎速人

全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」の概要はこちらをご覧ください。

 

マタハラの原点!ジェンダー問題と長時間労働を考えるWS・トークショーを行います

日時:  2017年6月24日(土) 16:00-18:00(15:30 開場) 会場:  東京大学駒場I キャンパス 21 KOMCEE East 2F K211 参加費: 資料代500円 学生は無料(学生証をお持ち下さい) 定員: 100名 申し込み方法:なるべくこちらから事前申し込みをお願いいたします。 主催:NPO法人マタハラNet・東京大学教養教育高度化機構 問い合わせ先:info<at>mataharanet.org <at>を@に替えてご送信下さい。
連日報道を賑わす働き方改革。生産性向上や労働者の心身の健康の観点から注目が集まります。長時間労働の慣行は、家庭生活と職業生活を両立させようとする際にも死活問題となります。 こうした現状を受けて、今年から育児・介護休業法が改正・施行されています。非正規で働く労働者の育児休業がとりやすくなり、マタハラ・パタハラを防止する措置を講じることを事業主に義務付け、違反者への罰則規定が盛り込まれるなど、具体的な対応策が取られることになります。 働く女性の労働環境はどのように変化したのか、変化していくのか。第一線の現場で問題に取り組んできたスピーカーの皆さんに今後の展望をうかがいます。 学生・教職員の積極的な参加とディスカッションを期待しています。

プログラム

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「学生がつくる大学の授業」(2016年度)

以下は、全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」のTAによる感想です。授業の概要はこちらをご覧ください.

前例のない実験的な授業

この授業は、受講者が実際に反転授業を行うというものであり、おそらく前例のない試みでした。どのように授業が進行するのか、そして肝心の受講者は集まるのかという不安を抱いたまま、私はTAとして第一回の授業に出席しました。集まった学生は専攻も関心も様々ですが、反転授業について学ぶことで自分たちが現在受講している東大の授業を客観視し、より効果的な授業形態を模索しようとする意志を当初からもっていました。そのため、アクティブラーニングの基礎知識の習得や、この種の授業には不可欠であるグループ単位での作業にも意欲的に取り組んでいる印象を受けました。きわめて実験的なこの授業が成功に終わったのは、反転授業という新しい考え方を受け入れるだけの旺盛かつ柔軟な好奇心を、彼ら全員が有していたことに起因するでしょう。

とはいえ、全13回にわたる彼らの格闘の結果残されたものは、反転授業を導入することによって得られる授業改善効果の見通しだけではありません。課題への取り組みを通して、反転授業に付随する様々な問題点が再認識され、反転授業を実践する上で不可避的に生じる困難が浮き彫りになりました。初回から最終回まで、TAという立場でその格闘の現場に立ち会ってきた私が、この授業の「成功」を敢えて断言するのは、反転授業の利点と問題点を肌で感じ取った受講者全員が、「反転授業を導入したい、ただし条件付きで」という結論に達した瞬間を目の当たりにしたからです。

反転授業制作に取り組む学生たち(左)学生による対面授業の様子(右)

彼らは、予習用動画教材の設計と制作に膨大な時間を費やさざるを得ないこの授業形式を、単に「面倒くさい」ものとして切り捨てるわけでもなく、かといってそうした作業が現実としてどの程度可能なのかに思いを致す暇もなく「理想の授業」として礼賛することに終始するわけでもありませんでした。自ら動画を制作し、教材を準備し、綿密なリハーサルを重ねて30分の対面授業を実施した上で、上記の率直な意見を「アクティブラーニング部門」の教員陣に対して臆することなく提示し、またそれが受け入れられたということは、この授業に携わった全員が反転授業という方法に真摯に向き合った何よりの証拠でしょう。

大学の授業をメタ的に捉える

この授業の受講者は、反転授業というレンズを通して半ば固定化された大学の授業形式に別様の可能性を見出し、そもそも「授業」が何のために行われてどのように設計されているのかをメタ的に捉え、教えるという行為のもつ面白さと危うさを授業実施者の立場から探究してきました。それは、広く「教育」というものへの本質的な思考を促すきっかけにもなることでしょう。受講者の中には教職を志望する者も含まれていましたが、彼らが将来教壇に立つかどうかは関係なく、例えば職場や家庭で、他者に何かを教えなくてはならない場面に直面したとき、この経験が必ず生かされると私は確信しています。

TAを経験して

最後に、この授業におけるティーチング・アシスタント(TA)の役割について記し、筆を擱きたいと思います。一般に、TAに期待される役割は授業を担当する教員によって千差万別です。場合によっては雑用のみを命じられ、肝心の授業時間内は教室の隅に追いやられて無名の「使用人A」と化すケースも珍しくありません。たしかにこの授業でも、機材準備や記録用の写真撮影といった裏方の仕事はTAの重要な役目でした。しかしそれだけではなく、ときには受講者に交じってディスカッションに参加したり、あるいはファシリテーター役となって議論の整理や受講者の気づきを促す機会もTAに与えられました。アクティブラーニング型の授業では、教員側が学生間のディスカッションをうまく方向づけ、適切なフィードバックを与えることが決定的に重要になります。その点からしても、アクティブラーニングを存分に活用した授業実践を志向する私にとって、TAとしての活動を通じてその入り口に立てたことは得難い経験となりました。

(総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程・日本学術振興会特別研究員DC1 学谷亮)

全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」の概要はこちらをご覧ください.

 

LGBT×貧困:性的マイノリティが遭遇する困難・ピアサポートの可能性

日時: 2017年5月3日(水曜・祝) 14:00-17:00 場所:   駒場Iキャンパス 21 KOMCEE East K011(B1F)
申込不要。日本手話の手話通訳がつきます。 資料代をいただきますが、支援に役立つパンフレットを配布します。 皆さまふるってお越し下さい。
広報チラシ裏面 担当: 坂口菊恵

e-mailによる連絡:身近な生命科学実習

カテゴリー: 開講科目

ピアレビュー

所要時間

15-30分

活動単位

個人 → ペアもしくはグループ

大人数への適合度

概要

学生が成果物や発表について互い評価し合う活動をピアレビューといいます。 以下では、レポートに関するピアレビューを例に流れを説明します。
手法の流れ かける時間
教員はレポートへのレビューの観点を学生に示します(文法、論点の適切さ、文章の論理性など) 2〜3分
学生がレポートを執筆します -(課題として出すことも可)
ペアを作り、お互いのレポートを交換します 2分
お互いのレポートを読みます(メモやコメントを記入します) 5分
交互にレポートについてフィードバックします 10分(5分ずつ)
授業中の活動や次週までの課題として自分のレポートを改善します

特徴

・学生が他者を評価することで、教員の負担が軽減するとともに、学生に評価者の視点が身につき成果物や発表の質が向上します ・他者との意見交換を通じて、自分にはない視点に気がつく事で、成果物や発表の質の向上が期待されます ・レポートなどの成果物が対象の場合は、周囲の学生とそれを交換できれば良いため、大人数の授業でも活用できます

よくある問題と対応策

よくある問題 対応策
レビューをする学生のコメントが短い・稚拙 ・レビューの観点について疑問点がないか質問をさせる ・レビューの練習の機会を設ける ・レビューコメントの良い例と悪い例をサンプルとして事前に示す ・レビューコメントに教員がコメントをする

注意点

・初対面の学生でもお互いに意見が言いやすいように、あらかじめ協力的な雰囲気を作っておく

実践例

ピアレビューの実践

詳細な解説

ピアレビューの効果的な導入方法   (小原優貴、吉田塁)

ミニッツペーパー

所要時間

5-10分

活動単位

個人

大人数への適合度

概要

授業で配布し、学生に興味・関心や疑問点、理解度などを数分で記入してもらい回収する紙のことをミニッツペーパーと呼びます。 ミニッツペーパーで尋ねられる質問としては、 ・今日の授業で最もよくわからなかったところはどこですか? ・今日学んだ、最も重要な事は何ですか? ・今日の授業を◯ 字で要約してください ・〇〇(キーワード)について自分の言葉で説明してください などがあり、記入させる内容を変えることで様々な活動を行えます。
手法の流れ かける時間
教員がミニッツペーパーを配布する 2-3分(授業開始時に配布も可)
ミニッツペーパーを記入する 5-10分
教員がミニッツペーパーを回収する 2-3分(退出時に提出させるのも可)
(次回)教員がミニッツペーパーの内容を共有する*1 5分
*1 ミニッツペーパーの共有はプリントに記載して配布することも可能

特徴

・授業に対する学生の理解度・疑問点を確認することができる ・コメントを付けることで双方向のコミュニケーションを取ることができる ・出席表の代わりに使用するなど簡単に導入できる

よくある問題と対応策

よくある問題 対応策
書かれるコメントが短い・稚拙 ・教員がきちんと読んでいることを示すなど学生のモチベーションを上げる ・小レポートのように成績に反映させる ・ペアで話し合わせてその内容を記入させる
コメントを返したいが時間がない ・全員でなくランダムに選んだ/良いコメントをした受講生にコメントする ・何種類かの判子(「よく出来ました」など)を用意して押す

注意点

・学生が回答する課題の内容が多すぎると記入時間がかかる (記入させる内容を絞る) ・フィードバックをする/内容を成績に反映するなどしないと受講生の記入モチベーションが下がる ・大人数講義の場合、TAなどを活用しないと集計・コメントが大変 ・ミニッツペーパーの共有を匿名にしない場合は学生と相談する必要がある

実践例

ミニッツペーパー の実践   (福山佑樹、吉田塁)

『科学の技法: 東京大学「初年次ゼミナール理科」テキスト』

東京大学出版会  全240ページ  本体2,500円 「初年次ゼミナール理科」の内容が書籍になりました。学生・教員・一般向け。理系アクティブラーニングに役立つ基礎編、各教員の工夫や授業構成・学生の成果物 や雰囲気を感じ取ることのできる実践編、『知の技法』のようなエッセイ形式で研究の世界を伝える発展編、の3部構成です。 図版も豊富に掲載。実践編はカラー印刷となっており、学生の活き活きとした様子を実感していただけます。

はじめに

基礎編 サイエンティフィック・スキルを身につける

  1. 1 アカデミックな知の現場へ――大学での学びとは
  2. 2 研究のプロセス
  3. 3 研究倫理
  4. 4 学術論文の種類と構成
  5. 5 文献検索
  6. 6 グループワーク
  7. 7 プレゼンテーション
  8. 8 レポート
  9. 9 文献の引用
  10. 10 ピアレビュー

実践編 実録!初年次ゼミナール理科

授業のパターン
問題発見・解決型
1 社会問題解決策のデザイン――社会技術とイノベーション(小松崎俊作) 2 私たちの身近にあるタンパク質を科学する(高橋伸一郎ほか) 3 老化のメカニズムに迫る――アンチエイジングは可能か? (江頭正人)
ものづくり
4 建築の可能性(川添善行) 5 体験的ものづくり学:3Dプリンタによるコマづくり(三村秀和ほか) 6 レアメタル製品化プロジェクト(岡部 徹) 7 数学・物理をプログラミングで考える(田浦健次朗) 8 機械学習入門(杉山 将・佐藤一誠) 9 知能ロボット入門(新山龍馬・高畑智之)
データ解析型
10 スポーツや音楽演奏のスキルと熟達化について考える(工藤和俊) 11 地震・火山の分布と地形・地質情報から観る日本列島の姿(市原美恵ほか) 12 身近な物理でサイエンス(松本 悠・田上 遼)
論文読解・演習型
13 ミクロの生命現象を可視化する(永田宏次・木下滋晴) 14 薬学における生物学の役割と貢献(八代田英樹ほか)
フィールドワーク型
「初年次ゼミナール理科」授業一覧

発展編 研究の世界へ

1 性差は科学できるか(坂口菊恵) 2 発生学と再生医学(栗原裕基) 3 身近なところに隠れている大発見:クワガタムシの隠蔽種と菌囊(久保田耕平) 4 寄生虫とのつきあい方(後藤康之) 5 ヒトが光合成できるようになるには(増田 建) 6 始原の微生物代謝を垣間見る(石井正治) 7 酒になれなかった水のはなし(北條博彦) 8 時空のさざ波,重力波をとらえる(大橋正健) 9 物理学を例にとって考える「研究する意味」(長谷川修司)

あとがき

ピアレビューの効果的な導入方法

ここでは、学生同士が相互に評価しあうピアレビューの効果的な導入方法について紹介します。課題の成果物に対する評価は教員が行うものだと考えられていますが、学生同士で行うこともできます。また、学生が相互に評価するピアレビューは、教員および学生の両者にとってメリットのある方法です。教員にとっては、学生が行った評価を参考にしながら最終的な評価ができるため教員の負担は減ることが期待されます。また、学生にとっては評価をうけるだけではなく、他者の成果物に対する評価をすることで、自身の成果物の質が向上することも示されています(Lundstrom & Baker 2009)。 ここで、学生同士に評価させる場合、評価の妥当性や信頼性に問題が生じることを懸念される方もいらっしゃるかと思いますが、適切な方法を用いることで、その点を補うことができます。以下、ピアレビューの手順および効果的な実施方法をご紹介します。

ピアレビューの手順

ここでは課題をレポートだとしてピアレビューの流れを説明します。まず、学生はレポートを作成します。次に、そのレポートを学生同士で交換し合い、お互いのレポートを評価します。そして、その評価を元に課題を改善するという流れです。ピアレビューは、レポートのみならず、プレゼンテーションやポスターなど幅広い課題の成果物に応用できます。より具体的な手順に関しては、ピアレビューのページ本部門が提供している「+15 minutes」の冊子をご参照ください。

効果的な実施方法

授業にピアレビューを効果的に導入するためには、いくつかおさえるべきポイントがあります(Topping 1998; Dochy, et.al. 1999)が、下記の2点が特に重要になります。 ・ピアレビューの評価観点を示す ・ピアレビューの練習の機会を設ける 以下、それらについて詳しく説明します。

ピアレビューの評価観点を示す

1点目はピアレビューの評価観点を明確に示すことです。そうすることで、学生は評価のポイントを学び、課題において重視するべき点を明確に理解することができます。また、教員と学生の評価観点が共有されることから、学生による評価であっても、その妥当性や信頼性は高まります。実際、評価観点が明確に提示されることで、課題の成果物に対する学生による評価と教員による評価の相関が高くなることが示されています(Flachikov & Goldfinch 2000)。このように、ピアレビューにおいて課題における評価ポイントを明示することは非常に有用です。 ここでは、評価観点を示す効果的な方法として、ルーブリックを紹介します。ルーブリックとは、課題の成果物の評価観点と評価基準が明示されたシートです。評価基準とは、どのような内容であれば低評価、高評価なのかが記述されているものです。例えば、レポートのルーブリックで、「構成」という評価観点があった時に、単なるチェックシートであれば、その観点に対して1?5点の範囲でそれぞれの学生が点数をつけます。一方、ルーブリックでは「それぞれの文章の関係性が明確で一貫性がある」ものが5点、「それぞれの文章の関係性が不明確で一貫性がない」ものが1点というように、配点の根拠を明示します。評価観点のみを提示することも有用ですが、さらに評価基準も提示するルーブリックは学生の学びをさらに促すことが期待されます。是非ルーブリックをご活用ください。ルーブリックの作り方に関しては書籍「大学教員のためのルーブリック評価入門」(佐藤ら 2014)が参考になります。

ピアレビューの練習の機会を設ける

2点目は、非常に重要ですが見落とされやすい、ピアレビューの練習についてです。実は、ピアレビューを導入したとしても、相互のフィードバックが実際の成果物の改善につがなっていないことが指摘されています(Min 2006)。その理由としては、学生が行うフィードバックの内容が具体的でなく、改善につながりにくいためだと考えられています。実際、台湾人の学生が英語でエッセイを書く際に、ピアレビューの練習をしなかった場合はピアレビューをしても全体の約10%しか成果物の改善が見受けられなかったのに対して、練習した場合では、全体の約70%に成果物の改善がみられたことが示されています(Min 2006)。 具体的なピアレビューの練習においては、以下の項目がポイントになります。 ・教員がピアレビューの実演をする ・評価観点を元に学生が成果物を評価する ・学生の評価に教員がフィードバックする 参考のため、実際に Min らがエッセイのピアレビューの練習で用いていた方法(Min 2006)を紹介します。教員による実演に関しては、4つのステップで行われました。
  1. 文章から著者の意図を理解する
  2. 文章の問題点を見つける
  3. どの点が問題かを明確に指摘する
  4. 具体的な改善案を提示する
上記のステップについて実演をみた後、学生はこれらのステップを意識してピアレビューを行い、その評価に対して教員がフィードバックするという流れでした。このように、作成者の意図を理解して問題点および具体的な改善策を提示する練習をしてもらうことで、学生が具体的にピアレビューをどのように行えばよいのかを理解することができます。そして、それが課題の成果物の改善につながることがわかっています。

まとめ

ここでは、ピアレビューの効果的な実施方法について紹介しました。具体的には、以下の項目が実施において重要です。 ・ピアレビューの評価観点を示す ・ピアレビューの練習の機会を設ける 評価観点を示す時は、評価基準も記載されているルーブリックが活用できます。また、ピアレビューの練習としては、まず教員が実演し、学生に評価してもらい、その評価に対して教員がフィードバックすることが肝要です。 このような効果的なピアレビューを授業に取り入れて、学生の学びを深めていただければ幸いです。より具体的な方法やポイントについて質問などございましたら、お気軽にアクティブラーニング部門にご相談いただければ幸いです。 (吉田塁)

参考文献

Dochy, F. J. R. C., Segers, M., & Sluijsmans, D. (1999). The use of self-, peer and co-assessment in higher education: A review. Studies in Higher education, 24(3), 331-350. Falchikov, N., & Goldfinch, J. (2000). Student peer assessment in higher education: A meta-analysis comparing peer and teacher marks. Review of educational research, 70(3), 287-322. Lundstrom, K., & Baker, W. (2009). To give is better than to receive: The benefits of peer review to the reviewer’s own writing. Journal of Second Language Writing, 18(1), 30-43. Topping, K. (1998). Peer assessment between students in colleges and universities. Review of educational Research, 68(3), 249-276. Min, H. T. (2006). The effects of trained peer review on EFL students’ revision types and writing quality. Journal of Second Language Writing, 15(2), 118-141. 佐藤浩章監訳ほか(2014). 大学教員のためのルーブリック評価入門. 玉川大学出版部  

学生によるレポートの相互添削

学生によるレポートの相互添削(ピアレビューの実践)

実践者

ジョンマニナン先生(グローバルコミュニケーション研究センター)

科目名

ALESS (Active Learning of English for Science Students)

人数

15名程度

授業に関する基本情報

ALESS(Active Learning of English for Science Students)プログラムは、学術論文の作成法の基礎を学ぶ理科生(理科I、II、III 類)1年生を対象としたネイティヴ・スピーカーによる少人数制の必修科目です(2008 年4 月開始)。

受講生は、自らが考案・実施する科学実験をテーマに、IMRaD(Introduction(序章)、Methods(方法)、Results(結果)、Discussion(考察))という国際的な標準形式にそって論文を執筆します。

実践している手法の具体的な内容

ピア・レビューは、ALESS を担当するようになってから、2 年半ほど実施しています。論文の各パート(序章、方法、結果、考察と要旨)のドラフトを執筆した後、そしてすべてのパートをまとめた論文が完成した後に実施しています。

たとえば、序章のパートでは、教員は、まず最初に序章で提示すべき事項や気をつけるべき点などを説明し(1)、次の週までに学んだことをふまえて序章のドラフトを準備してくるように学生に指示します(2)。

次週では、まず序章のドラフトを評価するためのいくつかの観点を示したチェックリストを学生に提示します。このチェックリストは、前の週に学んだ内容をもとにしているため、説明には多くの時間を必要としません(3)。

次に、ピア・レビューを行うペアを作らせます(4)。学生はペアとなった相手のドラフトについて、チェックリストを用いてレビューします。不足情報などがあれば、ドラフトやチェックリストの自由記述欄にその内容を記入します。この間、教員は巡回して、学生のドラフトとレビューの内容をチェックし、漏れなどがあれば補足します(5)。

最後に、ペアとなった学生同士でレビュー結果を交互に口頭で伝えます(6)。

この一連の流れを、方法、結果、考察についても繰り返し、最後にすべてのパートをまとめた論文(フルペーパー)を執筆します(7)。学生はこの論文についてもピアレビュー(匿名)をおこない、このピアレビュー自体が、成績評価の対象になります(評価の10% を占める)。

学生はピアレビューを受けて修正した各パートのドラフトと、フルペーパーを教員に提出します。教員はこれらに加え、フルペーパーに対するピアレビューの内容を授業時間外でチェックします。

授業の流れ

[table]

[tr][th]番号[/th] [th] 内容[/th] [th]所要時間[/th][/tr]

[tr][td]1[/td] [td](1回目の授業)序章で提示すべき事項や気をつけるべき点などを説明する[/td] [td]-[/td][/tr]

[tr][td]2[/td] [td](2回目の授業まで)学生が学んだことをふまえて序章のドラフトを作成する[/td] [td]-[/td][/tr]

[tr][td]3[/td] [td](2回目の授業)チェックリストについて説明する[/td] [td]5分[/td][/tr]

[tr][td]4[/td] [td](2回目の授業)ペアを作る[/td] [td]3分[/td][/tr]

[tr][td]5[/td] [td](2回目の授業)チェックリストを用いてドラフトをピアレビューする。教員は机間巡視をする。[/td] [td]30分[/td][/tr]

[tr][td]6[/td] [td](2回目の授業)レビュー結果を交互に伝える[/td] [td]15分[/td][/tr]

[tr][td]7[/td] [td](3回目以降の授業)方法、結果、考察の執筆にも同様の方法を用いる[/td] [td]-[/td][/tr]

[/table]

その手法を実践して良かったこと

レビューを受ける学生は、自分が気づかない点を指摘してもらえるというメリットがあり、レビューする学生は、レビューを通じて評価者の視点を身につけ、自分の間違いにも気づけるようになるというメリットがあります。

ピアレビューを受ける前と受けた後とでは、論文の質が明らかに異なり、内容が充実し、より良くなっているのがわかりました。

その手法を実践して感じたデメリットや難しさ

ピアレビューが適切に行われているかを確認するためには、多くの時間が必要となり、教員の負担になります。一方、各パートのドラフトのレビューを学生が行うことによって、初歩的なミスを教員が指摘しなくてよくなり、教員の負担が軽減された部分もあります。

英語力が十分でない学生とペアになった場合、学生がピアレビューのコメントに満足しないこともあります。学生の満足度を下げないためにも、ピアレビューの相手を変えたり、教員からフィードバックしたりしています。

これから実践する先生へのアドバイス

批判に慣れていない学生が安心してピア・レビューに取り組めるように、協力的な雰囲気をつくったり、批判は、論文の質を高めるための批判であることをあらかじめ学生に伝えておいたりすることは大切です。

ピア・レビューの結果を自由記述形式でコメントできると、批判的思考が刺激され、学生はより主体的にピア・レビューに取り組むようになります(評価項目を満たしているかどうかを Yes/No の選択形式で回答させるチェックリストだけでは十分な刺激になりません)。これによって、評価者としての視点が身につき、結果的に、レポートの質も高まります。

(小原優貴、吉田塁)

学生との対話を実現(ミニッツペーパーの実践)

実践者

佐々田槙子先生(数理科学研究科)

科目名

数学

人数

100名

授業に関する基本情報

数学I は、学部1・2 年の文系生が受講する数学の授業です。社会科学に関連する題材を織り交ぜ、数学的な概念を把握することに重点をおいています。 特に私の授業では、私が講義するだけではなく、数学的な概念の理解につながるような課題に学生が取り組む機会を設けています。そうすることで、内容の理解に加えて、学生の集中力を維持する効果をねらっています。

実践している手法の具体的な内容

ミニッツペーパーには、以下の3 項目と授業内で取り組む課題の回答欄を設けています。 ・今日新しく学んだことで特に印象に残った点を挙げてください ・今日の授業でわからなかったところや、疑問点があれば書いてください ・今日の授業の感想を書いてください 授業では、最初に小テストを実施します(1)。 次に、前回のミニッツペーパーの回答をもとに、理解が不足しているところの補足をしたり、印象的なコメントを共有したりしています(2)。その際、私がピックアップした回答と私のコメントが書かれた紙も渡しています。 そして、講義の間に課題を設けます(3~5)。 最後にミニッツペーパーを書いてもらいます(6)。 表 授業の流れ
番号 内容 所要時間
1 小テストを実施する 10分
2 前回のミニッツペーパーの内容を元に前回の補足をする 10分
3 数学のトピックに関して講義する 40分
4 内容を理解するための課題をいれる 10分
5 数学のトピックに関して講義する 30分
6 ミニッツペーパーを書いてもらう 5分

その手法を実践して良かったこと

ミニッツペーパーを通して、学生が考えていることを把握できるのが良かったです。個別の理解度や疑問に加えて、全体としてどのぐらい理解してくれているのかも把握できるところが良かったです。普通は、直接質問に来る学生が持っている疑問が、学生の多くが持っているものなのか、その人特有のものなのかがわかりませんが、ミニッツペーパーを用いていると、その疑問をもっている学生の割合がわかるので、学生全体の理解度を把握することができます。 多くの学生がつまずいているところを把握できると、次回の授業で補足できますし、面白かったというコメントや数学の本質的なところを理解してくれたことがわかるコメントを見ると、授業準備のモチベーションがあがります。 授業中に手をあげて質問するのは勇気がない、という学生も、ミニッツペーパーには疑問を率直に書いてくれるため、コミュニケーションツールとして有効だと思いました。 また、学生のコメントを紙にまとめて共有しているのですが、そうすることで学生同士の疑似ディスカッションが実現できているように感じます。

その手法を実践して感じたデメリットや難しさ

学生のコメントを紙にまとめる時間はデメリットになりえます。私の場合、ミニッツペーパーをざっと読んで、ピックアップしたいコメントに印やコメントをつけて、秘書の方に電子ファイルでまとめてもらっています。そのため、コメントにかける実質的な時間は1 時間ほどで、負担はあまり大きくありません。実際、自分でまとめるとなると、ここまで対応できないかもしれません。 また、「全然わからない」といった漠然としたコメントがある場合、何がわからないのかがわからないため、反応に困ってしまう時があります。そこで、「テイラー展開の~~という部分がわからない」など、学生にも具体的な指摘をしてもらえるように促せばよかったかもしれません。

これから実践する先生へのアドバイス

難しかったところでもお伝えしましたが、「全然わからない」など漠然とした疑問だと、対応が難しくなるため、具体的な指摘をしてもらうように学生にお願いするのが良いかもしれません。 また、いかにミニッツペーパーに対してリアクションするかがポイントになると思います。私は、授業冒頭に行う前回授業の補足やコメントをまとめた紙を返すことによって、リアクションをしていました。教員からのリアクションがないと、ミニッツペーパーを書いても仕方ない、と書いてくれなくなる可能性、さらに無視されたと感じて、かえって不信感につながる可能性があるように思います。 全体としては、導入してよかったと思っています。学生が考えていることもわかりますし、授業準備のモチベーションも上がりました。また、大人数を相手にしていると学生の考えを聞く機会が少ないですが、ミニッツペーパーを用いることで、教員と学生、あるいは学生同士のコミュニケーションを実現できました。 (吉田塁)

大人数でも使える Think Pair Share

実践者

吉田塁(アクティブラーニング部門)

科目名

初年次ゼミナール理科 共通授業

人数

100~200名

授業に関する基本情報

初年次ゼミナール理科とは、グループによる協同学習を伴う、自然科学の基礎的な研究技法の習得および自然科学の学問への導入を目的に、1 年の理科生全員必修で1クラス20 名程度の少人数制で実施されているアクティブラーニング型授業です。 少人数のクラスに分かれる前に、全員に知っておいてもらいたい事項、例えば、研究とは何か、研究の具体的な進め方、学術情報の検索方法、研究倫理などを学んでもらうための共通授業が実施されます。私は、共通授業の設計および実施に深く関わらせていただき、Think Pair Share の方法を取り入れることを提案し実施しました。

実践している手法の具体的な内容

共通授業では、まず学生たちは大学における学び、研究とは何か、研究のプロセスに関する説明を聞きます。 その後、研究のプロセスを理解することを目的として、研究計画の体験をします。 具体的には、計画する内容を絞って、「大学において、学習効果を最大化するグループワークの最適な人数を知るためにはどのような研究計画を立てればよいか?」という問いについて、Think Pair Share の流れに沿って考えていきます。 表 Think Pair Share の流れ
番号 内容 所要時間
1 1 人で研究計画について考える 3分
2 2~3人で計画について議論する 5分
3 2~3人で話したことを全体に共有する 3分
まず、学生は1 人で実験計画を考えます(1)。 その後、近くの学生同士でペアになって、人数が合わない場合は3 人グループになって議論します(2)。 そうすると、 「まず、何をもって学習したかを決めないといけないから、試験の成績を効果の基準としよう」 「講師が異なるとその影響が結果に出てしまうため、講師は同じにしないといけない」 「実験的に行うには倫理的な配慮が必要だ」 など、研究を実施する上で考慮しなければいけないポイントを挙げてくれます。 そして、それらを全体で共有して、教員から適宜フィードバックすることで、研究に関する理解を促します(3)。

その手法を実践して良かったこと

考えた研究計画が完全に一致するということは少なく、学生同士話し合いを通して、それぞれの計画のメリット・デメリット、改善案を議論してくれていました。その活動を通して、研究計画を立てる際には様々な点を考慮する必要があることを深く理解してくれていたようです。ただ、話を聞いているだけでは、得られなかったことを学んでくれたと感じています。 また、考えて議論するという構成をとっているため、議論する時に話せない人が少ない点がまず良かったと思います。もし、1 人で考える時間をとらずに最初からペアで話してくださいとすると、考えを練る時間もないですし、話せる人がずっと話してしまうという状況が生まれやすいです。 そして、2~3 人で話すという点も、話に参加しないフリーライダーを少なくするという点で良かったと思います。6 人で議論する場合、単純に考えて、2 人で議論するときに比べて、1 人あたり話せる時間が 1/3 になりますし、議論に参加しないフリーライダーが多くなります。

その手法を実践して感じたデメリットや難しさ

まず、デメリットとして挙げられるのは時間です。1 人で考える、ペアで共有する、全体で共有するという流れで実施すると、少なくとも10 分はかかってしまいます。そのため、ここぞ、というところで使わないと授業で伝えられる内容が少なくなってしまいます。 共通授業に関しては、105 分間の中で、大学における学び、研究、学術情報の検索方法、研究倫理など多くの内容を伝える必要があったため、Think Pair Share が最も長いワークになりました。研究計画を考えるワークとしてこの手法を用いた理由は、研究計画を模擬的に立てることで研究というものを、ほんの一端ではありますが、体験してもらえるだろうと考えたため、また、授業中盤で学生の注意を引いて集中力を維持したかったためです。Think Pair Share は時間がかかるため、授業全体の設計が重要になってきます。 また、難しさとしては、指示出しが挙げられます。おそらく「教育の研究に関する計画を立ててください」という漠然とした指示出しでは上手くいっていなかったと思います。その指示出しを受けても、学生は何をすれば良いかわからなくなってしまい、1 人で考える時間、議論する時間は無駄になってしまう可能性が高いです。そこで、考えてもらうところを絞り、「大学において、学習効果を最大化するグループワークの最適な人数を知るためにはどのような研究計画を立てればよいか?」という、まだ詳細に決める必要があるところはありますが、何を考えれば良いかわかる程度の具体性をもたせました。

これから実践する先生へのアドバイス

Think Pair Share を導入するにあたって、指示出しはできるだけ具体的であること、学生の意見を聞いたら教員からフィードバックすることなど多くの留意点がありますが、ペア作りが上手くいかずに、この手法を使わなくなってしまったという声を聞いたことがあります。そこで、ここでは本授業で用いたペア作りに関する3 つの工夫を詳しくお話しさせていただきます。 1 つ目は、座れる席を制限したところです。授業を実施したのは900 番講堂など広い教室で、100~200 名が入るには少し大きな教室でした。そのため、一番後ろあたりの席は座らないよう、教室の後方で配布資料を渡して、それよりも前に座るよう誘導しました。そのおかげで、広い教室で学生が点々に座るのではなく、ある程度密に座ってくれました。そうすることで、ペアを作りやすい環境、議論しやすい環境を作りました。 2 つ目は、ペアの作り方を具体的に指示したところです。ペアを作る時に、「近くの学生でペアを作ってください」という指示出しではなく、「長机の端からペアを作って、真ん中になってしまった人は右のペアに入ってください。机に1 人しかいない場合は、後ろの机のペアに入ってください」とかなり具体的にペアの作り方を指示出ししました。このように指示出しするとペアの作り方が機械的に決まるので、ペアを作ってもらいやすくなります。 3 つ目は、ペアを作る時間を少し設けたところです。ペアを作って議論するという活動を同時にやってしまうと、ペアを作らずに1 人になってしまうことがありました。そこで、ペアを作る時間を別途設けてペアができるまで待つことで、学生も少し移動してペアを作るようになってくれました。 工夫すれば大人数授業でも Think Pair Share を取り入れることができるので、ご興味がある方は試していただければ嬉しいです。

Think Pair Share

所要時間

10分

活動単位

個人 → グループ → 全体

大人数への適合度

概要

Think Pair Shareとは、教員から出された問いに対してまず学生1人で回答を考え(Think)、次にペアを作って考えた回答について話し合い(Pair)、その内容を全体で共有する(Share)、という方法です。
手法の流れ かける時間
1人で問いに対して回答を考える(Think) 1?3分
ペアで回答について話し合う(Pair) 2?5分
全体でその内容を共有する(Share) 2?5分

特徴

・まず1人で考える時間があるため、ペアで共有する時に話し始めやすい ・ペアで話す形式であるため、ワークに参加しないフリーライダーが出にくい ・質問があれば、すぐにでも授業に導入できる

よくある問題と対応策

よくある問題 対応策
ペアを作ってくれない ・事前にペアが作りやすい座席指定をする ・ペアを作る時間を設ける ・ペアを作る補助をする ・ペアが機械的に作れる指示出しをする*1
問いかけへの学生の反応が悪い ・問いかけに対して学生がどのように返答するかを具体的に想像して、問いかけの内容が明確かを確認する ・第3者に問いかけの内容を確認してもらう
*1: 例えば、机の両端からペアを作り、真ん中の人が余ったら右のペアに入る

注意点

・意外と時間がかかるため、問いかけの内容は授業の中心的なトピックに関連付ける ・できるだけペアでシェアした内容を全体で共有する(そうしないと学生の疑問や議論をふまえた授業展開ができない) ・予想しない答えが出てきたとしても、最初から否定や無視をせず、対応する(そうしないと、今後学生は自由に発言できなくなってしまう)

実践例

Think Pair Share の実践

世界の中の日本、日本の中の世界:「国内で実施する国際研修」の挑戦

東京大学ではtu_publicsymposium_poster近年、学部生を海外に派遣する従来型の国際研修プログラムに加えて、海外の学生を日本に呼び東京大学の学生と一緒に学ばせる短期型国際研修プログラムを実施してきました。このシンポジウムでは、このような新しい国際研修プログラムの成果を、類似したプログラムを提供している北海道大学及び韓国西江大学校の事例とともに共有し、こういった試みをさらに広げていくための課題を考えます。   ・日程:3/18(土)午後1時-午後5時(12時30分開場) ・場所:東京大学駒場キャンパス 21KOMCEE East K011( http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_55_j.html・言語:日本語及び英語 ・主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属国際交流センターグローバリゼーションオフィス ・共催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属グ口ーバルコミュニケーション研究センター及び教養教育高度化機構初年次教育部門 ・関連URL: http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/events/20170213093055.html ・お問合せ: kyungnam.moon@komex.c.u-tokyo.ac.jp ※要事前申込(申込先: http://goo.gl/01pwH4 ) ※当日の様子は、編集を経て東大テレビにて後日配信される予定です。何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。
 プログラム [table id=7 /]

全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」

授業概要

アクティブラーニング部門では2016年度より全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業―反転授業をデザインしよう!」を開講しました。 反転授業とは、「授業と宿題の役割を『反転』させ、授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ、教室では知識確認や問題解決学習」などのアクティブラーニング活動をおこなう授業形態を意味します(重田 2013)。教室を「教わる場」から「より学ぶ場」に転換するアクティブラーニングを取り入れた教授・学習法のひとつといえます。 この授業では、学生が知識伝達型の授業を「反転授業形式」にデザインすることで、学生主体の学びのあり方について理解を深めるとともに、教授者の視点を得ることで、学習者としてより深く効果的に学ぶ方法を身につけることを目指しました。

授業の流れ

この授業では、前半で、反転授業の概要(特徴、教育効果、メリット・デメリット等)、授業デザインの技法、アクティブラーニング手法について、講義やワークを通じて学びました。中盤では、反転授業のコンテンツとなる知識伝達型の授業(ミニレクチャ)を受け、内容理解を深めました。ミニレクチャは、アクティブラーニング手法を取り入れた授業を展開している2名(文系1名、理系1名)の先生方に実施いただきました。後半は、ミニレクチャのコンテンツに関する反転授業を、理系2チーム・文系2チーム(1チームあたり2人)にわかれてデザイン・実践し、最後に、各チームの制作した反転授業を、フィードバックシートを用いて相互評価しました。​
表1 「学生がつくる大学の授業」概要
授業回 授業スケジュール
第1回 ガイダンス
第2回 反転授業とは
第3回 反転授業のデザイン方法
第4回 アクティブラーニング手法
第5回 ミニレクチャ(1)理系
第6回 ミニレクチャ(2)文系
第7回 反転授業デザイン(1)
第8回 反転授業デザイン(2)
第9回 コンテンツ制作(1)
第10回 コンテンツ制作(2)
第11回 対面授業(1)文系
第12回 対面授業(2)理系
第13回 振り返り
 

学生たちの活動

この授業では、受講生は、授業デザインの技法、アクティブラーニング手法、動画制作の技能を学び、(1)授業デザインシート、(2)動画教材(約6分)、(3)対面授業の配布物(スライド、ワークシート等の補助教材)を制作し、(4)対面(模擬)授業(30分)の実施に取り組みました。 授業デザインの技法やアクティブラーニング手法は、講義で学んだだけで身につけられるものではないため、実際に体験してみたり、繰り返し練習する機会を毎回の授業で設けて、実践力を高められるようにしました。

学生たちの反応

授業後のアンケートなどでは、受講生から下記のような感想が得られました。 ・アクティブラーニングを取り入れた授業は、学⽣の思考や積極的発言を促すことを学んだ ・(教員中心で)予定調和的に教えるのでもなく、(学生中心で)まったく指導しないのでもない教え方を実践するのが難しかった ・授業づくりを通じて、授業(ミニレクチャ)の内容に対する理解が深まった ・教員の意図や期待により意識的になり、自身の学習態度が変わった ・受講している他の授業でも、より意見を述べるようになり、教員から授業改善のアイディアを聞かれるようになった

参考文献

重田勝介(2013). 反転授業 ICTによる教育改革の進展. 情報管理, 56 (10): 677-684. (小原優貴・福山佑樹・吉田塁)  

全学自由研究ゼミナール「伝えるを学ぼう」

授業概要

この授業では、「学生のみなさんが伝える力を向上させる」ことを目的とし、そのために「良い授業づくりの方法について学び、模擬授業を実施する」という方法をとります。 その理由は、「良い授業」には「良い伝え方」につながる考え方や方法が多く含まれているためです。 また、知識だけでなく実践も重要と考えているため、模擬的な授業を実施する機会もとりいれました。

授業の流れ

良い授業の作り方を学ぶ(第1回~第3回)

まずは、良い授業の作り方について、講義やグループワークを通して学びます。 具体的には、話し方、立ち振る舞い方、授業の設計、スライドデザイン、ファシリテーションなどを学びます。 また、ただ受動的に聞くだけはなく能動的に学ぶ、効果的なアクティブラーニング型授業の作り方についても学びます。

大学院生の模擬授業をうけて検討する(第4回~第6回)

大学院生、つまり先輩たちの模擬授業を受けて、その模擬授業の良いところ、改善できるところを検討することによって、より良い授業の作り方を学びます。 また、工学、理学、文学、社会学など理系文系問わず幅広い分野の研究をしている大学院生が模擬授業をするため、進学選択など今後の大学生活の参考にすることもできます。

一人ひとりが模擬授業を作り、実施する(第7回~第12回)

これまでに学んだ良い授業の作り方をふまえて、学生一人ひとりが授業作りに取り組みます。 大学院生の模擬授業を検討しながら、徐々に自分の授業のデザインをかためていき、グループ内で模擬授業をして、相互にフィードバックを行います。 そして、改善された模擬授業を全員の前で実施します。

授業スケジュール

タイトル
1 ガイダンス
2 自己紹介
3 授業デザイン
4 大学院生の模擬授業
5 大学院生の模擬授業
6 大学院生の模擬授業
7 テーマ発表
8 模擬授業の練習
9 模擬授業の検討
10 模擬授業の練習
11 模擬授業
12 模擬授業
13 振り返り

授業の一場面

第13回では授業の振り返りを行いました。 学生は、「授業を通して学んだこと」と「授業自体の改善点」をまず1 人で考えて、3~4 人のグループで考えたことを共有して発展させて、それをホワイトボードにまとめました。 そして、その後、各グループの人が1 人ずつ集まる新たなグループを作って、ポスターツアーを行いました(ポスターツアー参照)。 また、それぞれ一人ひとり授業の感想をガラス黒板に書いてもらいました。 まず、授業を通して学んだこととして、多くの学生が挙げていたのが「フィードバックの重要性」でした。 この授業では、自己紹介、テーマ発表、模擬授業の練習、模擬授業の検討、模擬授業で、相互評価(ピアレビュー)する機会を豊富に設けました。 それらのピアレビューを通して、自分では気づかなかったことを気付き、発表の質が段々と上がっていったことが、そのような学びにつながったと考えられます。 授業自体の改善点では、フィードバックの方法を挙げている学生が多く見られました。 授業が進むと同時に、学生同士が仲良くなり、相互に批判的なフィードバックがしにくくなったようです。 批判的なフィードバックの方がその人のためになるということがわかっていても、批判的かつ相手を傷つけないフィードバックの方法がわからなかったため、有意義なフィードバックができなかったという思いがあったようです。 そのため、今後の授業におけるピアレビューを用いる際は、建設的なフィードバックの方法についてより詳細に言及しようと感じました。 授業の最後の回で振り返りを実施して、学んだことを共有してもらうことで授業内容の復習および定着が促せたと感じています。 また、学生から授業自体のフィードバックを受けることで、より良い授業にするヒントが得られました。

授業全体に対する学生の感想

・少人数に加えて、毎回席が変わるシステムだったので、学年も科類も違う方と親しくなれて良かったです ・良い授業を理論的に分析できて良かった ・自分が話しているところを撮影して客観視したのは初めて( 話している時のクセを知って衝撃を受けた) ・駒場に来て1 番ためになる授業だった( グループワークたくさんできたし、色々な人の意見が聞けて良かった) (吉田塁)

Active Learning Seminar: Slideshow design principles (10th Feb. 2017)

カテゴリー:

Active Learning Seminar:?Slideshow design principles

Division of Active Learning and Teaching of Komaba Organization for Educational Excellence (KOMEX) will hold a workshop at Komaba Active Learning Studio (KALS). The details are below.

Title

Slideshow design principles: communicating & presenting in a visual way

Lecturer

John Augeri, Deputy Director, Paris Ile-de-France Digital University

Date & Time

Friday, February 10, 2017 1:30pm-3pm

Location

Komaba Active Learning Studio (KALS), 2nd. Floor, Bldg. No. 17 http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

Abstract

The slideshow is now an essential communication medium in academia and in professional activities, so that the term “PowerPoint” has entered the common language. But the readability of a slide is not only the level of practical software. Screenwriting, quantity and nature of the text, hierarchical elements, using images and animations are all parameters that can make a slideshow fully effective or best way to make about the speaker completely unintelligible. The lecture is provided for Paris’ universities’ academics staffs and master cource/PhD students since 2008. It will provide an overview of the principles of slides’ production, regardless of the software used. It will integrate the fair use of colors and fonts, prioritization techniques and emphasis, displaying photos elements. The overall design of the slideshow as a standalone document or as a support for an oral presentation will also be discussed.

Eligibility

Faculty members and graduate students at the University of Tokyo(Capacity: 40 persons)

Registration

https://goo.gl/forms/Ev6xj7qTDWDBGIYJ3   We look forward to your participation! (Lui Yoshida)

第6回 アクティブラーニング・ラボ 開催(2017年1月26日)

カテゴリー:

第6回 アクティブラーニング・ラボ 開催 (2017年1月26日)

アクティブラーニングを試行的に実践・体験し、議論する研究会「アクティブラーニング・ラボ」を開催いたします。 試行的にアクティブラーニングを取り入れて各教職員が自身の専門について伝える研究会で、多様な研究分野に触れられること、アクティブラーニングについて理解を深められることが特徴です。 試行的であることから、良い点、改善点も含めて建設的に議論する場である点、ご了承いただければ幸いです。

日時

2017年1月26日(木) 17:00-18:00

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

内容

今回は、1名の講師が試行的にアクティブラーニングを取り入れた、自身の専門に関する20分間程度のミニレクチャを行います。 ・ミニレクチャ タイトル:琉球・沖縄独立運動の歴史-沖縄問題の起源- 講師  :東京大学 大学院総合文化研究科 博士課程 進尚子様

対象者

学内の教職員、大学院生

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 https://goo.gl/forms/F5I4KHPI16VY0W1i1   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

第5回 アクティブラーニング・ラボ 開催(2016年11月25日)

カテゴリー:

第5回 アクティブラーニング・ラボ 開催

アクティブラーニングを試行的に実践・体験し、議論する研究会「アクティブラーニング・ラボ」を開催いたします。 試行的にアクティブラーニングを取り入れて各教職員が自身の専門について伝える研究会で、多様な研究分野に触れられること、アクティブラーニングについて理解を深められることが特徴です。 試行的であることから、良い点、改善点も含めて建設的に議論する場である点、ご了承いただければ幸いです。

日時

2016年11月29日(火) 17:00-18:00

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

内容

今回は、1名の講師が試行的にアクティブラーニングを取り入れた、自身の専門に関する20分間程度のミニレクチャを行います。 ・ミニレクチャ タイトル:海外の友人がニュースで話題の感染症に。だれがどう助けることができるのか? 講師  :医学部附属病院 特別室 杉本味穂 助手

対象者

学内の教職員、大学院生

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 https://goo.gl/forms/MZoBrBCt2B01nIH62   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

教室変更:「茶わんの湯」から最新の科学を考える(11月8日)

駒場祭シンポジウム:東京大学「初年次ゼミナール」の挑戦 IIアクティブラーニングの実践例を中心に

poster800日時:  2016 年11 月27 日(日) 12:30-15:00(12:00 開場) 会場:  東京大学駒場I キャンパス 21 KOMCEE East B1F K011 参加費: 無料 定員: 200名 申し込み方法:事前申込不要 主催:東京大学教養教育高度化機構 初年次教育部門 協力:アクティブラーニング部門 問い合わせ先:portal<at>fye.c.u-tokyo.ac.jp (担当 田上) <at>を@に替えてご送信下さい。 「学生主体型」授業への転換がさまざまな教育現場で目指される中、専門的な学習の入り口としての大学教育での実践はまだそれほど普及しているとはいえません。 「初年次ゼミナール」は、理科生には全く新たに、文科生には約20年の歴史を持つ「基礎演習」を改編して、2015 年度からスタートした少人数アクティブラーニング型の必修科目の授業です。本シンポジウムでは、「初年次ゼミナール」で各担当教員がどのように工夫を凝らしてアクティブラーニング型授業を実践していったか、得られた成果はどのようなものか、TA(ティーチング・アシスタント) や履修学生も交えて報告します。 授業実践を通じた気づきや疑問点について、フロアの皆さまと意見交換をするセッションも設けます。

スケジュール

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トピック詳細

授業におけるアクティブラーニングの実践パターン(坂口菊恵)

リニアモーターカーの模型
リニアモーターカーの模型
サイエンティフィック・スキルの習得とアカデミック体験、グループによる共同学習を3大目標としてかかげる「初年次ゼミナール理科」では、各学部の教員により100の授業が開講されます。第1・2週は共通授業ですが、その後の個別授業の構成は各教員に任されています。 本トークでは、2016年に開講された授業を最終成果物のタイプや重視されるサイエンティフィック・スキルによって分類し、特徴的な授業構成や、よく用いられたアクティブラーニングの手法について紹介します。

授業実例「東京の街を歩き、その空間について考える」(小泉秀樹)

初年次ゼミナール理科の中でも、現場におもむいてデータを取得し、学生の問題意識に基いて分析・発表を行う「フィールドワーク型」授業の紹介です。各地のまちづくり事業に協力されている小泉先生がどのようにグループワークを指導されたか、学生はどのような成果物を残したかうかがいます。 分野や教育現場の種別にかかわらず、参考となるヒントが多く得られるでしょう。

アクティブラーニングに関する意見交換(吉田 塁)

アクティブラーニングの研究・教育を専門とする吉田先生がファシリテーターとなり、来場者と初年次ゼミナール理科運営経験のある教員との間で意見交換を行います。アクティブラーニングの手法についての説明も行います。

「歴史教育を通じた和解プロセス」講演会

20161119teachigpast日時:2016年11月19日(土)13:30-15:00 場所:東京大学駒場キャンパス18号館ホール 講演者:クリスティナ・クルリ教授(ギリシア・パインテイオン大学) 概要:旧ユーゴスラビアの民族紛争のあと、民族和解のために11か国の研究者が集まって共通の歴史教材を作成しました。そのプロジェクトのリーダーをつとめたクルリ先生の講演会です。 全学自由研究ゼミナール「平和のための東大生ができること」で行った「世界の教科書でヒロシマ・ナガサキはどう書かれているか/書かれていないか」をテーマにしたプロジェクトのポスター発表による成果報告会を、同じ会場で行います。 使用言語:日本語・英語(日本語通訳付き)

抽選結果:「茶わんの湯」から最新の科学を考える

「大学教育を変える学びのフィールドワーク」を受講して

全学自由研究ゼミナール 「大学教育を変える学びのフィールドワーク」を受講して

以下は、全学自由研究ゼミナール「大学教育を変える学びのフィールドワーク」の受講生による感想です。授業の概要はこちらをご覧ください。

多面的な「教育」への理解(文科一類1 凌慎)

この授業は私が今まで受けてきた講義型の授業とは全く異なり、ディスカッションや発表を多く取り入れた生徒と先生の双方向的な授業で、「教育」という同じ興味・関心を持った学生・先生とこれからの教育について考える良い機会となりました。この授業では様々なことに取り組みましたが、その中で特に印象深かった活動は、東京学芸大学附属国際中等教育学校でのフィールドワークです。

私は日本の英語教育に関心があり、「なぜ日本人は英語が話せない人が多いのか」と日頃から考えていました。日本人に英語が話せない人が多い理由として、日本語と英語の非類似性や「島国」という閉鎖的な風土も考えられるとは思っていましたが、やはり日本の英語教育にも問題があると考えたのです。そのため、国際バカロレアに準拠したカリキュラムを組んでおり、また、SGH(Super Global High school)にも指定されている東京学芸大学附属国際中等教育学校(TGUISS)の先進的な英語教育を見て、日本の一般的な英語教育と何が違うのか考えてみようと思いました。TGUISSではICレコーダーを使ったスピーチの記録やアカデミックな内容に関する活発なディスカッション・プレゼン、ルーブリックを用いた基準が明確な評価など、これからの英語教育に活かせる点が多数ありました。

また、事前・事後の活動として依頼文の執筆や成果発表のプレゼンテーションをしたことで、メールの文面のマナーやスライド作成・人前で発表するときの技術など、社会に出る上で必要となるスキルも身につけることができました。加えて、フィールドワーク以外の授業では「FD(Faculty Development)」や「認知能力・非認知能力」といった基本的な用語や世界各国の教育事情を講義や文献、フィンランドの学生との遠隔インタビューを通して知ることで、「教育」という1つの事象を様々な角度から捉えることもできるようになったと思います。

この授業を受けて自分が「教育」という事象を一面的に見がちだったことに気づいたので、これからはこの授業で学んだことを活かしつつ、様々な文献を読み、自分からフィールドワークやその他団体の活動に積極的に参加していきたいです。

「学力観」を問い直す(理科二類1 小林 芽生)

授業では、今まで受けて来た教育を振り返り問題意識を明らかにした上で、学びの場にフィールドワークへ行きました。フィールドでは、学びの様子を見学したり、講師の先生や保護者の方から直接お話をお聞きしたりと、生で見ることでしかわからない具体的な情報を得ることができます。授業の構成、先生と生徒の関係、新しいことを学んでいく生徒たちの様子などを理解するため、客観的な視点を保つことを心がけながら見学・インタビューをしてきました。

自分にとって最も大きな変化は、「学力観」について考えるようになったことです。教育の改善を考える時に、教育環境や方法よりも先に、まずはその理念となる学力観自体を定義する必要がありました。私が達した結論は、学力=学ぶ力。物事を学ぼうとする力と、学びたい物事を身につけられる力を合わせたものが学力と定義できるのではないか、ということです。今まで些細な違和感とともに無意識に抱いていた「学力は点数化される」という考え方とは大きく異なるものでした。

大学教育を改革するという視点で学びをまとめる過程で、自分が無意識に抱いていた学力観が、現在志向されているものではない、少なくとも自らが志向したいものでないことがわかりました。フィールドワーク先の教室の様子から、色々な学びの形があるということを知り、さらにインタビューの内容も踏まえて、その根本となっている学習者自身のモチベーションの影響の大きさを認識したことにより得られた結論でした。

授業で得られたことは、何よりもまず、自分が新しいことを学ぶ時に役立つと思います。学力観の認識が変わるだけで、いつも受けている授業に対する自分の意識が大きく変わりました。学習者自身の気持ちの持ち方が学びに与える影響を身をもって実感しています。

大学での学びと大学の枠を越えた学び(文科三類1 湯生 晴子)

私は「大学教育を変える学びのフィールドワーク」を通して、二つの大きなものを得ました。一つ目は、自分が受けている授業を客観的に評価する能力です。「いい授業」とは何かを考えるなかで、受講している科目の授業設計に注目するようになり、それまでは気づかなかった工夫に目が向くようになりました。例えば、同じ議題でも学生間のディスカッションが活発になるような提示の仕方をしたり、インタラクティブな授業をするのが難しいと言われる大規模な教室でもグループワークを通して学生の視点をとりいれたり、105分間学生の集中力を保つために講義の途中にビデオをはさんだり。深く考えずに受けていた授業のなかにさまざまな工夫を見出すことが出来るようになり、それまでは苦手だった授業を受ける態度がより積極的なものになりました。

また、教育の枠を超えた気づきもありました。授業の一環で行ったフィールドワークや、Skypeでのインタビューなどを通して、多くの人と出会いました。フィンランドの大学生、他大学の教授、会社を辞めて新しい学習観にもとづく塾を起業した方、そこに通う生徒、その生徒の保護者。彼らと真剣に話すなかで、今まで知らなかった生き方に触れることができました。大学を出て、就活して、どこかの大手企業に雇ってもらい、定年まで働き続けるという道以外にも多くの選択肢があること、学生という身分でなくなっても学びつづけ、進化しつづけられること。そのことに勇気付けられ、自分の未来をより大きなスケールで考えられるようになりました。

全学自由研究ゼミナール「大学教育を変える学びのフィールドワーク」の概要はこちらをご覧ください。

2015年11月12日開催 アクティブラーニング・セミナー

2015年11月12日開催 アクティブラーニング・セミナー

2015年11月12日開催 アクティブラーニング・セミナー Active Learning Seminar
アクティブラーニング部門では、教育方法と関係のある内容のセミナーを開催しています。ここでは、2015年11月12日(木)に行われたセミナー「産学連携型プロジェクト学習によるリーダーシップ教育の実践: 立教大学ビジネス・リーダーシップ・プログラムの事例から」について報告いたします。立教大学ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)を運営されている立教大学経営学部の舘野泰一先生を講師としてお招きしてお話しいただきました(図2)。また、実際に BLP を受講し、BLPの学生アシスタント(SA)として活動されている経営学部2年牛込公美子さんと安藤沙紀さんにもお越しいただきました。 また、本セミナーは、本部門が実施している全学自由研究ゼミナール「アクティブラーニングで未来の学びを考える」の授業も兼ねており、当日は、受講生である学生が6名、希望された教員5名が参加してくださいました。
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セミナーの構成

本セミナーでは、まず BLP と BLP において重要になるリーダーシップに関するレクチャーがあり、その次に BLP の一部をミニ体験しました。そして、再度 BLP のデザインに関するレクチャーがあり、最後にセミナーを振り返るためのディスカッションが設けられました。

BLPの概要

BLP は立教大学経営学部経営学科の1年生の春学期から3年生の春学期まで、5学期2年半をかけて行われるプログラムであり、立教大学に経営学部が設置された2006年から開始されました。「権限がなくても発揮できるリーダーシップの涵養」を目指しており、自ら目標設定をして、自らすすんで前に立ち、さらに同僚を支援する学生を育むことを教育目標としています。アクティブラーニングを取り入れた授業設計で、産学連携のプロジェクトを実行する授業とスキルを強化する授業で構成されています。1年生は春学期に「リーダーシップ入門(BL0)」の受講を通して課題解決のプロジェクトを行い、秋学期には BL1 で論理的思考力を養うため、ライティングスキルを強化します。2年生の春学期にはプロジェクト型授業、秋学期にはスキル強化型授業、3年生の春学期にはプロジェクト型授業と、2年半をかけて、プロジェクトの実行とスキルの強化を交互に行うプログラムになっています。 その成果は高く評価されており、文部科学省の質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)では「特に優れており波及効果が見込まれる取組」に認定され、教育再生実行会議の第7次提言では大学のアクティブラーニングの先行事例としてただ1つ紹介されました。

授業「リーダーシップ入門(BL0)」

本セミナーでは、特に重要な1年生の春学期に行われる「リーダーシップ入門(BL0)」について説明されました。BL0は立教大学経営学部の1年生約400名が受講する授業で、1クラス約20名、全18クラスで行われます。 BL0 の受講を通して、学生が実際にプロジェクトを行うという経験することで、他の授業で学ぶ専門知識の必要性を知ってもらうことが期待されています。授業内容は、学生がビジネスにおける課題に対してグループで取り組むというもので、実際の企業と連携して課題設定が行われ、最終的には選ばれた学生のグループが企業の方々の前でプレゼンテーションを行います。授業を通して、学生たちはそれぞれのリーダーシップを発揮する必要があり、リーダーシップの教育が重要になってきます。

リーダーシップと BL0 の設計

リーダーシップと聞くと、明確なビジョンを打ち出して、全員を強く引っ張るリーダーが発揮するものというイメージがありますが、それだけがリーダーシップではありません。正式に任命されたリーダー以外のメンバーが誰でも発揮できるリーダーシップもあります。そこで、200ほどリーダーシップの定義がある中、BLP では最小限身に付けるべきリーダーシップを「目標設定・共有」「率先垂範」「同僚支援」の3要素に絞り込みました。つまり、BLPは、明確な成果目標を設定および共有し、率先して模範となる行動をとり、同僚が動きやすいように働きかけるリーダーシップを身につけるよう設計および実施されています。 そのようなリーダーシップを身に付けるため、経験と振り返りの両輪をまわす授業構造になっています。構造は「目標設定」「経験」「ふりかえり」の3要素から成り立っています(図3)。目標設定では、リーダーシップをどのように発揮するかといったリーダーシップ目標の設定を行います。そして、経験では、リーダーシップが必要になるビジネスプランを提案するプロジェクトを実際に体験します。そして、ふりかえりでは、学生が相互にリーダーシップ行動に対してフィードバックし、そのフィードバックを元に目標を振り返り、次の行動計画を立てます。このように、目標を立てて、経験し、体験して、そのまま終わるのではなく、そこからさらに振り返り、それを次につなげる構造となっています。次にご紹介する BLP ミニ体験も同様の構造となっていました。
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BLP ミニ体験

BLP の説明後、セミナー参加者も BLP をミニ体験できる時間がありました。課題は「訪日外国人旅行者によってあなたの地元が活性化する新たな仕組みを提案せよ!」というビジネスプランを3人1グループで考えて提案するものでした。グループメンバーの出身地から地元を1つ決定し、海外の国を1つ決め、その国の人々を地元に呼び寄せるビジネスプランを考える課題でした。 課題に取り組む構成も、BLPと同様になっており、まずはグループメンバーが各自リーダーシップ目標を決め、共有しました。その後、実際にビジネスプランの作成にグループで取りくみ、全体で発表しました。そして、グループ内でメンバーがリーダーシップ目標に対して相互にフィードバックしました。以下、詳細について説明します。 まず、参加者はそれぞれグループワークにどのような貢献をするか、具体的なリーダーシップの行動に関する目標を設定し、共有しました。「話がそれないように良い感じに話をまとめたいな」といったラフな目標や「積極的なアイディア出しと議論の促進をします」といった目標が挙げられ、グループ内で共有されていました。 そして、各グループは、活性化する地元と対象となる外国を決め、ビジネスプランを作成しました。例えば、千葉県とインド、東京都とアメリカ、下北沢とアメリカといったように、色々な組み合わせが生まれ、それぞれの地元や国の特徴を活かしたビジネスプランが作られました。 発表では、全体に対して各グループがビジネスプランを共有し、投票が行われ、3つのグループが同率1位になりました。アメリカの若者を対象に神社でファッションショーを行う「下北インターナショナルファッションコレクション」がその1つで、他も特色豊かなビジネスプランでした。 そして、最後に、グループ内で、グループワークでのそれぞれの行動を思い出し、元々共有したリーダーシップ目標が達成できているかを振り返りました。例えば、議論を促進するという目標を共有していたメンバーには、「途中で意思決定して、議論を次の段階に進めてくれたのが良かった」といったフィードバックがありました。

ディスカッション

BLP のミニ体験を経て、参加者はそれぞれのグループで、このセミナー全体を振り返りました。各グループには、セミナーの講師か BLP の SA が入り、実際の BLP の様子や運営に関する質疑応答なども行われていました。ある学生は「(立教大学には)このようなプログラムがあって羨ましい。東大にはないのか?」と BLP の価値を高く評価し、本学にもこのようなプログラムを導入してほしいと話していました。

受講者によるアンケート

学生からは「参加者全員にリーダーシップを身に付けてもらうという考え方が印象的でした。様々な場面で努力が認められることで、自分にはリーダーが向かないと思っている学生も徐々に自信を付けられるのだなと思いました。」といったコメントがあり、全体的に肯定的な感想でした。 また、教員からは「SAの方の話が聞けたことがとても良かったです。SA を体験することまでセットで、学びが深まるという部分の大きさを再認識しました。」や「リーダーシップ教育とアクティブラーニングの重要性を再認識しました。楽しい、また参加したいです。」といった SA、リーダーシップ、アクティブラーニングの重要性に関するコメントがあり、全員が肯定的な感想でした。

筆者の感想

レクチャーと体験が絶妙にブレンドされたセミナーになっており、参加者も非常に満足していましたし、見学していた私も非常に楽しませてもらいました。リーダーシップを学ぶ上で、体験と振り返りが重要だということが強く印象に残っています。BLP のミニ体験でも、体験(ビジネスプラン作成)と振り返り、という構成がとられていたのに加えて、セミナー自体も、BLP のミニ体験と振り返り(ディスカッション)、という構成がとられており、非常に一貫性の高いセミナー構成だと感じました。体験と振り返りが大事だと単に伝えるだけでなく、受講者が実際にセミナーおよび BLP のミニ体験で体験と振り返りを実践できる素晴らしいセミナーでした。有意義なセミナーを行ってくださった舘野先生、SA の牛込さんと安藤さん、誠にありがとうございました。(吉田)

第4回 アクティブラーニング・ラボ 開催(2016年7月15日)

カテゴリー: イベント

第4回 アクティブラーニング・ラボ 開催

アクティブラーニングを試行的に実践・体験し、議論する研究会「アクティブラーニング・ラボ」を開催いたします。 試行的にアクティブラーニングを取り入れて各教職員が自身の専門について伝える研究会で、多様な研究分野に触れられること、アクティブラーニングについて理解を深められることが特徴です。 試行的であることから、良い点、改善点も含めて建設的に議論する場である点、ご了承いただければ幸いです。

日時

2016年7月15日(金) 17:00-18:00

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

内容

今回は、1名の講師が試行的にアクティブラーニングを取り入れた、自身の専門に関する15分間程度のミニレクチャを行います。 ・ミニレクチャ タイトル:DNA を超えた!?エピジェネティクスの魅力 講師  :教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 吉田塁 特任助教

対象者

学内の教職員

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 https://goo.gl/forms/MZoBrBCt2B01nIH62   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

第3回 アクティブラーニング・ラボ 開催(2016年6月23日)

カテゴリー:

第3回 アクティブラーニング・ラボ 開催

アクティブラーニングを試行的に実践・体験し、議論する研究会「アクティブラーニング・ラボ」を開催いたします。 試行的にアクティブラーニングを取り入れて各教職員が自身の専門について伝える研究会で、多様な研究分野に触れられること、アクティブラーニングについて理解を深められることが特徴です。 試行的であることから、良い点、改善点も含めて建設的に議論する場である点、ご了承いただければ幸いです。

日時

2016年6月23日(木) 17:30-18:30

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

内容

今回は、1名の講師が試行的にアクティブラーニングを取り入れた、自身の専門に関する15分間程度のミニレクチャを行います。 ・ミニレクチャ タイトル:ジグソー法で3つの学習観を学ぼう 講師  :教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 福山佑樹 特任助教

対象者

学内の教職員

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 https://goo.gl/forms/MZoBrBCt2B01nIH62   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

第2回 KALS ワークショップ 開催(2016年6月17日)

カテゴリー:

第2回 KALS ワークショップ 開催 (2016年6月17日)

アクティブラーニング部門主催で、駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)にて、授業に役立つワークショップを開催いたします。

タイトル

学習効果を高める反転授業の作り方

日時

2016年6月17日(金)11:00-12:00

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

概要

反転授業とは、事前に基礎知識に関する学習をして、授業では議論・演習を行う形式の授業のことです。 これまでは応用問題は授業後の課題となっていましたが、難しい応用問題を授業中に議論しながら解くところがポイントです。 反転授業を取り入れることで、学習が深まることが示されています。 本ワークショップでは、学習効果を高める反転授業の作り方をお伝えします。 効果的な授業設計やアクティブラーニングにご興味がある方は是非ご参加ください。

対象者

学内の教職員

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 http://goo.gl/forms/viHCh39JW8qoJtQa2   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

第2回 アクティブラーニング・ラボ 開催(2016年5月13日)

カテゴリー:

第2回 アクティブラーニング・ラボ 開催

アクティブラーニングを試行的に実践・体験し、議論する研究会「アクティブラーニング・ラボ」を開催いたします。 試行的にアクティブラーニングを取り入れて各教職員が自身の専門について伝える研究会で、多様な研究分野に触れられること、アクティブラーニングについて理解を深められることが特徴です。 試行的であることから、良い点、改善点も含めて建設的に議論する場である点、ご了承いただければ幸いです。

日時

2016年5月13日(金) 17:00-18:00

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

内容

今回は、2名の講師が試行的にアクティブラーニングを取り入れた、自身の専門に関する15分間のミニレクチャを行います。 ・ミニレクチャ1 タイトル:生命、細胞の役割を考える 講師  :教養教育高度化機構 初年次教育部門 田上遼 特任助教 ・ミニレクチャ2 タイトル:教育現場の舞台裏 ?―授業哲学を見つめ直す― 講師  :グローバリゼーションオフィス 笹山尚子 特任助教

対象者

学内の教職員

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 http://goo.gl/forms/CJ33pVu3bH   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

シンポジウム「アメリカLGBT活動の現在:IVLP東京報告会」の報告が教養学部報に掲載されました

カテゴリー: PRESS

20160421gakubuhos2016年1月9日に駒場Iキャンパス21 KOMCEE WESTで開催した公開シンポジウム「アメリカLGBT活動の現在:IVLP東京報告会」の開催報告が教養学部報 第582号に掲載されました。

新入生への総長メッセージで「初年次ゼミナール」が言及されました

カテゴリー: PRESS

平成28年度新入生に向けた五神真総長のメッセージ中で、「初年次ゼミナール」が言及されました。

全学自由研究ゼミナール「大学の教育を変える学びのフィールドワーク」

全学自由研究ゼミナール 「大学の教育を変える学びのフィールドワーク」

アクティブラーニング部門では、2015年度Aセメスターより、「大学の教育を変える学びのフィールドワーク」と題する全学自由研究ゼミナールを新たに開講しました。 この授業では、大学内外の学びの場におけるフィールドワークを通じて、多様な学習環境や学習デザインを知り、大学教育のあり方について自らの考えを深めることを目的としています。 ここでは授業の概要や授業を受けた学生の感想を担当教員の感想を交えつつご紹介したいと思います。 授業ではまず大学における教育改革の動向や、参加・体験・活動をともなう大学内外の学びのあり方について講義をおこないました。 講義内容に対する理解を深めるため、「高校までの教育と大学教育との違い」「大学の特徴と役割」といった講義内容に関連するテーマを取り上げ、これらのテーマについて自らの考えをまとめたり、それを全体で共有したりするワークもおこないました。 大学内外の学びに関する考えや理解を自らの問題関心に沿って深められるように、フィールドワーク先となる「学びの場」は、学生自身に選んでもらいました。 学生が調査対象に選んだのは、大学が提供する公開講座、ファカルティ・ディベロップメント(FD)研修会、大規模オンライン公開講座(MOOCs)、英語での授業や留学支援、外国人学校における日本語教育、高校や企業が実施するインクルーシブ教育などでした。 フィールドワークを円滑に進められるように、観察・インタビュー・質問票の作成方法に加え、アポイントの取り方やフィールドワーク先でのマナーなどに関する講義もおこないました。 質問票作成やアポイント取得については、適宜、担当教員がサポートしました。 またフィールドでのインタビューに備えて、学生同士でペアになって相互にインタビューをおこない、気づいた点を互いにフィードバックするワークも取り入れました。 授業では他者と協力して課題に取り組む力を身につけることも重視したため、課題である最終発表は、個人ではなくチームでおこないました。 適切なチーム編成ができるように、各自の問題関心を共有する機会を、授業の進行過程で何度か設けました。 その結果、「大学教育」(公開講座、FD研修会)、「グローバル化への対応」(英語での授業、留学支援、日本語教育)、「多様性への対応」(インクルーシブ教育、MOOCs)をテーマとする3つのグループが結成されました。 最終発表では、フィールドワークを通じて明らかとなった多様な学びの理念や目的、学習環境、講師の工夫、学習者の立場や動機、講師-学習者および学習者-学習者間の相互作用などに関する考察結果が述べられ、それをふまえた学生目線での「新しい大学像」などの提案がなされました。 最終発表では、学生自らが作成した評価指標(ルーブリック)を用いて相互評価もおこないました。 記事「ピアレビューの効果的な導入方法」でも紹介したように、ルーブリックとは、課題の評価観点と評価基準を明示した表のことです。 ルーブリックは教員が学生を評価する際に用いることもできれば、学生が課題に取り組むためのガイドにしたり、自身の達成度合いを評価したり、ほかの学生を評価したりするのに用いることもできます。 一方、ルーブリックは、評価者の主観が入るなど信頼性の確保が難しい、学習者がルーブリックにある評価の観点を意識して課題に取り組み、学びの範囲が制限されてしまうといったデメリットも指摘されています(山田ほか 2015)。 授業ではこうしたメリットとデメリットを理解した上で、ルーブリック作成のワークを実施しました。 学生のルーブリック作成への参加は、学生が授業やフィールドワークを通じて学んできたことを振り返るとともに、評価者の視点をもてるようになるという点において有益であったと感じています。 授業では、大学外の学びに触れる機会として、ゲスト講師を招いたワークショップ形式の講義も実施しました。 民間学童保育と学習塾を兼ねたネクスファ副代表の辻義和氏と社会人を対象にリーダーシップに関するワークショップをおこなう東京アキュメン代表の灘仁美氏にご登壇いただきました。 図1 灘仁美氏によるワークショップ 辻氏のワークショップでは、ネクスファの学習 塾で提供されている「サス学(サステナビリティー学習)」という探求型学習プログラムを実施いただきました。 サス学は、受講生が様々な社会問題を”ジブンゴト”として捉えられるように、社会問題との”つながり”を体感し、問題に対する自分の考えを自らの言葉で表現できるようになることを目指しています。 学生はワークショップへの参加を通じて、こうしたサス学の理念や目的がプログラムにどのように組み込まれているのかを学びました。 また灘氏のワークショップでは、学生が実現したい夢を書き出し、そのために必要な活動や阻害要因のディスカッションを通じて、実現に向けたアクションプランを検討しました。 これらのワークショップは、学びの場におけるファシリテーションや、学習デザインの多様性を知る貴重な機会となりました。 図2 辻義和氏と「問い」を探す学生たち 授業後に実施したアンケートでは、最も学んだこととして、「学びの形の多様性」、「フィールドワークで観察すべき対象を体系的に学べた点」、「インタビューやアンケートをする力、またその知識と経験」といった講義テーマに関連する知識やスキルの習得をあげる学生や、「他者の考えを交えて自らの意見を推敲していくこと、その意見を誤解なく発信していくことの大切さ」といった協調学習の重要性をあげる学生がみられました。 また、授業を受けたことで、「教育について深く考えるようになった」として、行動に変化がみられたと述べる学生もいました。 さらに、「授業は教員だけが作り上げるものではなく、学生と教員が相互主体的に作り上げるもの」との認識が芽生え、来年度の授業支援を自ら志願する学生もみられました。 担当教員としては、授業設計やファシリテーションなどの面で反省もありますが、教員と学生が共に成長できる学びの場を提供できるよう、授業改善に努めていきたいと考えています。

参考文献

山田ほか(2015). 学びに活用するルーブリックの評価に関する方法論の検討. 関西大学高等教育研究, 6, 21-30. (小原優貴)  

全学自由研究ゼミナール「アクティブラーニングで未来の学びを考える」

全学自由研究ゼミナール 「アクティブラーニングで未来の学びを考える」

アクティブラーニング部門では2014年度より全学自由研究ゼミナール「アクティブラーニングで未来の学びを考える」を開講しています。 この授業では、アクティブラーニング手法を用いた授業を展開しており、前半の授業では学習観や背景理論、教材・実践について概観し、それらを踏まえて最終的にはグループで「未来の学び」を実践して貰うことで、「学び」についての考えを深めることを目指しています。 各回の授業概要を表1に示しました。 本講では、前半で行ういくつかの講義の流れ、ゲスト講義、学生たちの実践、学生の反応の4つの観点からこの授業の概要を説明します。 表1 「ALで未来の学びを考える」授業概要
タイトル(授業手法)
1 ガイダンス
2 学びとは何か?(ミニワークショップ/講義)
3 3つの学習観(ジグソー法)
4 ICTを用いた学び(講義/教材体験)
5 新しい能力と経験学習(講義/教材体験)
6 学習空間・活動・共同体(ジグソー法)
7 最先端の学びを調べよう!(発表)
8  ゲスト講義?(詳細は後述)
9 ゲスト講義?(詳細は後述)
10 未来の学びを考えよう(グループワーク)
11 ワークショップの準備(グループワーク)
12 未来の学びの実践(ワークショップ)
13 リフレクション(グループワーク)

講義の流れ

講義のうち2回では、ジグソー法と呼ばれる協調学習手法を用いた授業を実施しています。 ジグソー法では、まず学生が「専門家グループ」を組み、グループごとに決められたトピックについて学習した後に、それぞれトピックを学習した「専門家」が1人ずつ集まる「ジグソーグループ」を作成します。 ジグソーグループの中で、それぞれの学生が自分が学習した内容の「専門家」として、他のメンバーに説明を行います。 そして、最後にグループで知識の全体像についてディスカッションを行います。ジグソー法は、複数のトピックを学習し、教え合うことで内容に関する深い理解を促すことが出来る手法です。 講義では「学習観」と「空間・活動・共同体」をテーマにし、「学習観」の講義では学生を「行動主義」「認知主義」「社会構成主義」の3つの専門家グループに分けて学習を行い、それぞれの内容をジグソーグループで説明し合った後、3つの主義の歴史的変遷や関係性についてディスカッションする授業を行いました。 学生にとって、自分が学んだことを他者に説明する活動は刺激的だったようで、集中して学習できたという意見や、もっと上手く説明できるようになりたい、などの感想がコメントシートに書かれていました。

ゲスト講義

授業では毎期1?2名程度、先進的な学びの実践者の方をお呼びするゲスト講義を実施しています。 2015年度Sセメスターでは、NPO法人 Collable代表の山田小百合さんをお呼びし、インクルーシブワークショップを実施して頂きました。 Collableは「多様性を歓迎する社会の創造」をビジョンとし、障害のある人もない人も「ともに」創造し活動するコミュニティづくりを支援することを目指すNPOです。 授業では、目の見えない人にとって自分を表現する「名刺」とはどのようなものかを考えて制作する「見えない名刺をデザインするワークショップ」を実施して頂きました。 普段、名前や肩書きが載っているものと何となく思っている名刺ですが、目が見えない人に自分のことを伝えると考えると、「出身地の形」を紙を切ってデザインする学生や、「所属サークルで使う道具」を表現する学生など多様な観点から名刺作成が行われ、お互いについての理解も深まりましたし、普段当たり前に思っていることを疑う視野が養われました(図1)。 図1 ワークショップの様子

学生たちの実践

授業の後半では、学生達に「自分たちが実現したい未来の学び」を考えて実践する活動を行って貰っています。 これは普段は学習者の視点だけしか持っていない学生に、授業者の視点からも「未来の学び」について考えてもらうことを目的にしています。 2014年度に行われた学生達の実践例を1つご紹介します。 あるグループでは、小学校の社会の授業に「ジグソー法」を取り入れるとどのようなことが出来るのかを考え、「ジグソー法とすごろく」を融合させた実践を考えました。 これはまずジグソー法で織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人を学んだ後に、それぞれに関するすごろくを作成し、お互いが作ったものを遊ぶことで、楽しみながら担当しなかった武将に関する知識を得ることが出来るというものです(図2)。 図2 学生の成果物 1,2年生が2週間ほどで設計したこともあり、ファシリテーションなどに課題もある実践でしたが、初めて多人数になにかを教えるという経験をした学生も多く、得るものが多かった様子でした。

学生たちの反応

受講した学生たちの反応としては毎学期良いものが得られています。 コメントシートに記載されている、授業で特に身についたとしている能力や意識としては、「教育に対する興味・関心」、「(アクティブラーニングを含む)学習に対する知識や意欲」、「他者とディスカッションする能力」などが多く見られました。 授業者としても、回が進むごとにグループでのディスカッションは内容が濃いものになっており、また初回ではほとんど話せなかった学生の発言量も徐々に増えていくのが感じられ、受講生の反応と同様のことを効果として感じました。 授業で活用したジグソー法などの手法に関しては昨年度部門で作成した「+15 minutes」という冊子に実施方法を詳しくまとめました。 「ダウンロード」ページからダウンロードできるほか、KALSにて冊子もお配りしておりますので、ご興味がおありの方はアクティブラーニング部門までご連絡ください。 (福山佑樹)

第1回 KALS ワークショップ 開催(2016年2月19日)

カテゴリー:

第1回 KALS ワークショップ 開催 (2016年2月19日)

アクティブラーニング部門主催で、駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)にて、学生の主体性を促すアクティブラーニング型授業の作り方、KALS の効果的な使い方に関するワークショップを開催いたします。

タイトル

主体的な学びを促す授業の作り方

日時

2016年2月19日(金)17:00-18:00

会場

17号館 2階 駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS) http://www.kals.c.u-tokyo.ac.jp/access.html

概要

学生の主体性を促す授業づくりに役立つ授業設計やアクティブラーニングの方法をアクティブラーニングを交えながらご紹介いたします。 それらに合わせて、KALS の効果的な使い方もご紹介いたします。 また、大教室でも使えるアクティブラーニングの方法やテクニックについてもお伝えする予定です。 効果的な授業設計やアクティブラーニングにご興味がある方は是非ご参加ください。 また、ワークショップ自体は日本語で行いますが、必要な方にはその方の近くで適宜、英語によるウィスパリング翻訳をスタッフが行う予定であること、ご了承いただければ幸いです。

対象者

学内の教職員

参加申込み

当日参加も大歓迎ですが、印刷資料数を見積もるため、 ご参加予定の方は以下のフォームに情報入力していただければ幸いです。 http://goo.gl/forms/FwXvw0E7cT   お読みいただき誠にありがとうございました。 みなさまのご参加を心よりお待ちしております。 (吉田塁)

アメリカLGBT活動の現在 IVLP東京報告会

2015年 Aセメスター学術フロンティア講義 「ダイバーシティデザイン講座:多様性社会を知る〜違いを認め合う社会づくり」 のスピンアウトシンポジウムを行います。
日程: 2016年1月9日(土) 会場: 東京大学駒場Iキャンパス 21KOMCEE WEST 駒場キャンパス アクセスマップ 14:00-17:00  シンポジウム      レクチャーホール 17:00-19:00  情報交換会(軽食あり) MMホール 主催: 東京大学教養教育高度化機構・石丸径一郎(東京大学LGBTQ 教職員会・教育学研究科) 共催: 虹色ダイバーシティ・なんもり法律事務所・FRENS・Rainbow Soup・Love Act Fukuoka 協賛: LGBT ファイナンス(バークレイズ/ EY/ ゴールドマン・サックス/J.P. モルガン/ 野村證券株式会社/UBS グループ)・Fruits In Suits 参加費:情報交換会 1,000円 事務局:event [at_mark] fye.c.u-tokyo.ac.jp (担当:坂口・五十嵐) [at_mark]を@に差し替えてメールして下さい。
多目的トイレあります。 手話通訳(日本手話)がつきます。
IVLPsympo950アメリカ国務省が主催する人物交流プログラムIVLP(International Visitor Leadership Program)にて、LGBT のテーマで日本のアクティビスト5名が選出され、2015 年7月に3週間、5 都市の視察を行いました。 その成果を共有し、これからの日本のLGBT 活動の展望を考える会を開催します。 多くの学生・一般の方々の参加をお待ちしています。

申し込み

参加申し込みはPeatixのサイト(こちらをクリック)よりお願いいたします。 シンポジウムは当日でも参加できます。 情報交換会は、人数を把握する必要がありますので、 事前登録をお願いいたします。
取材を希望される方
大学への事前申請が必要です。事務局にお問い合わせ下さい。 広報申請様式

スピーカー&トピックス

  • 村木真紀(NPO法人 虹色ダイバーシティ代表:『職場のLGBT読本』著者) 日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」チェンジメーカー賞 受賞
    1. 全米最大の支援団体ヒューマンライツキャンペーン
    2. ワールドアウトゲームズマイアミ、官民一体の誘致活動
    3. シンクタンク機関、ウィリアムインスティチュートの役割
  • 南 和行(なんもり法律事務所 弁護士:『同性婚—私たち弁護士夫夫です』著者)
    1. 弁護士の視点から見る、日米の状況・活動の違いと共通すること
    2. 人権保障の担い手としての弁護士の役割
  • 小嵒[こいわ]ローマ(NPO法人 Rainbow Soup代表)
    1. 大都市と地方都市、地域による温度差 偏見・差別との闘い
    2. 国、政党、民間、さまざまなレベルで活動するLGBT支援グループの存在
    3. 公民権運動発祥の地・モンゴメリーにおけるLGBT支援
    4. 違いを乗り越えて繋がろうとする活動のあり方について
  • program
  • 牧園祐也(Love Act Fukuoka代表)
    1. ダブルマイノリティの問題(LGBTと不法移民)
    2. ロサンゼルスLGBTセンターの状況と役割 特にHIV検査や相談の取り組み、ユース支援の取り組み
    3. 組織運営における日米の違い
    4. 若者のいじめ防止を目指すIt Gets Betterの取り組み
  • 石崎杏理(FRENS代表)
    1. アメリカのLGBTQユースサポートの事例
    2. 各地の取り組み、センターの状況、学校での現状
    3. ホームレスになってしまうユースへの支援
    4. 日本の課題と必要な方策など
  • 諸星航洋(東京大学経済学部4年生) 「性的マイノリティである学生が就職先に求める環境」
  • 石丸径一郎(東京大学LGBTQ教職員会・教育学研究科) 「東京大学とLGBT」

タイムスケジュール

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アクセス案内

21 KOMCEE WESTまでの経路
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参考リンク

全学体験ゼミ「ソーシャルビジネスの為のプロジェクトマネジメント」書籍になりました

日経BP 全256ページ 本体1,400円
2012年から3年にわたり開講した全学体験ゼミナール「ソーシャルビジネスの為のプロジェクトマネジメントー創造的協同に向けたチームビルディングー」の内容が日経BPから出版されました。ブレインストーミング、グループワークやプレゼンテーションの指導などアクティブラーニング授業の導入に役立つ情報が詰まっています。 プロジェクト型授業やソーシャルビジネスに関心のある方にもお役に立つはずです。
  • 成果をあげるチームとは?
  • プレゼンテーションー伝える力を磨く
  • ディスカッションーよい議論にはルールがある
  • ブレインストーミングー批判厳禁、質より量
  • ファシリテーションー思いやりで意見を引き出す
  • ビジネスプランをつくる
  • リーンによるプランのカイゼン
  • チームビルディングの実践

国連白熱教室~中央アジア編@東京大学

20151112UNDPTokyo日時:2015年11月16日 場所:21 KOMCEE WEST アレクサンダー・アヴァネソフキルギス国連常駐調整官兼UNDPキルギス常駐代表と杢尾雪絵UNICEFキルギス事務所代表を駒場キャンパスにお招きし、「国連とキルギス:パートナーシップと持続可能な開発」をテーマにワークショッ形式で講演が行われました。

駒場祭シンポジウム:東京大学「初年次ゼミナール」の挑戦

komapasympo 日時:  2015 年11 月23 日(月・祝) 12:50-14:30(12:35 開場) 会場:  東京大学駒場I キャンパス 21 KOMCEE West B1F オープンスペースアリーナ 参加費: 無料 申し込み方法:事前申込不要 平成27年度から、東京大学教養学部前期課程では新たな少人数制必修授業「初年次ゼミナール文科・理科」がスタートしました。この授業は、新1年生の意識改革と基礎的な学術スキルを身につけることをめざしており、文科については基礎演習を発展的に組みかえ、理科については全く新たに始められた取り組みになります。 理科においては全理系学部および研究所・センターから専門分野の多様な教員が参集し、グループワークを軸に実験やプログラミング、論文講読などを組み合わせ、さまざまな工夫を凝らして新入生に大学での学びのあり方を体験させる試みが行われました。文科・理科ともに上級生がTA(ティーチング・アシスタント)として授業に加わり、親身な指導が重視されたのも特徴でした。 本シンポジウムではその成果と課題、ユニークな授業内容について紹介します。実際に授業を担当した教員のみならず、学生やTA(ティーチング・アシスタント)も登壇します。 駒場祭3日目に学術企画シンポジウムとして開催します。

スケジュール

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紹介する授業の詳細

理科授業例「私たちの身近にあるワンパクなタンパク質を科学する」

生体内で起こるほとんどすべての現象はタンパク質を必要としています。また私達は、生物からタンパク質を取り出し、生活に役立てています。今回の講義では、座学と実験からタンパク質の性質の一部を学んだ後、4つのグループに分かれ、生命現象や生活に活きているタンパク質について、その凄さを、科学者ではない皆さんにわかってもらうためのツールを作りました。

理科授業例「数学・物理をプログラミングで考える」 授業紹介より

内容は、物理・数学の問題をコンピュータ(数値計算)で解くことです。 このゼミの目的は2つあります。 1つめは、講義で学習する数学や物理は数式を解くだけで、なかなか実感を伴いません。また、単純な運動方程式でも実世界は物体の大きさ、摩擦など様々な影響を考慮しなくてはいけませんが、理論上は全て理想化して省略されます。講義で学習するような美しい理論を現実的なモデルに拡張し、かつそれを可視化することによって直感的に理解できるようにすることを目指しています。 2つめは、それをプログラミングの力を借りて行うということです。他のプログラミングの講義では、おそらく文法や計算手法の学習に力点が置かれていると思います。このゼミではそうではなく、実際に数学・物理現象をシミュレーションし可視化するための道具としてプログラミングを利用します。数学・物理の勉強をしながらプログラミングも同時に学べます。

2014年度全学自由研究ゼミナール「2020年、人口減少社会の生活環境デザイン」報告書

報告書 全8ページ
diversityfor2020
  • 2020年、日本は、私たちは、何を抱えているだろう
  • Lectures & Visits
  • Discussion
  • 「未来の生活環境デザイン」発表
  • 授業を終えた感想
  • ゼミ生のその後 授業 × ???
授業協力: 博報堂「みん育」チーム

トルクメニスタン大使の講演会&国際交流イベント

2015年6月2日(火)17:00〜 21 KOMCEE Westレクチャーホール トルクメニスタン大使の講演会と、本学学生によるトルクメニスタン研修報告会を開催し、100名以上の参加者が訪れました。 前期課程全学自由研究ゼミナール「平和のために東大生ができること」の選抜メンバーは、昨年の夏休みにトルクメニスタンで海外研修を行いました。6月2日のイベントでは、現地で何を見て、現地の学生とどんな議論を交わしたかなど、参加学生が報告を行いました。 トルクメニスタンは永世中立国で、今年はその20周年の節目の年にあたります。研修中の学生ディスカッションでは、現地の学生からの基調講演の一つ目が「中立政策について」でした。アフガニスタンに隣接し、ロシアとトルコとイランという大国に挟まれた国の安全保障・外交政策とは? 在日トルクメニスタン大使の講演と学生の報告会の後には、トルクメニスタンの美しい民族衣装や民芸品を、トルクメニスタンの伝統的料理プロフを召し上がりながらご覧いただく展覧会を行いました。

「国連開発計画による中央アジア地域支援と開発の現状」

日時:2015年5月18日(月)18:45-20:00 場所:21KOMCEE K402 講演者:Mr. Jan Harfst, Chief of Regional Bureau for Europe and the CIS, UNDP New York 概要:中央アジア地域(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタン、キルギスタン)は、現在、隣接するアフガニスタンからの米軍撤退、ISILを含むイスラム過激主義の台頭、さらにはロシア金融危機等の影響もあり、地域の安定と発展が安全保障の観点からも重要な問題となっています。 この度、UNDPイスタンブール地域センターにて中央アジア地域を担当するJan Harfst氏が日本政府との政策協議のため来日するのに伴い、同氏を講師として駒場にお招きしました。中央アジアにおける開発課題およびUNDPによる同地域支援の現状についてお話していただきます。 使用言語:英語

国際機関で働くことをテーマにしたワークショップ開催

日時:1月15日(木) 18:15-(約90分) 場所:駒場キャンパスK301 欧州復興開発銀行(EBRD)の中沢賢治さんをを講師として、国際機関で働くことをテーマにしたワークショップを開催しました。 将来、国際機関で働いてみたい人、国家公務員など国際機関への出向のチャンスがありそうなところに就職したいと思っている人、国際機関で仕事してる人はどんな人なのか興味がある人向けのイベントです。 EBRDは欧州を拠点に、欧州の東部分を主なプロジェクト対象国とする銀行ですが、日本は創立メンバーであり、高いシェアを誇る重要国です。日本人職員の獲得にも積極的で、中沢さんは2012年のEBRD人事ミッションの一員として来日されたご経験があります。財務省が発行している国際開発金融機関のパンフレットにも登場されています。

内閣府男女共同参画局長講演(学内公開)

2015Jan08Takegawa 1月8日(木)16:30-18:00 全学体験ゼミナール「2020 年、人口減少社会の生活環境デザイン:若者と企業の本音 フィールドワーク講座」で、内閣府男女共同参画局長 武川恵子氏にご講演いただきます。 女性活躍推進の政府の取り組みについてお話しいただきますが、教養学部卒業後から内閣府(当時は総理府)でキャリアを積まれてきた武川氏のお話は、学生が将来設計を考える上でもとてもに参考になるはずです。 学内公開、予約不要。 東大駒場キャンパス 21 KOMCEE WEST 302室 までお越しください。

学生企画イベント「僕らが見つめる戦争の記憶」

僕らが見つめる戦争の記憶 東京大学教養学部全学自由研究ゼミナール「平和のために東大生ができること」(通称:軍縮ゼミ)では、駒場博物館で行われている「越境するヒロシマ」展のサイドイベントを行いました。「僕らが見つめる戦争の記憶」というトークセッションです。 軍縮ゼミでは、初めて出講した2011年度夏学期から、繰り返し、被爆証言の提示の仕方について検討してきました。被爆証言を崇高なものとして単に英訳して世界に発信することに甘んじるのではなく、それが世代を超えて、あるいは地域を越えて伝わったときに、誤解を産んだり悪意を持って受取られたりする可能性も視野に入れた上で、これから世界を動かしていく世代は、被爆証言をどのように「利用」して何をどのように伝えることで、理想的な世界を作ってゆけるのかを、いろいろな観点からの取り組みやディスカッションを通じて考えてきたのです。 今回のイベントもその流れのひとつです。日本が経験した辛い戦争から2世代離れ、現代に起こっている紛争からも地理的に離れた平和な日本に暮らす、でも明日の日本を背負って行かなければならない若者として、戦争体験や被爆証言とどのように向き合い、どのように消化し、それをどのように表現してゆくのか。岩波ブックレットの『非核芸術案内――核はどう描かれてきたか』の著者で、丸木美術館の学芸員である岡村幸宣さんをお招きして、学生たちがトークを行いました。

教養教育高度化機構シンポジウム「初年次教育」報告書

報告書 全32ページ
2014年3月12に開催された教養教育高度化機構シンポジウム「初年次教育」の報告書です。 201403FYEsympo

シンポジウム第1部 初年次教育に求められるもの

  • 「教養教育高度化機構の取り組み」 教養教育高度化機構長 松尾基之
  • 基調講演「初年次教育とリベラル・アーツ」 教養学部長 石井洋二郎
  • 「日本の大学の研究力の向上に向けて」 内閣官房健康・医療戦略室自重 菱山豊
  • 「日本の初年次教育の動向と欧米の潮流」 同志社大学教授・初年次教育学会前会長 山田礼子

シンポジウム第2部 東京大学における初年次教育への取り組み

  • 「『知の技法』から20年を経てー初年次教育のあらたな挑戦」 総合文化研究科教授 田中純
  • 「理系における初年次チュートリアル授業の構想」 教養教育高度化機構・初年次教育部門長 増田建
  • 「教員・学生を対象とした初年次教育アンケートから見えてきたもの」 教育学研究科教授・総長補佐 小国喜弘
  • 「東京大学の初年次英語教育」 総合文化研究科教授・英語部会主任 中尾まさみ

各部門の取り組み

ポスター発表紹介

二食で復興メニューコンテスト

2014July10menu 2014年度夏学期の主題科目である「駒場で『食』を考える」(通称:食ゼミ)の履修生が中心となって、駒場生協食堂銀杏(以下、二食)の10月からの秋の新メニュー開発コンテストを実施しました。 「食による東北復興支援」がこのコンテストのテーマです。「お題」となっている、東北産の3つの食材から1つを選んで、食堂で提供できるオリジナルのメニューを開発し、優勝者のメニューが、秋から二食で提供されました。

応募資格

東京大学に所属する学生および院生(団体での応募も可) 応募の選考は、生協食堂駒場店のスタッフと食ゼミ履修者で作る企画実行委員会により厳正に行われました。

応募上のルール

  • 「コウナゴ」、「サバ」、「サンマ」のいずれかの食材を使うこと。ただしいずれの食材も片栗粉をまぶしてあります。これらは岩手県大船渡市から生協食堂に納品されるものです。
  • 「丼もの」か「定食のメインプレート(一皿)」のいずれかにふさわしいメニューを考案すること。応募の際、「丼」か「定食」かを明記する。
  • 生協食堂駒場店で提供するメニューにふさわしい価格帯の食材を使うこと。

学内開放イベント「Download the Voice ~私は戦争体験と向き合う」

2014July01DownloadVoice 軍縮ゼミでは、ドキュメンタリー映画『ヒロシマ・ナガサキダウンロード』竹田信平監督HPをお迎えして、「Download the Voice ~私は戦争体験と向き合う」というイベントを開催しました。 ゲストの竹田信平さんは、2005年から北米在住の被爆者を訪ねてインタビューし、それを『ヒロシマ・ナガサキダウンロード』という作品に仕上げました。国連軍縮部の被爆証言プロジェクトの一翼も担っていらっしゃいます。 修学旅行で広島や長崎を訪れて被爆証言を聞いた(あるいは「聞かされた」)経験や、祖父母の戦争体験を聞いた(あるいは「聞かされた」)学生は多いと思います。その、前の世代の戦争体験をいったいどう受け止め、どう反応し、どう活かせばよいのか悩んだ経験はないでしょうか。 このイベントの企画は、「戦争を知らない私たちは戦争体験に共感しなければいけないの?」という疑問から始まりました。戦争で辛い思いをされた方々の気持ちをないがしろにしようというのではありません。「戦争の話は目に涙をためて同情心いっぱいで聞くべきもの、戦争体験は共感すべきもの」という社会的構成の存在を意識してみようということです。 2年前の軍縮ゼミでは、「日本人の多くが胸を打たれる(はず)の被爆証言が、日本と同じ社会的構成がない国の人たちにどう受け止められるのかを知ろう」というチャレンジをしました。それは、被爆証言を提供する日本国や日本人、日本の組織が、「誰だって感動してあたりまえ」と高をくくっていては、ほんとうに被爆証言を届けたい相手の心に響かないのではないかという疑問からでした。結果、被爆証言は無条件で人類すべての心に平和の鐘を鳴らすものにはなりえない、だから届けたい形で届く努力をしなければならない、ということがわかりました。 軍縮ゼミ(全学自由研究ゼミナール「平和のために東大生ができること」)では、世界の現実を知り、平和のための既存の取組を批判的に検討し、自分たちの役割を、感情ではなくイデオロギーでもなく、論理的に議論しながら見つけてゆくことを目指しています。

国連広報局長をお迎えし、地球規模問題について討論

Peter_Launsky-Tieffenthal 日時: 6月12日(木)16:50~18:00 場所: 21KOMCEE K201教室 ゲスト:国連事務次長/国連広報局長 Peter Launsky-Tieffenthal氏 国連広報センター所長 根本かおる氏 使用言語:英語 軍縮ゼミで、国連広報局長をお迎えして、地球規模問題について議論するイベントを開催しました。 Post MDGsや、Post京都議定書など、国際社会は2015年からの新しい目標作りに取組んでいます。これに対して東大生ができることについて議論しました。

全学自由研究ゼミナール「平和のために東大生ができること」報告書

報告書 全8ページ
Peace
  • 2011・2012年度の活動
  • 被曝証言と向き合う 社会からの関心 核軍縮だけじゃない、世界の課題
  • 2013年度夏学期
  • アフガニスタンのDDRと日本の役割 キルギス研修
  • 2013年度冬学期
  • 多様多彩な国際貢献〜政府・企業・国際機関・市民〜 イベント「紛争を止める力?」の開催 ラオス研修

全学体験ゼミナール「サステイナビリティゼミ3:ワークライフバランス・ワークシェアリングをめぐる施策と現状」 報告書

報告書 全8ページ
Sustainability3
  • 学生の問題意識
  • 研究者の知見と実経験から
  • 行政の立場から
  • NPOによる取り組みという方法
  • 企業・財界の視点
ゼミを終えて

全学体験ゼミナール「ソーシャルビジネスの為のプロジェクトマネジメントー創造的協同に向けたチームビルディングー」報告書

報告書 全8ページ
SocialBusiness
  • 今学期の事業プラン1: 2020年までに新音に外国人観光客向けのフリーWiFiを整備する施策ーUrban Futureチーム
  • 今学期の事業プラン2: 定年退職者の新規就農を通じて収納人口増大を図る施策ー第一次産業チーム
  • 授業から生まれたツアー事例1:都庁の下の貧困ツアー 2012年夏学期
  • 授業から生まれたツアー事例2:自転車交通ツアー 2012年夏学期
授業アンケート 今学期の授業を振り返って

MMランチコンサート 2013年度Vol.1「チェロ&バンドネオン:初期バロックとピアソラのコラボレーション」

カテゴリー: KOMCEE建設

<MMランチ・コンサート2013年度Vol.1「チェロ&バンドネオン: 初期バロックとピアソラのコラボレーション」>

2013年5月30日(金) 12:20-12:50 場所21KOMCEE 地下1階 MMホール 入場無料、予約不要
MMランチコンサート2013.Vol.1-3
MMランチコンサート2013.Vol.1-3

演奏

  • 前田和宏 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士一年(チェロ)
 1989年、東京都生まれ。8歳よりチェロをはじめる。13歳より佐藤道子氏に師事。2007年には、母校栄光学園の栄光フィル定期演奏会にてハイドンのチェロ協奏曲第一番を独奏。2008年東京大学に入学し、東京大学室内楽の会に所属。2010年よりズブロッカチェロアンサンブルに参加。また2011年度・ 2012年度駒場祭においては、コマバ・メモリアル・チェロオーケストラに参加し、1stチェロをつとめるなど、大学内外で精力的に演奏活動を行っている。
  • 中井智也 東京大学大学院総合文化研究科博士一年(バンドネオン)
 1987年、東京都生まれ。2006年東京大学入学。現在、総合文化研究科博士課程在学中。専門は数学の認知神経科学。12歳よりチェロを、19歳よりバンドネオンをはじめる。これまでにバンドネオンを小川紀美代、生水敬一朗、仁詩の各氏に師事。アルゼンチンタンゴに限らず、ロック、ジャズ、フラメンコ、シャンソン、クラシックなど、様々なジャンルの演奏家と共演している。Tango Esperanza、Quarteto Divertissimoに所属。主に都内のバーやライヴハウスなどで演奏活動を行っている。

司会

  • 木許裕介  東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(比較文学・比較文化コース)修士一年
 1987年、大阪府生まれ。教養学部地域文化研究学科フランス分科を経て、現在は総合文化研究科修士課程に在学中。専門は19世紀後半から20世紀初頭のフランスを対象とした「光」の文化史・比較芸術。村方千之氏に指揮法を師事し、ドミナント室内管弦楽団やEnsemble Commodo、Strudel Hornisten、コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ、UUUオーケストラなど、様々なオーケストラ・吹奏楽団で指揮者を務める。2013,2014年度は国内各地での演奏会に加え、フィリピンでプロコフィエフ「ピアノ協奏曲第三番」やムソルグスキー/ラヴェル「展覧会の絵」組曲などを指揮する事が決定している。中高生の吹奏楽指導や青少年のための音楽教室の指揮などでも精力的に活動。MMランチ・コンサートを提案し、主催者代表。
 
MMランチコンサート2013.Vol.1
MMランチコンサート2013.Vol.1

東京大学(駒場キャンパス)で昨年から新しくはじまった、「MMランチ・コンサート」の2013年度第1回が盛会のうちに終了しました。MMランチ・コンサートとは、ランチタイムに21KOMCEEという新しく駒場に出来た建物のホールを使って小編成のアンサンブルを連続企画していくものです。学生たちがサークル単位の壁を越えて音楽発表をする場になれば、そしてまた、ヨーロッパの広場のように、学生から先生方、一般の方々まで、様々な人たちが昼休みにふらりと立ち寄ってコーヒー片手に生演奏に接することのできる場になればと願っています。

 

2013年度第1回は修士1年の前田さんのチェロと、博士1年の中井さんのバンドネオンのデュオで、初期バロック音楽とピアソラを組み合わせて演奏する、という珍しいプログラミングで幕を開けました。ピアソラのCafé1930やガブリエッリのチェロ・ソナタをランチタイムに気軽に聴くことが出来る、というのはとても贅沢な時間だったように思います。高い天井に豊かに反響するチェロの豊かで甘い音に、そしてバンドネオンのはじけては歌う多彩な音色に、昼食に手を伸ばすことも忘れて聞き入るご様子の方々が沢山いらっしゃいました。

MMランチコンサート2013.Vol.1-2
MMランチコンサート2013.Vol.1-2

今回のプログラムはこちら。

1.Aria detta La Frescobalda (G. Frescobaldi)

2.Oblivion (A. Piazzolla)

3.Melancholy Galliard (J. Dowland)

4.Sonata for Violoncello in G (D. Gabrielli)

5.Café 1930 (A. Piazzolla)

6.Libertango (A. Piazzolla)

 

ありそうでなかなか目にする機会の少なかったこのペア、一度耳にすると分かるのですが、実に絶妙なコンビです。はじめはゆっくりと、甘い旋律の曲が続き、プログラムの終わりに向かって徐々に、エネルギーが増していきました。ピアソラのバンドネオンをチェロ伴奏で、初期のチェロ・ソナタをバンドネオン伴奏で、しかも駒場に居ながらにして聴けるというのは、本当に幸せな時間でした。甘美もよし、情熱もよし。期待を裏切らずにピアソラのリベルタンゴを持ってきてくださったのも嬉しかったですね。次のジョイント・リサイタルはいつなのでしょう?(笑)

 

21KOMCEE MMホールを活用した例はまだまだ少なく、もの珍しい様子に引きつけられてガラス越しにうかがう学生たちの姿が、多く見られました。上の階から立ち止まって見ている方もいらっしゃいました。お客さんと奏者の距離が近い、というのがMMランチ・コンサートの大きな魅力です。できるものなら一人でも多くの学生に、そのガラス1枚分「こっち側」の世界に来てほしいですね。駒場でだからこそできる、駒場だからこそ広げられる音楽の輪の可能性を感じずにはいられないひと時でした。

(文責:細川雅史/東京大学文学部四年)

 
MMランチ・コンサート2013 vol1-4
MMランチ・コンサート2013 vol1-4
  MMランチ・コンサートは2013年度も演奏者を公募しながら継続して参ります。ぜひともこの空間で演奏してみたい、という方がいらっしゃいましたら、演奏代表者の氏名(ただし代表者は東京大学/大学院在学者に限る)と構成メンバーの氏名、所属、プロフィール、演奏希望日、演奏希望曲を明記の上、代表の木許 y.kimoto [at]ut-dominant.orgまでご連絡下さい。(atを@マークにご変換下さい)簡単な面談の上、演奏に向けて企画させて頂きます。ただし時間と空間、コンセプトの都合上、あまり大編成の曲や長大な曲、金管楽器やアンプが必要な編成は演奏不可とさせて頂くことが御座いますので、その点はご容赦下さい。        

21 KOMCEEでイベントを開催する際の留意事項

カテゴリー: KOMCEE建設

事前準備

学生の場合は2ヶ月以上前に、学生課学生支援係宛てに企画書を提出する。
  1. U-Taskで施設の空きを確認する(教職員のアカウントで確認できる)
  2. 企画の妥当性について学生支援係内で検討・企画に対する指導
  3. 学生支援係から教務企画係を通して、21KOMCEE運営ワーキンググループに施設の利用可否を諮る

参考

企画書例 21KOMCEEでの学生主催企画に関して

施設の利用方法

概要

土日・祝日はアドミニストレーション棟は開いていません。 必要な手続き・機材の持ち出しは平日中に済ませておいて下さい。 イベント開催学生・監督者の先生へ:留意事項
  1. 使用教室のリモコン・マイクとケーブルのセットを教務課教務企画係を通して借りる。 備え付けスクリーンの昇降はリモコン制御なので、手動で引き出そうとしたりしないように特に注意すること。
  2. 広報掲示・道案内用のポスターケースやダルマを使用する場合は、教務企画に必要数を申請する。 書類フォーム:「物品借用願」 A4横の表示板(ダルマ)や木製の大看板は守衛所で管理している倉庫の中にあるので、物品自体の借り出しと返却は土日・祝日中でも可能。 ポスターケース(A1・A2)についてはアドミニ棟1F オフィス奥階段の踊り場に保管されているため、平日中に使用申請と物品の借り出しを両方済ませる必要がある。
  3. 学生活動用の液晶プロジェクター、可動スクリーン、ポータブルアンプ/スピーカー/マイクは学生支援課で用意している。 利用を希望する場合は企画書にその旨記載の上、平日中に物品を借り出しておくこと。
  4. 21 KOMCEEのB1Fの空調はコンピューターで一括制御されている(施設係及び生産研の管轄)。 学生支援係・教務企画係を通して利用申請が認められている場合は施設係に調整依頼が行っているはずだが、直前の利用申請・許可などの場合は情報がうまく伝達されていない場合もあるので念のためイベント前、施設係にスタッフがいる日時に確認しておくことが望ましい。
  5. 照明制御パネルや予備の机・椅子の収納されている倉庫は通常施錠されていないが、前の利用者によっては施錠してしまっていることがあるので、イベント前に施設係に依頼して利用しそうな鍵の借り出しを依頼しておいた方がよい。 施設鍵は教員であっても学外には持ち出せないので、週末利用の場合は守衛所預けを依頼することになる。
補足:物品・設備の管理 AV機器の使用方法はこちらにまとめてありますので参照して下さい。
  • カフェテリア KOMOEBIのテーブル・椅子は特に高価なため、イベント・作業に使用するなどのために移動するのは避けて下さい。また、来訪者が汚したり傷つけたりしないように十分監督して下さい。
  • 受付やお茶スペースを設置するのに便利な折りたたみ式の長机は、オープンスペースアリーナの倉庫に1台、レクチャーホール奥の調整室兼倉庫に3台あります。
  • MMホールの長いすは必要に応じて移動しレイアウトを変えて構いませんが、脚が取れやすいので引きずらないように監督して下さい。
  • ポスターや案内のビラを粘着テープで建物に掲示することは認められていません。 掲示が必要な場合はマグネットを使用するか、ポスターケースなどを利用して下さい。
  • レクチャーホール・スタジオ教室は飲食禁止です。

Visiting the Ministry of Foreign Affairs

Hello, I’m Asako. I’m a sophomore student and have joined this seminar since this semester. Last Christmas, our seminar had an amazing experience with members from Ministry of Foreing Affairs. They kindly gave us opportunity to introduce what our seminar is about and our achievement so far through last three semesters.     Let me introduce about last summer’s semester.  Overall, we translated an UN document, “Disarmament: A Basic Guide”. Well, merely translating english documents into Japanese! How boring, you might think. Actually, there’s a lot more in it. First, reading the document itself helped us gain basic knowledge on disarmament. Since none of us is majoring in peace studies, this step was indispensable. Secondly, we had to face technical terms, and to comprpehend them we were required extra-study on it. Of course we did not end up simply translating it. Each has done researches according to their own interests. This is a brief intruduction of our last summers seminar.       We also held two presentations in front of the members of the Ministry,  they exposed us with questions , there took place lively discussions, I can tell it was definetely a stimulating experience for us.   Since our seminar is now known to the Ministry and also to UN, we’ll keep it up much harder.        

MMランチ・コンサート駒場祭特別回  -秋の駒場、満席のMMホールに響いた「ブラジル風バッハ」!- レポート

カテゴリー: KOMCEE建設

  11月に開かれたMMランチ・コンサート駒場祭特別回「コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ」のレポートです。 開場まもなく、200席用意されたMMホールの椅子があっという間に埋まって行きます。 会場には立ち見のお客様も沢山いらっしゃいました。
開演前の様子。グラデーションに並べられたチェロケースが印象的です。
開演前の様子。グラデーションに並べられたチェロケースが印象的です。
   

チェロだらけです。
チェロだらけです。

パンフレットの内容を抜粋しておきます。

<MMランチ・コンサート駒場祭特別回 -コマバ・メモリアル・チェロオーケストラとフルート&ファゴットデュオによる「ブラジル風バッハ」->

2012年11月25日(日) 15:00-16:00
主催
東京大学教養学部「21KOMCEEを活用するゼミ」
場所
21KOMCEE 地下1階 MMホール
入場無料、予約不要

演奏

  • コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ
指揮者・木許裕介(東京大学四年)の呼びかけによって結成されたチェロ・アンサンブル。東京大学の学生を中心に、東京外国語大学、上智大学、慶應大学、玉川大学、武蔵野音楽大学など、様々な大学オーケストラでトップ奏者を務めた若手チェリストで構成されている。2011年、ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ一番」の演奏に際して日本ヴィラ=ロボス協会から後援を、2012年には同じくヴィラ=ロボスの演奏に際してブラジル大使館からの後援を得る。2012年の公演は全席満席と好評を博した。
  • 北畠奈緒(フルート、慶應義塾大学二年)
9歳よりフルートを始める。第63回全日本学生音楽コンクール・大阪大会高校生の部第2位、全国大会1位、併せて日本放送協会賞、音楽奨励賞受賞。第14回びわ湖国際フルートコンクールアドヴァンス部門入選。第23回宝塚ベガ音楽コンクール入選、併せて宝塚演奏家連盟賞受賞。東京国際芸術協会の新人オーディションにて審査員特別賞を受賞し第52回東京芸術協会新人演奏会に出演。これまでに篠崎美千代、大塚ゆき、長山慶子、神田寛明、加藤元章の各氏に師事。エマニュエル パユ氏公開マスタークラス受講。フルートカルテットEnsemble Demiメンバー。現在慶應義塾大学在学中。
  • 殿村和也(ファゴット、昭和音楽大学卒)
1987年千葉県生まれ。千葉県立千葉南高等学校吹奏楽部でファゴットを始める。これまでに、ファゴットを太田茂、霧生吉秀の各氏に、室内楽を太田茂、宮村和宏の各氏に師事。2012年3月に昭和音楽大学を卒業。在学中に、カール・オットー・ハルトマン、ロラン・ルフェーブルのマスタークラスを受講する。ドルチェ楽器デビューコンサート出演。首都圏を中心に幅広く演奏活動をしている。洗足学園音楽大学準演奏補助員。とのリード製作者。

指揮

  • 木許裕介  東京大学教養学部四年
東京大学教養学部地域文化研究学科フランス分科四年。村方千之氏に指揮法を師事し、ドミナント室内管弦楽団、アンサンブル・コモド、ヒルズ・オーケストラ、クロワゼ・サロン・オーケストラなど様々なオーケストラで指揮者を務める。2012年は東京交響楽団元コンサート・マスター高木和弘氏がコンサートマスターを務めるプロ・オーケストラにてブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」を指揮、またドミナント室内管弦楽団とオール・ベートーヴェン・プログラム(ピアノ協奏曲第四番など、ピアノ:小林真央/リスト音楽院)によるコンサートを開催。アンサンブル・コモドの東北ボランティア公演でもクラシック&ポップスステージを指揮。過去にはプロコフィエフ「古典交響曲」、ストラヴィンスキー「プルチネルラ」組曲、ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ一番」など、古典から現代まで幅広いプログラムに取り組んでいる。吹奏楽指導や青少年のための音楽教室の指揮でも精力的に活動。MMランチ・コンサートを提案し、主催者代表。2013年度はアンサンブル・コモドの東京チャリティーコンサートでホルスト『惑星』などを、Strudel Hornistenにてムソルグスキー『展覧会の絵』を指揮することが決定している。
  コンサートの開催にあたっては、ハンガリーとモスクワで活躍する同世代のアーティストたちからメッセージを頂きました。
小林真央さん(ピアニスト/リスト音楽院)からのメッセージ 木許さんとは、今年の6月にベートーヴェンのピアノ協奏曲を共演させていただきました。こちらのやりたい事を上手にくみ取って下さり、本番ではとても自由 に気持ち良く演奏することが出来ました。常に向上心を忘れず、心から音楽と向き合っていらっしゃる素敵な指揮者様です。また機会があったら、是非もう一度 一緒に演奏したいと思っております。 砂原伽音さん(バレリーナ/ロシア国立モスクワ舞踊大学)からのメッセージ 本日は駒場祭特別コンサートのご開催、おめでとうございます。木許さんの奏でるブラジル風バッハには、思わず振付してしまったほどに惚れてしまいました。 聴く度に体温が上がってきて、自然と涙が出てきます。木許さんをはじめ、奏者の方達が持つ魅力を、できるだけ多くの方に感じて頂けたらと思います。
  [レポート] 最初に演奏された平井丈一郎「チェロ・アンサンブルのための頌歌」では、混沌とした中から立ち上がってくる中間部の美しいメロディが会場を満たしたとき、来場者の方々が天を仰いで聞いていらっしゃったのが印象的でした。九人のチェリストたちの音が絡み合いながら最後は駆け抜けていく若々しい音楽で、コンサートのはじまりとして相応しい一曲だったように思います。
「頌歌」のワンシーン
「頌歌」のワンシーン
                    指揮の木許裕介による楽曲紹介と「なぜMMホールでコンサートをするか」という趣旨説明が行われたのち、フルートの北畠さんとファゴットの殿村さんによる「ブラジル風バッハ第六番」が演奏されました。神秘的で即興的な、はじめて聞く音の響きに、これが「ブラジル」なのかと不思議な気持ちになるとともに、ファゴットの甘い音色とフルートの伸びやかな歌に心奪われました。
ブラジル風バッハ六番
ブラジル風バッハ六番
                            短い休憩をはさみ、いよいよこの演奏会のメインであるヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ一番」です。指揮の木許さんの背中からは何か特別なエネルギーのようなものが立ち上ったのが見え、チェリストの皆さんも一際集中した表情になっていました。棒を一閃させた瞬間に響いて来たのは、温かく、力強く、それでいて荒々しいリズム!そしてその中から忘れ難いほど格好良いメロディが湧き上がってきました。二楽章の切なすぎるメロディも、即興的に伸び縮みして大らかに歌われ、最後の音では会場全体が吸い込まれたような静寂に包まれていたように思います。第三楽章はヴィラ=ロボスの天才というほかなく、なぜこの旋律が絡み合うのだろうと呆然とするほどのフーガで、高みへと登り詰めていく様子をまたもう一度聞きたいと思わされました。
ブラジル風バッハ一番
ブラジル風バッハ一番
                    アンコールに演奏された、指揮の木許さんが「特別な曲」と話された「ブラジル風バッハ四番 前奏曲」は、言葉にすることができません。一つ一つの音がすすり泣き、重なり、高まり…そこにあらゆる感情が宿された素晴らしい演奏でした。秋の駒場、満席のMMホールはじめての「伝説」と言っても良いような、感動的な時間が訪れました。ある方のご感想を紹介させて頂きます。 「オードブルみたいにいろんな要素が盛り込まれてるけど、ボリューム的にはメインディッシュで、豪華なコンサートでした。チェロ・アンサンブルのための頌歌』以前コンサートで木許さんが曲を振ったときの、あの若いきらきらした音にまた会えた気がしました。チェロってあんなに鳴る楽器なんだなぁ…びっくりした。アンコール『四番』言葉にしたらきっと逃げちゃうから、これだけはあんまり文字に起こさないでおきます。暖かくて、重なった音が柔らかくて、全部包まれてしまった。暖かかったのは曲の力だけじゃなくて、チェリストさん達や木許さんの心がこもっていたからか…涙が止まらなかった。」
終わりに
終わりに
   

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=-1hV6_eDC5w[/youtube]                    

MMランチ・コンサート駒場祭特別回のお知らせ

カテゴリー: KOMCEE建設

  MMランチ・コンサートの駒場祭特別回のお知らせです。 特別回では、MMホールにて、チェロ九本とフルート&ファゴットによるアンサンブルが演奏されます。 全席自由、入場無料ですので、みなさまお誘い合わせのうえ御越し下さい。  
MMホール&コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ
MMホール&コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ
                      【MMランチコンサート × コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ】 2012.11.25(日,駒場祭三日目)14時半開場/15時開演 21KOMCEE MMホール <プログラム> 平井丈一郎:「チェロ・アンサンブルのための頌歌」 ヴィラ=ロボス:「ブラジル風バッハ六番」(フルート&ファゴット) ヴィラ=ロボス:「ブラジル風バッハ一番」   指揮:木許裕介 フルート:北畠奈緒/ファゴット:殿村和也 演奏:コマバ・メモリアル・チェロオーケストラ 後援:ブラジル大使館、日本ヴィラ=ロボス協会、ドミナント室内管弦楽団      

MMランチ・コンサート第0回 - 口笛コンサート@駒場 - レポート

カテゴリー: KOMCEE建設

[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/fuuGWxyKxPk[/youtube]
東京大学(駒場キャンパス)で新しくはじまった、「MMランチ・コンサート」の第ゼロ回が盛会のうちに終了しました。MMランチ・コンサートとは、ランチタイムに21KOMCEEという新しく駒場に出来た建物のホールを使って小編成のアンサンブルを連続企画していくものです。学生たちがサークル単位の壁を越えて音楽発表をする場になれば、そしてまた、ヨーロッパの広場のように、学生から先生方、一般の方々まで、様々な人たちが昼休みにふらりと立ち寄ってコーヒー片手に生演奏に接することのできる場になればと願っています。 第ゼロ回は口笛世界チャンピオンで教養学部一年(休学中/ミドルベリー大学に留学中)の武田くんを中心に、口笛とヴァイオリンを自在に持ちかえる法学部四年の大久保くん、ギターとクアトロを往来する教養学部三年の豊川くんのトリオで、二本の口笛とギターによるアンサンブルを披露して頂きました。 あまり広報が出来なかったにも関わらず、MMホールに次々と人が集まって下さり、用意した座席が埋まるほどでした。 ジブリからベネズエラ音楽、ビートルズまで、口笛の限りない可能性を聞かせて下さる30分間で、終演後には「どうしたらあんな口笛が吹けるの?!」と演奏者たちが質問攻めにあっており、こういうふうに演奏者と聴衆の距離や立場が近いコンサートというのは素敵だなあと改めて思った次第です。石井リーサさんの手になる美しい照明、駒場の豊かな緑、そして天井の高いガラス張りの壁に音が綺麗に響き、また二階や三階からもガラス越しに「なんだなんだ」と覗いてくれる学生が沢山いて、これからのランチ・コンサートもうまくいきそうだという手応えを感じました。
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/FHF2JEFykz4[/youtube]
何より、急な依頼だったのに素晴らしい演奏を聞かせてくれた武田くんには感謝しています。彼とはモーツァルトのフルート協奏曲第二番で共演したことがあり、(余談になりますが、僕がコンサートを指揮した最初は、彼の口笛とやったこの曲だったのです。ソロはもちろん口笛。大久保くんがセカンドヴァイオリントップを弾いてくれていました。)僕にとっても武田くんとの出会いは忘れられない時間の一つであり続けています。 あの日からもう二年以上が経ったのかと思うと俄には信じられませんが、懐かしさと感慨で一杯になりながら、ますます磨きのかかった彼の口笛を客席から堪能させて頂きました。これからも活躍を楽しみにしています! (文章:木許裕介/教養学部四年、MMランチ・コンサート主催者代表)

<MMランチ・コンサート第ゼロ回 -口笛コンサート@駒場->

2012年7月13日(金) 12:15-12:45
主催
東京大学教養学部「21KOMCEEを活用するゼミ」
主催者代表
木許裕介(東京大学教養学部4年)
場所
21KOMCEE 地下1階 MMホール
入場無料、予約不要

演奏

東京大学文科三類入学後、米国ミドルベリ大学に留学。中学三年の時になんとなく始めた口笛は、独学でいつしか世界レベルに。国内外の大会で好成績を治め、中国や米国で行われた国際口笛大会ではティーンの部2連覇を達成、2012年には同大会成人部門で世界3位となる。ジャズ・クラシック・民族音楽など幅広いジャンルを演奏し、過去にはオーケストラ(ドミナント室内管弦楽団、指揮:木許裕介)とモーツァルトのフルート協奏曲第二番で共演も。TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』をはじめ、国内外のメディアに出演。 オフィシャルサイト
  • 大久保卓馬 東京大学法学部 4年(コーラス口笛)
2010年 TOKYO国際口笛音楽フェスティバル出場
  • 豊田健 東京大学教養学部3年(ギター)
ベネズエラ音楽楽団Estudiantina Komaba代表

司会

  • 木許裕介  東京大学教養学部四年
東京大学教養学部地域文化研究学科フランス分科四年。村方千之氏に指揮法を師事し、ドミナント室内管弦楽団など様々なオーケストラで指揮者を務める。2012年は東京交響楽団元コンサート・マスター高木和弘氏がコンサートマスターを務めるプロ・オーケストラにてブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」を指揮、またドミナント室内管弦楽団とオール・ベートーヴェン・プログラム(ピアノ協奏曲第四番など、ピアノ:小林真央/リスト音楽院)によるコンサートを開催。アンサンブル・コモドの東北公演でもクラシック&ポップスステージを指揮。過去にはプロコフィエフ「古典交響曲」、ストラヴィンスキー「プルチネルラ」組曲、ヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ一番」など、古典から現代まで幅広いプログラムに取り組んでいる。吹奏楽指導や青少年のための音楽教室の指揮でも精力的に活動。MMランチ・コンサートを提案し、主催者代表。

演奏動画

  • Carretera
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/D-YvBUX992I[/youtube]
  • あの夏へ
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/Jli9RDVaw0o[/youtube]
  • いつか王子様が
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/42i3a2aodlQ[/youtube]
  • 崖の上のポニョ
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/_u1LNjyelf4[/youtube]
  • 君をのせて
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/JaQ5UVJRcrM[/youtube]
  • 星の涙
[youtube width=”360″ height=”270″]http://youtu.be/2beA8BWhfhg[/youtube]

学生主催企画 企画書例

カテゴリー: KOMCEE建設

学生の皆さんが自主活動で21KOMCEEを利用しようとする場合に、学生支援課学生支援係にイベントの企画書を提出して使用許可の決済をあおぐことになります。これまで開催されたイベントの企画書を示しますので参考にして下さい。 企画書のフォーマットは検討途中ですので、フォーマットについては日付が最新のものを参照して記入してください。
指導教員の方へ
UTask-webのMenuから、休講補講施設利用状況 を参照すると、各施設の利用予約状況を確認することができます。

企画書一覧(pdfファイル)

企画書様式(docファイル)

企画書(様式1) 目的・概要・施設利用日時
企画書(様式2) 構成員・監督責任教職員名
様式更新:2012年7月30日 学生の利用要件に関しては、当ブログの記事「21KOMCEEでの学生主催企画」を参照してください。

東大グランゼコール交流企画

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年7月14日(土) 14:00-20:00
主催
東大グランゼコール学生会議

タイムライン

14:00-16:00 将棋交流企画(402教室) 16:00-18:00 民主主義討論会(302、303教室) 18:00-20:00 懇親会(MMホール、参加費1,000円)
グランゼコール生は授業の一環で日本を訪れています。 卒業後はエリートとしてフランスの将来を担う彼らと、日本文化の紹介やディスカッションを通じて交流しませんか。 ディスカッションのテーマは7月14日のフランス革命記念日にちなみ、「民主主義」です! 国家権力の強弱や官僚制など、異なる政治的土台を背景にディスカッションを行うことは、互いを知ると同時に新しい視点を得る機会となるのではないでしょうか。中国からの留学生も交えたグループ形式で進行予定です。 ファシリテーターとして東大OBの方々、そしてゲストとして作家の真山仁様及び政策研究大学院教授竹中治堅様をお呼びしています。
今まで本郷を中心に開催されてきた本交流企画ですが、今回は駒場が会場ということで教養学部の学生さんの積極的な参加をお待ちしています!

第2回 DNfes

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年7月1日(日) 10:00-18:00
主催
東大DreamNet
場所
21KOMCEE
302、303、401、402教室

企画概要:前半

10:00-13:00 霞ヶ関企画 / 教育企画 / 国際企画/ソーシャルメディアコミュニケーション企画

企画概要:後半

13:30-16:00 ジャーナリズム企画 15:00-18:00 農業企画 / 文理横断企画/ ワークライフバランス企画
※前半/後半で各1企画のみご参加いただけます。 (合計で2つの企画にご参加いただく場合も大歓迎です!)
自分の関心のある分野について、その分野に精通した卒業生の方々と一緒に ディスカッションやワークショップを通じて深く知り・感じ・考えることのできる場。 それが「卒業生と語る会」です。 「卒業生と語る会」が同時開催されるお祭り、「DNfes」が再び開催されます。 企画数が前回の6企画から8企画へと増え、一段とパワーアップしたDNfesにぜひご参加ください! 語られるテーマは、 「霞が関」「教育」「国際」「広告」「ジャーナリズム」「食と農業」「文理横断」「ワークライフバランス」 この8つについて興味・関心のある人、集まれっー!!

KIC交流会 6月

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年6月27日(水)18:00-20:00
主催
KOMABA International Communication運営委員
後援
東京大学教養学部
参加費
600円
留学生と教養学部生との交流ピザパーティーをMMホールで放課後に行っています。 今回の参加者は60名ほどでしたが、1年生の参加が多く見られました。 KIC交流会は7月もピザパーティーを企画しています。 皆さんのふるってのご参加をお待ちしています!

過去のイベント

MMランチ・コンサート第ゼロ回:「口笛コンサート@駒場」

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年10月より、21KOMCEEのMMホールを活用し、ランチタイム(12時10分〜13時)の間に定期的にコンサートを開催していくことが決定しました。 天井が高く、ガラス窓から光が降り注ぐMMホールにてランチタイムにコンサートを行う事で、カジュアルに芸術へ触れることの出来る文化交流の場を作るとともに、サークル単位を超えた学生の音楽発表の場を作ることを目的としています。コンサートは30分程度、全回無料、予約不要と気軽なものですので、カフェテリアの珈琲を片手に、MMホールを満たす音楽に耳を澄まして頂ければと思います。 そして、MMランチ・コンサートのキックオフ・イベントとして、「口笛コンサート@駒場」を行う運びとなりました。MMランチ・コンサートの第ゼロ回と位置づけられるこのコンサートでは、最も原始的な楽器の一つである「口笛」を取り上げます。 我々が一般的に考える「口笛」とは次元の違う、楽器としての「口笛」の魅力と可能性に驚くこと間違いなしですので、皆様お誘い合わせのうえ、7月13日(金)のお昼にはMMホールにお越し下さいませ。
2012年7月13日(金) 12:15-12:45
主催
東京大学教養学部「21KOMCEEを活用するゼミ」
主催者代表
木許裕介(東京大学教養学部4年)
場所
21KOMCEE 地下1階 MMホール
入場無料、予約不要
2012年帰国中最初の(もしかしたら最後の)一般公開の口笛ライブです。ランチコンサートとあって時間は短いですが、音響の良いホールで、ゲストの口笛奏者を招いての演奏となります。ジブリやディズニーなど耳になじみのある曲ばかり! 既に聴いたことがある方も、初めて口笛音楽を聴く方も、お昼休みを利用してぜひ聴きに来てください。 (演奏者代表:武田裕煕)

演奏者

  • 武田裕煕 Middlebury College 2年(リード口笛)
  • 2012年 国際口笛大会 成人男性部門総合3位 2010/2011年 国際口笛大会 ティーン部門総合1位
  • 大久保卓馬 東京大学法学部 4年(コーラス口笛)
  • 2010年 TOKYO国際口笛音楽フェスティバル出場
  • 豊田健 東京大学教養学部3年(ギター)
  • ベネズエラ音楽楽団Estudiantina Komaba代表

曲目

君をのせて、いのちの名前、いつか王子様が、星の涙 他

コンサートの様子

[nggallery id=3]
本コンサートは冬学期以降同会場で予定されているランチ・コンサートシリーズのキックオフイベントとなっております。 10月に開催される予定の第一回コンサートからは、演奏者公募のもと、室内楽や小編成のアンサンブルを展開していくことが決定しておりますので、今後ともコンサート情報をチェックして頂ければと思います。

「せのびゼミナール2」開催します!

カテゴリー: KOMCEE建設

今年1月29日に21KOMCEEで学生有志により開催され大変ご好評いただいた小学生向けワークショップ せのびゼミナールを再び開催します! 2012年7月8日(日)13:00-17:00 (受付開始12:30-)
主催
せのびゼミナール実行委員
後援
東京大学教養学部
場所
東大駒場キャンパス 21KOMCEE(理想の教育棟)
イベント詳細・申し込みはこちらのサイトから。

Announcement: Meetings to exchange opinions on peace and disarmament with foreign students

Hi, I’m Seiwa Honda, a sophomore student in University of Tokyo. In June, we held meetings to exchange opinions on peace and disarmament with foreign students. Brief Summary is following. We belong to a seminar called ” What we can do for peace as students in University of Tokyo.” Discussing peace and disarmament in classes, we came to want to know how foreign students, who have been brought up in various countries and surroundings, think peace, war and disarmament. This is the aim for this exchange of opinions.You don’t need to have special experience or knowledge about war. All you need is passion for peace! @Date: July 11(Mon.), 13(Wed.), 14(Thu.), 15(Fri.) each day starts at 18:30 You can come any day and any time! @Gathering Spot: University of Tokyo Komaba Campus the main gate (Move to a classroom after everyone gathers.) @How can you take part in? You just send an e-mail at peace2012@komex.c.u-tokyo.ac.jp Please inform of name, birth, the day you want to participate in, e-mail address or phone number. Subject line must be ” Attendance at exchange of Opinions”! We hope many people come to this meeting and talk about peace!

全学体験ゼミ:ソーシャルビジネスの為のプロジェクトマネジメント

カテゴリー: KOMCEE建設

21KOMCEEの特徴を活かした授業の様子を紹介します。

ソーシャルビジネスの為のプロジェクトマネジメント ―創造的協働に向けたチームビルディング ―

授業科目
全学体験ゼミナール
開講時期
2012年夏学期
担当教員
坂口菊恵(教養学部教養教育高度化機構)
授業協力者
安部敏樹(総合文化研究科 広域システム科学系修士2年)
ジュニアTA
小林杏奈(工学部都市工学科都市計画コース4年)
本ゼミでは「社会の現在と未来」を縦断的に考えて実際に行動に移すことを実践してもらいます。大学の授業では“社会のこれまで”を考えることが多いので、その部分は通常の授業とは異なるかもしれません。21世紀のこの先を担う皆さんが、持てるアイディアを実際に行動に移すときに必要な視点・スキル・仲間などを得られればと思います。

第1部:個別の社会問題のレビュー

社会全体の流れと各論としての社会問題・行政課題の紹介を行い、今後の社会の価値観の変化に対しての切り口を提供します。各自が社会問題の切り出し方を考える視点を養うことを目的とします。 各チームでテーマとするトピックに関して下調べを行い、プレゼンを行います。 全員が必ず一度はプレゼンに参加します。チーム全員で一つのストーリーを持った、聴く人を惹きつけるトークにまとめることが要求されます。 プレゼンは一度の授業時間内に2つのチームが競うコンペ形式で行われます。 授業時間の後半は、チームビルディングの方法についてレクチャーを行います。

第2部:社会課題への協働

地域へのフィールドワークの仕方や、扱う問題の関係者へのアポイントメントの取り方を学び、社会問題の現場に参加します。 またスタディツアー作成・新規事業提案作成など、社会に対しての問題提起を行っていきます。 成果物としては以下のものを想定していますが、学生の希望も聞いた上で決定します。
  • 学会での発表
  • スタディツアーの実施
  • 社会問題のレポートを集めるサイトへの記事の提供
  • 社会に対しての議論の設定(webサービスを構築予定)

Hills Breakfast Vol.15

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年4月24日(火)8:00-8:55
主催
森ビル+六本木ヒルズオフィスワーカー
場所
六本木ヒルズ ヒルズカフェ/スペース
Hills Breakfastでの東大生登壇No.2は、TEDxUTokyoを企画した工学部マテリアル工学科の本多正俊志(ほんだ・まさとし)君です。

本多正俊志

新しい大学-大学周りの新たな可能性-というタイトルでトークを行いました。 大学と社会の連携に希望を抱き、日本の将来を担うコミュニティーの形成を目指し東大にてアメリカの国際カンファレンスTEDのライセンスに基づいたTEDxUTokyoを立ち上げています。5/20(日)に開催予定。 学業の他、複数の国際的活動に関わっています。

Hills Breakfast Vol.14

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年3月29日(木)8:00-8:55
主催
森ビル+六本木ヒルズオフィスワーカー
場所
六本木ヒルズ ヒルズカフェ/スペース

PechaKuchaとは?

PechaKucha Nightは2003年2月、若手デザイナー達が集い自分たちの作品を発表する場として東京でスタートしました。その後、さまざま分野で活躍する有志がアイディアを発表する場として発展し、現在では世界500以上の都市で開催されています。 PechaKuchaでは、スピーカーは1枚あたり20秒のスライド×20枚で講演をまとめなければなりません。とても短いですが、すべてのトークをこの簡潔なフォーマットに落とし込むことによってテンポのよい活き活きとしたイベントを展開することが可能になっているのです。

Hills Breakfastとは?

森ビルと六本木ヒルズのオフィス・ワーカーが月1回開催する朝のPechaKuchaで、「毎日を楽しくする。社会を元気にする。世界を明るくする。」をテーマに、さまざまな人がアイディアや活動を発信しています。 東京大学教養教育高度化機構では、東京大学学生のEarly Exposure(社会や専門教育に早く触れさせる)の一環として、また東京大学と森ビルとのコラボレーション・プロジェクトの一環として、選抜された学生のHills Breakfast参加を応援しています。 その第一弾として、教養学部四年の木許裕介(きもと ゆうすけ)が「指揮という芸術、何だか分からないもの」というテーマで、ピアノを用いた実演を交えながら、スピーチを行いました。

スピーカー紹介

木許裕介

東京大学教養学部地域文化研究学科フランス分科四年に在籍する一方で、村方千之氏に指揮法を師事し、指揮を学んでいます。 2011年より一年間休学し、立花隆氏の助手を務めるほか、自身で創設したドミナント室内管弦楽団やコマバ・メモリアル・チェロオーケストラとストラヴィンスキー「プルチネルラ」組曲やヴィラ=ロボス「ブラジル風バッハ一番」を演奏し、現在も年に数度の演奏会を企画・開催しています。 また、2011年にはプロ・オーケストラ(SEN室内オーケストラ)とプロコフィエフ「古典交響曲」を、2012年には東京交響楽団コンサート・マスターの高木和弘氏がコンサートマスターを務める同オーケストラとブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」を演奏しました。現在、都内の中学校の吹奏楽指導にも携わっているほか、青少年のための音楽教室の指揮にも精力的に関わっています。

第一回女子イベント ~「憧れ」に、出会う~

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年5月26日(土)13:00-17:30

第一部 13:00-

主催
The University of Tokyo Women Organization (UTWO)
場所
21KOMCEE レクチャーホール
東大卒の女性社会人の方4名によるパネルディスカッション ※原則として東京大学に所属する女子学生が対象ですが、一般の方もご参加頂けます。

第二部 15:30-

主催
東京大学男女参画室
場所
駒場生協食堂2階
東大卒の女性社会人の方50名と東大女子学生の交流会 ※途中参加可能

5月26日、自分だけのロールモデルと出会う場を共有してみませんか?

UTWOは、「東大女子の可能性を最大化すること」を理念とした団体です。

これからの将来を考えた時にキャリアのこと、結婚・出産・育児のこと 気になることは沢山あるのではないでしょうか。 今回、家庭を持ちつつ仕事をされている方、 子育てに専念されている方、 趣味に力を入れている方 今まさにキャリアの転換期にある方など、 様々な経歴を歩んでいる先輩方がいらっしゃいます。 人生の少し先を歩んでいる先輩と自分の将来について考えてみませんか?

TEDxUTokyo学生スピーカー・コンペティション

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年5月1日(火)16:20-20:00
主催
TEDxUTokyo実行委員
場所
レクチャーホール
5月20日に本郷キャンパス伊藤謝恩ホールで開催されるTEDxUTokyoで社会人のスピーカーと並んでスピーチを行う、学生スピーカーを選出するコンペティションを行いました。

タイムライン

16:20-16:30  Guidance …簡単な説明と、審査員の皆様からの一言 16:30-17:30  1st Talk Session 17:30-17:40  Interval 17:40-18:20  2nd Talk Session 18:40-20:00  結果発表会(@2食)…学生スピーカーコンペティションの結果発表及びスピーカー・審査員・オーディエンスによる懇親会。(結果発表会参加費1000円)

審査員

堀井秀之様(東京大学教授・i.schoolエグゼクティブ・ディレクター・TEDxUTokyo顧問) 各務茂夫様(東京大学教授・産学連携本部事業化推進部長) 真山仁様 (作家・代表作:『ハゲタカ』『コラプティオ(直木賞候補作品)』)

KIC交流会

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年5月11日(金)18:00-20:00
主催
KOMABA International Communication運営委員
後援
東京大学教養学部
今年最初のKIC交流会です。 テーマは特に設定せず、ピザを食べながら自由に話したいことを話したい言語で話したい相手を見つけて語り合います。 今回は80名以上に参加いただきました。うち留学生は30名ほどでした。 江川雅子国際化担当理事も参加され、学生達へのメッセージをいただきました。

ピザパーティーの様子

[nggallery id=2]
みなさんこんにちは。KIC主催者の経済学部3年の金と申します。 現在東京大学は国際化に向けて動いておりますが、まずは身近なところから国際化にむけてなにかと思い企画させていただきました。今後はより広く深い意味で東京大学が国際化していけるよう運営を進めていきますのでぜひ一度足を運んでみてください。 また運営委員も募集しておりますので、興味のある方は下記のフォームよりメッセージをいただければ幸いです。
[si-contact-form form=’1′]

KOMABA International Communication

カテゴリー: KOMCEE建設

2011年12月16日(金)18:15-20:15
主催
KOMABA International Communication運営委員
後援
東京大学教養学部
場所
MMホール
KOMABA International Communication(KIC交流会)は、東京大学に通う留学生と日本人学生との交流の機会をつくるために企画されました。 これまでコミュニケーション・プラザ和館でPizza Partyを開催してきましたが、今回より21KOMCEEのMMホールで開催できるはこびとなりました。 KIC交流会はこれからも定期的に開催していく予定です。学部生のみならず院生、研究員、教員の皆さまもふるってご参加下さい。

ピザパーティーの様子

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リディラバ ツアー報告会

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年2月12日(日)15:00-18:00
主催
リディラバ
場所
MMホールオープンスペースアリーナ

プログラム内容

団体紹介 ツアー報告 ワークショップ (懇親会) 2011年下半期に開催したツアー、企画の中から7つのツアーについて、報告会を開催しました。学生のみならず、社会人の方々もツアーも報告会を訪れました。
  • 中之条アートツアー
  • 第2回二本松ツアー
  • 第2回三宅島ツアー
  • 林業ツアー
  • 農業ツアー
  • 震災ツアー
  • 修学旅行事業

リディラバとは?

東大生を中心に約150名の学生・社会人が関わり、企画・運営を行っている団体です。 「社会の無関心を打破する」という理念のもと、日常ではあまり注目されない社会的な問題をテーマに「スタディツアー」を企画しています。 これまでに、八ツ場ダムツアー、二本松地域振興ツアー、三宅島復興支援ツアー、アート振興ツアーなど20以上のプロジェクト実績があります。 リディスタとは、リディラバの中でも教育関係、修学旅行事業に特化した団体です。

リディラバ 定例ミーティング

カテゴリー: KOMCEE建設

2011年12月24日(土)8:00-12:30
主催
リディラバ
場所
オープンスペースアリーナ
リディラバの定例会を行いました。 リディラバは、21KOMCEE利用に先だって森ビル(株)にて活動意義の説明を行う機会をいただきました。
リディラバは、十分に認知されていない社会問題を題材にスタディツアーを企画・運営する任意団体です。「社会の無関心の打破」を理念に掲げながら、様々な分野で事業提案や政策提案を組み込んだ質の高いスタディツアーの実施を進めています。

DNfes(東大DreamNet語る会)

カテゴリー: KOMCEE建設

2011年3月4日(日)10:00-18:00
主催
東大DreamNet
場所
MMホール、オープンスペースアリーナ、レクチャーホール

タイムライン

1000-1010 オープニング 1010-1230 国際貢献 / 社会起業 1300-1500 グローバル人材 / ジャーナリズム 1530-1745 教授 / ソーシャルメディアコミュニケーション 1745-1800 クロージング

各企画紹介

  • メディア企画(統括:辻井耀)
  • 「なんかマスコミの報道って信用できない」と思っているあなた。 “なんとなく”でそんな不信感を抱いていませんか。 報道は何のために、そして誰のために。 発信者と受け手、双方の立場からジャーナリズムに向き合い、その今を、そしてこれからを考えます。
  • 国際貢献企画(統括:梅山彩)
  • 国際貢献とは何か、どうすれば真の国際貢献ができるか、考えたことはありますか? この企画では、多様な国際貢献の仕方や国際貢献に対する価値観などについてお話を聞き、議論します。国際貢献に漠然と憧れをもつだけでなく、その意義を現実的に考え行動に移すきっかけとしてほしいです。
  • グローバル人材企画(統括:滝沢頼子)
  • 「とりあえず英語はでやっておいた方がいい気がする…!」そんなこと思ってませんか。 グローバルに活躍するって何なんでしょう。今どうしたらいいんでしょう…? この企画ではグローバルに活躍される方のお話しをお聞きし そもそもグローバル人材になる必要があるのか、またなるために何が必要で、自分たちは今後どうしていくと良いのかを考えます。
  • 教授企画(統括:山田慎二)
  • 研究者志望のあなた。 なんとなく学問が好きで、研究者になりたいと思っているとしても、将来どこでどんな風に働くかを考えたことがありますか? 今回の企画では、「大学教授」について考えます。 東大卒の現役教授と、大学教授ならではの「研究者かつ教育者」という立場について語り合う中で、あなたの将来を考える一助になればと思います。
  • 本当は身近な社会起業企画(統括:壹岐朔巳)
  • チームで、社会に埋もれた問題を発見し、問題を逆手にとって価値を生み出すプロジェクトに挑戦しませんか? どんな問題を選ぶか、どんなアプローチをかけるか、何を価値と定義するか、全て自由です! 各チームは、その問題に精通した卒業生の方とプロジェクトを洗練していきます。
  • ソーシャルメディアコミュニケーション企画(統括:桃井菜穂)
  • マスメディア広告が停滞する中、ソーシャルメディアの普及により広告は大きく変化しています。 そんな中、何が消費者の心を動かすのか? そのためにソーシャルメディアをどう使えばよいのか? これから社会に出る学生と、既に広告を作って来た卒業生の方と、共に広告コミュニケーションの未来を考えましょう。

21KOMCEEで開かれる授業紹介(東京大学新聞2012.4.17号より)

カテゴリー: KOMCEE建設

21KOMCEEで開かれる授業のいくつかをご紹介致します。 詳しくは2012年4月17日の東京大学新聞に掲載されております。   1.全学体験ゼミナール「21KOMCEEを活用する学生ワーキンググループ」 開講場所:K303/開講時限:金曜五限 担当教員:坂口菊恵(教養学部教養教育高度化機構) 司会:木許裕介(教養学部地域文化研究学科フランス分科四年) ★21KOMCEEという場所を利用するルールを考えつつ、Early Exposureをキーワードに、受講生が様々なイベントを実際に企画・運営していくことを目的とする。   2.全学自由研究ゼミナール「環境の世紀18 これから食とエネルギーの話をしよう@KOMCEE」 開講場所:K302/開講時限:火曜五限 担当教員:飯田誠(先端科学技術研究センター) 授業責任者:森翔瑚(教養学部理科一類二年) ★環境問題に取り組む学生団体、環境三四郎が企画・運営。専門家の講義とグループワークを組み合わせ、インプットした知識を消化して自分の意見を発信する力を身につけることを目指す。     3.全学体験ゼミナール「Groupwork of Future -テクノロジーでつくる未来の教室-」 開講場所:K201/開講時限:月曜五限 担当教員:苗村健(情報理工学系研究科) ★21KOMCEEが常備するデジタル機器や無線インターネット環境を活かし、最新のデジタル技術を用いたグループワークを行う。理系文系問わず、コンピューターを使う力を鍛えることも目標。   4.全学自由研究ゼミナール「科学コミュニュケーション -新しい時代の新しい教養」 開講場所:K201/開講時間:木曜三限 担当教員:山邉昭則(教養学部教養教育高度化機構) ★前半五回は講義、後半は学生たちがグループを作って議論し、プレゼンテーションを行う。 対象は理系に限らず、科類の異なる学生同士が自ら学び合うことを通じて、科学コミュニケーションの現在と未来についての幅広い議論を行う事を目標とする。  

東大卒業生による連続講義 第6回 森稔氏 講演会

カテゴリー: KOMCEE建設

2011年12月19日(月)18:30-20:30
主催
東京大学(赤門学友会・卒業生室)、東大DreamNet
場所
レクチャーホール

築けていますか、あなたの未来~森稔氏と考える都市の在り方、あなたの人生~

21KOMCEE建築実現のために、多大な寄付をしてくださった森ビル株式会社 代表取締役会長・森稔(もり みのる)氏。
森氏は1959年に東大教育学部を卒業、同年に森ビル株式会社を設立され、六本木ヒルズ・表参道ヒルズなど日本のみならず世界を代表する建築物を、明確なビジョンを持って手がけてこられました。長年東京の都市計画に関わり大きな成功を収められている森稔氏に、ご自身の人生やキャリア選択、信念、これからの都市の在り方などについてお話しいただきました。

サイエンスカフェ@駒場(研究プロデュースゼミ)

カテゴリー: KOMCEE建設

2011年12月3日(土)14:00〜17:00
主催
東大DreamNet、BAP
場所
オープンスペースアリーナ
形式
1時間程度のサイエンスカフェを2回行います。

科学の話、むずかしい?

興味があってせっかく大学に入ってきたのに、講義の内容は難しいし… 研究なんて全然手の届かない、全く別世界なところなのかも…なんて感じている日々。 コーヒーを片手に気軽に科学の話… そんな場があったこと、あなたは知っていましたか? この度、私たちは駒場でサイエンスカフェを開催することになりました。 サイエンスカフェとは、お茶を片手に科学の話を聞く場のことで、 普段机に向かって学ぶような内容を、カフェのような空間で気軽に聞くことができます。 さらに今回は普段から科学を一般の人に伝える活動をしている、 BAP(Back to Alma mater Project)という大学院生による学生団体の協力のもと、 専門的な知識を必要としないレベルで「一見むずかしい」研究内容のことを 駒場の皆さん向けにわかりやすくお話ししてくれます。 普段はなじみのない研究室でおこなわれていること、 そこにいる人、その思いをみなさんと年齢の近い研究に携わっている方から感じられる貴重な機会です。 研究者になりたいと思っている方はもちろん、 そうでない方も、この場で話を聞くことが科学へのさらなる理解・関心を湧き起こすものとなるはずです。 せっかく大学に来たことだし、とりあえずでも科学のことに触れてみませんか?
  • 講演者:伊與木健太 氏
  • 工学系研究科化学システム工学専攻 『~小さな孔から世界は広がる~』 「ゼオライト」という物質を聞いたことはありますか? 意外と身近なところで使われていたりするのです。 分子サイズの空間をもつ多孔質材料の世界を覗いてみましょう。
  • 講演者:田中啓 氏
  • 工学系研究科システム創成学専攻 『CCS~二酸化炭素を地下に埋める~』 CO2を地下に回収・貯蔵する技術が現在注目されています。 資源工学、という分野があるのをご存知だったでしょうか。 carbon dioxide capture and storage=”CCS” という新しい技術に触れてみませんか?

21KOMCEEでの学生主催企画

カテゴリー: KOMCEE建設

21KOMCEEの地下1階はイベント・スペースとして設計されています。 学生活動を主たる目的として建設されたものではないため、学生企画のすべてに利用許可が下りるわけではありません。 ただし、学生を主体とした活動でも、一般学生に対して開かれた公共性が高いと認められたイベントに関しては施設利用許可が下りる可能性がありますので、企画書を作成してアドミニストレーション棟学生支援課学生支援係に相談してみて下さい。
  • サークル内の打ち合わせ、内輪のワークショップ、イベントのために施設利用の予約をすることはできません。
  • 音楽等のパフォーマンスに関しては、練習のためにスペースの利用予約をすることはできません。発表会の開催は許可される可能性がありますので相談してください。
  • 土日・休日・授業期間外の施設利用に関しては教員の立ち会いが必要です。イベントにかかわる責任教員に立ち会いを依頼して下さい。
  • 学生主催イベントのために21KOMCEEを利用する際には、主要な実施者が教養学部所属の学生であることが前提です。

「グローバル・スタディーズ・プログラム」および「新分野開拓をめざす若手研究者育成プログラム」帰国報告会 (飛び出せ東大生!)報告書

報告書 全63ページ
2010年11月22日(駒祭期間中)に開催した若手研究者による報告会の内容をまとめた報告書です。

報告会

GlobalStudies
  • オランダ漫遊記ーその社会と教育ー
  • 理系研究者の研究とは?
  • 海外で得る考え方の”転換”は研究にも役立つ
  • 精子の仕組みをナノデバイスへ 駒場→NY→駒場→NY
  • マケドニア、ベルギー、アメリカ合衆国ー「百聞は一見にしかず」
  • 中南米における生物多様性調査:マメゾウムシを探して
  • イギリス・障害のある親の子育てと家族ケアを行う子ども

ラウンドテーブル

海外での研究活動、視察の意義

奈尾先生 復習記事

カテゴリー: ZEBLOG

先日の奈尾先生の講義について復習して行きたいと思います。建築意匠を専門にされているということで、オランダの建築・デザインに関する様々なことを話して下さいました。その中でも特に熱く語られていた、デザインが発展する土壌がいかに整備されてきたかという点についてまとめようと思います。

インフラストラクチャー

オランダは国土のおよそ1/4が海面下に位置しており、そのうちのほとんどはポルダーと呼ばれる干拓地です。オランダのランドマークとなっている風車はそれらの土地から水を汲み出すための装置で、これが止まると大変なことになってしまいます。治水は水管理委員会という独立行政機関によって行われており、海岸地域の国土は基本的に国や自治体が管理している国有地です。運営は国営事業として行われ、土地を賃借制度という形で管理し用途を画一的に指定することが出来ます。これによってオランダの整った景観が実現されており、またこのシステムこそオランダがデザインを基幹産業として育成することに成功した鍵でした。農業や工業といった産業を主と出来なかったオランダがデザイン先進国として発展することができた背景には、こういったインフラの整備が欠かせなかったのです。

産業クラスタ

クラスタとは英語で群れを意味する言葉です。産業クラスタとはその名の通り、ある産業に関して中小企業から大企業、さらには大学などの研究機関などがひとつの群れのように集積したシステムのことです。たとえばアメリカのシリコンバレーはIT産業クラスタとして有名ですが、これは生態系ピラミッドのようなシステムを構成しています。ピラミッドの裾野では無数のベンチャー企業が独自の技術や発想を武器に熾烈な競争を繰り広げ、その上にはマイクロソフトやグーグルなどの大企業が位置します。ベンチャーの開発を支援しているのがベンチャーファンドであり、ベンチャー企業は専らこれらのファンドから出資を受けて成立しています。そして結果を出して成功したベンチャーは大企業に買収されて新しいイノベーションに貢献したり、はたまたアップルのように大躍進を遂げることもあります。そしてファンドは利潤を回収し、つぎのベンチャーに出資するというような構造です。

オランダのデザイン産業

そしてオランダのデザイン産業にも同じようなクラスタが形成されています。中身はというと、自治体がある区画に対して都市計画を立てるとき、その設計やデザインの仕事を国内の若手デザイナーや建築家へと斡旋するというのが基本的な構造です。 もちろん一方で国は、国内外で活躍できるデザイナーを育成するための支援制度を整え、デザインスクールなどへの補助を行います。そして公共事業のような雇用を創出することによって、新進気鋭のデザイナーが活躍する場所を提供するのです。これは先ほど述べたように国や自治体が土地を管理しているからこそ可能になるのであり、日本でこのシステムが実現できるかと言えば相当に難しいのではないかと思います。 こちらのサイトは、ライデン大学医療センターで用いられている照明技術を紹介しています。

サステイナビリティ

政府主導で回っているこのサイクルはもちろん完全なものではありません。若手デザイナーから成長し、ある程度名が売れるようになれば、自分の作品を自由に作ることが出来ないということに不満が出てきますし、雇用は若手デザイナーへと斡旋されるので、国内での仕事がなくなり必然的に国外へと活動の場を移していくようになります。とはいえ、このような循環型の産業構造も、サステイナビリティを体現したひとつの形だと考えることができるのではないでしょうか。奈尾先生の考えるサステイナビリティは、人工物のサイクルと自然物のサイクルをそれぞれ完全に独立させるというもので、今まで私たちが漠然と捉えていたものとは少し違った視点を提示されました。その話をされていたときの文脈はエネルギーの循環や食料の問題に関してのトピックでしたが、このような産業構造のサステイナビリティを考える上でも重要になってくることだと思います。 今回の講義では、都市計画の変遷をたどり、オランダ・モデルの都市計画の概要が説明されました。都市環境を持続可能なものとするためには、その空間で行われるサイクルも持続可能なものでなければならず、そのサイクルには産業も含まれる。今のオランダのデザイン産業がそのようなサイクルの中で出来上がったものだということには驚きました。人口も不動産の所有形態も違う日本で、このケースを直接あてはめることは難しいかもしてませんが、日本に持続可能な産業クラスタを形成するためにはどうすればよいのか考えてみたいと思います。 (文責:永島)

「せのびゼミナール」開催のお知らせ

カテゴリー: KOMCEE建設

2012年1月29日(日)午後1時から理想の教育棟において、学生が企画・運営を行うプログラム「せのびゼミナール」が開催されます。 詳しくは、せのびゼミナール公式サイト をご覧ください。
せのびゼミナール ポスター
せのびゼミナール 広報ビラ

住先生講演 予習

カテゴリー: ZEBLOG

今回講演していただく住明正教授は地球温暖化問題に中心的に取り組んでこられました。 そこで、地球温暖化が引き起こされる流れとそれに対する人間社会の変遷をまとめたいと思います。

温暖化における7つのフェーズ

まずは「1.社会経済活動、GHG(Green house gas: 温室効果ガス) 排出」のフェーズで、人間社会の社会経済活動によって温室効果ガスの排出量が決まる(温室効果ガスの種類によっては自然由来のものも存在する)。 そして「2.炭素循環、大気中濃度」のフェーズに入り、大気中に排出された温室効果ガスは、大気、海洋中を循環しながら、大気中濃度を決定していく。 大気中の炭素濃度によって、「3.温暖化・気候変動」フェーズにあたる気温の上昇、海面上昇が引き起こされる。 その後、「4.人間社会、生態系への影響」フェーズに入り、海抜の低い地域の水没や種の絶滅、食料生産や水資源の変化といった影響が現れる。 それらに対し、5.から7.は人間社会の対応があげられている。「5.適応策」では、温暖化・気候変動した世界にあわせて適応するための政策や技術を進めることを示す。高潮や洪水に対する護岸整備、品種改良や遺伝子組み換えによる温暖化した気候下での作物の確保などがあげられる。 また「6.緩和策」は、温室効果ガスの排出量を抑制し、CO2 濃度を小さくするための政策、技術の導入を示し、省エネや再生可能エネルギーの推進、森林管理による吸収源の確保、排出量取引などの経済メカニズムの活用等が含まれる。 「7.社会システム」は、企業の取り組みや、人々の社会的価値観やライフスタイルの変化、教育など、国民・社会のあり方を表すフェーズである。社会の変容を経てまた1.のフェーズに入り、温室効果ガスの排出量は随時変化していく。 このように、これらの7 つのフェーズのサイクルを時間と共にらせん状に繰り返していきつつ、低炭素社会へと向かっていくものとする。

研究者による研究課題のマッピング

ここで設定した7つの各フェーズに対して、現在の研究課題として出てきているものをキーワードとしてまとめたものが次の図である。 この温暖化マッピングを用い、温暖化研究の課題と研究成果に関する俯瞰的な分析が行われている。

各フェーズにおける代表的な科学的問い

  1. 人為的な GHG 排出量と発生源はどう推移していくか?
  2. 炭素の大規模循環、濃度変化や、温暖化に関わる環境変動要因はどうなっているか?
  3. いつどのような気候変化、海面水位変化を生じるか?
  4. どのレベルの気候変化で人類・生態系に危機が生じるか?
  5. どのような適応政策が必要か?技術によってどこまで適応可能か?
  6. どのような緩和政策が必要か?技術によってどこまでGHG 排出を抑制できるか?
  7. 価値観、ライフスタイルをどう変化させられるか?
出典:IR3S/TIGS 叢書No.2「サステイナブルな地球温暖化対応策」 (文責:山口ゆ)今回講演していただく住明正教授は地球温暖化問題に中心的に取り組んでこられました。 そこで、地球温暖化が引き起こされる流れとそれに対する人間社会の変遷をまとめたいと思います。

温暖化における7つのフェーズ

まずは「1.社会経済活動、GHG(Green house gas: 温室効果ガス) 排出」のフェーズで、人間社会の社会経済活動によって温室効果ガスの排出量が決まる(温室効果ガスの種類によっては自然由来のものも存在する)。 そして「2.炭素循環、大気中濃度」のフェーズに入り、大気中に排出された温室効果ガスは、大気、海洋中を循環しながら、大気中濃度を決定していく。 大気中の炭素濃度によって、「3.温暖化・気候変動」フェーズにあたる気温の上昇、海面上昇が引き起こされる。 その後、「4.人間社会、生態系への影響」フェーズに入り、海抜の低い地域の水没や種の絶滅、食料生産や水資源の変化といった影響が現れる。 それらに対し、5.から7.は人間社会の対応があげられている。「5.適応策」では、温暖化・気候変動した世界にあわせて適応するための政策や技術を進めることを示す。高潮や洪水に対する護岸整備、品種改良や遺伝子組み換えによる温暖化した気候下での作物の確保などがあげられる。 また「6.緩和策」は、温室効果ガスの排出量を抑制し、CO2 濃度を小さくするための政策、技術の導入を示し、省エネや再生可能エネルギーの推進、森林管理による吸収源の確保、排出量取引などの経済メカニズムの活用等が含まれる。 「7.社会システム」は、企業の取り組みや、人々の社会的価値観やライフスタイルの変化、教育など、国民・社会のあり方を表すフェーズである。社会の変容を経てまた1.のフェーズに入り、温室効果ガスの排出量は随時変化していく。 このように、これらの7 つのフェーズのサイクルを時間と共にらせん状に繰り返していきつつ、低炭素社会へと向かっていくものとする。

研究者による研究課題のマッピング

ここで設定した7つの各フェーズに対して、現在の研究課題として出てきているものをキーワードとしてまとめたものが次の図である。 この温暖化マッピングを用い、温暖化研究の課題と研究成果に関する俯瞰的な分析が行われている。

各フェーズにおける代表的な科学的問い

  1. 人為的な GHG 排出量と発生源はどう推移していくか?
  2. 炭素の大規模循環、濃度変化や、温暖化に関わる環境変動要因はどうなっているか?
  3. いつどのような気候変化、海面水位変化を生じるか?
  4. どのレベルの気候変化で人類・生態系に危機が生じるか?
  5. どのような適応政策が必要か?技術によってどこまで適応可能か?
  6. どのような緩和政策が必要か?技術によってどこまでGHG 排出を抑制できるか?
  7. 価値観、ライフスタイルをどう変化させられるか?
出典:IR3S/TIGS 叢書No.2「サステイナブルな地球温暖化対応策」 (文責:山口ゆ)

1月19日(第12週)住明正先生January 19, 2012 Talk by prof. Akimasa Sumi

カテゴリー: ZEBLOG

住 明正 Sumi, Akimasa
東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクター・教授

昭和46年6月 東京大学理学部物理学科卒業 昭和48年3月 東京大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程終了 昭和48年4月 気象庁東京管区気象台調査課 昭和50年4月 気象庁予報部電子計算室 昭和54年2月 ハワイ大気象学教室助手 昭和56年5月 気象庁予報部電子計算室 昭和60年4月 東京大学理学部地球物理学教室助教授 平成3年7月  東京大学気候システム研究センター教授 平成7年10月 東京大学気候システム研究センターセンター長を兼任(16年3月まで) 平成17年8月 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクターを兼任 平成18年11月 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構・教授(特任教授を兼任)

主著
  • 1986:気象における予測、予測(朝日出版社)
  • 1993:気候はどう決まるか(岩波書店)
  • 1999:地球温暖化の真実(ウェッジ選書)
  • 2007:さらに進む地球温暖化(ウェッジ選書)
参考資料
In this highly developed century, you have to watch out not only for sustaining relationship with your girlfriend but for sustainability science in order to sustain your global families. Why don’t you think about sustainability science, the very key academic theory to survive our earth as well as your precious relationships in the 21 KOMCEE with us? Sumi Akimasa, a chief director and professor of Integrated Research System for Sustainability Science, or IR3S is going to lecture on global warming and sustainability science. When we’re casually talking about global warming, it’s very easy to think about the emissions of CO2 by automobiles or at industrial factories. There are many issues we have to tackle immediately, and this is just one of them. Before you participate in this lecture, it’s very helpful if you consider about a particular issue, the reason why it matters, and available solutions in the future or daily activities for individuals. Also, what is your impression on sustainability science when you hear it for the first time? Linking the lecture, you’ll be able to find the difference between your thought/the first impression and the fact comes from scientific surveys, researches and his speech. Maybe, you can find how to sustain good terms with your friends. We all hope you to learn about sustainability with us in this great opportunity. (Report by Kitamura)

大倉氏講演 予習

カテゴリー: ZEBLOG

今回講演していただく大倉紀彰氏が水俣病発生地域の「環境を切り口とした地域復興」を担当しておられるということで、水俣市が目指す「環境モデル都市」についてまとめたいと思います。

環境モデル都市

「環境モデル都市」とは「高い目標を掲げて、低炭素社会にしていくための先駆的な取り組みにチャレンジする都市」のことです。現在のところ全国で13都市が環境モデル都市として選定されています。(北九州市、京都市、堺市、横浜市、飯田市、帯広市、富山市、豊田市、下川町、水俣市、宮古島市、檮原町、千代田区) 各都市でさまざまな取り組みが行われていますが、ここでは水俣市が行っている取り組みを紹介します。

水俣市の主な取り組み

  • 環境ISOの推進
  • エコショップ認定制度
  • 地区環境協定制度
  • 市民の森づくり
  • ごみの減量、高度分別
  • エコタウン
  • 再生可能エネルギーの活用
  • 環境学習都市づくり
この中でいくつかの取り組みを説明をしておきます。

環境ISOの推進

ISOとは国際標準化機構のことで、工業製品の国際規格を決めている国際機関です。その中で環境マネジメントシステムについての仕様を定めた規格が環境ISOと呼ばれています。水俣市では、水俣病の経験を教訓とし自然環境への負荷を減らすとともに、「環境モデル都市」の実現に向けた取り組みの強化を図り、地球環境の保全再生及び持続可能な社会の形成に関する地方公共団体の役割を積極的に担うために環境ISOを推進しています。

ごみの減量、高度分別

現在水俣市ではごみを24種類に分別しています。またゼロ・ウェイストのまちづくりも目指しています。これは資源やエネルギーの無駄な浪費を抑制し、ごみを限りなくゼロにしていこうということです。

再生可能エネルギーの活用

主に二つあります。 一つ目は地元資源を活用したバイオマスエネルギーの創出です。たとえば、柑橘類の搾りかすや間伐材、竹等からバイオエタノールを創出したりしています。 二つ目は新エネルギーの積極的活用です。太陽エネルギーや風力などの自然エネルギーの発電所を設置し、公共施設等で用いるようにしています。

環境学習都市づくり

水俣病の経験を後世に伝えるとともに、水俣の海、山、川、人を介して地域の環境保全の大切さ、人としての生き方、地域の風土と暮らしを体験できるようにさまざまな取り組みを行っています。たとえば、みなまた環境大学では水俣病の教訓から生まれたまちづくりを現地で学ぶことができ、村丸ごと生活博物館では無駄のない暮らしを体験学習することもできるようになっています。 以上のように水俣市が「環境モデル都市」として行っている取り組みを簡単ではありますがまとめましたので、このことを頭の片隅において講演を聞いていただければと思います。
参考URL
(文責:山下)

磯部先生 復習記事

カテゴリー: ZEBLOG

先日、磯部先生が話してくださった「東京大学のサステイナビリティキャンパス化への取り組み」の内容を大まかに復習したいと思います。

TSCPの意義

地球には膨大なエネルギーが放射エネルギーとしてもたらされているので、将来的には太陽からのエネルギーをすべて太陽光発電や風力発電によって取り出してさらには現在はゴミとして捨てているものから資源を取り出すことが可能になるかもしれません。 ただし、このような社会になるのはもっとずっと先の未来の話で、それまではエネルギー消費をできるだけ減らしながら可能ならばエネルギーを作り出していくことが重要です。 そのような経緯から小宮山前総長が強いイニシアティブを発揮して発足し、磯部先生が室長を務めていらっしゃるTSCP(東京大学サスティナブルキャンパスプロジェクト室)は以下のような意義を持っています。
  • 世界共通の重要課題である環境問題、特に地球温暖化問題への取り組み
  • 将来の社会モデルを先導し、社会への情報発信をするという大学の社会的責任
  • 将来の社会のリーダーシップをとる次世代の人材への教育効果
  • 省エネルギー消費によるキャンパスのランニングコストの削減
そのためにTSCPは低炭素キャンパスづくりを最重要課題として、TCSP2012とTSCP2030という二つの期間のアクションプランを設定しました。 (この内容については予習記事の方を参照してください。) また、この目標とは別に東京都環境確保条例によって2002~2007年度の連続する3ヶ年の平均値を基準として、第一計画期間(2010年度~2014年度)に基準年度比で平均8%削減、第二計画期間(2015年度~2019年度)に基準年度比で平均17%削減が義務づけられています。

アクションプラン・都環境確保条例達成のために

TSCPでは東京都環境確保条例を排出枠購入によらずに削減を達成することを目標としています。 対策を早期に実施する方が、東京都環境確保条例が求める平均の削減量に寄与が大きくなることから、TSCPではソフト面での対策を初期段階で徹底するとともに、各部局からTSCP促進費として光熱水費用の一部を上乗せ徴収して、各局のハード面でのエネルギー消費量削減対策に対する初期費用の一部に充当する仕組みを作ってハード面の対策の前倒しを促進しました。 ハード面の対策は実施する前にその有効性を検討する必要がありますが、大学においては異なる部屋であっても照明系は照明系でまとめるなどして配線が複雑になっているので、実際にそれぞれの部屋や機器がどの程度のエネルギーを消費しているのかを把握するのはとても困難です。 そのため、季節や時間帯に寄るエネルギー消費量の差からそれぞれの用途における消費量を推測することになります。大まかに言えば実験系3割、空調3割、照明2割、その他2割のエネルギーを消費しています。 このため全体の7割を占める非実験系での削減方法は一般にも応用可能ということができます。 上で述べたような計測の難しさをふまえてTSCPでは主に2つの異なるアプローチでハード面の対策を行っています。 1つは主に大型の機器を含む、多くのエネルギーを消費するシステムに対して短期計測でエネルギーの消費量をモニターして、より最適なシステムを構築して運用改善するという方法です。 もともと2台の熱源設備で運用していたシステムに対して、新館を設置したことに伴って1台増加で設置していたのですが、短期計測の結果2台の熱源設備を用いて熱を旧館と新館の間で融通させれば十分ということが分かり、最適化した結果冷房期間で約70tonのCO2の削減に成功した大型熱源設備の運用改善がこの方法を用いた例としてあげられます。 もう1つは台数が多いものなど、短期計測が困難なものに対して、ベンチマークを設定する方法です。 この方法は例えば個別の部屋の熱源設備(つまりエアコンなど)に対して適用されています。 一般にエアコンは定格能力に近い負荷で運用するほど成績係数が上昇する傾向があるので、部屋の広さに対して定格能力が大きすぎるエアコンはエネルギーをより多く消費してしまいがちです。 このため全ての部屋の熱源設備の実態調査を行って、その結果に基づいて床面積あたりの機器容量原単位に対して上限を設定し、高効率機器への更新による効率向上分をさらに増加させるようにしました。 以上のようなハード面の対策の他に、全部局から教職員を1名ずつTSCP-officerとして選任して意識啓発活動の推進役としたり、全建物に共通して対策可能な空調の設定温度や共用部分の照明の間引きなどを依頼したり、意識啓発用のポスターのアイデアを学生に募集したりなどといったソフト面での対策も進めています。 以上のようなソフト、ハードの対策等の結果、TCSP2012の目標である、非実験系のCO2排出量15%削減は達成される見込みだということです。

情報発信

また、TSCPでは社会や学生への情報発信として、TSCP室のウェブサイトを作ったり、グローバルサスティナビリティの重要性をテーマとした情報発信拠点としてNetwork of Networksを構築したり、あまり知られていない排出権取引に参加することで知名度を高める、といった活動も行っています。 磯部先生は今後の取り組みの展望についても具体的に、その障壁なども含めてお話しくださいました。 個人的には、ハード面の対策をする前に実態調査や短期計測をするということが実は大変ということが予習のときには見えなかった部分で大変興味深いと思いました。 磯部先生本当にありがとうございました。 (文責:青木)

田村氏講演 復習記事-2

カテゴリー: ZEBLOG

先日の田村氏の講演内容について、まとめたいと思います。

キャンパスとの調和

駒場キャンパス全体として調和がとれ、学生が使いやすいように21 KOMCEEの設計には様々な工夫がなされています。 まず、駒場キャンパスは1号館を中心に低層の建物が配置されています。そのため、21 KOMCEEも地下を利用し、8号館に隣接する部分は4階、もう一方も5階建てに抑えることで外観的なバランスがとられています。また、21 KOMCEEの壁面は9号館よりさがっていますが、その分のスペースをそろえるために、メインエントランス前のファサードがつくられています。 設計ではキャンパス内の人の動きについても考えられています。駒場のメインストリートとも言えるイチョウ並木ですが、動線の主軸であるイチョウ並木だけでは横の移動しかできず、グラウンドに行きにくいといった問題がありました。この問題を解決するために、21 KOMCEEの壁面は、主軸に直交する副軸として8号館に新たにつくられたピロティにそろえられています。 また、樹齢120年の大樹、クスノキの保存は設計における大きな課題でした。クスノキを切らずに残すために、クスノキの周り3方を囲んで地下に建物を建てるにあたり、樹木医と呼ばれる樹木保護の専門家にも意見を仰ぎ、設計はすすめられました。 設計に際し、歴史や生物といった既にあるものから学び、そこからヒントを得て新しいものを創っていく姿勢というのが興味深かったです。田村さん、ご講演ありがとうございました。 (文責:金子)

12月22日(第10週)大倉紀彰氏紹介

カテゴリー: ZEBLOG

低炭素まちづくり: 水俣全体をキャンパスにサスティナブルな地域を考える

大倉紀彰 Okura, Noriaki
環境省環境保健部企画課課長補佐 (地球環境局地球温暖化対策課併任)
水俣病が発生した水俣市は、日本の地域社会の課題を多く抱える「日本の縮図」のような地域です。現在私が担当している「環境を切り口とした地域振興」を紹介しながら、水俣全体をキャンパスに、サスティナブルな地域とは何か、皆さんと考えたいです。

プロフィール

1974年生まれ。奈良県香芝市出身。 1998年環境庁(当時)入庁。気候変動交渉(COP6~7)、京都議定書締結作業を担当。 また、外来生物法制定、海洋汚染防止法改正、廃棄物処理法改正、地球温暖化対策推進法改正等の制度設計に携わる。 2004年以降は、断続的に低炭素まちづくり関係を担当し、10年8月から水俣病発生地域の「低炭素まちづくりによる地域振興」に従事。
参考文献

駒場祭で展示を行いました。

カテゴリー: 全般

みなさまお久しぶりです。 前の投稿がヒヴァの旅行記で、そこで投稿が途絶えたため14日から合流した後発組には 僕たちの安否を心配させてしまったようですが、ヒヴァを出たあとネット環境が無かったのです(笑) さて、僕を含め2年生は旅行のあと進振りという学生生活上の大きな局面を乗り越えまして 色々な学部へ進学が内定しました。 そうなるとなかなか前期教養課程の授業でゼミ生全てが顔を合わせることもなくなり それに伴ってこのブログの更新も滞っておりました。 さて,先日11月25日~11月27日に駒場キャンパスにおいて駒場祭が開催されました。 僕達全学自由研究ゼミナール「中央アジア散歩」(通称”UZゼミ”)もウズベキスタンを紹介する展示を行いました。 タイトルは「中央アジアは友達…怖くない!!」です。 少々ふざけたタイトルでお叱りをうけそうですが…笑 やはり日本ではウズベキスタンという国はなじみが薄いだろうと言うことで 今回はウズベキスタンの歴史や文化などについて、とても深く説明とすることはせず 写真にポップで説明をするという展示を主として、まずは眺めてウズベキスタンという国を 知って頂き、興味を持ってもらった後に説明員としてその場にいるゼミ生が説明するという形を取りました。 また、今回駐日ウズベキスタン大使館のご協力により、現地の工芸品やスザニ、アトラス模様の布、そして民族衣装 をお借りして、展示しました。 (民族衣装については説明員とわかりやすいようにゼミ生が着用しました。) 最終日にはウズベキスタンテレビの取材カメラが来場し、 僕たちの指導教員である岡田先生をはじめ、ゼミ生の何人かがインタビューに答えました。 この様子はウズベキスタン国内で放送される予定です。 もしウズベキスタンからこのブログをご覧の方がいらっしゃいましたら是非ご覧下さい!! 感想ノートを用意しておりましたが、展示が終わってみると 「ウズベキスタンという国は全く知らなかったが、行ってみたくなった!」というご感想がとても多く 我々としては展示の目的を達成できたかな、という気持ちでおります。 (文・写真:理科二類二年 間下)

田村氏講演 復習記事-1

カテゴリー: ZEBLOG

先日の田村氏の講演についてまとめたいと思います。

設計士とは

まずはじめに設計士、というのはどのような人なのかというと、設計図を書く人のことです。 こう言うとなんだか簡単な仕事に聞こえるかもしれません。 しかしそんなことはなく、21 KOMCEEの設計に当たっては2000人もの人が製図に当たり、120枚もの設計図が作られたそうです。

建築のデザイン

建築物は、普通の工業製品と違いあらゆる人に開かれたものです。 なので、普通のプロダクトデザインとは異なり、使う人や建築物の建つ環境のことも考慮に入れながら設計しなくてはなりません。 建築のデザインには、このようにあらゆる要素を思慮に入れなくてはならないという難しさがあります。

21 KOMCEEの設計コンセプト

21 KOMCEEの設計コンセプトには、大学側からの「新しい東大を象徴するような建物」という期待、またゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)やアクティブラーニングといった新たな試み、そして何よりこの建物を使う学生や教員の使い勝手や居心地といった要素が含まれています。

アクティブラーニングに適した教室設計

旧来からの教員が教壇に立ち、学生は皆黒板の方向を向いて受動的に講義を聴くというスタイルではなく学生同士が顔を見合わせ、相互に聞いたり教えあったりしながら授業を進め、学習するというのがアクティブラーニングで 近年このようなスタイルの授業方法はMIT(マサチューセッツ工科大学)をはじめ様々な教育機関で導入が始まっています。 アクティブラーニングにおいては、当然ながら学生はてんでばらばらの方向を向いて授業を受けます。 そこで21 KOMCEEの教室の形は、学生の方向や教員の立つ位置に方向性を持たせないように、できる限り長方形ではなく正方形に近づけるよう工夫がなされています。

緊張と親和の共存

建物を使う人への居心地のよさへの配慮として、緊張空間と親和空間の共存があります。 講義室という緊張空間を建物の左右に、ソファなどが置かれ一息つける親和空間を中心に配置することによって 1つの建物の中に緊張と親和の領域が共に存在しています。 建築の設計というものは本当に難しいものであり、またそのような困難の上で、一つの建物の設計に、こんなにも多くの配慮がなされているというのが本当に驚きでした。 田村さん、貴重なお話をありがとうございました。 (文責:間下)

磯部先生予習記事Professor Isobe

カテゴリー: ZEBLOG

今回講演していただく磯部雅彦先生は、TSCP(東大サステイナブルキャンパスプロジェクト室)室長として、大学の省エネルギー化に取り組んでおられます。 講演に先立ち、TSCPとは何なのか、どのような活動をしているのかについてまとめました。

TSCPってなんだ

TSCP(東大サステイナブルキャンパスプロジェクト)とは、2008年に発足した全学的なプロジェクトであり、温室効果ガス排出削減による低炭素キャンパスづくりを当面の最優先課題とし、低炭素キャンパスづくりに取り組んでいる。

3つのコンセプト

・エネルギー需給に関する自律分散協調(見える化) ・省エネルギー・創エネルギーによる低炭素化 ・持続型社会建設に向けた社会連携 を効果的かつ効率的に同時進行する“共進化システム”を構築し,大学という研究・教育機関のモデルケースとして先導的に実現することを目指している。 また、それに加え国内外の大学間のネットワークを通じてこれらの試みを世界的な大学の動きにつなげていくと共に、その動きを社会へと波及させていく。さらに社会における低炭素型の技術と対策の普及をリードすることによって、低炭素社会実現に向けて経済的な波及効果をもたらすことをめざしている。

TSCPアクションプラン

TSCPでは低炭素キャンパスに向けた具体的な目標としてアクションプランを作成している。 TSCP-2012(2008〜2012年度末) 2006年度に比べ2012年度には非実験系の二酸化炭素排出量の15%削減を目標にしている。二酸化炭素以下の1〜4を通じて排出削減を行う。
  1. 電力計設置(見える化)による教育・研究活動の増加にともなう排出量増分の抑制
  2. 省エネ機器への更新支援
    • 投資回収年数が機器更新年数の半分以下のもの
    • 年間CO2削減量と初期投資額との比が大きいもの
    • 回収年数が4年を超える分は,初期投資の補助も考える
    • 大型熱源系の省エネ化により約6%削減(初期投資額合計約5億円)
    • 照明・個別空調・冷蔵庫などの更新により約7%削減(初期投資額合計約26億円)
  3. 大量調達による省エネ機器導入普及モデルの作成
  4. 初期投資が回収でき,その後は光熱水費が削減できるその他対策も含め実施
既に、各種機器の導入量や各建物のエネルギー消費動向の調査が行われており、そこから得られたデータをもとに優先順位の高い場所から機器更新や運用改善が行われている。 TSCP-2030(2012〜2030年度末) TSCP2030では、2006年度に比べ二酸化炭素排出量の50%削減を目標とし、2012年までにその具体案を検討する。現段階では、TSCP2012の期間中においては、対象とならなかった機器を含め、機器劣化更新時を捉えた高効率化、コストを含めて実用段階になかった技術の導入、更に創エネルギー(太陽光発電など)を本格化させていくとしている。
参考
(文責:福井)

Professor Isobe and his work in TSCP

Our group is preparing for the lecture by Professor Masahiko Isobe, Head of Tokyo University Sustainable Campus Project (TSCP). The purpose of TSCP is to show how to realize the sustainable society by attempting the latest technology or making and trying new technologies in Tokyo University. TSCP is now especially struggling to reduce the emission of the greenhouse effect gas. They made the target of 15% reduction of CO2 emissions by 2012 compared to 2006. And until 2030, they are aiming to cut the half of CO2 emissions compared to 2006. TSCP succeeded in diminishing the amount of energy consumption in many methods such as shifting all the fluorescent light in some university buildings to more efficient LED light, introducing sensors and the AI (artificial intelligence) to turn off the unneeded lights and so on. This summer (in 2011), a new building called the 21 KOMCEE (Komaba Center for Educational Excellence) has appeared in Komaba Campus. TSCP led to make the 21 KOMCEE introducing many unique technologies for the comfortable study circumstances and reduction of energy consumption. For example, underground water is used to keep the temperature of rooms comfortable, movable louvers are placed outside the windows to select whether sunlight is reflected or permeates. The AI studies from the past experience and helps the students to use the room effectively. The 21 KOMCEE is not only a great place for students to study but also a touchstone for making the sustainable society. Judging from the results of introducing technologies in the 21 KOMCEE, other buildings for the sustainable society will be designed and constructed in the future. (Report by Aoki)

大岡先生講演 予習-1

カテゴリー: ZEBLOG

今回講演していただく大岡龍三先生は21 KOMCEE建設にあたり“地下水地下熱を利用した冷暖房システムの構築”を担当されました。 そこで今回はそのシステムついてと、具体的に21 KOMCEEにおいてどのようなシステムが生かされているかをまとめました。 前提として、外気の温度とは違い、地中の温度は一年を通じてほぼ一定(16~17℃)です。つまり、夏は外気に比べて低温、冬は外気に比べて高温となっています。その熱を地中熱ヒートポンプ利用して空調に利用することで、外気の熱を利用するよりも高効率となり、省エネが期待できます。また冷房時の廃熱を空気中に放出せずに、地下に放出するため、ヒートアイランド現象の緩和も期待されます。

地下水循環型冷暖房システムについて

地下水の温度は地中の温度と同じとなるため、地下水を汲み上げて熱を吸収することで、間接的に地中の熱を汲み上げることができます。これを空調に利用することで、空調に使われるエネルギーの削減が期待されています。 しかし、やはり地下水のみで建物の空調を管理することができない部分もあり、また地下水をくみ上げる際の井戸の目詰まりも問題となります。 21KOMCEEでは大岡先生の研究を活用し、空冷と水冷のバランスをとり、熱源の約40%を地下水からくみ上げるという応式をとっています。また目詰まりを防ぐために、目詰まりが生じた場合地下水をくみ上げる井戸と、それを地中に戻す井戸の役割を入れ替えるシステムによって、目詰まりの発生による空調の非効率化を防いでいます。

建物基礎杭を利用した地中熱空調システム

地下水には揚水量の規制があるため、地下水を利用せずとも地中の熱を汲み上げることのできるシステムが必要となってきます。地中に埋設したチューブ内に水を循環させ、この循環水を介して地中から熱を吸収するという「建物基礎杭を利用した地中熱空調システム」もこのシステムの一つです。 しかし、チューブを埋設するためには掘削のコストが必要になり、さらには認識不足などの理由が、システム普及の妨げとなっています。 21 KOMCEEでは建物を支えるために設置する基礎杭にチューブを打ち込み熱交換器として活用するという方式を採用しているため、掘削の費用を削減することが可能です。このシステムは東京大学柏キャンパスや、なんとあの東京スカイツリーでも採用されています。 以上のようなシステムが21KOMCEEでは活用され、ZEB達成をめざしています。 (文責:佐藤、藤本)

大岡先生講演 予習-2

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その他のZEBの取り組み

経済産業省の報告書では、ZEB達成のための取組として、以下が挙げられています。
設計時のZEB(関連する省エネ法の規制:建築物に係る措置)
  • 要素技術 ―設計に依存するもの(躯体(床や壁、梁など建物の構造を支える骨組のこと)に関連するパッシブ建築など): 躯体の断熱、日射遮蔽、自然光の照明利用、外気を活用した空調、空調搬送方式など ―機器に依存するもの: 空調熱源、照明、空調搬送機器、OA機器、太陽光発電など
  • 外部とのネットワーク: エネルギーの面的利用、都市の未利用エネルギー(河川熱、ごみの下水などの都市排熱等)の活用など
  • これらの総合設計(パッケージ化)と統合制御(システム導入)
運用時のZEB(関連する省エネ法の規制:工場・事業に係る措置)
  • 天候や利用人数なども踏まえたPDCAを回しながらの運用改善(チューニング、コミッショニング)
  • エコオフィスやワークスタイルの見直し、働き人の意識改革
  • テナントとオーナーの取組
  • など
いくつか分かりにくい言葉があるので解説しておきます。 パッシブ建築とは、特別な動力機器を使わず、建築設計の工夫によって太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを利用して、暖房や冷房(室内気候調節)を行おうとするものです。 つまり、新しい技術だけでなく、建築のデザインによっても、エネルギー効率を上げることが出来るということで、例えば太陽光を電力源としてではなく、暖房効果や、光源として、直接取り込むというものです(ダイレクトゲイン)。 エネルギーの面的利用とは、日本に多くみられる狭い土地の中高層ビルの場合、ビル単独でゼロ化することは困難なので、ビル外部のエネルギーを活用することで削減効果を高めようとするものです。 具体例としては、地域冷暖房によるエネルギー施設の集約や、地域冷暖房のネットワーク化が挙げられます。地域冷暖房とは、駅やビル、商業施設、マンションなど地域内の建物に対し、まとめて冷暖房や給湯を行うシステムで、そのコアとなるのが、未利用エネルギーの使用です。地下熱、河川熱、海水の熱といった自然のものから、ビルの排熱、地下鉄の排熱など、人工的なものまで、今まで使われずに消えてきたエネルギーを利用することで効率をあげようというものです。 運用時のZEBについてですが、こちらは理想の教育棟でも重要視されています。窓の開け閉めを効率的に行うことを促すシステムが、これに当たります。理想の教育棟では、室内と外の気温、湿度を測り、窓を開けるべきか、閉めるべきかを自動で判断し、部屋の中で表示します。そうすることで、冷暖房の利用を最小限に抑えることが出来ます。 また、その他にも、冷暖房をできるだけ使わないようにすることを奨励し、社内の評価システムの組み入れている起業もあり、ZEBへの取り組みと言えるでしょう。
以上のような取り組みを通して、一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなるような建築物、ZEBを作ることが目指されています。 その解決策は必ずしも最先端の技術ばかりではなく、建築デザインの工夫や、意識改革といったものも、大きな役割を果たしています。
参考URL
(文責:中村)

12月1日(第7週)大岡龍三先生紹介December 1, 2011 Talk by prof. Ryozo Ooka

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大岡龍三 Ooka, Ryozo
東京大学生産技術研究所教授

大岡先生は、21 KOMCEEの地下水・地下熱を利用した冷暖房システム構築を担当されました。

略歴
京都大学 大学(工学部 建築学科) 1989 (卒業) 京都大学 修士(工学研究科) 1991 (修了) 東京大学 博士(工学系研究科 建築学) 博士(工学) 東京大学 1993-1998 東京大学生産技術研究所 助手 1998-2000 福井大学工学部 講師 2000-2001 福井大学工学部 助教授 2001-2006 東京大学生産技術研究所 助教授 2007-2009 東京大学生産技術研究所 准教授 2009.08-  東京大学生産技術研究所 教授 日本建築学会(サステナブルビルディング小委員会主査、ヒートアイランド小委員会幹事、都市気候モデリングWG主査、総合論文誌 第4号編集委員)空気調和・衛生工学会(国際関係委員会、大会実行委員会委員、学会賞技術審査委員、SHASE技術フェロー)日本風工学会、日本気象学会、エネルギー資源学会、日本流体力学会(2007年年会実行委員会幹事)、日本予防医学リスクマネージメント学会(理事)
研究テーマ
  • ヒートアイランドの解析と制御
  • 都市の大気汚染現象の解明と制御
  • 都市のエネルギー資源の最適システム設計
  • 自然エネルギーを利用した省エネルギー型空調システムの提案
  • 都市の火災延焼予測モデルの開発
参照サイト

Realizing Zero Energy Building by utilizing geothermal energy

The term “Zero Energy Building” is defined as “a building in which net energy consumption is nearly zero.” Recently, many developed countries have taken an action to realize ZEB that is expected to be helpful to solve environmental problems. In Japan, Prof. Ooka’s team studies various systems to achieve it. What is most important in zero-energy buildings is to “control” the entire building. With sensors and operation systems, the amount of energy consumption is kept at minimum. In addition to the design of the building, changing attitudes of people towards the environment is also important to seek ZEB. Prof. Ooka has participated in constructing the 21 KOMCEE where this seminar is held. This building was designed in an attempt to accomplish ZEB by 2030 and it has some experimental tricks and devices. One of these devices is to utilize groundwater for air conditioning. It pumps up groundwater deep under the building and the water will efficiently cool down or warm the ceilings that will subsequently modulate ambient temperature through radiation. The Radiation air conditioning system heats not the air around humans but human body directly, thus it can save energy for fanning the air. Other than that, there are many systems to seek ZEB in this building. For example, movable louvers automatically following the sun’s movement help to use sunlight and warmth more efficiently. (Report by Sato)

高見氏講演 復習-1

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先日の高見さんの講演内容について、大まかにまとめたいと思います。 高見さんは現在文部科学省にいらっしゃいますが、元々建築学専攻でした。 大きな転向のきっかけについて高見さんは、博物館や公民館を設計するワークショップで、そのワークショップの意向に反して街全体の設計をしてしまったことを挙げました。 与えられた敷地をはみ出して設計することは建築家の仕事ではない。それでは建築の枠を超えて未来を設計する仕事を、ということで、文科省への入省を考えるようになったのだとか。 入省後10年に渡って、学校・教育に関わる分野に携わってきた高見さんは、現在エコスクールや学校施設の耐震化に関わっていらっしゃいます。 講演の前半では、近年の学校施設を取り巻く現状と、学校施設をエコスクール化するメリットについて述べられました。
  • 全国各地にあり、面積も公共施設全体の約4割を占める。 →その分エネルギー消費を抑えることは大きな効果がある。
  • 第二次ベビーブームの時代に建てられ、老朽化した施設が多い。 →改修・建替えはどのみち必要であり、環境に配慮した改修でCO2の排出量削減ができる。
  • 次世代を担う子供たちが学び、活動する場である。 →学校施設を教材として用いることで環境教育になる。
  • 社会の中で最も身近な公共施設である。 →省エネ効果の見える化で、環境意識を地域に普及させられる。
  • 震災などの非常時には避難所として使われることが多い。 →停電のときにも太陽光発電や太陽熱設備が使えるなど、有効に活用できる。
そして後半には、エコスクール事業の課題と、具体的にはどのようにエコ化を進めていくかが述べられました。 エコスクール事業の課題は、厳しい財政状況の中、どのように耐震工事との折り合いをつけてエコ化を進めていくかというものです。エコ化が防災としての側面を持っているとはいえ、耐震性のない学校がまだ20,000校以上もある現状は深刻であり、決まっている予算をどのように使っていくかという問題になると、エコ化にそれほど予算をつぎこめないということです。 具体的な進め方について、まず国と学校側の役割が述べられました。 公立学校と国立学校(国立大学法人など)では、国との関わり方が異なります。 公立学校の場合は、国が定めた制度の枠組みや全国的な基準に基づいて、都道府県または市町村が運営をします。国は都道府県と市町村に財政支援や指導・助言もしています。 これに対して国立学校は、公立学校に比べて学校側の自由度が高く、予算についても民間資金などが入るため融通が利きやすいのが特徴です。 エコ化に話を戻すと、国はエコ化について、
  • 基本的な考え方や推進方策の検討、提示
  • 財政政策の実施
  • モデル事業・実証事業の実施
  • パンフレットや事例集の作成・配布
  • 整備効果測定ツールの開発
を行っています。エコスクールの基本的な考え方については、予習で詳しく書いたので割愛します。 また、大学や自治体は、先に述べたように運営に自由度が高く予算や技術も使いやすいので、
  • 計画的な整備推進
  • スケールメリットを生かした取組み
  • 民間資金を活用した取組み
  • 先端的な取組み
が求められており、実際に多くの取組みの例が挙げられました。 ここからは私の個人的な感想になりますが、国のできることは枠組みを作ることに限られてしまうということを実感しました。国の考えをしっかりと共有して理解し、それぞれの立場からアプローチしていくことが必要だと感じました。 高見さん、本当にありがとうございました。 (文責:野崎)

田村氏講演 予習-2(環境設計)

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今回の講演者である田村氏が現代社会の課題として取り上げられている循環型社会への転換等に関わる「環境設計」について田村氏が現在ディレクターをつとめていらっしゃる類設計室の資料をもとに書いていこうと思います。 現在の建築にはデザイン性や住み心地だけではなく環境との調和、環境への影響削減、循環サイクル形成、自然エネルギーの利用や防災機能が求められています。そして、それらに関する専門技術(太陽光発電等)を統合し建築計画に反映させ、その計画を施工段階や現場の段階でもリードしていく仕事が環境設計であり、まだ比較的新しい分野ではありますが全建築の中で環境設計とその周辺分野の工事費に占める割合は40%、技術者数は20%といった統計が出ています。これからもわかるように現在の建築において環境設計の重要度はかなり高いと言えます。 そのような需要が出てきた背景には現代社会の様々な問題があります。現代社会では市場拡大や科学技術発展を追い求めてきた結果として、地球環境の破壊が続いています。そういった問題に対し、環境設計の行おうとしている最大のテーマは昔のような「循環型社会」への転換であり、それを進めていく上で主に以下の4つの理念があります。
  • 環境保護
  • 新たな場の形成
  • ビオトープといった人間の時代にふさわしい空間形成
  • 社会や地域に開かれた情報基盤の整備
これらの理念は例えば類設計室の次のようなプロジェクトに見ることができます。川崎市ゼロ・エミ工業団地計画では、建設時は現場の廃棄物をゼロにしたり、リサイクル資材などの利用を進め、稼働後は廃棄物・エネルギー・水の徹底的なリサイクルを行うことを計画しています。他にも琵琶湖環境科学研究センターでは開かれた研究をするための情報基盤の整備が行われ、越谷市中心核施設においては市民と共にビオトープなどの自然を再生する活動を行うようです。
参考
http://www.rui.ne.jp/architecture/projects.html 身近な例でいうと、これらの考えは21 KOMCEE(理想の教育棟)の設計コンセプトである「ゼロ・エネルギー・ビルディング」、「アクティブ・ラーニング」、「周辺環境との共存」とも一致しています。ゼミ当日(11月10日5限)には21KOMCEEの建設プロジェクトにおける思考と実現の軌跡といったこともお話下さるようですので、21KOMCEE建設にあたってどのように環境設計の考えが関わっていたのかについてなども詳しくうかがうことができるのではと思います。 最後に、「自然と調和した建築」をどうつくるか、「人間的な空間」とは何か?これらは環境設計の場で考えられている重要な問題です。そのため、講演でもおそらくこういったことも話題になるかと思うので、これらの問いに対する自分なりの答えを考えながら田村氏の講演を聞くと面白いと思います。 (文責:栗原)

田村氏講演 予習-1 (駒場キャンパスについて)

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建築はそれだけで存在するのではなく、常に周辺環境と共にあります。なので、一つの建築を考えるときには周辺環境との調和(あるいはコントラスト)やその土地の持つ歴史性や社会的との関係なども考えることになります。そこで、今回理想の教育棟の設計を担当した類設計室の田村正道さんをお迎えするにあたり、この記事ではその準備として理想の教育棟の周辺環境、すなわち東京大学駒場Ⅰキャンパスの他の建築物やキャンパス計画について見ていきたいと思います。 東京大学駒場Ⅰキャンパスのある場所にはもともと駒場農学校、そしてその後身にあたる東京帝国大学農学部がありました。1935年にその東京帝国大学農学部との敷地交換により旧制第一高等学校(一高)が移転してきて、1949年一高が東京大学(旧東京帝国大学)に吸収されるかたちで消滅したのに伴って東京大学教養学部のキャンパスとなりました。 農学部時代の建築物は第二次大戦による焼失とその後の取り壊しによって現在は残っていませんが、一高時代の建築物は1号館(1933年完成)、900番教室(1938年完成)、駒場博物館(1935年完成)、101号館(1935年完成)が残っています。これら4つの建築物のすべてが内田祥三という建築家による設計です。内田祥三は、東京帝国大学営繕課長や同大学総長、日本建築学会会長などを歴任した人物で、安田講堂、総合図書館、法文1、2号館、医学部本館、工学部1、2号館など関東大震災後の1920年代から30年代にかけて本郷キャンパスで建造された建築物の多くを設計しました。ゴシック様式に基づくその建築スタイルは内田ゴシックと呼ばれ、駒場キャンパスに残る彼の4つの建築物もそうした内田ゴシックの作品と言われています。 東京大学駒場地区キャンパス計画においては、1号館、その左右に向きあい対称をなすかたちで配置された900番教室と駒場博物館、そして101号館と正門などを歴史的空間、保存建造物としています。そして、それと並んで全体構成をなすものとして、銀杏並木を「重要な軸線」と呼んでいます。外部空間については、眺望景観を意識して高さを抑制し周囲の樹木と建築物との関係も重視するべきだとしています。

近年、駒場キャンパスでは旧来の図書館、駒場寮などが取り壊されて、駒場図書館(2002年完成)、アドミニストレーション棟(2003年完成)、コミュニケーションプラザ(2006年完成)といった建築物が新しく建設されるなどの再開発が進められていて、今回の理想の教育棟の建設もその流れの中に位置づけられるものとして考えられます。駒場図書館やコミュニケーションプラザなどは先述の内田ゴシックの建築物とは違ういわゆる現代建築の建築物ですが、キャンパス計画に基づいた、銀杏並木の軸線の延長という意識や高さの抑制というのは見てとれます。

以上のような周辺環境との関係から、最後に少しだけこの理想の教育棟を考えてみます。まず、キャンパス計画から考えてみると、1階部分で銀杏並木と直角に交差する軸線(キャンパス計画で副軸線とされているもの)を生かしており、また高さも抑制されていることがわかります。近い年代に建設された駒場図書館やコミュニケーションプラザの意匠との比較からは、外部からは軽やかさ、内部からは明るさを感じさせるようなガラスの効果的な使用、吹き抜けによる内部空間の開放感の演出などが共通項としてあげられます。また、理想の教育棟周辺の樹木の多くはキャンパス計画に基づいて保全されたもので、それらと理想の教育棟のファサードとの調和というのも意識されているかと思います。 このほかにも理想の教育棟周辺環境との関係から考えられることというのはまだまだたくさんあります。実際に設計を担当された類設計室の田村正道さんのお話の中からそうした周辺環境との調和についてどういった苦心があったのかということをうかがい、新たな気づきを得られればと思います。

参考URL 東京大学キャンパス概要 (http://www.u-tokyo.ac.jp/index/b07_j.html) 沿革 駒場キャンパスの歴史 (http://www.c.u-tokyo.ac.jp/history/02.html) 東京大学の建築物 – Wikipedia (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%BB%BA%E9%80%A0%E7%89%A9) (文責:川名)

高見氏講演復習-3

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講演終了後、KOMCEEのカフェテリアKOMOREBIにて、高見さんと関心の高い学生との間で懇親会が行われました。その際にお聞きした内容をまとめます。

小・中学校と大学とではエコへのアプローチの仕方に違いがあるべき

エコへの取り組み方という点で、大学には小・中学校などとは違った役割を期待している、と高見さんは言われていました。 小・中学校では照明はこまめに消す、太陽光をできるだけとりいれる、暖房の設定温度を下げるなど比較的身近で、私たちが思い浮かべる日常的なエコ活動が中心になりますが、大学は少なくとも各県に1つずつその地域を代表する国立大学があり、研究設備が整っているのだから、周囲に1つのモデルとして示すためにも先進的なエコ活動を行い、社会のエコをリードしてほしいということです。 その例として、外壁のほとんどが太陽光パネルで埋め尽くされた東工大のゼロ・エミッション・ビル、エネルギー環境イノベーション棟があがりました。外壁を太陽光パネルで埋め尽くすというのは、効率的に本当にいいのかは少し疑問ではありますが、敷地ギリギリの東急大井町線と目黒線の交点にあるため、電車内から見る何気なく見る人にも大きな印象を与えることは間違いありません。

防災の意識の風化

防災の意識というのは今のような震災直後の時期は高いですが、いつ起きるか、また本当に起こるかさえ分からない災害への意識を保ち続けるのは難しく、たいてい2, 3年で風化していってしまいます。 実際に阪神大震災後にとられた対策設備費も、だんだん防災意識が低下して予算が厳しい中で削られていってしまうということが少なくなかったようです。限られた予算の中で、差し迫った問題と起こるかもしれない災害のどちらにお金をかけるかというのは難しい問題で、結局今持っているような問題意識を持ち続けないと、今回の震災の経験を生かした長期的防災政策は困難だということです。

防災の担当

学校の防災、というものを考えたときそれは文部科学省の担当するものなのでしょうか。あるいは国土交通省の担当という考えもあるかもしれません。 実際にその線引きは曖昧で難しく、困っているところだそうです。どちらかだけで進めていくというわけにもいかないわけで、しかし両方別々にやっていくとどこかで重複する部分がでてきて、その無駄が「仕分け」られてしまう危惧もあり、各省ともなかなか思い通りに進めるのは難しいということになるそうです。

海外のZEB的な取り組み

外国のエコ活動の進み具合はどうなのか、という話になったとき、東工大ではないですがこれまた太陽光パネルをふんだんに使用したドイツのゼロエネビル・ソーラーファブリック社が話題になりました。 調べてみたところこの会社は現在環境先進国であるドイツの国内の太陽光パネルのシェアの20%を占めていて、工場はやはり太陽光発電と菜種油で100%ゼロ・エミッションを実現しているということです。また、お隣の韓国では学校のZEB化計画が国の方針として進められているという話もありました。このようにEU諸国・米・豪・韓など環境対策先進国ではZEB化というのは当然のように進められていることのようです。

本当にいろいろな方向の話を高見さんから聞くことができた、有意義な懇親会だったと思います。高見さんわざわざお越しいただき本当にありがとうございました。

(文責:藤縄)

10月27日(第4週)コクヨとのグループワーク@駒場October 27, 2011 Group Work with KOKUYO Furniture Co., Ltd.

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きょうは、コクヨの方々+生産技術研究所野城研の院生さんがゼミにいらっしゃいます。 駒場KALSや21 KOMCEEのアクティブラーニング用の机・椅子やホワイトボードはコクヨの製品です。 野城研究室は21 KOMCEE建設計画のZEB(Zero Energy Building)実証事業としての側面にこれまで携わってきました。中でも、さまざまな省エネ技術をコンピュータ管理し、どこでどれだけ効率よくエネルギーが節約できているかモニタリングするAI(人工知能)の開発が特色です。 21 KOMCEEのスタジオ教室の入り口の所に小さな液晶パネルがあることに気付いた方もいるかもしれません。 これは21 KOMCEEに導入されているビル・マネージメントシステム(BMS)のインターフェースであって、AIには「学ぶクン」という名前がつけられています。21 KOMCEEでは随所に温度や照度、湿度などをモニタリングするセンサーが備え付けられており、そうした環境パラメータに応じて省エネルーバーや空調、照明をどのように自動制御すると、快適な状態を維持しながら効率よく省エネルギー化が達成できるかAIが学習していきます。 学習するのはAIだけではありません。「学ぶクン」は収集した環境パラメータをもとに、教室を使用する人たちに環境に配慮した最適な行動を提案する機能を組み込むことが予定されています。学生にうったえかけるコンテンツとしてはどのようなものを用意したらよいか、グループでディスカッションし、発表していきます。 In the 21 KOMCEE, there are many types of equipment helpful to realize active learning, such as whiteboards with various sizes, and furniture with thoughtful devising. These items are produced by KOKUYO Furniture Co., Ltd. On 11/17, we students were given an opportunity to work with business persons attending the 2012 KOKUYO Fair through Skype. We shared ideas on what kind of activities MANABU-KUN should recommend students to do. (MANABU-KUN —“Mr. Study”—is an artificial intelligence (AI) which draw student’s attention to eco-friendly activities such as using stairs instead of using elevators). To find out eco-friendly activities, we tried to imagine our lifestyle and the environment in 2030 based on these in 2011, present. A lot of creative suggestions were made in this group work. Such suggestions and ideas are expected to be brought up more and more and adopted at the MANABU- KUN system. Thus this system will help students take notice of their wasting of energy, and change their attitude towards the environment. (Report by Hirashima)

博報堂とのコラボレーション企画「ブランドデザインスタジオ」がスタートしました。

カテゴリー: KOMCEE建設

10月21日(金)に、博報堂とのコラボレーション企画「ブランドデザインスタジオ」の1stシリーズ「「おやつ」の未来をブランドデザインする」がスタートしました。この企画は、「ブランドデザインスタジオ」のウェブには、下記のように書かれています。参加者は、東京大学教養学部前期課程の学生に限定されており、既に今年度の募集は終わっております。来年度は授業として開講されるようですので、興味のある学生は履修してみることをお薦めします。写真は、1stシリーズの「「おやつ」の未来をブランドデザインする」の冒頭の様子を、廊下から撮影しました。
大学にいながら「社会」に触れる機会”early exposure”を目指した特別教育プログラムです。 参加者の方々が今後、広く社会一般で活用し得る「共創」の手法を、「21 KOMCEE (理想の教育棟)」を舞台に、東京大学×博報堂ブランドデザインのコラボレーションにより学んでいただきます。 「共創」の手法とは、講義などの一方的な知識伝達スタイルではなく、メンバー自ら「参加」「体験」し、グループの相互作用の中で何かを学びあい、創出し、合意形成していくスタイルのことを指します。 教養学部前期課程に在籍する学生が普段接する機会の多い身近なテーマについて、小人数のチームでプロジェクトを進行し、創造的なアウトプットを導き出すことを目的としています。 ※今回の平成23年度の特別プログラムは試行プログラムとの位置づけで、参加者の単位認定は行われません。平成24年度以降については全学ゼミの一つとして単位認定することを視野に入れております。
■関連書籍

高見氏講演 予習-2(どうして学校でエコが必要なの?)

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いきなり 「エコな学校作りましょう!!」と言われても、なかなかみなさん納得できないのではないでしょうか。今回は何故学校という施設でエコが志向されねばならないのか、説明したいと思います。 まず前提として、これからは省エネ志向が本格的に重要視される時代になっていくであろうということを考えていただきたいです。 福島での事故以後心配され続ける電力不足、原子力発電所の安全性、そして巨大地震のリスク、みなさんがあの地震で実感された通り、エネルギー不足というのは案外身近な存在なのです。さらに現在、地球規模で、CO2の大量排出が原因と推定される温暖化が進行しています。これに対して京都議定書が発効されました。 この中で日本は約6%のCO2削減を義務付けられています。経済面でも CO2排出権の取引市場は膨張を続けています。省エネに努めることが自身の生活の保全、直接の金銭的利益につながる時代が来つつあるのです。 次に、学校という施設が膨大なエネルギーを消費している場であるということをご説明しましょう。 文部科学省が発表しているデータによると、学校はあらゆる業種、施設の中でも非常にエネルギー消費の多い場であるということです。今年は夏場にエネルギー不足が予測されたことに対し、文部科学省は各学校施設に節電を呼びかける文書を送付しました。東京大学もその例にもれず、図書館ではクーラーの温度設定が変わり、一部エレベータの停止や、大多数の自動販売機の稼働停止が行われました。 また環境教育の重要性が認知されてきており、鹿児島県の総合教育センターなどがその重要性を認める文書を出しています。「環境についていろいろ教わったけど、それを教えてくれた学校それ自体が環境に対して全く配慮しない姿勢をとっている」では生徒に示しがつきませんよね?身をもって実例を示してやる必要性があるのです。 さて、これらの事実から導きだされる 最初の問いへの答えを示しましょう。 「これから省エネルギー、及びエコが重要となる時代が来る。その時代の中で、膨大なエネルギーが消費される場であり、かつ環境教育において重要な役割を担う学校は、エコ化によってエネルギー消費を抑えるとともに、教育の実例となる必要があるから。(115字)」 これだけ抑えていれば、次回の講演会では満点をとれること請け合いです。 みなさんも、今回の講演に足を運んで、実際に学校施設のエコ化を進める方からお話を聞いてみませんか? (文責:齋藤)

参考資料

Asahi.com CO2が経済回す 排出権取引、膨らむ市場
http://www.asahi.com/special/070110/TKY200802060288.html
文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/07053109/005.pdf http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shisetu/011/gaiyou/__icsFiles/afieldfile/2011/08/26/1310220_1_1.pdf http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1306602.htm
鹿児島県総合教育センター
http://www.edu.pref.kagoshima.jp/infomation/others/kankyou/pdf/zyuyousei.pdf

ロゴをデザインされた永井一史氏来校

カテゴリー: KOMCEE建設

21KOMCEEのロゴをデザインして下さった、HAKUHODO DESIGN・代表取締役社長の永井一史(ながいかずふみ)氏が、サイン・デザインの確認のために、来校されました。 21KOMCEEのサインやロゴデザインに込められた思いなどについて、インタビューしました。後日、21KOMCEEのウェブサイトに記事を掲載する予定です。

永井一史氏に関して(外部サイト)

GA Info. CREATOR’S FILE FELISSIMO 神戸学校。hakuhodo+designというプロジェクトについて

(教育高度化機構 林)

高見氏講演 予習-3(google先生に聞いてみた)

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高見氏の講演テーマである「学校施設のエコ化」について、インターネット上で調べて出てきた情報を簡単にまとめました。

エコスクールとは?

まず、google検索で「学校施設 エコ」を調べてみたところ、「エコスクール」という言葉が出てきました。 エコスクールとは言葉の通り環境に配慮した学校施設や、環境に配慮した活動に取り組む学校などを指します。 そして、エコスクールを全国に浸透させるために文科省・農水省・経産省および環境省が連携して行っているのが、「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進に関するパイロットモデル事業」です。 先駆的な取り組みを行う公立学校に対して国庫補助を行うことで、施設整備を進め、同時に環境教育を推進することを目指しています。平成9年から現在までに、計1000校以上の学校がエコスクールに認定されています。 エコスクール整備のポイントは以下の3つです。 施設面・・・やさしく造る
  • 学習空間、生活空間として健康で快適である。
  • 周辺環境と調和している。
  • 環境への負荷を低減させる設計・建設とする。
運営面・・・賢く・永く使う
  • 耐久性やフレキシビリティに配慮する。
  • 自然エネルギーを有効活用する。
  • 無駄なく、効率よく使う。
教育面・・・学習に資する
  • 環境教育にも活用する。
【出典】文部科学省HP「環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進」

エコ大学ランキングとは?

続いて、「大学 エコ」でググってみると、「エコ大学ランキング」という耳慣れない言葉が現れました。 これは、2008年に結成されたCCC(Campus Climate Challenge )実行委員会による、全国の大学へのアンケート調査から作成されたランキングです。 CCC実行委員会というのは、エコ・リーグ(全国青年環境連盟)を中心に大学の環境改善活動に関心のある複数の大学の環境サークル・環境ゼミ等のグループが母体となって結成されたかなり若い団体です。 第3 回目の調査となる本年度は、全国大学環境対策一斉調査として全国約750校全てを対象に温暖化・省エネ対策実施状況を調査しています。(調査票はHPで見る事ができます) 大学内で行われている対策の情報を社会に発信し、大学間で共有することを目的としているようです。 (ちなみに、昨年の第2回調査の結果を見てみると、東京大学は調査票に回答していないのかランキングに参加していないことになっていました。第3回調査の締め切りは過ぎていますが、これも回答していない可能性が高そうです。そもそもそれに答える担当者とは誰なのかが不明であり、謎は深まります。) 【出典】エコ大学ランキングHP このように、「学校施設のエコ化」は、少し調べただけでも上から・下からの取組みが見えてきます。 木曜日の講演では、実際に学校のエコ化に取り組む高見氏からどのようなお話が聞けるのか、非常に楽しみですね! (文責:野崎)

高見氏講演・予習-1(学校の災害対策)

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学校施設の「エコ化」とは少しズレるかもしれませんが、今回は現在学校施設に関して無視できない重要な問題になっている、災害に向けた安全性の確保について文科省の資料を簡単にまとめました。 今年に起きた東日本大震災において耐震化されていない学校施設では構造体に大きな被害が発生しました。 ちなみに公立小中学校の非耐震化率は約27%(22年4月の時点で)、国立大学の保有施設の約38%が耐震性に問題を抱えているということです。 今回の地震による揺れは、ほとんどの地域では想定しうる最大のレベルに達しておらず、今後同じ程度の被害で収まるとは限らないため、施設の耐震化は急務と言えます。 また今回は、柱、梁、壁、床等の構造設計の主な対象の構造体の損傷が軽い場合でも、それら以外の天井材、内・外装材、照明器具、設備機器、窓ガラスなどの、いわゆる非構造部材の被害が多数発生しています。 天井高の高い屋内運動場において天井材や照明器具が落下すれば構造体には問題がなくとも大惨事となるおそれがあります。そしてそこは震災後に避難場所として活用することもできなくなってしまうのです。 災では非構造部材の損傷による生徒の事故が報告されており、その耐震化の重要性が再認識され、個々の設備のための具体的な点検・対策の方法が検討・実施されています。 今回の震災で壊滅的な被害をもたらした津波への対策については、
  • 津波が到達しない安全な高台での建設
  • またそのような安全な場所への避難経路の整備
  • 屋上の緊急的避難場所としての整備
  • 上層階が安全で緊急的な避難場所となるよう建物を高層化
などが考えられています。高層化については他の公共施設との複合化も視野にいれ、もちろんより構造面に配慮して考えられているということです。 ところで今、複合化という言葉を出しましたが、今回の震災では地域における学校の重要性が再認識され、学校施設にそもそも教育機能だけでなく、避難場所として十分な諸機能を備えておくという考えが必要になってきました。 そこで地域拠点としての学校を活用するため、例えば地域防災の司令塔機能を備える複合避難施設として、学校と官署や社会教育施設等を集約した複合施設や、バリアフリーや医療・介護機能を備えた災害弱者用避難エリアとして、学校と公園や福祉施設等を整備したものなど、様々な計画・設計のアイデアが練られています。 このように学校施設に関する安全性の議論は、単なる施設それ自体の防災機能の強化だけでなく、学校という空間の概念の拡張にまでわたっています。 20日の講演では学校施設について、「エコ化」とともに、こうして今変わりつつある安全性の確保に関する話も高見氏にうかがえればと思います。 (文責:藤縄)  

「理想の教育棟」から学校のエコ化を考える~高見英樹氏講演告知!~

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「理想の教育棟」から学校のエコ化を考える 以下の内容で、高見英樹氏の講演を行います。 ゼミ生ではない皆さんも、ぜひ積極的にご参加ください。 講師:文部科学省大臣官房文教施設企画部 施設助成課課長補佐 高見 英樹 氏 題目:日本の学校施設のエコ化について 身近な公共施設である学校のエコ化は、社会に環境意識を浸透させる、環境教育の場の整備という意味でも重要です。今回は、文科省で学校施設のエコスクール化を担当する高見英樹氏が様々な取組みや今後の展望を語ります。 日時:10月20日(木) 5限(16:20~17:50) 場所:21 KOMCEE  K303 (理想の教育棟3F)

10月20日(第3週)高見英樹 氏October 20, 2011 Talk by Hideki Takami

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高見英樹 Takami, Hideki
文部科学省大臣官房文教施設企画部 施設助成課課長補佐

学校は公共施設の中でも大きな割合を占める身近な施設であるとともに、次世代を担う子どもたちの学習・生活の場でもあることから、そのエコ化を全国的に進めることにより、広く社会への波及効果が期待できます。本講義では、小・中・高等学校や大学などの学校施設のエコ化をどのように進めていくかについて、国や地方公共団体、大学等の取組を紹介しながら、皆様と議論をしたいと考えています。

2002年に入省後、学校安全や耐震化、教科書検定・採択、国立大学施設の中長期計画の策定などの業務に携わる。2011年4月より現職で、学校施設のエコスクール化などを担当。 一級建築士。

参考資料

参考サイト
高見氏が育児休業の経験をつづった、読売新聞ウェブでの連載記事です。 Mr. Hideki Takami, who belongs to the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, is a member of the Eco-School Program. Eco-School means an ecological school which has some facilities suitable for environmental sustainability and commits ecological activity. In short, he is concerned with making policies to spread Eco-School. The concept of Eco-School is made up of three important factors. The first is to build facilities which are friendly for both users and the environment. The second is to keep each facility available over the long term by utilizing natural energy technologies and so forth. The last factor is to make use of itself for the environmental education. By the way, why is Eco-School so important? There are three reasons. Firstly, it is effective for decreasing CO2 emissions from schools. They consume much energy among public facilities. Second, it is important for spreading the environment-friendly idea. Schools are not only places for pupils to study but also familiar facilities to local people, so schools have a big influence on their attitudes. Lastly, it can lead to a disaster measures. Schools are regularly assigned as emergency evacuation centers. Thus, natural energy, which could be used on occasional blackouts, is important. However, the budget for Eco-School Program is limited because of the severe financial condition these days and that limitation is a large obstacle to the project. (Report by Saito)

1月12日(第11週)奈尾信英先生紹介January 12, 2012 Talk by Dr. Hideaki Nao

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奈尾信英 Nao, Nobuhide
東京大学大学院総合文化研究科講師

今日、都市人口の増加とそれに伴う都市の貧困化は、世界規模で展開しています。われわれが住んでいる都市環境を持続させるためにはどうすればよいのか、本講義を通して考えていきましょう。

1966年、東京生まれ。 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程(建築意匠)修了。博士(工学)。 専門は、建築設計学:都市建築意匠論・都市建築空間史・図学史。 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻客員研究員を経て、現在、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系情報図形科学部会(図形科学Iおよび図形科学IIを担当)。青山学院大学理工学部、芝浦工業大学工学部、東京電機大学理工学部、東京家政大学家政学部、日本大学生産工学部、国士舘大学21世紀アジア学部、国立東京工業高等専門学校情報工学科、兼任講師。 大学共同利用期間法人人間文化研究機構総合地球環境学研究所研究メンバー。
参照サイト
オランダのサイトを中心に、都市建築に関する参照先を紹介していただきました。

About Urban design with Dr. Nao

Our team gathered information about Dr. Nao. He is specialized in architecture in the University of Tokyo, and these days he is engaged in urban design. He wrote a report named “Urbanism Projects of the 90’s.“In this report, he studied urbanization in Rome, Berlin, Paris, and so on. Reading this report, we realized that he valued both artistic design and sustainability. He has given a message saying that today, the number of people living in cities is increasing and consequently the poverty would get worse in many parts of the world. He invited us to ponder how we can maintain the environment of the growing cities.

Urban designs which are caring the environment and historical scenery have become more successful in Europe than in Japan, so I would like to compare these several countries in Europe with Japan, and see the circumstances of the cities in the Netherlands, confirming whether the theories I’ve learned can be applied to the real issues in cities.

(Report by Ikeda)

11月10日(第5週)田村正道氏紹介November 10, 2011 Talk by Masamichi Tamura

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田村正道 Tamura, Masamichi
(株)類設計室 ディレクター

21KOMCEE(理想の教育棟)建設プロジェクトは、東京大学の先生方や職員の皆さん、そして私たち設計者を含め、多くの関係者による協働作業として進められました。21KOMCEE(理想の教育棟)の建築設計にあたっては、「アクティブ・ラーニング」「周辺環境との共存」「ゼロ・エネルギー・ビル」の3つをコンセプトとし、理想の教養教育の場にふさわしい空間デザインと環境技術のあり方を追求してきました。 ゼミ当日は、21KOMCEE(理想の教育棟)建設プロジェクトにおける思考と実現の軌跡を紹介し、それらを通して、人、環境、建築・都市計画の調和のあり方について、その一端をお話できればと思います。

現代社会は、地球環境危機と循環型社会への転換、災害への備え、経済危機への対応等、多くの課題を抱えています。建築・環境分野のみならず、あらゆる仕事において、これらの社会的課題に真摯に向き合い、答えを出していくことが求められます。そのためには、自然の摂理に学ぶこと、歴史や先人の経験に学ぶこと、そうした学び続ける姿勢がとても大事なのではないかと感じています。 皆さんとお会いできることを楽しみにしています! 1962年 京都生まれ 1985年 東京芸術大学美術学部建築科卒業 1985年~類設計室、現在、東京設計室ディレクター
主な設計実績
東京大学工学部新2号館、同工学部新3号館 日本大学文理学部新教室棟、同生物資源科学部60周年記念棟 さいたま地家裁熊谷支部庁舎、甲府法務総合庁舎、浦安市立高洲小学校 など

参照文献・Webサイトなど

21KOMCEE(理想の教育棟)掲載誌
類設計室
Mr. Masamichi Tamura is an architect of RUI SEKKEISHITSU Co., Ltd., who designed and supervised the construction of the 21 KOMCEE. In order to design an ideal building for education, Mr. Tamura sought some hints in the history of universities. At the beginning, an institution for higher education was a place not only to learn, but also to live. At that time, learning and culture advanced dramatically by exchanging diverse ideas through the life in ashrams. The 21 KOMCEE is designed to be the environment like the root of higher educations. The architectures also considered harmony of the 21 KOMCEE with other buildings in Komaba Campus. There are mainly 3 points to which the designers paid attention. First, it was designed to be a low building, and a basement was utilized in order to keep a good landscape of the campus. Second, the established position of the building was set to maintain the path of traffic in the campus. Third, the architectures and the constructors paid a lot of efforts to devise the shape and exterior in consideration for not cutting a large symbolic tree nearby the building but for harmonizing with it. The leading-edge technology is applied to the 21 KOMCEE aiming at Zero Energy Building (ZEB). The air conditioning system using geothermal heat, lighting apparatus, double skin window system and more are controlled by the AI network which comprises the Building and Energy Management System (BEMS). (Report by Kaneko)

12月8日(第8週)磯部雅彦先生紹介

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磯部雅彦 Isobe, Masahiko
TSCP室長 東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻教授

地球の持続性を確保するためには、省エネルギーが不可欠です。 本講義では、大学における省エネルギーの試みを幅広く紹介します。

1975年 東京大学工学部土木工学科卒 1981年 工学博士(東京大学) 1983年 横浜国立大学工学部土木工学科助教授 1992年 東京大学工学部土木工学科教授 1999年 東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻教授 2006年から東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻教授として現在に至る 2009年4月から2011年3月まで副学長
専門分野
海岸工学、沿岸域環境
著書
海岸環境工学(東大出版、共著)、海岸波動(土木学会、共著)、海岸の環境創造(朝倉書店、編著)等
主な社会活動等
日本沿岸域学会理事・会長、土木学会理事・副会長等を歴任。 現在、内閣府総合海洋政策本部参与、中央防災会議専門調査会委員、社会資本整備審議会・交通政策審議会交通体系分科会計画部会委員、交通政策審議会港湾分科会防災部会委員、海岸における津波対策検討委員会委員長等。

参考資料

駒場祭での学術企画

カテゴリー: ZEBLOG

「理想の教育棟」ゼミで、2011年の駒場祭に出展を予定しています。
企画名
「理想の教育棟」サステイナブルキャンパス発信ゼミ
団体名
教養教育高度化機構
企画内容の説明
21 Komaba Center for Educational Excellence(21 KOMCEE/通称:理想の教育棟)に込められた数々な工夫や試みを、写真やパネルでゼミのメンバーが解説します。 キーワードは「学びの空間」「知の泉」「Zero Energy Building (ZEB)」です。

スタジオ教室・什器搬入中

カテゴリー: KOMCEE建設

9月22日の木曜日に、スタジオ教室に什器が搬入されています。 床を汚さないように、ブルシートを敷いて机の部品を運んでいくようです。 すでに、ゴミ箱が設置されていました。 机をひとつひとつ組み立てています。建物の完成には、影ながら多くの人々が関わっています。お疲れ様です。 四角い机が、この教室の机になるようです。ゆったりとした机になっているようで、グループワークはもちろん、独りで座ることもできそうです。 上下に昇降する教卓が納入されています。どうやら、3つに分割できるようです。写真の奥の方では、ホワイトボードを組み立てている様子をみることができます。 作業が一段落したら、椅子がスタジオに納入されるようです。

オープンスペースアリーナ(002)

カテゴリー: KOMCEE建設

9月22日の木曜日に、地下一階のオープンスペースアリーナ(002)に什器が搬入されており準備が進められています。 大型の液晶ディスプレイが2台設置され、プロジェクターとスクリーンも完備されており、レクチャーにも最適です。1 階部分まで吹き抜けの開放的なスペースで、天井には石井リーサ明理さんの手による照明「輝迸」が設置されます。 オープンスペースアリーナ(002)から続く、天井までの高さが10メートルを超えるガラス張りのエントランスホールです。学生の滞在学習スペースとしても機能します。天井には石井リーサ明理さんによるオリジナルの照明「光湧」が設置され、屋上は緑化されます。 現在は、今月末の竣工披露式典の準備が進められていると聞いています。

(教養教育高度化機構 林)

地下一階・什器搬入中

カテゴリー: KOMCEE建設

9月22日の木曜日に、地下一階のカフェテリア KOMOREBIにカフェ用の什器が搬入されました。まだ、カバーが取り付けられていますね。 大きなテーブルを取り囲むようにに、ゆったりと座ることができる椅子が4脚ずつ設置されています。ゆっくりとお茶を飲みながら談笑するのもよいでしょうし、コーヒーを飲みながら、PCを広げて作業することもできるでしょう。いろいろな出会いの場所と機能してくれることを期待したいです。 このカフェテリア KOMOREBIの特徴は、石井・リーサ・明理のデザインによる照明です。居心地の良いカフェテリアのために、特性デザインの「木漏れ日プレート」という照明が設置されています。 その照明デザインについては、広報チームの学生が石井さんにインタビューしていますので、そちらをお読み下さい。  石井・リーサ・明理氏、3. カフェテリア/夜の顔 カウンターには、生協のカフェが入店する予定と聞いています。レジやカフェの道具などが納入されており、準備が進められていました。

(教養教育高度化機構 林)

小宮山先生のインタビュービデオを公開しました!

カテゴリー: ZEBLOG

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=aVBUpokn-ts[/youtube] 小宮山宏先生の21 KOMCEEへのメッセージビデオを公開しました。 内容の説明については、こちらのページも参照して下さい。

21 KOMCEE (理想の教育棟)・基本計画

カテゴリー: KOMCEE建設

東京大学駒場キャンパス「21 KOMCEE (理想の教育棟)」は、本学の特徴であるリベラル・アーツを主体とした1,2年生の学部教育の拠点として、ICT支援型協調学習空間と共有スペースからなるⅠ期棟、理系基礎実験施設と一般講義室からなるⅡ期棟で構成され、学びやすさと環境に配慮した総計12,000平方メートルの教育施設として計画されました。基本計画は以下の通りです。
  1. 滞在型の学習空間を実現するために、学生の利用率が高いコミュニケーション・プラザとの空間的な連続性、意匠的な一体感を確保しています。
  2. キャンパスの景観を保全するために、低層建物としています。
  3. 省エネルギー・環境安全管理・緑化や樹木保存を含め、環境と安全に配慮します。
  4. キャンパス計画の軸線(道路軸)に従って配置しています。
  5. 容積率を確保するために、積極的に地下を利用しています。
  6. 最先端の教養教育を体現する先進的施設とします。

地下一階・機械室

カテゴリー: KOMCEE建設

普段中々目にすることができない、地下一階の機械室を見学してきました。 この機械室には、下記の機能を支える設備が配置されています。それぞれが、どのような役割をしているかまでは、理解できていませんが、快適な環境にするための空調設備です。地中熱と地下水の温度差を熱交換器を介して、冷暖房する仕組みになっています。 ・地下熱・地下水利用ヒートポンプ空調システム この空調システムは、一年を通じて、安定した温度16~17度の地中熱・地下水を利用して、空調を行います。外気の熱を利用するよりも、高効率となり省エネルギー化が期待できるとのことです。

(教養教育高度化機構 林)

地下一階・レクチャーホール工事進行中

カテゴリー: KOMCEE建設

地下一階のレクチャーホールの備え付けの椅子と机、プロジェクターの設置工事が10月5日(水)の一般公開に向けて進行中です。約200の座席があり、地下広場からもレクチャーホールの様子をうかがうことができます。また、全学共通無線LANサービス(utroam)が提供されており、インターネットに接続可能です。 プロジェクターが2台設置されます。また、スクリーンは、通常のホワイトスクリーンよりも鮮やかなコントラストを生み出す「外光吸収構造」のスクリーンを採用しています。これまでのスクリーンよりも、照明などの環境光などを吸収し、鮮明な映像を見ることができます。プロジェクターの接続端子は、VGA端子に加えて、HDMI端子を追加しており、デジタル化に対応しています。 工事状況は、今週にレクチャーホールの工事が完了して、残りはスタジオ教室の什器納入を残すのみとなりました。

(教養教育高度化機構 林)

ヒヴァ旅行記その1

カテゴリー: 旅行記

皆様こんにちは。

「中央アジア散歩」ゼミでは14日からのウズベキスタンでの現地研修を前に、一部のメンバーでオプショナルツアーを敢行中です。この旅程では、14日からの研修では行く機会の得られなかったヒヴァ・ブハラを訪ねることになっており、10日現在、誰もけがなどに苛まれることなく予定をこなしています。我々一同は9日にタシケントに入り、今日10日に国内線を利用してヒヴァ入りを果たしました。 ヒヴァはウズベキスタン西部に位置する古都であり、二重の防壁に囲まれたイチャン・カラと呼ばれる内城には宮殿やモスク、メドレセ(イスラームの神学校)などが多く立ち並んでいます。非常に狭い内城に中世の色をそのままとどめていることが評価され、「博物館都市」に指定されたほか、世界遺産にも登録されています。 今日は着いたばかりであまり多くの場所を廻ることはかないませんでした。しかしながら、先ほど述べたようにイチャン・カラ自体の面積は小さいため、少し城内を散策するだけでヒヴァがどのような空気を持つ場所なのかは理解できます。 イチャン・カラには今でもはっきりと立派な城壁が聳え立っており、かつての威光そのままに訪れる人を圧倒しています。城壁の内部は年季の入った土造りの建物が所狭しと重なるように建っており、路地を歩くとところどころで不意に荘厳なメドレセに出くわします。二本のミナレットが空を削るかのように高く聳え立っており、城内の至る所からその姿を拝むことができます。城内には時折鶏や犬の鳴き声が響き、観光客がさほど多くないことも相まって書き表せない空気を醸し出し、タイムスリップでもしたかのような気持ちにさせてくれる素敵な街です。夕方には熱さを嫌って外出を控えていた人達も次第に街に繰り出し始め、子供たちが畏れ多くも世界遺産の壁をゴールにサッカーをしています。 明日は城内を隈なくめぐり、報告をしたいと考えています。ネット環境は充実しておらず、定期的な報告ができるかは甚だ疑問ではありますが、可能な限り更新を続ける予定です。ではまた明日このブログでお会いしましょう。 文責:文科二類 藻谷

21KOMCEEとサステイナビリティをテーマにした自由研究ゼミナール

カテゴリー: KOMCEE建設

2011年冬学期には、21 KOMCEEとサステイナビリティをテーマにした全学自由研究ゼミナールも開講されます。 タイトルは「理想の教育棟」から世界標準のサステイナブルキャンパスを考える 魅力的な講師陣が予定されています。 また、ヨーロッパへのフィールドワークも計画しています。 授業の詳細については、ZEBLOGの記事を参照して下さい!

(教養教育高度化機構 坂口)

2011年冬学期 全学自由研究ゼミナールSeminar Syllabus 2011 Winter

カテゴリー: ZEBLOG

教養教育高度化機構では、2011年冬学期の21 KOMCEE(理想の教育棟)の授業利用開始に伴い、21 KOMCEEでのインタラクティブな授業から社会に対して成果を発信する全学自由研究ゼミナールを開講します。 チーム形成部門坂口菊恵とアクティブラーニング部門の林一雅先生がコーディネーターをつとめます。 テーマはサステイナビリティサステイナビリティとは、人間の生活に伴う環境負荷の低減から、少子・高齢化社会の問題、生物多様性の保護、食糧問題など多様な分野にわたって、持続可能な社会実現に向けて必要な活動をさぐる学問のテーマです。 今年度は、「理想の教育棟」という駒場に新しくできたシンボリックな建物をテーマに、教育施設の設計から低環境負荷の実現や環境教育のあり方を考えていきます。 講義題目は「理想の教育棟」から世界標準のサステイナブルキャンパスを考える木曜5限(16:20-17:50)に、K303(21 KOMCEEスタジオ教室)で開講します。 ゼミナールでは、こうした問題に対し第一線で実務や研究に携わっておられる方々を講師としてお呼びします。 ただ講演をうかがうだけではなく、講師の方々が話題とされるテーマについて学生の側が自分たちで調べておくことで、疑問点を率直に投げかけ、活発な議論が進むことを期待しています。 講師陣の方々・予定されているトピックは以下のようです。
第1週 (10月6日)
坂口菊恵特任講師・林一雅特任助教 ゼミナールの進め方に関するガイダンス
第2週 (10月13日)
グループワーク (駒場)
第3週 (10月20日)
高見英樹 文科省大臣官房文教施設企画部施設助成課課長補佐 日本の学校施設のエコ化について
第4週 (10月27日)
コクヨとのグループワーク (駒場)
第5週 (11月10日)
田村正道 類設計室一級建築士 21 KOMCEE建築意匠に込められた工夫
第6週 (11月17日)
コクヨとのグループディスカッション (駒場と品川をつないで)
第7週 (12月1日)
大岡龍三 生産技術研究所教授 地中熱利用によるZero Energy Building実現
第8週 (12月8日)
磯部雅彦 TSCP室長 東京大学のサステイナビリティキャンパス化への取り組みと21 KOMCEE
第9週 (12月15日)
グループワーク (駒場)
第10週 (12月22日)
大倉紀彰 環境省環境保健部企画課課長補佐 低炭素まちづくり:水俣全体をキャンパスにサスティナブルな地域を考える
第11週 (1月12日)
奈尾信英 広域システム科学系情報図形科学講師 建築意匠・環境負荷軽減を考慮したヨーロッパの街づくり
第12週 (1月19日)
住 明正 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構教授 地球温暖化について/サステイナビリティ学とは何か
第13週 (1月26日)
グループワーク (駒場)
春休みに、1週間程度オランダへのフィールドワークを予定しています。 随行人数については人数制限をする可能性があります。
参加者全体に対する人数制限は特に設けません。 参加者はゼミナールで得た知見を授業のウェブサイトや駒場祭での展示などを通じてプレゼンテーションすることが求められます。授業時間外の作業も必要になります。

成績評価法

授業への参加、プレゼンテーション

教科書

  • 小宮山 宏 『低炭素社会』幻冬舎新書

参考書

  • 小宮山 宏 『地球持続の技術』岩波新書
  • 今泉 みね子『ドイツを変えた10人の環境パイオニア』白水社
In line with the opening of the 21 Komaba Center for Educational Excellence (21 KOMCEE), an interactive seminar which communicates with wider society taking advantage of the new facilities will be held by the faculties for Komaba Center for Educational Excellence (KOMEX) .

Coordinator

Kikue Sakaguchi: Junior Scholars Collaborative Initiative, KOMEX Kazumasa Hayashi: Division for Active Learning and Teaching, KOMEX

Key words

Sustainability, Active Learning, Architecture Design, City Planning Sustainability is a key word which integrates various academic fields tackling for the realization of sustainable society―the reduction of environmental burdens, how to respond to the declining birthrate and the aging society, conservation of biodiversity, solution to food problem, and so forth. The aim of this seminar is to study strategies for realization of lowering environmental burdens and prospects of environmental education from the perspective of educational facility planning. The 21 KOMCEE, the newly build symbolic structure in Komaba campus, will make a good theme for our study. Therefore, we placed Study Worldwide Model of Sustainable Campus, Starting from the 21 KOMCEE on the agenda.
  • Hour: the fifth period(16:20-17:50), on Thursday
  • Place: K303, 21 KOMCEE
To gain knowledge which would be needed to study worldwide model of sustainable campus, starting from the 21 KOMCEE, we’ll engage the services of experts at the forefront of this filed as lecturers. Students are expected to make research on topic held by the lecturer so that there will be stormy discussion.

Schedule

1st week (10/6)
Guidance of this seminar Lecturer Kikue Sakaguchi; assistant professor Kazumasa Hayashi
2st week (10/13)
Student’s discussion and work@KOMABA
3rd week (10/20)
Eco friendly design of school buildings in Japan Hideki Takami from the Ministry of Education, Culture, Sport, Science and Technology
4th week (10/27)
Pre-group work with KOKUYO FURNITURE Co.,Ltd. @KOMABA
5th week (11/10)
Ingenuity exercised in constructing and designing the 21 KOMCEE Masamichi Tamura first-class registered architect from RUI architect’s office
6th week (11/17)
Online group discussion between students@KOMABA and business persons@ KOKUYO FURNITURE Co.,Ltd., Shinagawa, on 2012 KOKUYO Faire
7th week (12/1)
Realizing Zero Energy Building by utilizing geothermal energy Professor Ryozo Ooka from the Institute of Industrial Science, the University of Tokyo
8th week (12/8)
What the University of Tokyo has grappled with sustainablizing their campus, and the construction of the 21 KOMCEE Professor Masahiko Isobe the general manager of TSCP (Todai Sustainable Campus Project)
9th week (12/15)
Student’s discussion and work@KOMABA
10th week (12/22)
What Japanese government has achieved as a countermeasure for global warming Noriaki Okura from the Ministry of Environment
11th week (1/12)
Learn from town planning in Europe from the perspective of design and ecology Lecturer Nobuhide Nao from the Department of General Systems Studies, the University of Tokyo
12th week (1/19)
What is sustainability as an academic filed?/ all about global warming Professor Akimasa Sumi TIGS (Transdisciplinary Initiative for Global Sustainability) chief director, AGS (Alliance for Global Sustainability) promotion general manager, and IR3S (Integrated Research System for Sustainability Science) professor as an additional post
13th week (1/26)
Student’s discussion and work@KOMABA
Fieldwork in the Netherlands for about a week is planned when this semester is over. There might be limitation of numbers for this fieldwork but not for the seminar itself.
Students are required to give presentations about what you’ve learned through the seminar. For your presentation, our website or KOMABA Festival will offer the opportunities.

Evaluation

Evaluation will be based on your attitude in the seminar and your presentation.

ウズベキスタンの食文化(後編)

カテゴリー: 全般

後編になります。 「ナン」「チャイ」 続いて、「ナン」です。 (左:ウズベキスタンのナン 右:インド料理で有名なナン)           「ナンなら知ってるよ〜」という方も多いのではないでしょうか。インド料理で食べたことあるから知っているという方、ウズベキスタンのナンは都内インドカレー店で出てくるお馴染みの「ナン」とは少し異なります。丸く焼かれたものが多く、乾燥地域のため、保存食としても用いられています。湿気の多い日本で放置していたらすぐにカビてしまいますね。少し蛇足になりますが、ウズベキスタンは乾燥した気候を生かして、ナン他、ドライフルーツなどの保存食が親しまれています。メロンのドライフルーツなどが有名なようで、実際授で食べてみましたが、噛んでいるとじわじわとメロンの味がしみ出てきます。ナンに戻ります。外観の特徴としてウズベキスタン東部は分厚く見た目も綺麗なナンが多いのですが、西に行くに連れて、薄く平になっていきます。サマルカンド地方のナンがおいしいと言われています。プロフと同じく、地方ごとの違いが楽しめる料理ですね。 最後に「チャイ」です。                   日本のインド料理ブームによって、「チャイ」についても相当有名になっているのではないでしょうか。チャイ=お茶 という認識で大丈夫です。油っぽい料理が多いウズベキスタン料理ですが、そんな食事に必ずといって言いほどついてくるのがこの「チャイ」です。急須にお茶碗という日本らしい食器が一般的です。食事の際にはブラック(紅茶に近い)かグリーン(緑茶に近い)から選べる事が多い。インド料理などで出てくるチャイのようにミルクが入ったというものではなく、   福井の食文化についての報告は以上になります。 文献が非常に少なく(学術論文についてはさらなりですが)、現地でのリサーリが大変楽しみです。 以下、所感です。 ほとんどの日本人が「ウズベキスタン?どこそれ?」というのが現状だと思います。実際自分自身もこの授業を取る以前はあまり中央アジアに対する知識はありませんでした。授業では食文化を中心に(間下君と二人だけで…)調べてきましたが、印象としては、思っていた以上に日本に近い部分を持つ国だということです。きっと中国に近いと言った方が適切なのでしょうが。うどん(ラグマン)にチャーハン(プロフ)、緑茶(チャイ)に串焼き(シャシリク)など、日本人に馴染みやすい料理が多いようです。けれども、経済的、人的交流は非常に乏しい。比較的近い場所にあるトルコに行ってきたという人は多いですが、ウズベキスタンに行ってきたという人はあまり見かけません。ウズベキスタンはウランや石油など資源が豊富です。話によると、ウズベキスタンには中国、韓国の人が非常に多いようです。けれども日本人は非常に少ない。アフリカなどの資源のある国でも同じような現象が起きてるのは、有名ですね。単純に同様な状態であると決める事はできないでしょうが、ウズベキスタンと日本の関係を見る事は「日本の外交」を再考する一つのアプローチに成り得るのではないでしょうか。今回の研修では、ウズベキスタンと日本の関係強化についてまず考え、そこから更に一般化できる何かを考えることができたら有意義なものになるのではないかと考えています。余談になりますが、ここ一週間ほど沖縄に旅行に行っていました。勿論、同じ日本人なのですが、気質も、食文化も東京と大きなギャップを感じました。特に食に関しては、山羊、イルカ肉、豚足、海蛇、油みそなど、食べ慣れないものに多く出会いました(イルカを除いて非常に美味しかったです)。ウズベキスタンは陸続きなので、日本ほど地方ごとの差異があるとは思えませんが、上でも書いたように、こうした同国内での食文化(にとどまらずできれば様々な文化)の差異には是非とも注目していきたいと思っています。 文責 文科二類二年 福井康介

ウズベキスタンの食文化(前編)

カテゴリー: 全般, 食文化

どうも、遅ればせながら食文化担当の福井です。 ウズベキスタンで有名な料理をピックアップして紹介したいと思います。 「プロフ」「ラグマン」 まずは「プロフ」について書きたいと思います。 (左:プロフ 右:カザンで炒められているプロフ) 「プロフ」は、お祝いの席などで出る米料理で「カザン」と呼ばれる特殊な鍋で作られます。「カザン」は家庭用の小さなものから、数百人用の大きなものまで様々な大きさのものがあります。「プロフ」で米料理っていえば、みなさんご存知、あの料理名に似てるなと思った方もいるのではないでしょうか。そう、「ピラフ」です。プロフもピラフも似たような料理で、トルコではピラフ、ウズベキスタンではプロフ、ウイグル地方ではポロなどと呼ばれるようです。調理方法としては、カザンにたっぷり綿花油を入れ、お米、羊肉、にんじん、たまねぎなどをじっくり炒めるという非常にシンプルなものです。地方によって、赤いにんじんを使う地域や、黄色のにんじんを使う地域、またその両方を使う地域などがあり、同じ料理であってもその見た目は微妙に異なります。地域による見た目の違いには、盛りつけ方も影響しています。具と米をチャーハンのように混ぜてしまう地方や、米の上に炒めた野菜を盛りつける地方など、プロフを食べているだけでもその地域地域の変化を楽しめるのではないかと思います。街中でプロフを食べる場合の注意点として、なるべくその日の早い時間帯に食べるということがあります。先ほど書いたように、プロフはたっぷり鍋に油を注いで作ります。ということは、午後になると、下の方にある油に浸かったようなプロフを食べることになり、日本食を食べ慣れている日本人には少々辛いものがあるようです。 続いては、ウズベキスタンに行った日本人に大人気の「ラグマン」です。 (左:ラグマン 右:日本の肉うどん)                   先に書いた「プロフ」と違い、「ラグマン」とだけ聞くと、何のことやらさっぱり分からない方も多いのではないでしょうか。ラグマン(ラグメンと呼ばれることも)は、日本の肉うどんによく似た麺料理で、讃岐うどんのようなコシのある麺が特徴です。ここでも肉としては、羊肉が主に用いられます。見た目も味も日本人が抵抗を受けない仕上がりになっているのが人気の要因ではないしょうか。内地に行くと、どんぶりのようなお椀で汁に浸ったラグマンもあるため、さらに肉うどんに似た様相を呈してきます。詳しい調理方法や材料については、このブログの初期に書いた記事を参考にしていただければと思います。 文科二類二年 福井康介

東京大学の節電とサステイナビリティに関する組織

カテゴリー: ZEBLOG

東京都では以前から大規模事業所の温室効果ガス排出削減に向けて、総量削減義務など目標・条例を設定してきました。 今年は東日本大震災の影響により、よりいっそう積極的な節電対策が求められているのは皆さんご存じの通りです。 東京都内有数の大規模事業所である東京大学も、電力危機対策チームを作りさまざまな方略で節電に取り組んでいます。 大学各施設の電力使用状況がリアルタイムにwebで公開されているのをご覧になりましたか? 実は、電力危機対策チームや21 KOMCEE(理想の教育棟)のZero Energy Buildingへの取り組みに限らず、キャンパスの環境対策に関する部署は東大内のあちこちに存在しています。 21 KOMCEEで、電力消費をモニタリングする人工知能システムをはじめさまざまなZEB施設の設置にかかわってきた生産技術研究所野城研究室の技術が、上記の東京大学全体における電力使用モニタリングにも活かされています。野城智也先生は東京大学生産技術研究所の所長を務めていらっしゃいます。 また、21 KOMCEEの建設計画を立てられた前東京大学総長・小宮山宏先生(現三菱総研理事長)は日本でのサステイナビリティ学創設・普及に取り組んで来られました。
この取り組みに関連し、東京大学にはサステイナビリティに関する次のような組織があります。
サステイナビリティは特定の組織や大学のみの努力で達成できるものではありません。IR3Sは国内外の複数の大学の研究拠点や協力機関により構成されています。機構長は東京大学総長です。設立の経緯に関しては『サステイナビリティ学への挑戦』をご覧下さい。
IR3Sの一員である、東京大学におけるサステイナビリティ研究拠点がTIGSです。
「人間地球圏の存続を求める大学間国際学術協力 東京大学AGS推進室」は、東京大学と海外の大学の研究拠点をむすぶ国際連携活動の中心組織です。
AGSから派生し、学生の教育プログラムとして東大が中心となって続けている国際交流活動です。

環境問題に関するサークル・学生団体

東京大学の、環境問題啓発系のサークルには以下のようなものがあります。

主題科目(テーマ講義)

環境三四郎では、例年前期学部生向けの主題科目講義(テーマ講義)である「環境の世紀」を企画しています。最新の情報に関しましては環境三四郎のウェブサイトをご覧下さい。
わたしたちも、2011年冬学期に21 KOMCEEを題材としたサステイナビリティ関連の全学自由研究ゼミナールを企画しています。内容は追ってお知らせしますのでお楽しみに(U-Taskで既にシラバスが見られるかもしれません)!

(教養教育高度化機構 坂口)

統計からみるウズベキスタンと日本比較

カテゴリー: 中央アジア散歩

日本人はウズベキスタンについての知識が圧倒的に足りない。このことは、観光班がウズベキスタンの観光産業を日本に広める方法について話し合った時も何度も話にあがっていたし、周りの人々に「ウズベキスタンに行く」と言った時の反応を通じてもみなが感じていることだと思う。そこで今回は、ウズベキスタンの生活の実情を知るにあたって、少しでも足しになればと思って統計を持ち出してみる。統計にも多種多様のものがあるが、そのなかからいくつかをピックアップして、日本と比較することでウズベキスタンについて考察してみたい。 まずは、経済班も調べていたが、経済を図る指標になるとされるいくつかのものから。 1.インターネット普及率 日本:75.40% ウズベキスタン:9.08% (世界平均23.44%)(2008年) 最初に国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)が発表しているインターネット普及率を調べた。2008年と少し古いデータになってしまうが、日本が75.40%であるのに対してウズベキスタンが9.08%とかなりの差がでている。世界平均の23.44%から比べても非常に低い数値であることがわかる。インターネット普及率が低いということは高度に情報化された現在の社会から取り残された人々が多いともいえる。コンピューターなどの通信機器の普及率なども今後調べて、ネットインフラの現状について調べてゆきたい。 2.報道自由指数 日本:2.50(世界第11位) ウズベキスタン:71.50(第163位)(2010年) 国境なき記者団が発表している報道自由指数。数値が低いほど報道が自由に行われているとされている。第一位はフィンランドで、上位には北欧や西欧の国々が並んでいる。日本は第11位で、もちろんまだまだ課題はあるだろうが、2008年6.50→2009年3.25→2010年2.50とどんどん報道自由度数が上昇しており、日本の報道の自由は評価されているといえよう。一方、ウズベキスタンは71.50とほぼ最低ランクである。これについてJICAの企画部によるウズベキスタン共和国に関するまとめによると、 「ウズベキスタンにおいては、政府機関による情報公開が制限されているため、国際機関等にとって信頼性のあるデータが入手し難い状況となっている。政府機関から定期的に発表される統計データ或いはその関連刊行物はほとんど存在しない。これは経済データは政治的に高い機密性を要するという考えによる。政府側の目的をもって発表されるデータはあるものの、作為的な側面が大きく、定期的な定型フォーマットによるデータ公開は行われていない。例えば、国家予算・支出は国民には未だ公表されていない。このたま、世銀、EBRD、OECD等国際機関は、政府発表の数少ないデータに頼らざるを得ず、信頼性に欠けており、まだそれらのデータの間には一貫性が見 られない」 とされており、旧ソ連の影響であろうか、ウズベキスタンの情報統制という負の側面がうかびあがる。ちなみに、周辺のカザフスタン、キルギスもウズベキスタンと同じくらい報道の自由度が低いとされており、みなさんの想像通り北朝鮮:104.75、イラン:94.56、中国:84.67といった国々も自由度が低いという結果になっている。 統計からウズベキスタンを読み解こうと試みたにもかかわらず、統計が信頼できないといわれては元も子もないのだが、とりあえず統計の数値は信じることにして、次の統計を見てみよう。 3.識字率 日本:99.0%(第21位) ウズベキスタン:96.9%(第63位)(2008年) 国際協力事業団(JICA)が発表している識字率の統計である。識字率は教育指数を図る上で重要な要素で、生活の質や経済発展の指標にもなる。日本との大きな差がみられたインターネット普及率や報道自由指数とは一転、ウズベキスタンの識字率はかなり高水準にある。中央アジア諸国はカザフスタン:99.6%、タジキスタン:99.6%、トルクメニスタン99.5%と各国ともに高水準にあり、そうした他の中央アジア諸国に比べればウズベキスタンは若干低いが、アフリカ諸国や西アジア諸国と比較して経済発展の度合を考慮すれば、興味深い結果である。こうした識字率はOECD諸国並で、就学率も高いとされている。これは逆に旧ソ連の社会主義国時代から引き継いだ正の遺産なのであろうか。 4.自殺率 日本24.9(2010年) ウズベク:4.7(2005年) よく見る統計ばかりでは見あきた人もいると思うので経済指標ではない少しマイナーな指標も取り扱う。自殺率とは10万人あたりの自殺者数を計算したものである。WHOが発表したもので、日本とウズベキスタンで調査年が違うので、正確に比較することはできないが、日本が24.9であるのに対し、ウズベキスタンが4.7とウズベキスタンの自殺者が少ないように思われる。一般的に日本と韓国は自殺率が高いとよくいわれるが、WHOの統計によると確かに韓国は2位、日本は5位で自殺大国といえよう。自殺を禁じているイスラム諸国は自殺率が低い傾向にあり、ウズベキスタンもイスラム教の影響を受けた結果といえそうだ。ただし、隣国のカザフスタンの自殺率が26.9で世界第三位にランク付けされているのが非常に興味深い。こうしたウズベキスタンとカザフスタンの自殺率の差の要因をひきつづき調査してゆきたい。 5.平均寿命 日本:82.7歳(1位) ウズベキスタン:67.7歳(127位)世界平均67.6歳 2005年から2010年にかけての平均寿命についての調査結果である。日本が世界第一位の平均寿命を誇る長寿国であるが、それに対してウズベキスタンの平均寿命がどのくらいなのか調べてみた。 上記のとおり、ウズベキスタンは世界平均より少し上の67.7歳で、これには水の衛生状況が悪かったり水不足だったりすることが大きく関連していると思われる。 最後であるが、ウズベキスタンの軍事についても少しふれておこう。ウズベキスタンの軍事力は以下の通りである。
総兵力67,000人(陸軍50,000人、空軍17,000人)、準兵力20,000人 独軍が駐留
(出典:外務省HPhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/area/uzbekistan/data.html ミリタリー・バランス2010年)
ドイツ軍が駐留しているのが興味深い点である。ウズベキスタンは徴兵制があり、18歳~27歳の健全な男性が1年もしくは1ヶ月兵士として働く義務がある。1年従事した場合は国からお金が与えられ、もし従軍の期間1ヶ月に短縮した場合は国にお金を払うというシステムになっている。富裕層ほど従軍期間が短くなるのであろう。
以上、ウズベキスタンについての基本知識ではあるのだが、日本と比較するなかで一見矛盾するようなウズベキスタンの興味深い一面が垣間見えた。現地におもむくことで、こうした統計をふまえて実際の状況を詳しく調べたい。
文責:文科二類2年 斉藤江里
 

ウズベキスタンの経済体制に関する小考

カテゴリー: 全般

前回まではブックレポートや、ウズベキスタンでの日本紹介の為のFWについて書いた。しかし私のブログ記事ではまだウズベキスタン自体について記していなかった。そこで今回はウズベキスタンの経済について記して見ようと思う。 ウズベキスタンの基本情報を述べると、人口は2600万人でCIS諸国の中で最大の人口を誇っている。産業としては、特にソ連時代から綿花産業に代表される軽工業が盛んである。 ソ連崩壊後、多くの国が急進的な経済改革を行ったことで多くの国で混乱が生じた中、ウズベキスタンのカリモフ大統領は共産主義体制から資本主義体制への「漸進主義」を掲げ、他のCIS諸国とは異なる独自路線を歩んできた。この政策の中では、共産主義体制から資本主義体制への緩やかな移行が図られた。例えば、他のCIS諸国が経済的に混乱する中、ウズベキスタンは比較的堅調な経済を維持していた。例えば、ソ連崩壊後のGDP堅調は比較的堅調であったし、CIS諸国の中で大きな影響を及ぼしているルーブルの暴落(ルーブル危機)が起きた時にも、ウズベキスタンへの影響は限定的であった。 また当局による経済介入は貿易の抑制につながったため、国内産業の保護が実現した。具体的には、ウズベキスタンにおいて農業は貿易抑制による恩恵を受けた。 しかしこうした状況にも近年、問題が起きていることも事実である。ウズベキスタンとる漸進主義が、ある種の限界を示しているということだろう。では一体、どのような点で漸進主義の限界が現れているのだろうか? その一例として挙げられるのが、国と企業の関係である。政府は漸進的に資本主義的な市場へ移行する方策として、企業の管理システムの変更や、所有法に代表されるような、 政府は資本主義的な市場へ移行する方策として、管理システムの変更、「所有法」に代表される私有化促進の法体系、価格自由化などの改革を行った。 しかしながら実際は、様々なところで資本主義市場に移行したとは言えない側面がある。例えば、不当な価格付けを防ぐとの名目で政府が市場介入を行ったり、政府が規制を働かせる事によって事実上貿易を制限したりしている。また、株式会社化が未完了であるなど、まだまだかなりの、国による統制が存在していると言える。 また漸進主義の弊害は、金融部門においても存在している。ウズベキスタンでは長期に渡って、公式レートと非公式レート(所謂闇レート)が存在していた。国営企業の中には、2つのレートの価格差を利用して利潤を得ていた企業も多かったため、輸出状況が改善しないなど多数の問題が発生していた。 現在ではこうした2つのレートは統一され、IMF8条国にもなった。しかしながら現在でも非公式な為替レートが存在しているとの情報もある。こうした背景には、ウズベキスタンの通貨であるスムが安定していないという要因がある。 金融部門における他の問題点としては、銀行制度が未整備で、多くがまだ国有銀行であることも挙げられる。こうした背景には、まだまだ制度改変が進んでいないということに加えて、銀行制度を整備していくような人材が不足していることも挙げられている。こうした点に関しては、今後日本のJICAなどが積極的に支援してことのできる分野であると言える。 以上のように、政府と企業の関係、金融の2つの側面を見ただけでも、まだまだウズベキスタンが未成熟な経済体制を敷いていることがわかる。こうしたことが事実であるかどうかを、ウズベキスタンに訪問した際には確認してきたいと思う。 (文責:文科二類2年 西田夏海)

博報堂とのパートナーシッププログラム受講者募集!

カテゴリー: KOMCEE建設

今年10月に21 KOMCEEの利用が開始されます。現在、電気設備の工事などが進められています。 建物の利用計画もしだいに明らかになってきました。 こちらは、博報堂が東京大学と連携して行う商品やブランドなどの新しい価値を発想・構想する特別プログラム「ブランドデザインスタジオ」です。 参加を希望する方は、9月27日(火)と10月3日(月)に駒場17号館のKALSで説明会が開かれますので、忘れずに参加して下さいね!

(教養教育高度化機構 坂口)

祝日に見るウズベキスタン文化

カテゴリー: 全般

ウズベキスタンで行うプレゼンテーションの準備をみなさん各自進めているであろう。そのなかでも私は日本の文化・慣習・行事などを春・夏・秋・冬の四季にわけて紹介するグループに所属している。 日本の行事についていろいろと調べているなかで、ふと日本の「祝日」が日本の文化を象徴的に表していることに気付いた。祝日をみると、建国や独立といった国の歴史的事件やその国で大きな意義を持つ宗教的慣習が如実にわかる。 ということは、ウズベキスタンの祝日とその祝日が祝日たる由縁を調査すればウズベキスタンの文化やウズベキスタンの人々が重要視している行事について少しは理解が深まるのではないか。そう考えさっそくウズベキスタンの祝日について少し調査を試みた。 ますは、ウズベキスタンの祝日と比較しやすいように参考までに日本の「国民の祝日」を以下に記す。 1月1日 :元日 年のはじめを祝う。 1月の第2月曜日:成人の日 おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。 2月11日:建国記念の日    建国をしのび、国を愛する心を養う。 3月下旬の春分日:春分の日    自然をたたえ、生物をいつくしむ。 4月29日:昭和の日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。 5月3日:憲法記念日 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。 5月4日 :みどりの日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。 5月5日:こどもの日      こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。 7月の第3月曜日:海の日   海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。 9月の第3月曜日 :敬老の日 多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。 9月下旬の秋分日:秋分の日     祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。 10月の第2月曜日:体育の日     スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう。 11月3日:文化の日     自由と平和を愛し、文化をすすめる。 11月23日:勤労感謝の日 勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。 12月23日:天皇誕生日    天皇の誕生日を祝う。 (内閣府HP「「国民の祝日」について」より) 次に、ウズベキスタンで祝日とされているのは以下である。 1月1日 : 新年 Новый год 3月8日 :女性の日 День женщин 3月21日 :ナウルーズ Навруз 5月9日 : 戦没者慰霊の日 День памяти и почестей 8月30日 : ルザ・ハイート(断食明け大祭) Руза хайит 9月1日 : 独立記念日 День независимости 10月1日 :教師の日 День учителя и наставника 11月6日 : クルバン・ハイート(犠牲祭)Курбан хайит 12月8日 :憲法記念日 День Конституции (JETRO日本貿易振興機構HP「海外ビジネス情報 ウズベキスタン 祝祭日より」) 上記の日付は2011年のデータであり、春分の日にあたるナウルーズやラマダーン終了日に行われるルザ・ハイートは年によって日付が変わることもある。 1月1日に新年を祝うことや、春分の日を祝うこと、憲法記念日を祝うことなどは日本との共通点であろう。ただし、日本の場合には各行事のなかでも新年の行事に重きが置かれるのに対して、ウズベキスタンで重要視されるのは春分の日ナウルーズである。ナウルーズはペルシア語で「新しい日」という意味で、中央アジアからアフリカに至る広い地域で祝われている。ウズベキスタンでは3000年以上もの伝統をもつ行事であるようだ。長い冬を耐えて乗り越えて、やっと暖かくなり木々も目覚め始めるこの時期は農業的にも重要な意味を持ち、各地で音楽や舞踊のイベントが開かれるなど盛大に行事が行われる。家庭でも親戚中が集まって伝統料理の「スマラク」を作って食べる。 ほかにもラマダーン明けのお祭りであるルザ・ハイートや犠牲祭であるクルバン・ハイートはウズベキスタンの「イスラム教」的側面が強く感じられる祝日である。こうしたイスラム祭のときにはお祈りのあとに施しをあげたりもらったりする習慣があるようで、こうしら「施し」の文化に日本との違いを強烈に感じた。 興味深いのが、「女性の日」が存在することである。「女性の日」は国際婦人デーとも呼ばれ、女性のための祝日である。「女性の日」には男性が女性になにかプレゼントを贈る習慣がある。プレゼントはたいてい花であることが多い。日本でも、女性が男性にプレゼント、たいていはチョコレートを贈る行事、バレンタインデーが存在しており、少し似ている。ただしバレンタインデーは女性が好きな男性に自分の気持ちを伝えるという側面があるが、ウズベキスタンの女性の日もそういう側面があるのであろうか。とにもかくにも、この日は一年で一番花が売れるため、街の中心部のバザールには花屋の露店が立ち並ぶ。花の需要が多いため、商売の原則通り花の値段も高騰する。もし知り合いの女性みんなに花を贈るとしたら、男性は出費に頭を悩ます一日になりそうだ。 今回ウズベキスタンを訪問する祭は祝日を経験することはできないが、今度ウズベキスタンを訪れる機会があれば、祝日を経験しウズベキスタンの人々とともに祝日を祝ってウズベキスタンの文化に触れたい。 文科二類2年 斉藤江里

マハッラの移り変わり

カテゴリー: 全般

私は前回の記事では、「マハッラ」とはどういったものであるかについて書き、マハッラの住民同士のつながりの強さ、助け合いの精神は特徴的であると述べた。しかし、そういったマハッラの伝統的な要素は時代と共に変化している。今回の記事ではマハッラ内における変化について書いていこうと思う。     マハッラについて考える場合、帝政ロシア時代、ソ連時代とソ連崩壊後から現在の大きく3つに分けて考えることができる。今回の記事ではその中でもソ連時代とそのソ連崩壊後のマハッラについて書く。   まず、時代の変化とともに政府がどのようなことをしたか、次にその影響を考えようと思う。 ソビエト政府によりソ連が始まる前にマハッラが行っていた税の徴収や治安の維持などの各地の管理の権利が奪われたことや、集団農場(コルホーズ、ソフホーズ)の形成によって、行政面と経済面でマハッラの力は弱まった。しかし、ソ連以前から存在していたマハッラを完全に廃止することは、ウズベク人の反感が大きいと考えたソ連政府はマハッラを残し、それをソ連教育推進の為に利用しようとした。このように、ソ連時代には政権はマハッラに対して二重政策を行った。ソ連教育推進の代表的な例として、前回の記事でも紹介したチャイハネをソビエト政権への理解を深める場へとするために「赤いチャイハネ」に変えたり、ソビエトを支持する者を長老に認定し若者への指導をさせたことが挙げられる。そして、マハッラの持っていた権限はソビエト政府により徐々に奪われていき、ソ連の終わりごろにはマハッラの役割は政府機関の仕事の補助としかみなされなくなった。 ソ連崩壊後、ウズベキスタン政府はマハッラを保護すべきウズベキスタンの伝統と認識したため、マハッラを組織化し、予算や人材、任務などを与えて公式な組織とし、ソ連時代にはコルホーズやソフホーズが支えてきたインフラ、施設、住民生活などを市場経済の導入によりマハッラ運営委員会の負担とした。   ソ連時代の政策により、20世紀初頭に宗教の次に大事と考えられていたマハッラの社会における地位は1960年代のインタビューで五番目になったことからもわかるように確実に下がった。しかし、そういった政府からの抑圧の影響があったにも関わらず「ガプ」や「グザル」、「チャイハネ」、「ハシャル」などの仕組みやマハッラのモラルや教育的役割、イスラーム的な慣行はソ連時代を通して確実に受け継がれていた。これはマハッラ内の伝統的教育がしっかりしていたためであると考えられる。そういったソビエト政府の影響以外にマハッラに大きな影響を与えたのは第二次世界大戦と1966年に起きたタシケント大地震であった。第二次世界大戦の時にロシア系住民がウズベキスタンの特に新市街地に移住してきて、その人々が現地の人々の考えに影響を与え、マハッラの形も変化していった。タシケント大地震では、マハッラが最も支持されていたタシケントの旧市街が破壊され、旧市街の多くの住民は新市街へと離散していったことと、タシケント再建のために全ソ連から人々が集まりそのまま住みついたために、伝統文化が更に変わった。このようにソ連の政策と戦争や地震などが合わさり新市街地では特に顕著にマハッラの存在感は薄くなっていった。 ソ連崩壊後は政府からの抑圧はなくなった。しかし、公式化されたマハッラ委員会では、規模が大きく広範囲を管理しなくてはいけないにも関わらず与えられる財源が少ないことや、責任感から働く伝統的なマハッラとは異なり仕事をこなす職員的な存在になったことで、賄賂などの不正が横行していてお金のある人が助けて貰え、ない人の頼みは聞いて貰えなくなったとも言われている。また、マハッラが公式機関になるとマハッラ内の活動への参加が義務付けられる可能性が出てきている。これは各自の自由意思・利益に基づいて参加してきたマハッラの伝統に反することである。このようなことと欧米の文化の流入などにより、マハッラに対する思い入れは若い世代から弱くなっている。     時代の変化と共にマハッラの役割、マハッラに対する住民の思いは変化している。今、ソ連時代を生き残ったマハッラが国家行政機関となりつつあるが、マハッラは住民の自由意思により行われてきたからこそ長い年月ウズベキスタンで機能してきたと思う。これが国の下部組織になると、マハッラの住民助けが以前のような自発的な意思に基づく温かみのあるものではなく、行政サービスの一環となり、ハシャルなどのマハッラに見られる良さがなくなるのではないかと思う。 公式化されて間もないマハッラの役割はこれからもどんどん変化していくと考えられる。住民間に漂うマハッラ内の不正に対する不信感の排除や、マハッラを国家機関の一部とするか否かの決断などウズベキスタン政府がこれからどう対応していくのか見ていこうと思う。     現地に行った際には、ウズベキスタンの学生に彼らがマハッラをどのように思っているかについて直接尋ねてみたいと思う。私たちと同世代のソ連崩壊後を生きている彼らは欧米文化の流入やウズベキスタン政府のマハッラ政策に最も影響を受けていると考える。そのため、彼らの考えがこれからのウズベキスタンにおけるマハッラを考える際に役立つのではないかと思う。   参考文献:「マハッラの実像―中央アジア社会の伝統と変容」 ティムール・ダダバエフ 東京大学出版会 (文責:理科二類二年 栗原)

観光業について調査するにあたり

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なぜ観光業なのか。それは比較的アプローチのしやすい、文化交流および経済の活性化の術だと考えるからである。この夏休みを利用して、日本や世界各国の観光地をいくつか見てきた。本研修を終えた時点で、比較を交えながら自分なりの考察と提案ができれば、と思う。 一般にこの類のサービスは、売店やレストランをはじめとする現地の雇用創出、およびホテル建設等の二次的な興業効果が期待され、同時に貴重な外貨獲得源でもある。一方、観光地化することでごみ除去、インフラ整備等の必要性を生じさせ、とりわけ自然遺産においては環境の悪化も懸念事項となりうる。そこでまず政府当局がすべきことはこういった利益と費用の比較衡量、ということになるのが妥当だろう。 これをまずベースのモデルとしたうえで、次なるステップとしては当然現地の実情を考慮していくことになるわけである。時として異次元的である観光という産物がもたらしうる弊害も地域により様々であろう。 ガイドブック等を参照した感覚に頼れば、ウズベキスタンをタシケント・サマルカンド・シャフリサーブス・ブハラ・ヒヴァ・フェルガナ・コーカンド程度に観光地を区分していくのがスタンダードかと思われる。その際例えば、新市街を擁し、一定程度のサービス業および外部の人間の受け入れ態勢が整っていると思われる首都タシケントと、伝統的なマハッラの影響力が根強く残るフェルガナ盆地付近(ティムール・ダダバエフ「マハッラの実像ー中央アジア社会の伝統と変容」2006年、東京大学出版会173頁)とで観光業を同一視するのはいささかナンセンスとなる可能性がある。陶器やシルクといった名産品は観光客の目を引くだろうが、シルダリアの流域に広がるオアシス農業豊かな田園地帯がそこには伝統的に存在しているからだ。雇用の創出が農業から観光業への人的資源の流用であるとするとき、それが農業にとって不利益たりうる。(ジェームズ・マック「観光経済学入門」2005年、日本評論社143頁)また、相互扶助的性格も帯びる地域共同体の中において賃金が高めに設定される観光業とそうでない農業との間の格差は不協和音となり、よろしくないかもしれない。 (余談)タシケントに美術館・博物館が集積している様子は、ベルリンの博物館島を想起させるが、日本で得られる情報だけから察するに一つ一つの館がさほど魅力的ではなく観光向けとしてはあまり効果的ではない気もするのだが。 各々の地域特性を重視した観光スポットを設定した後で、ウズベキスタンという国の吸引力を高める工夫が必要になってくる。知名度をどう高めていくか、という議論は中央アジア地域あるいはもっと広範に旧ソ連地域ないしイスラム文化圏という括りの中でどのように差別化し、ブランド化を徹底させていくか、という話に帰結する。そこには国家の指針のような政治的問題が少なからず関与してくることや、国家主導ではどうしても産業は硬直的になりやすい、という特徴からなかなか難しい話でもある。加えて英語教育や近代的契約の普及をはじめとする対外的コミュニケーションの振興、航路の整備など問題は山積する。それでは少し手が出せないのでレイヤーを落として見ていくと、民間レベルだと例えばパック旅行のメリットを活かすこともできる。一般人がウズベキスタン、あるいはその都市をピンポイントで選好するケースは珍しいと言ってよく、個人旅行で欧米を旅する際に最低限のホテル等の予約だけ済ませて、後はノリでプランニングする、というような手軽さは無い。そこで、旅行会社がよく知られた国との旅行とセットにしたり、見どころを明瞭にする(典型的なのが世界遺産のアピールである)ツアーを組み、提示する、といった方法は今すぐにとることができそうなものである。 受け入れ側の意識の養成、ということも大事なファクターであり、一般人の現状の認識その他について調査できれば、と思っている。   (文:文科Ⅰ類2年 野崎拓洋)

文化の交節点としての中央アジア(後編)

カテゴリー: 中央アジア散歩

  14世紀末、中央アジアのトルコ人居住地域とイラン高原のイラン人居住地域にまたがるティムール帝国が成立してことによって、イラン=イスラム文化がトルコ人にも伝えられ、トルコ人を主体とするイスラム文化が形成された。トルコ人のイスラム化による文化の形成は11世紀のカラ=ハン朝に始まるが、それが開花したのがティムール朝であった。その中心と帝国の二つの都、サマルカンドとへラートが繁栄した。これらの都市には広大なモスク(イスラーム寺院)やマドラサ(学校)が建設され、さらにまた、宮廷では細密画(ミニアチュール)が描かれ、それとともにアラビア語をさまざまな書体で表現するアラビア書道が発達した。また文学ではすぐれたトルコ語(チャガタイ=トルコ語)の文学作品が生まれた。ティムール朝のトルコ=イスラム文化の多面性のひとつに、ウルグ=べクがサマルカンドに建設した天文台にみられるような独自の科学の発展も見られた。 今回はミニアチュールとチャガタイ=トルコ語について注目したい。ミニアチュールはもともと偶像崇拝の禁止されているイスラム世界で、コーランなどの写本を飾る装飾として生まれた。モンゴル時代のイランのイル=ハン国で中国絵画の影響を受けて始まり、ティムール朝の宮廷で最高の水準に達した。特にティムール朝末期のスルターン=フサインのヘラートの宮廷には、イスラーム世界が生んだ最高の画家と言われるビフザード(1450頃~1534)をはじめとする多くの画家が活躍した。このようにミニアチュールは中国という東方文化の影響を得て生まれた文化の代表的なものと言えるだろう。 次にチャガタイ=トルコ語について。中央アジアにおけるトルコ語の形成には、11世紀のカラ=ハン朝のカシュガリーによる『トルコ語辞典』の編纂から始まるが、このティムール朝時代のヘラートで活躍したアリシ―ル=ナヴァーイーが、「チャガタイ=トルコ語」を文章語として完成させ、現在「ウズベク文学の祖」として顕彰されている。またムガル帝国の創始のバーブルの自伝である『バーブル=ナーマ』も、すぐれたトルコ語文学として重要である。文化交流のなかで正式な言語の形成が行われたことは非常に興味深い点だと感じた。 シルクロードを中心として東西交流が盛んになり、後のティムール帝国によってサマルカンドをはじめとする中央アジアは繁栄を極めた。それらの交流を受けて作られた新たな文化は後の世界の文化的発展に大きく寄与したと言えるだろう。またモンゴルとトルコ、イスラムにイランという異なる様々な文化を混合することに成功した中央アジアという地の特殊性に私は非常に興味を持った。今回自らの足で直接中央アジアの地を踏みしめるに至っては、ティムールが夢見て実現した「青の都」に身を置きつつ、かつての豊かな文化交流に思いを馳せ、少しでもそれを肌で感じることができればと思っている次第である。   <参考文献> ・草原とオアシスの人々(人間の世界歴史) 護 雅夫・遊牧国家の誕生 (世界史リブレット) 林 俊夫 ・西アジア史2 イラン・トルコ 新版世界各国史・モンゴル帝国と長いそのあと 興亡の世界史  杉山 正明   二年文科一類 内藤めい

文化の交節点としての中央アジア(前編)

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「中央アジアってどんなところ?」 私がこのゼミに興味を持ち、学期を通じてこの地域について学ぶ端緒となったのはこの一つの素朴な問いであった。地理的な情報ばかりが頭を巡る中、突発的に「文明の交節点」という単語が閃く。普段生活していても中央アジアに接しその存在を強く意識することは無に等しかった私にとって、唯一とも言える接点は自分が学んできた世界史の教科書であった。この「文明の交節点」というタームに強く惹かれた私は、今までに学んできた中央アジアの歴史を軽く浚うとともに、教科書で取り上げられることで日本人学生に植えつけられているイメージを探りたいと考えるに至った。 まず一番に中央アジアの歴史と聞いて浮かんだのが「シルクロード」である。南ロシアの草原地帯から、カザフ高原、天山山麓、モンゴル高原、長城地帯を結ぶ大ステップ地帯をつらぬく最も古い東西交易路である。スキタイ、鮮卑、フン、アヴァ-ル、マジャール、突厥、ウイグル、モンゴルなどの遊牧騎馬民族の活躍舞台となっていた。草原の道では、機動力を利用した騎馬民族が東西に移動して支配権を争うと同時に、中継貿易も担っていた。しかし商業だけでなく彼らは情報の収集に熱心で、積極的に新しい文化を受け入れようとしたため、東西文化交流のうえで、直接・間接に大きな役割を果たした。南方のオアシス世界の定住民(ソグド人など)が貿易を直接担っていたのだが、強力な軍事力を持った遊牧騎馬民族が協力したことでスムーズに貿易を行うことが可能になったのである。 このシルクロードが歴史上重要視されているのは、彼らによって中央アジアがヨーロッパと中国を結ぶ文化の交節点とたし得た点である。具体的には世界史で学ぶ通り、中国からは特産の絹が、西からは玉や宝石、ガラス製品などが運ばれた。またインドの仏教やイランのゾロアスター教(祆教)マニ教、ローマで異端とされたネストリウス派のキリスト教(景教)やイスラム教(回教)などの宗教も到来し、一方中国からは鋳鉄技術や養蚕、製紙法が西方へ伝わった。 そしてこのシルクロード世界は13世紀のモンゴル帝国の成立によって、東西交流が一段と盛んになった。 続いて中央アジアのモンゴル=テュルク系軍事指導者であるティムールの存在でいよいよ交流は最盛期を迎える。特にその文化交流の要衝としてサマルカンドが栄えるようになった。サマルカンドは13世紀にモンゴル軍の侵攻によって一時廃墟と化していたが、ティムールによって再建された。彼はチンギス=ハンと何かと比較されることが多いが、チンギスに対して文化を重要視していた。彼はどこにもない美しい都市を目指し、各地の遠征先からすぐれた技術者や芸術家たちを連れて帰った。サマルカンドには中国の陶磁器とペルシアの顔料が出会って誕生した「サマルカンドブルー」とよばれる「青の都」が誕生した。モンゴルという精神的基盤にトルコという民族的基盤、そしてイスラム宗教に対する信仰に基づき、支配したイランの文化を吸収し、この地にティムール朝文化が花開いたのだった。 補足的にこの後のサマルカンドの歴史を概観しておくと、14~15世紀にティムール帝国の首都となった後諸王国がサマルカンドを巡って争奪を繰り返すようになった。(これには後のムガル帝国の始祖となったバーブルも参加している。)そして1500年にシャイバーニー長のジョチ・ウルス系のウズベク系が征服して戦乱を収めた。しかし18世紀中ごろにウズベク諸政権内部の対立や諸部族の抗争、アフシャ―ル朝(イラン)の侵攻をうけて荒廃してしまった。続く1868年ロシア軍による占拠をうけロシア領トルキスタンに編入。元来よりイラン系ペルシア人が多かったがソビエト連邦によって1924年ウズベク・ソビエト社会主義共和国の首都となった。このようにティムール朝で繁栄を極め文化交流が盛んに行われていたサマルカンドは15世紀以降騒乱が続きその求心力が失われてしまったことはとても残念である。   二年文科一類 内藤めい

気になる「ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金」

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一般財団法人ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金。 この中央アジアゼミにおいて文化や芸術に興味がある人ならば、一度はこの基金のホームページを開いたことがあるだろう。(http://www.uzf.or.jp/ このHPのリンク先にもある)しかし、実際どのようなことを行っているか、詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。この基金は、ウズベキスタンの文化や芸術を他国と協力しながら支援・発展・発信していくことを目的としている。そして、文化の相互理解、文化を超えた人類の協力を理念としているようである。文化に関して興味がある人はこうした活動があることをぜひとも知ってほしい。そうした人にとっては、きっと今後の人生に活かせるものだと考えられる。 ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金は、今日までにロシア、エジプト、中国、日本、ヨーロッパ諸国との緊密な文化交流関係が築かれている。カイロのアフマド・シャフキ記念美術館におけるウズベキスタンの装飾応用・造形美術展覧会、北京では定期的にウズベキスタンに関する様々な文化行事を計画し、また同時にタシケントにおける共同事業プロジェクトの企画も行っている。また中国におけるウズベキスタン文化デーは今年、ウズベキスタン文化・芸術基金との協力で行われた。日本において基金はウズベキスタン現代芸術家・写真家たちの5つの展覧会を協賛した。 基金はまたウズベキスタンの文化・芸術に携わる活動家たちと海外関係者たちとの国際的結びつきの発展に協力し、ウズベキスタンにおける海外の芸術・文化活動家たちとの共同プロジェクトや催しの積極的な後援者としての知名度も高い。この分野でとりわけ目立つものとしてポピュラー音楽フェスティバル、イタリアの指揮者ステファノ・トラジメニやドイツのチェロ奏者アントン・ニクレスクが参加したタシケントでのコンサート、その他が挙げられる。 ここで大事なことは、基金が各々の希望者に対し、民族間の相互理解や信頼関係を発展させ強めていくという社会共通の利益に合致した流れの中で、それぞれがそこにどう適応していくかを見極め、みずからの場所を探し出し、自分の力を発揮できるチャンスを与えているということだという。基金が特に力を入れているのは、ウズベキスタンと他の国々の文化・科学の代表者たちとの結びつきを強めていくことであるようだ。 「国際協力関係の拡大と深化およびそれによる国際関係の新しい質の高いステップへの移行は、それぞれの文化との継続的な対話なしには不可能である。こうした点からウズベキスタン文化・芸術基金はこうしたプロセスを成功に導くための重要な柱となり、また国際舞台におけるウズベキスタン文化、およびウズベキスタンにおける世界文化のガイド役を務めていくであろう」と述べている。 このような大きなビジョンの中、まだまだ活動しきれていない部分が見ている限りあるように思われる。例えばウズベキスタン文化の支援、発展に寄与している部分は大いにあると考えるのだが、発信の部分が不足しているのではないだろうか。その方法としてはウズベキスタンへの旅行者を増やすことなどがあるが、基金自身が各国に足を延ばすだけでなく、一つの軸足となる地域を確定しそこから発信の基盤を作っていくことも必要なのではないかと考える。今の状態を見ると、基金の規模が拡大するだけで活動を深化できず発信が中途半端になっていると判断できるからだ。また、ウズベキスタンの文化発信だけでなく、ウズベキスタン国民に積極的に様々な文化を受容させていくシステムも創出できればそれこそ文化「交流」の意味を成すだろう。今後の課題はたくさんあるように見える。 少なくともこの活動に私はとても共感できる。こうした文化に重きを置いた基金には是非とも活躍してもらいたいと願っている。なぜか。8月に私はインドネシアを訪れ、様々な文化の差異を認識した。文化を理解すること、そして文化の交流を図ること、それは人間相互が寛容に受容し世界平和の一歩となるからではないだろうか。宗教や生活、慣習、すべてが違っている。インドネシアもイスラーム大国であるが、ウズベキスタンのイスラーム教とは大きく異なっているはずだ。違いを受容し、そこの人を理解する。これはまさにグローバル化が進む現在において大切なことであろう。経済の発展に関してのみ協力してもダメであり、その国のためになるような協力をするためにはやはり文化認識、文化交流が基礎に置かれるべきだという感じている。ウズベキスタンにてあらゆる文化の差異をひしひしと感じとれる日が待ち遠しい。 参考文献: http://www.uzf.or.jp/ 一般財団法人ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金 http://www.uzf.or.jp/forum/index.html ウズベキスタン文化・芸術フォーラム基金駐日代表部 文責:文科三類 西藤憲佑

ウズベキスタンへ行く目的

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前回の記事では、ウズベキスタン国内の交通手段について述べた。­ここでは、班の方針である、’日本からの観光客を呼び込む’というテーマを中心に記述する。   ‘観光客を呼び込む’という場合、呼び込む側のpull要因の有無が重要になってくる。すなわち、まずはウズベキスタンの観光資源について考える必要がある。ウズベキスタンといえば、一般的にシルクロードの要衝というイメージがあり、その遺跡はオアシス都市を中心に遺されている。観光資源については、八木君の記事にある通り、他の中央アジア諸国より良いものを持っているといえる。外務省の渡航情報によれば、キルギスとの国境付近など主に南東部においては危険情報も出ているが、渡航者の訪れるような場所は治安も悪くないそうだ。たまたま、数か月前にウズベキスタンに旅行に行った肩のお話を聞く機会があったのだが、ウズベキスタンの物価はかなり低く、飲食に困ることはまずないということ、そして、少し意外に感じたのが、ハード面はとても充実しているということだった。すなわち、ホテルなどの建造物、バスなどの交通機関はきれいで快適だったという。一方、ソフト、すなわち、サービスや接客面はあまり良くなかったそうだ。ところが、その方はかなりの旅行好きと称しており、なぜウズベキスタンを旅行先として選んだのか、という質問をしたところ、「皆が行かないようなところだから」という答えが返ってきた。やはりウズベキスタンを訪ねるということは、一般的にはハードルが高いのだろうな、と改めて感じた。   では、どう’日本からの観光客を呼び込む’かという問題になってくるが、この問いに対する見方は無数に存在するように思える。しかしまず大事だと思ったのは、日本の人々に、ウズベキスタンについてもっと正しく知ってもらうことではないかと思う。前回も書いたものと同様に、ウズベキスタンをはじめ中央アジアについては、’神秘’という捉え方もあるが、裏を返せば’未知’や’奇怪’という恐れのイメージを少なからず持ってしまうのではなかろうか。私ももちろんそうであったが、このゼミを通してウズベキスタンについて調べていく中で、そういった負のイメージは払拭され、さらに現地を見てみたいという気持ちが強まった。   そこで、私たちは何をすればよいかと考えたとき、せっかく現地に行かせていただけるのだから、その隅々までを体験し、それを発信していくことではないかと考えた。しかし、私たちだけではウズベキスタンの隅々まで体験することなどは不可能であるとは思うが、今回、現地の大学生と話し合える場をいただけるということで、そこで彼らとともに主に観光について情報交換しつつ、それらをまとめたものを、なんらかの形で発信していこう、という方針となった。彼らと話し合う中で、’日本人観光者’としての私たちの視点と、’現地人’としての彼らの視点がうまくマッチし、双方にとっての新たな発見が生まれることを大いに期待している。はっきりとした全体像は見えていないため、その道筋などは少し覚束ない部分もあるが、このゼミを通して発信していくことが、少しでも多くの人々に届き、少しでも多くの人々が興味関心を抱いてくれれば、と思う。   文:文科二類2年 田村 悠

青色のウズベク世界 ―ウズベキスタンのイスラーム建築史―

カテゴリー: 中央アジア散歩

ウズベキスタンのイスラーム建築を見ていく。そうすると、最も目に付くものはなんだろうか。 まさに鮮明な青。魅力的な心揺さぶる青。イスラーム教において聖なる色とされる青。サマルカンドの町に映える青。その美しい青を発するレンガやタイルの面白さをまずは紹介していきたいと思う。 青レンガ・タイルには大きく4つ程に分けられる。施釉レンガ、浮彫施釉レンガ、ハフトランギー・タイル、カットワーク・モザイクである。   施釉レンガ       ハフトランギー・タイル       カットワーク・モザイク
  施釉レンガは表面の一面だけに釉薬を塗ったもので、素早く仕上げることができるように効率化を図っていると考えられている。なぜだろうか。それはティムール時代の建築ラッシュが影響しているようだ。多くのモスクを建築するためにも、効率性を向上させなければならない。
一方で、ハフトランギー・タイルやカットワーク・モザイクのような精緻なタイルも存在する。これもティムール時代の建築ラッシュに深く関わっていると言える。というのも、たくさんのモスクを築き上げるために不可欠となるのは労働力であり、ティムールは征服した各地から技術者を収集したと考えられるからである。つまり、各地の建築技術がウズベキスタンに集積し発展を遂げたということである。 また、面白いのは浮彫施釉レンガである(右図)。 この模様は中国の唐草模様がとても影響していると思われる。ウズベキスタンがシルクロードの中継都市であることが顕著に表れていることがここからよく分かる。レンガやタイルを見ただけも、ウズベキスタンが西洋と東洋の結節点であることを我々は知ることができる。 このように青色のレンガ・タイルを検証するとどうだろうか。すると、単なる建築材料一つの中にもウズベキスタンの歴史が煌めいていることが見えるのではないだろうか。どんな時代を建築が生きてきたのか、建築材料から発見できるならば、建築全体を見るとどうだろうか。 時代が与える影響を中心とした建築全体の変遷に関して次に記す。 上記にもあるが、ティムール朝の時に建築の黄金時代を迎えている。そして、16世紀以降、喜望峰の発見によりシルクロードの隊商貿易は停滞してしまうのだが、それに左右されず美しい建築遺構が依然として築かれる。特徴としては、きわめて派手な装飾が見受けられるようだ。これはまだウズベキスタンが威厳を持っていることを示すためなのだろうか。しかし、18世紀以降の建築はどういう訳か創造性を喪失してしまい、建築史において衰退を迎えることになるのである。そのため、あまり評価を受けない建築が多いという。 様々な時代を生き抜く建築。その時代の影響は材料一つにも表出していて、また建築史を眺めると、建築というものが文化と歴史を同時に孕み、後世に伝えていく重要なものであることが分かるだろう。 参考文献: 辻孝二郎 2010 イスラーム建築の華        (INAX REPORT no.182 p50-51) http://inaxreport.info/data/IR182/IR182_p50-51.pdf 石井 昭 1969 中央アジアのイスラーム建築 (東洋建築史の展望) 建築雑誌 84(1005) p45-54 社団法人日本建築学会 文責:文科三類 西藤憲佑

ヒヴァの歴史と見どころ・中央アジアのフリーペーパー

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ウズベキスタンで有名なオアシス都市の一つ、ヒヴァの歴史と見どころを紹介していきたいと思う。ホラズム州のヒヴァは首都タシケントから西750キロ程に位置し、かつてはこの地方の主要な都市として栄えていた。ヒヴァが初めて歴史に登場するのは10世紀のイスラム旅人による記述だが、6世紀にはすでに存在していたと考えられている。元々はイラン系住民が住みついていたが、10世紀頃にトルコ系民族にとってかわられ、17世紀にはヒヴァ・ハン国の首都となった。10月革命の後、ヒヴァを首都とした1920年にホラズム人民ソビエト共和国が建国された。しかし、この国は短命で、1925年にソ連に吸収されて姿を消すこととなった。1970年代から1980年代にかけてのソ連政策によりヒヴァの遺跡は非常によく保護されているが、逆に厳しすぎる保全活動により街が活気を失ってしまったようだ。その結果、ヒヴァの街全体が博物館のようになっている。 ヒヴァは城壁によって二つの町に分けられている。城壁外のエリアはディチャン・カラと呼ばれ、かつては11の門と要塞壁によって守られていた。城壁内はイチャン・カラと呼ばれ、1990年にウズベキスタンで初めて認定された世界遺産である。 クルフナー・アルク イチャン・カラの西門を入った左手に位置し、「古い要塞」という名を持ったクルフナー・アルクはハンの生活場所であった。12世紀に建てられた後、17世紀にオラン・ハンにより拡張された。ここにはハンのハーレム、モスク、宮殿を含む様々な施設が含まれていた。 カリタ・ミナル・ミナレット 1851年に着工したこのミナレットは未完成のまま現在も残っている。ムハンマド・アミン・ハンの命によって建設が始まったが、1855年のハンの死によって中断となった。伝説ではブハラまで見渡せる塔を建てる計画だったと伝えられている。 イスラーム・ホジャ・メドレセ ミナレット イスラーム・ホジャ・メドレセのミナレットは57メートルもあり、ウズベキスタンで最も高い。メドレセの内部は博物館になっており、絨毯や宝飾品などホラズムの工芸品が展示されている。メドレセとミナレットはどちらも1910年に建設された。 この写真はウズベキスタン大使館を訪問した際にいただいた資料の一つである。実は中央アジアに関するフリーペーパーマガジンなるものが存在し、大使館や中央アジア関連のイベントなどで配布しているらしい。その名も「SILKROAD Walker」で、今回いただいた2010年版のものはウズベキスタン特集である。表紙は上で紹介したヒヴァのカリタ・ミナル・ミナレットである。SILKROAD Walkerにはウズベキスタンの地理・歴史から我々中央アジアゼミが回る4都市のホテルやレストラン情報に至るまで、かなり細かい観光情報が記載されている。最後にはウズベク語とロシア語の挨拶と基本表現も載っており、もはやガイドブックである。しかも前頁がカラー印刷で、読みやすい。今まで書店で手に取った中央アジアに関する観光ガイドよりも詳しいのではないかと思うほどだ。ここまで力の入ったフリーペーパーが存在するのにほとんど知られていないは残念なことだと思った。私も大使館で各都市の地図とともにこれを手渡されて「こんなものがあったのか」と驚いてしまった。 外国にとっては「シルクロード」という言葉の響きだけで魅力がある。そして実際ウズベキスタンには多くの遺跡と豊かな文化があり、このような資料を配るほどの努力がなされている。それにも関わらず観光大国となっていないのはなぜだろうか。ここまで調べてきたこと、聞いてきたことを踏まえて個人的に感じた一番の原因は情報不足である。確かに「シルクロード」「オアシス都市」などと聞くと神秘的なイメージがあるが、「中央アジア」「ウズベキスタン」などの言葉とは若干ずれがあるように感じる。より積極的にPRをしていくことがウズベキスタンの観光産業において重要なのではないだろうか。この点についても、現地で実際に観光、学生と議論していくことで探っていきたい。 参考: ウズベキスタン航空・観光情報 http://www.uzbekistan-airways.co.jp/khiva.html Lonely Planet “Khiva Information and Travel Guide” http://www.lonelyplanet.com/uzbekistan/khorezm/khiva SILKROAD Walker 2010年号 文責:文科二類2年 末松

各料理の地域間比較

カテゴリー: 食文化

先の記事で先日作ったラグマンについて深く掘り下げた。ウズベキスタンの食文化の中には他にも興味深い料理や習慣がたくさんある。今回の記事では、一つの料理ではなく色々な料理などについて俯瞰的に説明していこうと思う。 ・ラグマン (↓新宿のウイグル料理店「タリム」のラグメン) 先日の記事でラグマンはトマトベースのスープであると述べた。ウズベキスタンでは、レシピで再現してみる限りスパイスのきいたカレーとイタリアンのトマトソースの中間のような味であった。しかし、先日ウイグル料理店「タリム」で食べたウイグルの「ラグメン」はスープはウズベキスタンのものと類似しているものの、酢の類のものがスープに加えられており、酸味があった。イメージとしては冷やし中華のつゆのような味である。こうした酸味をもつ料理は、酢豚など中華料理によく見られる。やはり、ウイグル自治区と中国が近くなるにつれ、中華料理の影響が出始めているものと思われる。また麺も、ウズベキスタンのものは讃岐うどんやきしめんのようにやや幅広のめんであったが、ウイグルのものはスパゲッティや山手らーめんの麺のような真円形の断面をもつ麺であった。またスープの量もウズベキスタンでは比較的多いのに対し、ウイグルでは平皿に乗る程度である。これも地域間の水の得やすさが影響しているのではないかと思われる。 ・プロフ (↓新宿のウイグル料理店「タリム」のポロ) プロフはクミンやコリアンダーなどのスパイスをきかせた炊き込みご飯である。ウズベキスタンでは広く日常的に食され、通りに大なべでプロフをつくる屋台が多く出ているほどである。プロフが食されているのはほぼラグマンと同じ地域であるがウイグル自治区ではやはり名前を変え、「ポロ」という名前になる。中央アジア地域ではニンジンや羊肉のブロック、レーズンなどの具が入るがウイグル自治区ではこれにヨーグルトのような乳発酵製品のソースをかけて食べる。ご飯に乳製品をかけて食べると言うのは日本からするととても奇異なものに思えるかもしれないが、比較的脂っこいプロフをさっぱりと食べることができる。なお、ウズベキスタンではトマトのサラダなどと一緒に食べられることが多い。またプロフは西に行くと「ピラフ」と名を変え我々のよく知っている料理となる。 ・ナン (↓ウズベキスタンのノン) ナンと言われると、日本人はインド料理屋で出される朴の葉のような形のパンが思い浮かべられると思う。ウズベキスタンのナンはノンとよばれ、インドのナンとは全く別のものである。形は真円形で外側がかなり厚くなっており真ん中は薄い。またインドのナンのようにもちもちとした触感はなく、むしろ密度の高い食パンのようである。 ・茶 茶の原産地は中国南部である。中国ではラプサンスーチョンという紅茶や緑茶、白茶、黒茶など種々の茶、インドではシッキムやダージリン、アッサムなど多くの紅茶が栽培され、またよく飲まれている。中国からシルクロードで繋がっている西域、中央アジア地域、そしてもちろん茶の生産の盛んな南アジア地域にも飲茶の習慣がある。 ウズベキスタンでは、茶はチャイまたはチョイと呼ばれる。チャイという名前には聞きおぼえがある人もいるだろう。またまたインド料理屋に行きチャイというものを頼むと、スパイスのきいた甘いミルクティーが出てくる。ウズベキスタンの茶は、チャイと名前は同じであるものの、インドのそれとはまったく違いふつうストレートで飲む。このチャイの淹れ方は日本と言うよりは中国茶に近い。ゴクチャイと呼ばれる緑茶(ただし、緑茶と言っても日本の緑茶とは全く違うものである)は茶碗にまずそそぎ、それをポットに3回ほど戻し、さらに数分間蒸らしてから飲まれる。 またキルギスやウズベキスタンではチャイハナと呼ばれる喫茶店が街にあり、木陰や店内などで喫茶を楽しむ市民の憩いの場となっている。 このように、ごく僅かの紹介となってしまったが、先に紹介したラグマン以外にもウズベキスタンでは食文化には他地域と比べて類似性、また独自性がある。ウズベキスタンの訪問では、この日本とは全く違う文化に触れ、またシルクロードの終点日本の文化の源流ともいうべき、ウズベキスタンの文化を肌で感じることによって自国のことを見つめ直すきっかけになれば、と思う。 ○参考文献など 世界の料理 サカイ優佳子・田平恵美 編 食料の世界地図 大賀圭治 監訳 中山里美・高田直也 訳 (文、写真:理科二類二年 間下)

ウズベキスタン大使館訪問記

カテゴリー: 全般

先日、目黒にある在日ウズベキスタン大使館を訪問した。きっかけは、他の大使館がインターン募集していることを知り、中央アジア散歩を履修するにあたってウズベキスタン大使館でインターンを経験してみたいと思ったことだ。ウズベキスタン大使館の公式サイトが見つからなかったためダメ元で履歴書と手紙を郵送してみたところ、岡田先生の元に電話がかかってきたとのこと。直接連絡がくるのをじっと待ち、辛抱が報われたのは数カ月後のことであった。こちらの都合のいい時にいつでも会ってくれる、と非常に親切だが若干曖昧な内容の返事である。これがウズベク流のおおらかさなのであろうか。とにかく突撃訪問してみることにした。 大使館の場所を調べてみると、徒歩圏内に駅がないためバスに乗ってアクセスする。渋谷から約25分の入谷橋で下車すると辺りは静かな住宅街である。しかし、30秒ほど歩いたところの角を曲がると、ウズベキスタンの国旗がはためく大き目な家がそこにはたっていた。旗を発見して思わずにやり。 近づいてみると門にはやはり「ウズベキスタン大使館」と表記されたプレートがあった。インターホンを押して名乗ると奥の扉から案内された。中はオフィスというより、外装通り高級住宅といった感じで、壁にはウズベキスタンの美しい建築や風景の絵画が飾ってある。 ミーティングルームらしき部屋に案内され、しばらくするとメールのやりとりをしていたコシモフさんがいらっしゃった。その後一時間程お話を伺ったが、ウズベキスタンと日本関係に関しする前向きさと熱心さが深く印象に残った。盛んになりつつある日本・ウズベク大学間の交流やビジネスでの協力体制、シルクロードを渡ってウズベキスタンへ伝わった奈良時代の日本の工芸品などを挙げて、両国の国際関係について語られた。我々の中央アジアゼミについても関心を持たれている様子であった。ウズベキスタンでの研修後、ウズベク文化を発信する機会があれば大使館の協力も得られそうだという心強いお言葉もいただいた。ゼミ研修への出発が迫ってきているが、実際にウズベキスタンを自分たちの目で見て、現地の学生と議論を重ねた上で今後我々がどのようなウズベキスタン文化を持ち帰り、発信していけるかを考えていけたらと思う。 追記 大使館で伺った話の中にあった日本とウズベキスタンの関係について少し触れておく。今年の2月にウズベキスタン大統領が来日した際、東京で菅前総理と会談し両国の政治・経済を含む複数の観点における関係の発展について合意に達した。日本とウズベキスタンは1992年に国交を結んだが関係を強化していく余地はまだまだあるように思われる。 ウズベキスタンはウランの埋蔵量が世界10位であり、他にも天然ガス、レアメタル、金などの資源が眠っている。資源に乏しい日本としてはウズベキスタンとの関係を強化することでこれらの確保が望まれる。資源開発を望む日本企業を支援し、貿易の手続きの改善など両国をつなぐビジネス環境を整える必要があるという共通の認識を両政府は持っているようだ。 ウズベキスタン側としては日本企業の技術移転や投資、情報コミュニケーション技術においての協力を望んでいる。また、環境への配慮と安定したエネルギー供給を両立できる代替エネルギー技術への移行もウズベキスタンの課題である。これも日本の技術協力が可能な点である。 資源が乏しいが高い技術力を持つ日本と、資源が豊富だが発展途上のウズベキスタンは経済・技術的に協力していくことで利害が一致するように思われる。経済や政治において国際関係がさらに向上することで両国の文化的交流も進んでいくことが望まれる。 文責:文科二類2年 末松

街紹介班FW報告

カテゴリー: 全般

前回の記事では、私達にとって異国であるウズベキスタンを考えるために、一つブックレビューを書いた。異国を理解する方法はいろいろあるだろうが、この本ならばある程度、ウズベキスタンに対してリアリティを感じられるだろう。疑似体験でもいいから、何らかのリアリティを感じることが異国理解につながるのでは、と思っている。 さて、我々がウズベキスタンに訪問した際には、日本のことを紹介する機会があるのだが、その際にもリアリティをもってもらうために、先日グループで東京中の写真を撮って歩いた。渋谷のスクランブル交差点、109、銀座、代官山・・・・。今回は街紹介班で行ったFWについて報告しようと思う。 東京の魅力が何であるかを考えると、比較的狭い地域に、様々な特色をもった地域が存在していることである。渋谷や高田馬場のような若者・学生の街から、青山・代官山のような落ち着いた雰囲気の街並み、丸の内・神田のようなビジネス街、浅草・金町のような下町。こうした東京の特色を伝えられるように、各地域に特徴的な風景をなるべく収めようとした。スクランブル交差点のような有名所だけではなく、官庁街の建物など、日本の中心である東京の建物・街の多様性を示せるような写真を撮るよう尽力した。 FWは、渋谷→代官山→永田町→霞ヶ関→銀座→神田→丸の内→東京と続き、夜が更けたので終了した。要素的に下町的な要素が欠けてしまったことは非常に残念であるが、ある程度の写真が撮れたのではないかと思っている。例えば以下の様な写真である。 ・総務省(霞ヶ関) (筆者撮影)   ・夜の東京駅前   (筆者撮影) こうした写真用いて、日本の紹介を上手く行えたらと思っている。 (文責:教養学部文科二類 西田夏海)  

ウズベキスタンのナショナリズム

カテゴリー: 全般

ウズベキスタンという多民族国家における「ナショナリズム」の特殊性は非常に興味深い。それは旧ソ連邦から独立した中央アジア諸国に共通する特性であり、帝政ロシア時代から始まるロシアの影響によるものである。以下に、文献から調べたことを簡単にまとめてみたいと思う。 *      帝政ロシアによる支配と中央アジアの諸民族 中央アジアの、現在まで続く民族構成ができたのは十六世紀頃である。中央アジアを支配した帝国はテュルク系王朝が多かったが、宮廷言語、文学言語としてペルシア語を採用していた。帝国は多民族国家で、人々の民族意識は弱かった。人はまず、自分の暮らす地域や部族に属していた。また、民族と言語や、民族と居住領域の対応関係はなかった。たとえば、「ウズベク人」とは、言語集団ではなく、シャイバーン朝を出現させた連合にさかのぼる諸部族出身の人々を表す。しかし、人々にとって肝心なのは「ウズベク人」か「タジク人」かではなく、「サマルカンドの人間」か「ブハラの人間」かということだった。 帰属意識の対象に「結束集団」を指摘する文献もある。結束集団とは、漠然と先祖が一緒だという人々で構成され、地域性を伴って強化される。その社会的基盤は、部族や氏族、同業組合、宗教と様々であるが、この集団と言語、出自の対応関係はない。とくに部族制のもとでは、部族内の氏族が結束集団を成し、多くは地域的基盤を持つ。ソ連体制下では、この集団がコルホーズの枠組みとして再編され、新たにコルホーズが社会的基盤となった。その結果、独立後もこの結束集団が政治的役割を果たすことになった。 帝政ロシアのよる支配は、草原地帯とトランスオクシアナで異なる手法が用いられた。カザフ草原地帯では、まず、現地の有力者を懐柔し、やがてロシア人農民が大量に移住し現地農民の耕地を奪った。このような社会構造の破壊が現地人のナショナリズムに影響したとされる。 一方、トランスオクシアナでは、伝統的な社会構造は温存され、ロシア人の移住も都市部だけに限られた。ロシアの大きな影響といえば、この地域が外界にひらかれ、近代化への準備がなされたことである。オスマン・トルコの知識人の影響を受けて改革派知識人(ジャディード)が登場するが、彼らの望みは民族の別によらない、中央アジアのムスリム国家を建設することだったように、いまだ民族意識としてのナショナリズムは希薄であった。 *      ソ連による民族政策 ところが、ソ連体制下では、極めて政治的・人為的に、民族意識としてのナショナリズムが形成された。中央アジアの民族の汎イスラム主義・汎トルコ主義的な越境的連帯を分断し、民族集団を対立状態におく分断統治を行い、共産党支配体制を整えるためであった。さらに、逆に越境的民族的連帯を標榜することで、ソ連の影響力を連邦外まで拡大するためであった。まず、民族を規定し、その第一基準として言語をあてがい、次に領土を付与する。さらに、国家機構、制度を整え、外面的な国民国家の体を整える。(実権はソ連が握った。) この際、民族の規定は戦略的に行われ、言語学的、人類学的根拠が後付に考えられた。言語(と文字)は対内的差別化と対外的差別化という二つの原理にしたがって、民族の関連性を分断するように、新しく考え出され、固定化された。(その結果、ペルシア語のような民族横断的な主要文化言語の地域を媒介する役割は弱まった。)「ウズベク語」も、人為的につくられた言語である。トルコ的な要素を排除するため、ペルシア的な方言を基本とされた。このため、現在では、トルコ系の言語に近いために公用語とかなり異なった方言も「ウズベク語」として話されることになった。 国境線に地理的な整合性はなく、凹凸や飛び地が多かった。また、民族的な整合性もなく、とくにウズベキスタンの周辺各国には多数のウズベク人マイノリティが存在する。こうした国境線の不条理には、中央アジアの新設共和国の独立の展望を描かせなくするという意図があったが、これらの諸国は民族も国境線もそのままに独立を果たした。そのため、こんにちまでソ連体制下で政治的につくられたナショナリズムが受け継がれることになった。 *      現代の中央アジア諸国による正統性の創生 逆説的にも、独立後の中央アジア諸国にはソ連支配のおかげで、近代国家としての要素がそろっていた。したがって、諸国は政治機構、行政機構だけでなく、ナショナリズムを形成する要素(民族、歴史、領土)をもスライドするかたちで受け継いだ。さらに、ソ連と同じ手法を用いることで新しい帰属意識を作り出そうとした。たとえば、ソ連的な要素を排除するための、文字の変更や歴史解釈の変更である。 中央アジア諸国のナショナリズムの特徴は、民族の正統性をもとめる理論にある。ソビエト民族学において、民族の源郷をたどる西洋の民族学に対抗し、ある土地に太古から住む集団同士が混ざり合って民族が形成される、という「民族起源学」が採用された。これはソ連の民族共和国の存在根拠を歴史的に証明するための理論であり、本来の各民族のナショナリズムとは無関係であった。しかし、この理論によれば民族の起源を際限なく遡ることができるため、独立国家として対外的、対内的正統性を必要とした現在の中央アジア諸国でも採用された。このため、たとえば、ウズベク人によって倒された帝国の創始、ティムールがウズベキスタンの国民的英雄とされているような、傍からは不思議に思われるような事態になっているのだ。 以上は、現在のウズベキスタンのナショナリズムを形成するまでのおおまかな流れである。(まとめるうえで、具体的な例や、ウズベキスタン以外の国家に関わる例はなるべく省略した。)私自身うまく理解しきれていない部分もあるので、稚拙なまとめになっていると思う。現地研修の前に、さらに調査を重ねて、理解を深めたい。 現代の世界情勢を考えれば、ナショナリズムはとてもデリケートな問題だと思う。このような知識が先入観にならないように気をつけたい。できるならば、現地にいって実際にその国家の中で暮らす人の思いをきいてみたいと思っている。 参考文献: 中央アジアを知るための60章(第二版) 宇山智彦編 明石書店 現代中央アジア オリヴィエ・ロワ著 白水社 ウズベキスタン―民族・歴史・国家 高橋 巌根著 創土社 文責:文科二類一年 藤沢

食文化に見るシルクロード・東西交流

カテゴリー: 食文化

ウズベキスタンはシルクロードの要衝に位置する。先日世界文化遺産に登録された岩手県平泉の中尊寺にはこの辺りの地で特産するラピスラズリが装飾につかわれていたり、奈良などの寺社にはギリシャなどの西洋から中央アジアを通って伝わった建築様式や仏像などが見られるなど、古くから東洋と西洋の文化が行き交い、また交流してきた場所である。 行き交っているのは、自社の建築様式や特産品だけではない。ウズベキスタンやアジア、ヨーロッパの食文化を比較すると、シルクロードを経て東西が交流している様子を見ることができる。 まずは、先日僕と福井で作った、ラグマンについてみて行きたいと思う。(ラグマンの料理レポートについてはこちらをご覧ください。) (↓ラグマン) ラグマンはウズベキスタンを代表する料理と言っても過言ではない。スパイスをきかせたトマトベースのスープで羊肉や野菜を煮て、その中に日本でいうところの讃岐うどんに似た麺を入れたものである。 この料理についても、西洋や東洋から受けた影響、またそれらに与えた影響がみられる。 まずは、麺。麺料理についてはイタリアのパスタからベトナムのフォー、日本のうどんなどシルクロードが通っていた地域やその周辺地域によくみられる。ラグマンの麺は、先程日本で言えば讃岐うどんに似ていると述べたが、作り方や見た目も似ている。(ただし、讃岐うどんは中力粉を使うが、ラグマンは強力粉を使う。)また製麺の方法も、伸ばして乾燥させる素麺や弦のようなものに押し当てて細くするイタリアのギターラ、ミンチ機のようなものから押し出してお湯の中に入れる韓国の冷麺など数々の方法が世界には見られるが、ラグマンもさぬきうどんも生地をのばして包丁で切っていく方法である。 次に、具。具に用いられるのは羊肉、にんにく、ピーマン、じゃがいも、ひよこ豆など、中央アジア地域でよく取れるものである。ここは各地から流入してきた文化が土地の気候風土に合わせて成長している面であると言える。ひよこ豆はイスラエルのフムスという料理など、西アジア地域でも食べられている。 スープには、トマトがベースに用いられていると述べた。トマトが日本で食用になったのは明治以降であるようにトマトは西洋方面からの流入である。実際、イタリアのパスタにはトマトソースがよく用いられ、ロシアの世界的にも有名な料理であるボルシチやビーフストロガノフにもトマトが用いられている。また西アジアのイスラエルでよく食べられるシャクシュカという料理もトマトに香辛料を入れたスープが用いられ、トマトが味の主たる部分を占めている。 トマトがよく料理に用いられる地域の特徴として、エジプトやイタリア、イスラエルなどの地中海性気候の地域、そしてウズベキスタンなどのステップ気候の地域と、比較的乾燥しているという点があげられる。こうした地域でトマトがよく食べられているのは、トマトには多くの水分が含まれ、乾燥地域ににおいて水分が摂取できること、また酸味が強いので羊肉の臭みを消し、かつスパイスとの相性のもいいからではないかと思う。 ラグマンに使われるスパイスはクミンシードやコリアンダー、ローリエなどがある。特にクミンシードは「とりあえずクミンシードを入れておけばそれらしい味になる」と言われるほど、現地では多用されているスパイスである。実際、プロフやサモサ、マシュフルダやシャシリクなどの料理のレシピを見ると、ほとんどすべての料理でクミンシードの文字がみられる。 (↓日暮里の中央アジア料理店「ザクロ」のサモサ) ここまでウズベキスタンのラグマンについて述べたが、ラグマンという料理は中央アジア全域で見ることができる。また、中国のウイグル自治区にもラグメンという名で類似の料理が存在する。(これは先日新宿のウイグル料理店「タリム」で実際食べる機会に恵まれた。それについては後日また報告しようと思う。) ラグマンは東に行くと拉麺と名前を変え、さらに東に行きラーメンという名で日本に広く存在している。 中国や日本など東洋発の麺と、トマトやスパイスなどヨーロッパ・西アジア発の食材を用いたスープが出会い、そして中央アジアでよく食べられる羊肉を具として一つの料理が出来上がっている。ラグマンという料理ひとつをとってみても、シルクロードという壮大なルートを通した東洋と西洋の文化交流の歴史を見ることができる。 今回のウズベキスタン訪問では、ここまで大きな交流とはもちろん行かないが、ウズベキスタンと日本の文化交流が図れたらと思う。 ○参考文献など 食事の歴史 先史から現代まで ポール・フリードマン編 南直人+山辺規子 監訳 世界の食事おもしろ図鑑 森枝卓士 家庭で作れるロシア料理 荻野恭子 料理 沼野恭子 エッセイ 世界の料理 サカイ優佳子・田平恵美 編 「讃岐うどんの作り方」 http://www.flour-net.com/archives/2007/06/post_18.html (文、写真:理科二類二年 間下)

レギスタン広場の歴史と建築

カテゴリー: 中央アジア散歩

レギスタン広場はウズベキスタンの古都サマルカンドに位置する観光名所の一つである。名前はペルシャ語で「砂の場所」を意味する言葉であり、サマルカンドの歴史において中心的な存在であった。元々この地は商業地であったが、そこの様相を変えたのが15世紀に中央アジアを支配したスルタン、ウルグ・ベクである。 中央の広場を囲むのは3つのマドラサである。正面から見て左側に位置するのが1420年に建てられたウルグ・べク・マドラサ、それと向かい合うように右側にあるのが1636年に完成したシェル・ドル・マドラサ、そして中央奥には1660年にできたティリャー・コリー・モスクマドラサがある。これらのマドラサは200年以上に渡って別々に建てられたものだが、建設当初から計画されていたかのような景観を作り出している。これは「コシュ」と呼ばれる都市デザインの手法が取られているからである。「コシュ」とはウズベク語で「つがい」を意味し、レギスタン広場のシェル・ドル・マドラサのように、既存の建物とつがいになるよう向かい合って建てたりすることで整理された街並みにする方法である。 マドラサとは「学ぶ場所、学校」という意味で、9世紀以来各地で建てられたイスラム世界の教育機関である。教育は二つのコースに分かれていて、コーランの暗唱や解釈などを学ぶコースと学者を育成するためのコースがあった。 マドラサで教えられていた科目は主にアラブ語、タフスィール(コーラン解釈学)、シャリーア(イスラム法)、ハディース(預言者ムハンマドの言行録)、論理学、ムスリム史である。 マドラサはイスラムを広く伝える以外にも、孤児や貧しい子を教育するという使命を持っていた。また、中には女性を受け入れるものもあったという(無論、男女別学だが)。 レギスタン広場のマドラサを一つずつ紹介していく。最初に建てられたのが1417年から3年間かけて完成したウルグ・ベク・マドラサである。ティムール朝第四代君主ウルグ・ベクの命によって建設された。中庭にはモスク・講義室・寄宿舎があり、学生が生活していたフジュラが約50室存在する。ウルグ・ベクはこの他にも2つのマドラサの建設を命じたが、ウルグベク・マドラサが建築・教育機関の点において最も優れていた。17世紀までマドラサとして機能した後、一世紀以上は穀物倉庫の役割を担っていたが、20世紀前半にはまた教育機関として利用されるようになった。 次に建てられたのがウルグ・ベク・マドラサの「つがい」、シェル・ドル・マドラサである。シャイバニ朝君主ヤラングドゥシュ・バハテゥルの命により1619年から1636年にかけて建設された。形はウルグ・ベク・マドラサを模して設計されているが、君主の権力を誇示するため装飾が派手になっている。「シェル・ドル」は「獅子」という意味を持っており、イスラム建築には珍しく動物の絵が正面に描かれているのが特徴である。イスラム教では偶像崇拝が禁止されているため人物や動物画は基本的に描かれないが、シェル・ドル・マドラサには白い鹿を追う獅子と、その背景に顔のついた太陽が描かれている。 最後に、1646年着工、1660年完成のティリャー・コリー・マドラサが二つのマドラサの奥に建てられた。このマドラサは当時のサマルカンドの繁栄を示しており、「金で飾られたマドラサ」という名前の通り豪華な金の装飾が施されている。17世紀に損傷したビヒ・ハーヌム・モスクの代わりとして、メッカを向いたモスクを兼ね備えている。 文責:文科二類2年 末松

ウズベキスタンとマハッラ

カテゴリー: 全般

中央アジア、その中でも実際に現地を訪れることになったウズベキスタンに関して調べていく中で私が興味を持ったのが「マハッラ」と呼ばれるものである。しかし、ウズベキスタンについての認知度がまだ低い日本において、この国に特徴的な制度であるマハッラというものを知っている人はそうはいないと思う。ウズベキスタンにおいて常に人々の中に存在してきたマハッラ、この記事ではマハッラとはどういうものかについて私なりに書いていこうと思う。   帝政ロシア時代、ソ連時代、ソ連崩壊後ではその位置づけなどが異なっているため、以下では伝統的なマハッラに関して述べようと思う。マハッラとは?それを簡単に言うと、ウズベキスタンにおけるオクソコルと呼ばれる長老を中心とした地縁共同体のことである。ここには日本における町内会の制度と類似するところも多くある(基本的には異なる)。例えば、日本の町内会において共同で葬式や祭りを行うところがあるように、ウズベキスタンでも結婚式や割礼、葬式・法事、宗教的儀礼は伝統的に同じマハッラ内の住民が協力しあい大規模に行われてきた。結婚式や葬式に関しても家族だけでは規模が大きすぎて執り行うことができないことから皆で手伝うというのが慣習のようである。但し、マハッラは非国家組織であることもあり、その活動はあくまでも自発的なもので、参加するしないは個人の自由ではある。実際、マハッラのアイデンティティをもたない都市部の人やウズベク人以外のロシア系民族などの活動への参加は消極的なことが多いようである。 マハッラの特徴の一つとして近隣住民との関係がある。日本の町内会の現状をあまり把握していないため比較は出来ないが、マハッラにおける住民同士のつながりは強く、ウズベク語に「家を選ぶのではなく、近所を選べ」、「遠い親戚より近所の方が良い」という諺があることからもわかる。この住民同士のつながりの形成にはガプ、モスク、グザル、チャイハネという4つのマハッラにおける共有空間が大きく関わっている。ガプというのはマハッラにおける特別な付き合いの形式であり、イスラム教の礼拝堂であるモスク、商店街などサービスの集中する場所であるグザル、そして日本の喫茶店に近いチャイハネでは集まる層などは異なるがどれにおいても人々が集まり世間話などをし一体感を高めることができ、住民がマハッラの一員としてアイデンティティを再認識する空間ができている。 もう一つ重要な特徴として、マハッラでは出来る限り皆で平等に負担し、解決していく精神が見られる。これがよく表れている仕組みが次に述べるハシャルという制度である。ハシャルとはマハッラ内における伝統的な助け合いの仕組みの一つで、この制度で同じマハッラ内に住む人々が互いに助け合って生活を成り立たせている。例えば、マハッラ内のどこかで家を建て直す時にはみなが集まって作業をし、その助けて貰った人は次にどこか他の家を建て直す際には手伝う必要があるといったところにハシャルは見うけられる。   マハッラにおけるこういった特徴を見ていくと、昔の日本の様子が想像され、例えばマハッラのグザルにおける世間話というのはかつての日本の井戸端会議に近いものであると考えられる。しかし、ウズベキスタンのこのような伝統も残念ながら日本が辿ってきたように都市化や欧米文化の流入などの理由により失われつつあるといわれているし、助け合いの精神など集団(全体)主義が伝統的であったマハッラで個人主義が見られているのは悲しいものがある。 欧米文化の流入が悪いとは一概には言えないが、ウズベキスタンにおけるマハッラの役割をどう定めていくべきか考えることは大事で、マハッラを通していかに住民の生活を充実させるなどの実質的なことだけではなく、伝統的なマハッラ内のつながりを維持することも必要であると思う。   参考文献:「マハッラの実像―中央アジア社会の伝統と変容」 ティムール・ダダバエフ 東京大学出版会 「「教育」する共同体」 河野明日香 九州大学出版会 (文責:理科二類二年 栗原)

サマルカンドとウズベキスタン観光

カテゴリー: 中央アジア散歩

人が海外旅行の行く先を決めるとき、その決め手となるのは何であろうか。この疑問は私がウズベキスタンの観光産業について考えるうちに思ったことである。日本人観光客には近場の国(韓国や中国など)に加え、ヨーロッパ(フランス、ドイツなど)やリゾートが人気である。その理由は何なのであろうか。ウズベキスタンには豊かな観光資源があり、古来シルクロードの拠点として栄えてきた歴史をもつにも関わらず、なぜ日本での知名度は比較的低く、人気旅行先とならないのか。ここでは都市の美しさで引けを取らない、サマルカンドの紹介をする。サマルカンドへは、ウズベキスタンの首都タシケントから飛行機(約1時間)、鉄道(約3時間半)、バス(4~5時間)で行ける。 サマルカンドは歴史上シルクロードの中心都市として発展し続けてきた。紀元前4世紀に東方遠征をしたアレクサンドロス大王が「話に聞いていたとおりに美しい、いやそれ以上に美しい」と言ったというほど、歴史的に美しい町として有名であった。その担い手はソグド人であった。一時モンゴル軍の被害を受けるも、14世紀にはティムール帝国の都として繁栄し、今日も「青の都」、「東方の真珠」などと称されるほどに美しい。 ・アミール・ティムール廟 ティムール帝国の始祖、ティムールと彼の息子たちの霊廟である。ドームの青タイルが特色であり、サマルカンドが「青の都」と称される一因である。 (料金:3USドル相当、撮影料金:2USドル相当、ビデオ5USドル相当) ・レギスタン広場 レギスタンとは砂地の意味である。正面と左右のメドレセ(神学校)がその景観をつくる。 (料金:8000スム、撮影料金:3000スム。ビデオ7000スム) ・ビビハニム・モスク 中央アジア最大のモスクである。これもまた青のドームがある。ティムールの命令によって造られた。 (料金:3USドル相当、撮影料金:2USドル相当、ビデオ5USドル相当) ・シヨブ・バザール ビビハニム・モスクに隣接する大きな市場。イスラーム圏特有のバザール経済を体験できるかもしれない。サマルカンドはナンが有名であり、地元の人もお土産で買っていくほどであるらしい。 ・シャーヒズィンダ廟群 ティウールゆかりの人の霊廟が並ぶ通りで、サマルカンドの聖地となっており、多くの人が巡礼に訪れる。ここでも青タイルが多く使われており、壁などには美しい装飾が施されている。 (料金:3000スム、撮影料金:1500スム~) イスラームの都ということで、建築がこの町の美しさの大部分を担っている。それらの壁に施された緻密な模様や、ドームなどに使われている鮮やかな青は一見の価値があると思う。以上に紹介した有名な観光地以外にも、歴史的遺産や、博物館などがある。サマルカンドの歴史は古く、この都市だけのためにウズベキスタンに観光先として訪れる理由は十分にある。サマルカンド以外にも、ヒヴァ、ブハラなど世界遺産となっている都市や、世界史をやっていた人ならきいたことがあるだろうフェルガナもウズベキスタンにあるのである。 しかし、私も現にこの授業にふれるまで訪れようと思ったことはなく、日本人観光客は1万人以下と少ない。以下はあくまで意見であるが、理由のひとつには、ウズベキスタンという国の知名度が日本では圧倒的に低いことが挙げられるであろう。さらに日本国内での広報に改善点があるのではないか。「サマルカンド」という都市名をとウズベキスタンという国名にリンクさせることは重要であると思う。ツアーを組み、扱っている旅行会社も少ない。旅行会社が扱っていないとなると一般旅行者の目には泊まりにくい。旅行会社がツアーを組みにくい点はあるのか。日本で信用できるウズベキスタンの情報が非常に得にくいことは、調べている過程でぶつかった。しかし逆に考えると、開拓の余地があるということでもある。 観光地自体にはどのような課題があるか。上記に列記したことからもわかるように観光料金とは別に、撮影料金を徴収している。非効率的、かつ観光客への印象が悪くなってしまう。交通の便は良いとは言えないものの、悪くはないと思われる。国内の飛行機が全て首都タシケント発着で、他の都市間を結ぶ便がないことは移動時間や、快適さを重視する人にとっては不便である。しかし、都市間の移動は鉄道や、バスで可能である。都市内の移動は都市により異なるが、サマルカンド市内はバスがあり、市自体がそんなに大きくないため一日でまわることも可能である。 実際に訪れてみて、観光地がどのようであるか、日本人観光客を呼び込むために何が足りないか、現地の大学生との交流を通じて私たちが事前に調べ考えていたこととの相違を明らかにしたいと思う。   文:文科二類二年 高川めぐ

高麗人と韓国政府

カテゴリー: 全般

1.高麗人の歴史的背景と現状 長い間韓国との交流が絶たれていた高麗人に対して韓国政府が法律を制定するなど支援し始めた背景には、ソ連の解体とCISの諸国が独立がある。CISの諸国が独立しにつれて、数年間各国がロシア語でなく、自分の国の言語である固有言語を勧めるなど民族中心主義政策を実してきた。それによってロシア語しかしゃべれない高麗人、CISの諸国では異邦人である高麗人のなかでは沿海州に移住している動きが見えている。しかし、移住の家庭で国籍を証明するような書類を紛失してしまったり、国籍取得の機会を逃してしまった一部の高麗人は他の地域に居住している高麗人に比べて経済的に、社会的に困っている。現在、約5万人に達する高麗人が無国籍または法的な地位不安定の問題で教育や医療恵沢など基本的人権を享受できない状態におかれていると報告されている。このように、現代に入って自分の居住国で安定した生活が維持できない高麗人が増えるにつれて、韓国政府は高麗人の滞在資格取得を支援し始めた。そして、2010年5月に「高麗人同胞合法的滞留資格取得および定着支援のための特別法を制定し、今年の11月から実施する予定である。 2.無国籍高麗人への支援政策 無国籍高麗人のなかには、自分の元の所属国が発行したパスポートは持っているが、期限が切れたり、パスポートを失ってしまったり、またはソ連時代のパスポートを新しいパスポートに変えられなかったため、不法滞留者として生活している場合が多い。ロシアや元の所属国で申し込むと発行してもらえる場合もばるが、その手続きが非常に複雑であり、かつ、費用の時間もかかるためあきらめてしまうのである。中央アジアの国は海外移住を告げなかったことに対して非常に厳しい政策を採っているため、無国籍高麗人は有効なパスポートやビザがなく、雇用、医療、教育などの分野で基本的な恵沢をもらえなく、いつも追放の恐れのなかで最貧困層として生きていくしかない。 このような高麗人の問題に対して、ウクライナはうまく対処している成功例のひとつである。韓国大使館は内務部・労働部・地方主政府などが全部協力し合って個人とのかかわりを持ち、高麗人が合法の滞留資格が取得できるように努めてきた。ウクライナ政府も高麗人の問題解決に協力している。ウクライナ政府は一定の罰金を払えば短期滞留資格は取得できるようにし、雇用契約書を提示すると動労許可まで発行することにした。また、パスポート発見の手続きも簡単にした結果、ウクライナで新しく国籍を取得した高麗人は約150人、永住権を取得した高麗人は200人など、合法の滞留資格を持ってる人の数が増えている。 しかし、合法の滞留資格を続けて持っているためには労働許可資格を続けて持っていることが必要であり、そのためには60ドルに相当する税金を払わなければならない。これは所得が低い人々に対してはかなりの負担であり、より根本的な解決方法が求められているところである。この問題の解決のため、韓国大使館は微小金融と農業教育を実施する予定である。要するに、滞留資格の合法化のため自立する維持がある高麗人に対しては農業教育を実施し、実践計画も提出する場合、低利子で資金も提供することを計画している。 残念なことに、今のところ韓国政府と高麗人はそこまで深い関係は持っていないと考えられる。高麗人も第1世代や第2世代くらいだけが韓国語がしゃべれたり、韓国に愛着を持っている程度で、彼ら自身も韓国人という意識が薄いが、元は一緒である高麗人により関心を持って支援していきたいものだと思う。 (文科一類二年 キム・ヘジン)

中央アジアと高麗人

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1.高麗人の歴史と現在 現在、海外に約55万人の高麗人がいると報告されており、その大体が中央アジアの国々に住んでいる。ここで高麗人とはどのような人のことであるか。高麗人とは、旧ソビエト連邦の領内に住み、現在はCISの国籍を持つ朝鮮民族の人々のことであり、もとの居住地は朝鮮と境を接した沿海州である。もともと沿海州に住んでいた高麗人は1930年代後半から第2次世界大戦にかけて中央アジアに追放され、現在の主な居住地はウズベキスタンとカザフスタンである。 それでは、高麗人はなぜ沿海州から何千キロも離れた中央アジアに行ったのだろうか。そこには高麗人の強制移住の歴史がある。19世紀以降、李氏朝鮮北部から国境を越えて沿海州に定着しながら高麗人集団が形成された。その後、1910年に日本帝国と大韓帝国が合併され、1924年にはロシアでソビエト連邦が成立された。日本とソ連は対立関係におり、沿海州に定着していた人々は日本と関係がないにもかかわらず、スターリンの政策によって1937年中央アジアに強制移住させられることになってしまった。 高麗人の強制移住は非常に厳しいものであった。18万人の人が40日間6000kmに達する距離を移住させられたが、この遠い距離を高麗人は貨物列車に荷物のように乗せられて移住させられた。貨物列車であっただけに、列車にはトイレも、お水もなく移住過程で多くの人が病気で亡くなってしまった。また、トイレがなかったため列車が止まったときに線路におりて用便をみる人もいたが、列車が出発するときそれに気がつかず、線路に挟まって死んでしまった人もいた。このように非常に劣悪な環境を生き残った高麗人は人が住めなくて離れた土地に降りさせられた。そこには農場も、家もなにもなかったが、高麗人はここでまた頑張ってファン・マングム農場やキム・ビョンヒァ農場など農業に成功した例がたくさんある。 このように何もない状況で成功してきた高麗人はその能力や努力が認められ、社会での地位も高くなり、自ら中央アジアを自分の第2祖国に思うようになった。しかし1991年ソ連解体以降、民族政策で生活基盤が崩壊し、沿海州に再移住して現在約5万人が沿海州に住んでいる。 2.高麗人社会とネットワーク 高麗人は自分たちのネットワークはある程度持っているが、まだいろいろな問題が残っている。まず、協会の代表性および組織間の葛藤が依然と存在する。全露高麗人連合会、民族文化自治会は近年韓国からの支援をもらっているが、全露高麗人連合会に傾いている傾向がある。韓国の支援が葛藤の原因となってはいけないため、これから体系的な研究が必要だと思われる。2番目の問題として、主要大都市が情報を独占しているという問題もある。韓国大使館が設置されている大都市ではないと、支援情報が手に入りにくいため、大使館を通じなくても情報が得られるよう高麗人協会の活用が必要である。3番目の問題は言語の問題である。高麗人にとって韓国語の重要度は第3外国語程度であって、まずは現地語、つぎは英語またはロシア語であって、その次が韓国語である。韓国語を勉強している人は中央アジアに進出している韓国企業で働きたいと思う人が選択的にやっているだけで、今のところ韓国語は高麗人にとってそれほとインセンティブのある言語ではない。ただ、将来韓国人と高麗人の交流がより活発になることが望ましいと考えると、韓国語の教育はネットワーク形成において重要な問題であろう。最後に整っていないインターネット環境の問題がある。若者のなかではインターネットの使用率が増えているが、高麗人とのネットワークのため使っているわけでなく、全体としてみたコンピュータの普及率はそれほど高くないため、まだいろいろな問題がある。また、ここでもまた言語が問題となって、韓国語とロシア語の両方が必要という問題がある。 このようにまださまざまな問題があるが、韓国と高麗人をつなぐにはネットワークの役割が重要になるため、より効率的なネットワークを構築するための努力が必要だろう。その具体的な方案としては、人的ネットワークを作ってシンクタンクを構築し、必要な人材を勧告と現地の適材適所に配置すること、韓国関連の多様なプログラムを企画して文化院や教育院の機能を強し、韓国訪問実現すること、インターネットの利点を十分生かして長いスパンで有効な手段に作ることなどが考えられる。 (文科一類二年 キム・ヘジン)

証券所取引システムと経済進出

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2011年8月29日の日経新聞からの抜粋となるが、韓国の株式市場を運営する韓国証券取引所(KRX)がウズベキスタンに証券取引所システムを提供する契約に基本合意した。中央アジアはこれから経済成長が見込まれており、ロシアは旧ソ連圏への金融面への影響力保持を目指してカザフスタンなどにシステムの売り込みを行っている。韓国ロシアは中央アジアの国に証券売買システムの供給をきっかけに自国の金融機関の進出や経済的な影響力の拡大を行うという思惑を持っているようだが、元々ロシア韓国共にウズベキスタンとの経済面での関係は深い。例えばロシアに関してはウズベキスタンの第一の輸出輸入相手国で、輸出に関しては全体の17.2%、輸入に関しては全体の24.8%を占めている。韓国に関しても、ウズベキスタンの輸入相手国では中国に次いで第三位に入っており、全体の12.9%を占めている。ロシアは旧ソ連圏という繋がり、中国はウズベキスタンと地続きになっているから貿易量が多くても不思議ではないが、韓国がここまでウズベキスタンとの貿易を活発に行えている理由は何なのか。実は韓国はもともと官民一体となってのウズベキスタン進出が行われており、進出分野も資源エネルギーに加えて、エレクトロニクス・繊維・自動車・建設・通信と多様で、中小企業を含めて200以上の企業がウズベキスタンに進出しているようだ。一方我が国日本の進出状況はどのようになっているのか。政府の行動に関しては、 2008年に日ウ投資環境整備ネットワークが開かれる。2011年に海江田万里氏がウズベキスタンのレアメタル開発に向けて協調することを決めたなど、かなり遅めの動きである上に民間企業はほとんど進出していない。実際に進出している企業は16社にすぎず、貿易に関しても輸出では2008年7600万ドル、2010年7700万ドルと実質的に伸び悩んでいることが分かる。ちなみに、ウズベキスタン全体の輸入総額は71億ドルと日本からの輸入は全体の1%にしか過ぎない。日本は韓国などの国に比べて、官民一体の行動が元々希薄であるように思える。近年盛んになっている途上国へのインフラ輸出に関しても民間企業の進出が先行し、官民一体となっての動きが見られるようになったのは韓国などに比べて非常に遅い。最近でもトルコへの原発輸出に関して管元首相の発言がトルコ側の不信を招き、結果として交渉の遅れをもたらし欧州勢の売り込みが発生した。官民一体となっての動きという点では韓国に見習うところも多いのではないだろうか。 しかし日本はODAなどの経済協力では2004年から2008年にかけて2006年を除いて金額では常に一位である。支援などをウズベキスタンとの経済関係の発展にもう少し活かすことができるのではないだろうか。自分自身も民間におけるウズベキスタンと日本の交流の発展の一助となるべく今回の訪問では頑張りたいと思う。 参考文献:JETRO ホームページ(htp://www.jetro.go.jp/world/russia_cis/uz/basic_01/#block6) 外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/10_databook/pdfs/03-01.pdf) 2011 Data Book of The WORLD(二宮書店出版) 文責:二年文科Ⅱ類八木雄介

バザール経済

カテゴリー: 中央アジア散歩

経済体制と言うと常識的に市場経済(資本主義)と計画経済(社会主義)の二種類に区分できる。バザール経済のおもしろい点は、これはどちらにも属さないタイプの経済であることだ。売り手の利益の最大化が究極目的ではない点で市場経済とは異なり、ある地域に居住する人々が依存し合っている経済と言う点で、上からの(公的な)経済である計画経済と異なる。商業が活発であったイスラーム社会に根付いたものなのである。 バザールとはペルシャ語で伝統的なイスラームの市場(いちば)を指す単語である。(アラビア語ではスークという。)西・中央アジアのオアシス都市の、周辺地域の産物の集積地として発達した。このイスラームの伝統的な市場は多数の小路から成り、単に経済的な機能を持っただけではなく、店舗の他に、モスクや学校、茶屋なども存在した。地域に基づいた有機的なつながりであり、従来から自律的であった。これゆえに、近代化によっても容易に解体されず、現在も残っているそうである。 では、バザール経済とはどのようなものなのであろうか。まず商品の値段が決まっていない。たとえ値札がついていてもあてにならない。この経済の特徴は、交渉によって商品の値段がきまることだ。 この市場では情報が非常に重要である。バザールに出回る商品はそれぞれに個性があり、その個別の商品についての情報を確実に入手することが良い買い物をするために求められることなのである。市場では人と情報が入り混じっているため、広範に情報を集めるのは得策ではなく、安定した取引先から深い情報を得るようにするのが有効であるとされる。取引先としても、自分にとって誠実な客を信頼によって確保するのである。商品の価格は、商品の質だけではなく、相手との関係によって決まってくるのである。相手との信頼関係の度合い、取引実績、相手がどれだけ有用な情報を持っているか、などである。情報が真実であるかどうかは自己責任によって判断するわけだが、ここにはイスラーム的倫理観が根底にあるといえる。 地域に密着した経済ということで、公的にその実態を把握することは難しいようである。近代以降、国家単位で経済力がはかられるようにもなったが、バザールには国家に測りかねる側面があり、その意味でインフォーマル・セクターとして区分される部分を含む。バザールはイスラームに根付いた有機的なつながりを含み、殊にイランにおいては寄付を管理していたイスラーム法学者のウラマーはそれを公共性の高いことに運用し、商人が財政力により地域の経済を支えることで、国家に対抗する力を有した。1970年代の反体制運動ではこのネットワークが重要な役割を果たしたとされる点が興味深い。ウズベキスタンにおいては旧ソ連の計画経済の欠陥による物の不足はこのインフォーマル・セクターを活性化させる側面を持っていたという指摘もある。このような政府が把握できない経済活動に課税できないという点が課題として挙げられる。もっとも、地域共同体を行政に組み込むことなどがされているようだが。 「バザール経済」。私がこの言葉を知ったのはこの中央アジアゼミの初回である。経済というとどうしてもミクロ、マクロ、効用関数・・・などなど固いイメージが浮かんできてしまい敬遠しがちな私にとって、この文化的な側面を多分に持つ「経済」は親しみやすく思えた。相互の利益のためとはいえ、商売が信頼によって成り立っているのは弊害があるにせよ素敵なことではないかと思う。今もその制度が残っているのかはわからないが、信頼がその場で清算される現金支払いを嫌い、返済方式が好まれることがあるそうだ。映画などで見る日本にもある「ツケ」の文化と似ているのだろうか。経済の近代化、現代化が進むにつれて、こういった伝統的な経済はどのように変化していくのか。世界中の他の都市がそうであったように、全てが規格化され、画一的な経済に組み込まれてしまうのは少し悲しい気がする。   参考:『「見えざるユダヤ人」とバザール経済』 堀内正樹 『ウズベキスタンの慣習経済』 樋渡雅人 (文責:文科二類二年 高川)  

中央アジア・ウズベキスタンの伝統音楽・楽器

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中央アジア…というと、独特の音楽、きらびやかな衣装、というのが個人的な印象である。そこで、ウズベキスタンの人々の民俗、生活を知る端緒として、中央アジア、ウズベキスタンの民族音楽、楽器について調べた。 ▼中央アジアの民衆音楽、楽器 中央アジアの伝統音楽は、各民族の十九世紀までの生活形態によって大別することができる。遊牧民(カザフ人や、クルグス人)の音楽と東西トルキスタンの定住農耕民の音楽である。中央アジアでは、これらの伝統音楽を民衆音楽(ロシア語:narodnaia muzyka)と呼ぶことが多い。 遊牧民の音楽はシンプルな弦楽器による独奏や弾き語りである。(例外として、トルクメンは弦楽器と弓奏楽器の小合奏が一般的である。)現在では、主な弦楽器は民族ごとに規格化されているが、元来は多様な地方様式を持っていた。そのため、中央アジア各国に伝わる代表的な弦楽器は似通った特徴を持っている。また、住居を移動させる遊牧民にとって、軽くて移動に便利なものが好まれたため、弦楽器に限らず、民族楽器には軽くて持ち運びやすいという共通点がある。中央アジアの民族楽器は、現代の楽器の原型となるものが多くあるが、古くから東西アジアの交流の中継地となっていたため、これら民族楽器の特徴は一部の東西アジアの伝統楽器にも伺える。たとえば、日本の「琵琶」は、外見だけでなく、弦の仕組みも中央アジアの弦楽器と似ているそうだ。 かつて、文字を待たない遊牧民は、弦楽器の独奏・引き語りによって、口承文芸を後世に伝えていた。カザフ、クルグスには、キュイという器楽独奏のジャンルがあり、各キュイには付随する伝説が伝わっている。かつての演奏者はキュイの演奏に先立って伝説を聴衆に語ったそうである。(歴史や習俗、信仰、世界観などが凝縮されている口承文芸は、人々にとって娯楽であるとともに、自らのアイデンティティを強める重要な存在であった。しかし、現在では、各国に数十から数百の語り手が活躍するばかりになっている。) 定住農耕民の音楽の代表的なものは、マカームという形式の音楽である。これは、マカームという一定の旋法とリズム型に基づいて演奏される組曲で、西アジア全域にも共通して伝わる。マカーム音楽にも地方様式があり、現在にはブハラ、、ホラズム、フェルガナのマカームが伝えられている。固定的な要素と即興的な要素を併せ持つのが特徴的である。マカームで用いられる楽器は非常に豊富で、独奏と斉奏を重視する。 ▼ウズベキスタンの民衆音楽、楽器 ウズベキスタンのお祭り、割礼、結婚式などお祝い事には、伝統音楽と、そして舞踏がつきものである。演奏に用いられる代表的な楽器は、スルナイという管楽器、タンブール、ギジャクなどの弦鳴楽器、ドイラという打楽器、ナイという横笛である。 スルナイ:杏の木やクワの木から作られる。吹き方、形ともオーボエに非常に良く似ている。 タンブール:洋ナシ型あるいは半球型のリュート属撥弦楽器 ギジャク:四本の弦を、弓を用いて演奏する捺弦楽器 ドイラ:タンバリンに似ている。ドイラと歌のみで女性が踊る伝統舞踊の形式がさまざまにある。 ナイ:竹製や木製の横笛。音は尺八に似ている。 ウズベキスタンの民族舞踏は、何度も高速で回転する胡旋舞である。胡旋舞は女性の踊りで、誘惑の踊りであると共に自然や刺繍の様子などを表した踊りである。それぞれの動きには意味があり、肩を上下に動かしたり、首や手の動き、体の反りなどで表現する。 ホルズム・ブハラ・フェルガナ地方の踊りが有名である。 *** 先日、フィールドワークの一環として、ゼミ生と都内の某イラン料理店へウズベキスタン料理を体験に行った。幸運にも、ダンスショーが行われる日で、中央アジアの伝統舞踏も体験することができた。胡旋舞と知っていたし、ネット上の動画で見たこともあったので、どんなものだろう、と軽い気持ちで期待していたが、実物は想像以上に躍動的で魅惑的な踊りであった。とにかく回る回る回る回る、、、それに、速い。私は思わず、お稽古の苦労を想像してしまった。(踊り子はおそらくすべて日本人であった。)首、腰、腕、手先の動きは、とても斬新で、神秘的に見えた。踊り子たちは始終笑顔を絶やさなかったため、どこか妖艶な雰囲気さえ感じた。途中、お客さんがドイラと思われる楽器で拍子をとり、それにあわせて踊り子が上体を反り返らせる、という踊りもあった。クライマックスには、踊り子の誘導でわたしたちゼミ生やほかのお客さんも踊りに参加した。踊り子の見よう見まねでリズムにあわせて踊っていると、私を含めみんなが楽しそうで、店内が一体化しているような心地がした。こんな結婚式やお祝い事は格別にすばらしいに違いない、と思えて、ウズベキスタンに行くのが楽しみになった。おそらく、本場の舞踏はさらに迫力があって、メッセージ性も高いのだろう。ウズベキスタンの伝統舞踏を目に焼き付けて(できるなら、すこしでも体にしみこませて)きたい。 文責:文科二類一年 藤沢

なぜ観光なのか?

カテゴリー: 中央アジア散歩

今日はなぜ僕がウズベキスタンの観光について興味を持ったのか。 また、何を目標にウズベキスタンに行くかについて書きます。 そもそも最初に経済班でウズベキスタンやそのほかの中央アジアの国々の統計データについて調べていた際に、観光収入というデータを発見し、サマルカンドなどの歴史的に有名な都市を始めとした豊かな観光資源があるのに他の国々に比べてあまり観光収入が大きくないことに着目したからです。 ウズベキスタン:観光客107万人、観光収入6400万ドル カザフスタン:観光客127万人、観光収入11億ドル キルギス:観光客244万人、観光収入5.7億ドル トルクメニスタン:観光客8000人、観光収入1.9億ドル タジキスタン:観光客4000人、観光収入2400万ドル(2011 Data Book of The WORLD 二宮書店出版より引用) 五ハン国における観光に関するデータの比較ですが、ウズベキスタンの観光収入は五ハン国の中で明らかに低い(下から二番目)うえに、順位が一つ上のトルクメニスタンの約三分の一ほどしか収入が無いです。 観光資源については負けていることはもちろん無く、世界遺産の登録件数を比較してみても、ウズベキスタン:文化遺産が4個、カザフスタン:文化遺産が2個、自然遺産が1個、キルギス:文化遺産が1個、トルクメニスタン:文化遺産が3個、タジキスタン:文化遺産が1個 となっています。 また、もう一つの理由として日本でも国の経済政策として観光という分野が着目されるようになったことがあります。2009年の鳩山内閣では観光が経済成長分野の柱に位置され、観光立国推進基本法、観光立国推進基本計画によって観光立国の実現が目指されています。観光の形態自体も高度な医療を目的としたメディカルツーリズムなど多様化が進んでおり、非常に興味深い分野となっています。 残念ながら日本の人たちでウズベキスタンに行ったことがあるという方にはほとんどお会いすることがありませんが(実際に日本人のウズベキスタン渡航者は年一万人以下)、SNS上でウズベキスタンに行ったことがある何名かの方々に、ウズベキスタンに行った際の不便だった点・日本人があまりウズベキスタンに行かない原因となっているものは何かとアンケートを実施したところ、不便だった点は公共交通機関や一部施設で写真撮影が禁止されていること、宿泊毎に滞在者登録が必要なこと、悪質な警官がいるなどが挙げられていました。日本人があまりウズベキスタンに行かない原因に関してはほとんどの人が一致して①ウズベキスタンそのものを知らない人が多い②ウズベキスタンと聞くと、アフガニスタンなどを連想し非常に治安が悪そうに感じるという二つの原因を挙げていました。 そこで、僕が今回ウズベキスタンに行く際の個人的な目標として①日本とウズベキスタン双方でお互いの国に観光する人が増えるにはどうしたらよいかについてしっかり考えること②若者である自分の目線から見て日本人の若者が気に入りそうなウズベキスタンの魅力について見つけてくることの二つを設定しました。 現地で深い知識を得るために出発直前まで、読書などを通して観光関連の知識をさらに身につけていきたいと思います。 文責:文科Ⅱ類八木雄介

ウズベキスタンの交通

カテゴリー: 中央アジア散歩

‘ウズベキスタン’と聞いて、明確なイメージを持てる日本人は少ないのではないかと思う。友人や家族などと話していても、「そんなところに行っても大丈夫なの?」とか、「ウズベキスタンって何があるの?」とか、そういったやりとりは数多くあった。実は、私もはじめは同様に、’ウズベキスタン’といえば、高校世界史で習ったように、’文明の交差点’だとか、CISの一員といった漠然としたイメージしか持っていなかった。自分にとって未知の領域に踏み込む、そんな好奇心も働いて、当ゼミを履修するに至った。 私は、’経済班’の一員として、ウズベキスタンの観光産業を中心に調査を進めてきた。その調査の過程においては、様々な困難がつきまとった。例えば、日本語の文献では十分な情報が得られないこと、場合によってはロシア語等でないと情報が見られないということ、あるいは、国の体質として、統計等の情報が十分には公開されていないことなどが挙げられる。もちろん、私の力が及ばない部分が多いこともその大きな一因として挙げられるが、以下に、微力ながら、交通についての簡単なまとめを記す。このとき、班の方針として、’日本からの観光客を呼び込む’というテーマがあるため、そこにも触れながら話を進める。 ウズベキスタンの主な観光地は、首都のタシュケントや世界遺産の存在するヒヴァ、ブハラ、シャフリサブス、サマルカンドである。それらの都市の位置関係は下図のようになる。衛生写真からも分かるように、これらの点在するオアシス都市以外には広大な砂漠が広がっている。             (Google Earthより)   ウズベキスタンにおいては、これらの都市をつなぐ交通手段としては、主に、鉄道、バス(タクシー)、航空機が挙げられる。以下、それぞれを個別に見ていく。 ・鉄道               (OrexCA.com より)   上図がウズベキスタンにおける鉄道網である。先の衛生写真と見比べて分かるように、点在するオアシス都市を通るように敷かれている。オアシス都市をつなぐものとしては、’Registan’,’Sharq’,’Sanaf’といった高速鉄道が走っており、例えば、タシュケント-サマルカンド間を3時間半ほどで、タシュケント-ブハラ間を6時間半ほどで結んでいる。料金は2つの席種に分かれており、それぞれの便において、25,000スムと15,000スム、22,000スムと34,000スムとなっている(1円≒22スム)。 ・バス(タクシー)               (国土交通省ホームページより)   上図がウズベキスタンにおける主な幹線道路である。これも鉄道網と同様に、オアシス都市間をつなぐ大動脈となっている。残念ながら、バスやタクシーについてはなかなか有力な情報源を見つけることができなかったため、主に個人ブログや口コミを参考に情報を収集した。それによると、タシュケント-サマルカンド間は定期バスが走っており、十分に快適でかつ鉄道を利用するよりも割安で済む(7米ドルほど)ということ、サマルカンド以西については、乗合タクシーを利用する場合が多いということなどが分かった。また、交通費は交渉次第で変動する可能性が大いにあり、その価格はドルベースで決められることが多いという。 ・航空機               (Uzbekistan airway ホームページより)   上図がウズベキスタン航空の国内線の就航路である。基本的に、首都タシュケントがハブ空港としての役割を果たしており、主要都市へは一日で複数便の定期便がある。タシュケント-ウルゲンチ間など、鉄道やバス・タクシー等の利用では時間的な負担が大きくなってしまう移動の際によく使われる。一方、価格は割高となり、例えば、タシュケント-ブハラ間は1時間半前後で移動できるが、71,000スムほどの金額となる。   以上、3つの交通手段について見てきたが、料金や時間などについて一長一短があるという印象が残った。しかしながら、それぞれの快適さ、利便性などは実際に利用しない限りは妥当な評価を下すことはできないと思うので、現地に行った際に、自分自身で体験したいと思う。   文:文科二類2年 田村 悠

中央アジアの歴史小話2

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大宛国の首都 近代以前に中央アジアに興亡した数多の国の歴史には不明な点が多い。このことは前回の記事でも述べたことであるが、今回はそのような謎を解明するために行われた研究の一例として、前回の記事で触れた大宛国についてもう少し掘り下げようと思う。例によって細かいトピックになってしまうが、どうか勘弁していただきたい。今回のテーマは大宛国の首都についてである。 大宛国の首都の所在は明らかでなく、これについて学者たちが様々な説を主張し、その論争は現代に至ってもなお収束のめを見ない。これからその論争の過程を軽く見ていく訳だが、その前に大宛国についていくつか補足しておこう。 大宛国② 大宛国はイラン民族の定着農耕社会であり、人口は数十万の規模であったとされる。その位置については前回述べた通り諸説あるが、ここではフェルガナに存在していたと仮定しよう。大宛とは「広大なオアシス」の意であったらしく、ぶどう酒や馬が主産物であった。「史記」の記述によれば、前述のように、張騫の報告によって汗血馬の存在を知った前漢の武帝はこれを強く欲し、使者を大宛国に送ってこれを求めるも、すでに大量の漢の物産を得ていた大宛の王はこれを拒否、怒った武帝は大軍を派遣し、二度の攻撃の末に宛都と記される「弐師城」を攻略させ、服属せしめた。 弐師城と貴山城 武帝の軍によって陥落した弐師城は、宛都と記されていることから、大宛国の首都であったことは疑いようがない。しかし一方で「漢書」では大宛国の首都は「貴山城」であったと書かれている。ここで様々な憶測が飛び交うことになる。この二つはまったく違う場所でどちらかが誤った記述なのか、はたまたひとつの首都が時代によって異なる名前で呼ばれていたのかといった具合である。この疑問に対する明確な結論は未だ出ていない。しかしながら、現在では二つの都市がどちらも大宛国の都を指しているとの見方が趨勢であるようなので、ここにおいてもこれを前提に話を進めていくこととしたい。 首都はどこか ここまで見てきた分だけを見ても、大宛国は不明な点が多くあることは明らかであろうが、ここでさらに別の疑問が出てくる。大宛国の首都、すなわち弐師城ないし貴山城は現在のどの都市に比定されるのか、というものである。これに対する論争は一時期非常に盛んになり、多くの学者が「弐師」や「貴山」がどのような音に対して当てられたものかという考察や、「史記」「漢書」の記述から地形や川の流れなどから位置を推測する作業などを通してこの謎に包まれた首都の位置を解明しようと努力を重ねてきた。各々の学者が主張する首都の位置はフェルガナ地方を中心に広く散らばっており、それらすべてをここで紹介するのは不可能である。そのためここでは私が興味を持った二つの説を紹介しよう。 A・N・ベルンシュタムの主張 ソ連の考古学者ベルンシュタムは、オシュの郊外に馬の岩壁画を発見し、これを有力な手がかりとして、そこから遠くない位置にあるオシュ河岸の廃墟マルハマトを首都に比定している。彼は問題の岩壁画に描かれた馬の外観がモンゴリアや西アジアのそれと異なる特徴を持っていることを指摘し、これこそが汗血馬を描いたものであり、岩壁画が描かれたこの場所が馬の繁殖を願う信仰の場であったというのである。したがって、首都はここからそう離れていない位置に存在していたと推理し、遺跡発掘の結果堅固な城壁を持っていたことがわかった廃墟マルハマトにたどり着いたのである。ベルンシュタムは発掘報告において、遺跡で発掘された物品が紀元前2~3世紀のもので大宛国の時代と矛盾しないことや、中城や外城の存在が確認されたことも述べている。この説明で筆者は大いに納得したのだが、これだけの調査をもってしても、マルハマトを首都に比定する確固たる証拠はないのである。 「ニサ=弐師」説 もうひとつ紹介する学説は、「弐師」をギリシア人の言う「ニサ」という音に当てた文字であるとする説である。この説は西洋において有力視されており、19世紀から主張されている。一世紀のギリシア人地理学者ストラボンはニサをアムダリヤ川の南西にあったとしている。そうであるとするとニサはフェルガナに存在しなかったことになるが、これも確証はない。それではこの話をもう少し掘り下げてみよう。 ニサはギリシア神話において酒神バッカスがニサのニンフたちに育てられたというエピソードからきているが、この地名はアレクサンドロス大王の遠征以前からこの地域にいくつも存在している。それらがすべてこの神話からきているとも限らず、たかが二音節のため偶然の一致とも考えられる。ニサという地名が酒神とかかわりがあることからぶどう酒が連想されるが、フェルガナ以外の地域でもぶどう酒は広くつくられているためヒントとはならないだろう。いってしまえば、仮にニサ=弐師の学説が正しいとしても、そのニサが現在のどこに当たるかを突き止めるのは不可能に近いのである。 これからの展望 ここまで大宛国にかかわるいくつもの研究を紹介してきたが、多くの学者の懸命の努力にもかかわらず、いずれも答えは出ていない。当然、私のようなシロウトがこの問題に対して解決の光を当てることなど到底かなわない。しかしながら、現地で大学生に対してのヒアリングを通し、現地の人がこの問題に対してどのような認識を持っているのかを(おそらく大半の人はこの国の存在すら知らないかもしれないが)調べてみたい。ほかにできることといえば、ウズベキスタンの地に立ち、はるか昔にこの地を駆け抜けた名馬に思いをはせることであろうか。 文責:文科二類二年 藻谷

政治体制

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リビアでカダフィ政権が倒れた。 自国民に対する非人道的な抑圧と殺戮を長年にわたり続けてきた支配者を追放し、民主化の旗を振りかざす反カダフィ勢力の姿は、ともすると微笑ましいものなのかもしれない。 しかし今後「アラブの春」が平和裡に戦地を包み込んでいく光景は想像し難い。また、「独裁=悪」の類の絶対的観念が我が国においてどうも拭い去られていない感がある。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ この文章を綴るまさに今の、民主主義の日本の政治体制を考えさせられる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ アンディジャン事件およびその後の外交姿勢を欧米よりの視点で捉えると、カリモフ大統領を長とする権威主義体は、その性格の一面をひどく強調され、人権侵害が云々という議論にしか発展しないようにも思えてくる。 統計データや契約内容の不透明性ゆえに信頼醸成に至らない、近代国家に求められる法律が整備されていない、そういった点から西側諸国ないし国際的なファンドから融資を受けにくくなり、例えばインフラ不足という事態の解決を遅らせうるものかもしれない。 一方で、発展途上国が国内産業育成などを主たる目的として幾分か強権的になることは歴史の中で珍しいことではないことと思う。地理的・文化的な密接性、貿易相手や輸送ルート(内陸国のウズベキスタンが海洋と結びつくにあたっては新疆ウイグル経由で連雲港につなぐのが簡便。(ジェトロ「中央アジアで拡大する中国のプレゼンス」2008年、ジェトロ 62頁より))といった経済的重要性を鑑みたうえで、政治体制の理解にさほど齟齬をきたさない中国との関係を良好に保つことだけを第一義的に考えることも十分に最適解たりうる。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 中央アジア外交の舞台に日本の姿は目立たない。ただ日本の資金援助(下表参考)は、地域別に見て比重が小さいという見方もできる一方で、各国と比較した際には十分な貢献度を保持してきていることは否めまい。「対シルクロード外交」や「中央アジア+日本」を標榜するその姿勢を顕在化させるためには、今以上のプレゼンスと独自性が必要ではないだろうか。 両国の間に複雑な歴史的背景があるわけでもないし、内政干渉擦れ擦れの政治問題を俎上に載せることなく、その潤沢な資金と民間団体とによる効用をどう最大化するかに絞っていくのもよいと思うのだが、どうだろうか。 相手国の政治体制への違和感が協力の足枷となるようでは勿体無い。 出典:外務省 政府開発援助(ODA)国別データブック 2010 (文 : 文科Ⅰ類2年 野崎拓洋)

ウズベキスタンの結婚式

カテゴリー: 中央アジア散歩

前回はウズベキスタンの「今」を象徴するウズベキスタン・ポップスを紹介したので、今回はウズベキスタンの伝統儀式の一つである結婚式について紹介したいと思う。結婚式ももちろん音楽と舞踊をこよなく愛するウズベキスタン人がよく表れている儀式だ。 ウズベキスタンの伝統的な結婚式は人生の一大イベントであり、親族がたくさん集まって行われる。田舎では今もこうした伝統的な結婚式が多く行われており、ホテルでの結婚式が多くなってきている都会でも内容においてはウズベキスタンの伝統を色濃く見ることができる。 伝統的な結婚式ではまずホトハ・トゥイと呼ばれる婚約の儀式が親の賛成と祝福によって段階ごとに行われる。成年に達した男性の親は息子にあう女性を探し始める。女性が見つかると、親とおばさんたちは女性の家に行き、息子にあう女性かどうかを判断する。あうと判断されれば、仲介人が選ばれ、仲介人は婚約日を発表、女性の家に女友達や親せき、マハッラの長老たちが集合、儀式を執り行う。ここでPATIRと呼ばれるパンを切り分けることで婚約が確定する。終わりに仲買人は結婚式の日付を決定、仲買の皆には女性の親からレピョーシカと菓子がくばられる。 結婚式の日の一大イベントといえば何と言っても朝プロフだ。朝の5時から200名ほどの客人にプロフを振る舞う。これは、花婿から送られた米、油、にんじん、羊の肉を用いて花嫁の家で行われる。朝プロフは男だけの行事で、食べるのも男なら作るのも男である。伝統的な歌を歌う歌手なども呼ばれて食事会が催される。 朝プロフが終わると花婿と花嫁は、結婚届けを提出しに行く。この後、レストランに集合してまた歌を聴きながらの食事会が催されることもある。 夜には盛大な披露宴が催される。これはとても大きな規模のもので、また歌手を呼んで食べ、歌い、踊る宴会の時間が続く。このとき呼ばれる歌手は国でも有名な歌手であることが多く、紅白歌合戦のような盛大な結婚式が行われる。これはウズベキスタンの結婚式の大きな特徴であろう。このダンスの時間には祝儀のお札も飛び交う。 披露宴が終わると新郎は新婦を連れて帰る。そして、翌日の朝には新婦の挨拶という行事がある。花婿は花婿の友人によって連れて行かれ、花嫁は伝統的なショールをかぶって挨拶に来るみなに挨拶を返す。 これが終わると結婚の二日後にはまた、新婦の両親による女性だけのパーティーが開かれる。これはお互いのことをよく知るために行われるのだそうだ。 こうしたウズベキスタンの結婚式には200~400人の人が集まり、楽しいお祭り騒ぎが続くのである。 このように、ウズベキスタンの結婚式は、もちろん個人の祝いの席であるが、それと同時に家族・親族の祝いとしての機能も果たしているといえるだろう。それはコミュニティの中に新しく新婦という他からの人員が増えるお祝いの席であり、また新郎のコミュニティと新婦のコミュニティが新しく関係をもつお祝いの席でもあるのだ。結婚式には大勢の人が呼ばれるし、朝プロフなど結婚祝いの準備は家族・親族によって行われる。新婚夫婦が自分たちで全てをセッティングし、お祝いに人を招く欧米流の結婚式とは趣向も異なったものになる。 欧米では「私」とは独立した個人としての私であるが、それに対してウズベキスタンでは「私」とはコミュニティの中におけるあるいはコミュニティ同士の関係性における「私」であるのだ。こうした共同体への考え方は一昔前の日本にも似ているだろう。 ウズベキスタンでは近年マハッラの見直しが進んでいることもあり、政府を中心にこうした共同体の働きをより強めようとする働きがあるようだ。一方で若者を中心に生活はどんどんと欧米化してきており、結婚式もホテルで行われることが多く、今は親同士が決めた結婚ではなくて男女が自分たちで知り合って結婚ということも都会ではよくある。 生活スタイルが変わっていく中でいかに家族・親族、またローカルなコミュニティを維持していくのかは大きな課題であるだろう。生活の変化に合わせて個人を個人として規定していくようになれば、大きな自由が生まれ対等な立場の個人が出現する。一方で、そうした変化によりローカルコミュニティは消失し人々は存在のよりどころを失ってしまう。逆に共同体の力を強めていくことは生活基盤としての地域社会を提供するが、共同体が過度に機能すれば個人の抑圧やコミュニティ間の対立起こる可能性がある。 そうした中でこれからウズベキスタンがウズベキスタンとしてあるために作り上げていくべきコミュニティと個人との関係性の匙加減は、伝統かモダンかという問題とも相まって大きな影響を及ぼしているのではないかと思う。 (2年文科二類 鈴木)

ウズベキスタンポップス

カテゴリー: 中央アジア散歩

日本においてはウズベキスタンの認知度はまだまだ低く、砂漠、シルクロード、サマルカンド…といったイメージがある程度なので、伝統音楽ならばいざ知らずウズベキスタンポップスといえばその認知度はさらに低い。しかし、ウズベキスタンポップスはなかなか味のあるもので日本にもコアなファンは少数ではあるが存在するし、大きなCDショップでは片隅にほんの少しだけだが紹介されている。音楽と踊りをこよなく愛するウズベキスタンの人々にとってポップスもまた生活に大きな比重をしめているようで、みなMP3で好きな音楽を聴いているらしい。 文化を考えるとき、伝統と最先端の中で何を自らの文化としてこれから押し出していくのか、というのはウズベキスタンのみならず日本においても重要な論点だ。そこで今回はこのポップスに焦点を当てて考えてみたい。 ウズベキスタンポップスはウズベク音楽の伝統を感じさせるものでその独特のこぶしの利かせ方は欧米や日本ではなかなかお目にかかれないようなものが多い。曲の終りに長い絶叫がはいるものが多いし、前奏や間奏で際立つ弦楽器の旋律はまさに中央アジアを感じさせる。とはいえ、欧米でよくあるポップスの一種であることは確かで種類もラップのようなものからバラードのようなものまで様々ある。またプロモーションビデオなどでは最先端のもの、今ウズベクの人々に「かっこいい」と思われているものを少しだけ感じ取ることができる。かなり露出度の高い衣装と、曲によって全く雰囲気を変える化粧ははじめて見た私にとっては驚きであった。プロモーションビデオはクオリティの高いものが多く、日本で見られるものとほぼ同様だが、ストーリーもののコミカルな(?)ストーリー設定や夢を見ていただけだったというパターンが多いことなどは特徴といえるかもしれない。また一方で、伝統のアトラス模様の衣装でタシケントやサマルカンドなどの有名観光地で歌うプロモーションビデオも少数ではあるが存在し観光ビデオとしても有効そうで興味深い。 今ウズベキスタンで人気の歌手は、女性歌手ではRAYHON,SHAHZODA,SOGDIANA,LOLA,そして忘れてはいけないYULDUZなど、男性歌手ではSHAHZOD,BOJALAR,OYBEKなどだ。少しだけ取り上げて見るとYULDUZはウズベキスタン音楽界のまさに大御所で、日本人でも知っている人が多い、数少ないウズベク歌手の1人だと思われる。彼女は政府とも深いつながりがあったようで、国の大きなイベントなどでよく歌っていたのだが、2005年政府と関係が悪化して、今はトルコで活躍している。また、SOGDIANAはウズベキスタン生まれだがはじめはロシアで歌手として成功し、その後ウズベキスタンに逆輸入された歌手だ。SHAHZODAは美貌の歌手でロシア進出を進めているがそちらの方はあまりうまくは進んでいないそうだ。 こうして見てみると、ポップスにおけるウズベキスタンと周囲の国々との関係はなかなか興味深いものがある。ウズベキスタンにおいて、隣国のロシア、トルコはポップスに限らず最先端をいくお隣さんのようで、ファッションなどをみてみてもロシア製、トルコ製の洋服は少し高めでおしゃれ、と捉えられるらしい。音楽についても似たようなものがあって、ウズベキスタンは旧ソ連圏でロシア語が広く話されていることも手伝い、ウズベク歌手にとってロシアへの進出というのは一つの夢であるようだ。日本人歌手が欧米圏への進出を目指すのと似ているのだと思う。 一方でウズベク歌手のロシアへのあこがれは第三国の立場で見ると大変に興味深いものがある。歴史的に見てみると、ウズベキスタンをはじめとする中央アジアの国々は19世紀にソ連の支配下にはいった。ソ連以前には民族アイデンティティよりもムスリム・アイデンティティあるいはトゥルク・アイデンティティの方が強かった中央アジアの国々はその支配のもとで民族としてのアイデンティティを確立していった。ソ連の民族政策というのはその支配者ごとに変わる一貫性のないものであったが、それが現在の中央アジアの国々の民族アイデンティティに影響を与えているという側面も大きい。音楽を見てみると、この時代に弾圧された地域固有の音楽もあれば、逆に音楽学校が開かれて重視されるようになった音楽もある。また後者においては西洋音楽の枠組みで編曲や楽器改良がなされたりとソ連による取捨選択が反映されている。 1991年にソ連は解体し、中央アジアの国々は独立を遂げていった。こうして生まれた新しい中央アジア国家は各々その民族意識を強調に力を入れることとなった。そうしてその路線は現在にまで引き継がれているわけだが、その中でウズベキスタンのスター達があるいは若者たちが、ロシアに憧れを抱きロシア進出を望むという「ソ連圏人」としての行動をとるのは皮肉な様で大変に興味深い。と同時に、「欧米文化圏」であることを誇りにする私たち日本人の姿も皮肉として浮かび上がってくるように思う。 (二年文科二類 鈴木絢子)

文献『記憶の中のソ連―中央アジアの人々の生きた社会主義時代―』

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人間は「未知」なものに対して不思議な魅力を感じるものである。私が中央アジアに興味を持ったのも、中央アジアに自分の知らない世界が広がっているのではないか?中央アジアには自分の知らない何かがあるのではないか?と期待したからである。そうしたことでこのゼミに入った私は、文献を中心として自分なりにウズベキスタンについて調べてきた。 しかし文献にはどうしても、統計データが羅列されていてリアルさが欠けているものや、ある一個人から見た、ある種の「偏見」が入ったものも多い。そうした中で現地の人々のリアルな声を収集するためにウズベキスタンで社会調査を行い、まとめた本がある。それが「記憶の中のソ連―中央アジアの人々の生きた社会主義時代―」(ティムール・ダダバエフ、筑波大学出版会、2010)である。今回はこの本を紹介してみようと思う。 この本の中に収められている調査は、2006年以降にウズベキスタンで行われた、現地に住む人々に対して行われた調査である。調査項目は多岐に渡る。調査においては、なるべく多くのことを聞き出すためにインタビュー方法や質問票に工夫を施している。また著者自身がウズベキスタンの出身であることから、調査に主観が入り、偏りが生じないように尽力している。 調査では様々なことが明らかになるのだが、この中で私が特に興味が惹かれたのが、ウズベキスタンの人々が意外と旧ソ連の時代に対してノスタルジーを感じている、という調査結果である。彼らの中には、かつて存在していた旧ソ連という大国の存在が消失したことに対して悲しみ、そして現在の生活状況と比較して、旧ソ連の時代は豊かな暮らしができていたというノスタルジーを感じる人がいるのである。 こうした現象を目にすると、歴史における「記憶」の重要性と危うさを感じずにはいられない。歴史においてこうした「オーラルヒストリー」的なものを残していくことは重要である。しかし周知の通り、当時のウズベキスタンには他の社会主義国と同様、制限や弾圧、物資不足などの問題が存在していた。にもかかわらず、そうした事実はこのインタビューからは伺いにくい。つまり、彼らは今の状況を悲観しているが為に、かつての旧ソ連の時代を必要以上に美化している可能性が高いのである。 さらにこうした事実から伺えるのは、社会主義国がその負の側面を如何に国民の目に触れないようにしていたか、ということであろう。しかしその実態がどうであったかは、資本主義国に生きる我々には非常に理解しにくい。(私も指摘されるまで気付かなかった)現地に行ってこうした事実の一端でも知ることができたら、と思った次第である。 日本ではなかなかない貴重な調査をまとめた本であり、ウズベキスタンに行く前に一読する価値はあるだろう。是非目を通すことをおすすめする。 (文責:文科二類二年 西田)  

映画『UFO少年アブドラジャン』

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前回は中央アジアの映画産業についてまとめたが、今回はウズベキスタンの映画作品をひとつ紹介したい。川名君が記述しているように、中央アジアの映画というのはなかなか日本では見られない。その中で、数少ないDVD化された作品である『UFO少年アブドラジャン』という作品を取り上げたいと思う。 『UFO少年アブドラジャン』は1992年にズリフィカール・ムサコフ監督が撮った作品で舞台はソ連時代のウズベキスタンのとある農村である。 ある日、その農村で集会が開かれている最中、議長がモスクワからの電報を読みあげた。その内容は宇宙人を乗せたと思われるUFがその農村に向かっているから宇宙人を発見したら報告するように、というもの。農民たちはUFOを知らないので、空からお客さんが来るらしいとののんびりとした解釈をした。そんな中、農夫バザルバイは奇妙な円盤型の物体が空から墜落してくるのを目撃した。近づくと裸の少年が倒れており、バザルバイは彼を助け出しアブドラジャンと名付け家へ連れて帰るのであった。バザルバイとその妻が面倒を見始めてから、アブドラジャンは次々と奇跡を起こしてバザルバイや農村の人々を喜ばせる、というストーリーである。 実はこの映画、冒頭に以下のようなナレーションが入る。 「拝啓、スティーブン・スピルバーグ様 この間、あなたの作品『E.T』を見ました。とても素敵な作品でした。実は私たちの村にも先日UFOが本当にやってきました。そのことを書いたので読んでください。」 つまりこの作品は、スピルバーグへの手紙を読むという形で語られているのである。私はこのアメリカのポップカルチャーと中央アジアの田舎の組み合わせが、実に面白いと思った。私たちが見慣れている、CGで何でもできるハリウッド映画や我が国の映画とは違う。人間の10倍もあるような巨大なスイカや、糸でつられた鍋をひっくりかえしただけのようなUFOは非常にチープな作りである。だが、この映画を見ると癒されたような優しい気持ちになれる。 この作品が作られた1992年は独立の翌年だ。ソ連の統制下でウズベキスタンの人々がどのような生活を送っていたのかはわからないが、きっと独立時に祖国再建を夢見、希望を持ったことであろう。これから創ろうとする自分たちの国。世界の人々との繋がり。その中で『E.T』に彼らは共感したのかもしれない。侵略者や敵としての異星人ではなくて、友達としての異星人。敵としていがみ合うのではなく、世界の国々と親友として繋がっていきたいという夢が重なったのではないかと思う。この映画からはそのような優しさが感じとれる。 事実ではなくて素朴な農民が書いた「手紙」という形式をとったこと、その宛先が記者ではなくスピルバーグであることがこの話をおとぎ話の雰囲気にしている。その雰囲気の中の低予算・低技術が逆に良い意味での手作り感を作り上げている。映画といえば、普段アメリカ映画などの予算のかかったCGを使ったものに多く触れるが、これもまた映画の形のひとつである。 2002年に大使館主催でウズベキスタン映画祭というものが開催されていたらしい。 中央アジアの映画にはDVD化されている作品が少ないだけに、このような映画祭がもっと開かれて中央アジア映画が浸透すれば、と思う。 (文責:文科2類2年 鹿田)

中央アジアの映画産業と考察

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私はこのゼミを通して中央アジアの映画について興味を持ち、調査をしてきた。中央アジアの映画は日本ではあまり見る機会がないが、ソ連時代も含め映画製作が活発に行われたこともある。今回はウズベキスタンを中心に映画産業の歴史とその考察をしたいと思う。 タシケントでは1897年、最初の映画の上映が行われたという。当時ソ連は映画を、プロパガンダとして政治的な思想を広めるための利用を国家レベルで考えた。そのため、中央アジアの各地でも1920年代には映画製作の拠点が数多く作られている。ここで製作された映画は当初、ドキュメンタリー映画や短編映画が中心だったがそのうち技術の向上などにより劇映画も作られるようになった。第二次世界大戦に突入すると、ソ連の欧州部にあった映画撮影所は敵国の侵攻を受けて中央アジアに場所を移した。当時の映画の大半がここで作成され、その後の中央アジアの映画産業で働く人材の育成の場とも同時になったのであった。戦後60年代になるとモスクワや現サンクトペテルブルグで映画教育を受けた人々が各地の撮影所で映画を作成するようになった。この時期の映画にはソ連国外でも高く評価されているのもが多い。(川名君が紹介しているボロトベク・シャムシエフの『白い汽船』もその一例である)1991年に各共和国が独立した後は、製作本数は激減した。ソ連の計画経済の下であったら、内容の検閲など自由の利かない部分もあったがその反面予算などは確保されていたため独立後は衰退してしまったのである。 ウズベキスタンに関しては、ソ連時代ではこの地域での映画の製作がもっとも盛んであったのに独立後は衰退した。しかし、90年代末からは政策で年5本前後の製作が国家予算で保証されるようになった。国内の映画館設備は老朽化が激しく、また映画館内のマナーなども悪いという。さらにテレビやビデオを通じて映画が出回っているが、必ずしも国内映画というわけではなく外国映画が多いという。 ウズベキスタンの映画産業は岐路に立っていると思う。現在は、低予算で低技術の映画しか作れず、マーケットを意識しきれていない状況である。もしも映画を産業として、国際的に規模を拡大したいとするのならば、国際マーケットを把握してニーズにあったものを生み出していかなければならない。その動きとして、ウズベキスタンの映画監督には外国との合作を発表している人もいる。 授業中や昼休みに文化班の人とディスカッションを行い、文化面でのウズベキスタン、中央アジアについて話したが、映画に関係していてその時気がついたこととしては、 ・ソ連時代の影響を受けていること ・そのために欧米の文化、流行が主流の国際マーケットに対応できていない ということがあげられる。 例えば設備や映画を作る方法などはソ連からの影響を受けているし、従来の国内向けの作品で国外で評価されているのはわずかな上、前述したように国内でも外国映画ばかりがみられている状況である。 今、岐路に立っている映画産業だが、外国が合作を行う場合も少なからずあり、この地域の映画に対する期待は低くない。今後産業として強化していくのであれば、しっかりと現状を把握しマーケットを開拓して行くべきだと思うが、私個人としては、ハリウッド映画などにはないようなのんびりとした空気の流れるウズベキスタンの映画が好きだ。次回はウズベキスタン映画をひとつとりあげてその紹介をしたいと思う。 参考文献:「中央アジアを知るための60章」 宇山智彦 明石書店 (文責:文科2類2年 鹿田)

タシケントの見どころ&ウズベキスタン観光業考察

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タシケントはウズベキスタンの首都であり、約220万人以上の人口を擁する大都会である。そこでは中央アジア唯一の地下鉄が走り、高さ375mのテレビ塔を始めとして近代的な大きなビルが立ち並んでいる。古くからオアシス都市として有名で、シルクロードの中継点として、中央アジアの交通の要衝であった。 タシケントの主な見どころの例を挙げる。 ◆クカルダシュ・メドレセ クカルダシュ・メドレセは、16世紀にタシケントの支配者であったシャイバニ朝のクカルダシュによって建てられた神学校。現在でも神学校として使われている。 ◆チョルスー・バザール 地下鉄チョルスー駅を出てすぐの場所にあるバザール。クカルダシュ・メドレセとも近い。タシケントには大きなバザールがいくつかあるが、『古いバザール』と呼ばれるのはチョルスー・バザールだけである。チョルスーは『4本の道で囲まれた場所』 という意味。バザールの中心に青いドームのついた屋内バザールがあるのが特徴になっており、屋外では衣類など日用雑貨が多く、屋内では香辛料やドライフルーツなどが並んでいる。人と物で溢れかえって熱気があり、 日常生活で必要なものは基本的には購入できそうである。 ◆ナヴォイ・オペラ・バレエ劇場 ウズベキスタンの首都タシケントの新市街にある1500人収容の劇場。1947年に完成した。外見は淡い茶色で、6つの休憩ロビーは、タシケント、サマルカンド、ブハラ、ホレズム、フェルガナ、テルメズの6地方のスタイルで装飾されており、玄関正面の大きな噴水も特徴的である。この劇場は、実は第二次大戦後にタシケントに連れてこられた日本人抑留者の強制労働によって建てられたもので、1966年の大地震でもびくともせず、日本人の建築技術の高さを物語っている。 ◆ウズベキスタン歴史博物館 タシケントの新市街にある博物館。中央アジアでは最も大きい博物館で、石器時代からロシア帝国の征服以降の歴史まで、ウズベキスタンの通史をざっと知ることができる。 最大の見物は、テルメズ近郊のファヤーズ・テペ遺跡から出土した穏やかな顔が印象的なクシャン朝時代の仏像で、他にも二階には石器時代からの鏃や土器、人骨、ゾロアスター教寺院の復元模型、三階にはロシア帝国の征服以後の歴史、独立後の展示品が置かれ、現代の産業についても見ることができる。 ブハラ・タシケントの概要と見どころをまとめたところで、最後に、これまでの調査のまとめとしてウズベキスタン観光の現状と課題について述べたいと思う。 ◆現状 これまで挙げてきたような見どころを始めとして、ウズベキスタンにはシルクロードの起点であったこともあり、歴史的建造物など観光資源が豊富にある。 しかし、日本からウズベキスタンへの観光客は、年間約4千人でビジネス客は約2千人であり、上に挙げたような豊富な観光資源と比べればその数は多いとは言えない。 ◆課題 上に述べたように、ウズベキスタンには観光資源が豊富なのにも関わらず、観光客数が少ない原因としては、交通の便が良くない(例えばウズベキスタン航空の便は週2便と少ない)ことやホテルの施設が良くないことなどがまず挙げられるが、根本的には、観光業を行う基盤が行政側・民間側にも整っていないことが原因である。例えば交通網の整備が不十分であったり、観光客向けのサービスが整っていないことがある。 さらに日本にもウズベキスタン観光を取り扱っているエージェントが少ないことも大きな問題である。そのため、手軽にウズベキスタンに観光に行くことができないばかりか、そもそもウズベキスタン観光についての情報を得ることすら難しい。 知名度やイメージにおいても重要な問題がある。海外旅行をしようというときに、ウズベキスタン観光をしたいと思う人は相当のマニアでない限り殆ど皆無であろう。そもそもウズベキスタンには観光地として「気軽に」行ける国というイメージはなく、治安やテロの可能性といった点で不安を抱く人も少なくないだろう。 先述したように、ウズベキスタンにはいくつかの世界遺産をはじめとした観光資源が数多くあり、サマルカンドやシルクロードのイメージと合わせて世界でも主要な観光地となる可能性を秘めている。そのためには、行政・民間双方から観光基盤を整理し、インフラの整理や、観光客向けのサービスを充実させることが必須である。また、日本のツアー客を募集するための母体が少ないのは、ウズベキスタン側のエージェントが日本側と契約できないケースが多いことが大きな原因となっていることも多いから、ウズベキスタン側と日本側のエージェントが円滑に交渉できるよう環境を改善することも重要である。 また、観光地としてのウズベキスタンのイメージ向上のためには、広報を充実させると共に、治安改善のための努力を重ね、地道に信頼を得ていくしかない。 (文責:文科2類2年 榊原)

ブハラの見どころ

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ブハラは、ウズベキスタンの都市で、首都タシケントの南西約450kmに位置する。ユネスコの世界遺産に登録されているブハラは、かつてシルクロードの交通の要所として栄え、現在に至るまでイスラーム教の中心的役割を果たしてきた。中世のイスラーム哲学者・医学者であるイブン・シーナーはブハラ出身であり、この地で法典を著したことは有名である。 ブハラの主な見どころの例を挙げる。 ◆カラーン・ミナレット カラーン・ミナレットとはタジク語で「大きな光の塔」という意味で、高さが約46mありブハラで一番高い。1127年にカラハーン朝のアルスラン・ハーンによって建てられた、ブハラのシンボル的な建築物である。 ◆カラーン・モスク カラーン・ミナレットとつながっているモスク。現存している建物は1500年頃建てられたものである。広さは約1haもあり、1万人の信者が礼拝できた非常に大きなモスクである。正面入口は色タイルで装飾され、中央には青いドームがそびえている。 ◆イスマイール・サーマーニ廟 サーマーン朝のイスマイール・サーマーニによって9世紀終わり頃に建てられた、中央アジア最古のイスラーム建築。特徴として、壁面のレンガが日差しの加減によりその凹凸の明暗が変わることで、色が変わって見えることがあり、レンガを積み上げただけでこれほど様々な幾何学的模様を付けている意匠には注目すべきである。サイズは9m四方、壁の厚さが1.8m、日干しレンガを積み上げた構造である。 ◆チョル・ミナル チョル・ミナルとは「4本のミナレット」の意。1807年にトルクメニスタン人の大富豪により建てられた。建物を囲う4本のミナレットと青タイルで美しく装飾された上部のドームが印象的である。 ひとまずここで筆を置き、次回はタシケントの見どころをまとめてから、これまでの調査のまとめとしてウズベキスタンの観光業の現状と課題について述べたいと思う。 (文責:文科2類2年 榊原)

中央アジアの歴史小話1

カテゴリー: 中央アジア散歩

始めに このゼミにおいて私は中央アジアの歴史に興味を持ち、調査を行ってきた。中央アジアはシルクロードの通り道として世界史に名を馳せており、アレクサンドロス大王やイスラーム軍、チンギスハーンといった他地域の侵攻を受け、様々な民族が入り混じって覇を競い、また文化的にも他民族の影響を受けて変容を繰り返してきた。しかし、このように非常に魅力的な研究素材を多く内包しているにも関わらず、資料の少なさもあってか中央アジアの歴史研究はあまり進んでいないのが現状であり、高校の教科書等での扱いも非常に少ない。このような研究対象としてのフロンティア性に魅かれ、私は中央アジア史を調べるに至ったのである。 とはいうものの、中央アジアの歴史は前述のように様々な要素を含んでおり、短期間に深く、且つ体系的に知るにはいささか困難を伴う代物である。したがって、中央アジアの歴史を俯瞰するであるとか、シルクロードの通商史において中央アジアの位置づけを行うといった大それたことはせず、いくつかの小さなテーマを設定し、それについて調べるという手法をとってきた。今回はこのブログでそれらのうちいくつかを紹介したいと考えている。 始めにことわっておくが、これらのテーマは各々がかなり狭い範囲を対象としており、これらの調査の価値を実感できない人が多く出てくるのも至極当然のことである。しかしながら、イスラームにおいて「神は細部に宿る」とも言われるように(かなりこじつけではあるが)、このような地味な調査も歴史を理解するうえで重要になってくるということを強調し、読者各位のご理解を頂きたい。 では、具体的な調査内容に入ろう。一つ目のテーマは汗血馬についてである。 大宛国① 汗血馬について語る前にまずは大宛国について述べねばなるまい。大宛国とは現在のウズベキスタン、タジキスタン、キルギス共和国にまたがるフェルガナ盆地に紀元前二世紀ごろから存在したとされる国である。この国自体は中央アジアにおいて無数に興亡した小国家のひとつに過ぎず、前漢の張騫がその存在を紹介するまではほとんど知られていなかったほどであり、詳細な歴史についてはわからないことだらけである。そんな国を世界史において一躍有名にしたのが、他ならぬ汗血馬である。 汗血馬 ではその汗血馬とはいったいどのような馬であったのか。汗血馬とは読んで字のごとく「血のような汗を流して走る馬」のことであり、(もちろん誇張であろうが)一日に千里(約500km)も走ると言われている。大宛国はこの汗血馬を多く産出したとされ、先述の張騫が汗血馬を大宛国の存在とともに武帝に報告すると、良馬の不足に悩んでいた武帝はこの類まれな名馬を強く欲するようになり、大宛国にこれを求め、最終的には軍をもって服属させるまでに至っている。また、三国志演義に登場する赤兎馬もこの汗血馬をイメージしたのではないかとされる。 汗血馬の正体 このように中国史に登場してくる汗血馬は、実際はどのような馬であったのだろうか。常識的に考えれば血の汗を流す馬が実際に存在したとは考えにくい。この「血の汗を流す」という部分に関してはいくつかの説が挙げられているものの結論は出ていない。ひとつは馬の毛色によって、流れた汗が血の色のように見えたというものである。これは実際にそう見えることがあるということから有力であるように思われる。もう一つの説として、血汗症という症状を起こす寄生虫によって実際に血の汗を流していたというものがある。この説は趨勢であるようだが、汗血馬が血汗症であったという証拠はなく、今となってはそれを知る術はない。他にも寄生虫によって表皮に滲んだ血液が汗と混じって見えたといったような説もあり、想像欲を掻き立てられる。「一日に千里を走る」という部分は間違いなく誇張であるにしても、寄生虫がついた馬が痛みに刺激されて通常より速く走るということはあるようだ。 伝説の名馬は今どこに 様々な学説が飛び交う汗血馬だが、現代には存在するのか。自分が調べた限りにおいては、現在フェルガナ盆地周辺ではあまり馬の飼育は盛んではないようで、この地がかつて名馬の里であったとされるのに対し、今では馬の価値もそこまで高くないのではないかと思われる。このあたりについては実際にウズベキスタンで馬の現状についての軽い調査をしてみたいものである。一方で、フェルガナ盆地とは異なる場所で、汗血馬の子孫とされる存在を見ることができる。主にトルクメニスタンで飼われている「アハルテケ」という種の馬がそれである。トルクメニスタンは現在でも馬の名産地として有名であり、アハルテケは同国の国章にも描かれている。この種は小柄であるが美しい体つきをしており、4152kmを84日で走破した記録を持つほど走りに長けている。ここで問題になるのはもしアハルテケを汗血馬の子孫とすると、大宛国の位置そのものがフェルガナ盆地よりもさらにトルクメニスタン側にあった可能性が出てくる点である(フェルガナとトルクメニスタンの間にはかなりの距離がある)。これは大宛国の位置がそもそも確定していないためであるが、このあたりは次回のブログの内容の布石とし、今回は汗血馬について述べたところまでで筆をおこうと思う。 文責:文科二類二年 藻谷

中央アジアにおけるロシア語教育

カテゴリー: 全般

私は2005年の愛知万博で旧ソ連圏各国のパビリオンの係員(20代)にロシア語で話しかけてみたところ、全く通じなかったバルト三国、カフカス諸国とは対照的に、中央アジア諸国 係員は全員ロシア語が通じた。そのため、今でも熱心にロシア語を教育しているのかと思いきや必ずしもそうではないようである。 政府は、教育改革の中でも特にウズベク語化政策(80%がウズベク族)を推進している。学校教育では、ウズベク語に重心が移りつつあるが、都市部ではまだロシア語で授業を行う学校も存在する。大学では卒業論文等をロシア語での提出を認めない所も出現し、教育のウズベク語化が徐々に進んでいる。(ウズベキスタン) 独立後の10年間で初等・中等教育におけるカザフ語化が進み、カザフ語のみで教育を行う学校が増えている。 また、公立学校ではカザフ語が義務化されている。教授言語はカザフ語で行う学校、ロシア語で行う学校にわかれており、最近はカザフ語で行う学校が増えている。(カザフスタン) 当地には母国語であるトルクメン語の学校とロシア語の学校が存在しており、そのどちらかの語学が得意かによって選択することが出来る。ただ殆どの学校は母国語であるトルクメン語で授業を行っており、ソ連崩壊後トルクメニスタン建国15年を経過した現在、ロシア語の学校は少なくなってきている。(トルクメニスタン) 旧ソ連の教育カリキュラムが受け継がれている。教授言語は一般的にタジク語であるが、ロシア語も多数ある。年々、大学への進学率は高くなってきておりロシア語で授業を行う大学への人気が高まっている。(タジキスタン) キルギスはソ連崩壊後いち早く旧ソ連型統治から市場経済化・民主化への脱却が行われた国であるが、統一された指導要領はなく、学校毎に教育内容が異なる。(キルギス) (外務省:諸外国の学校制度 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/world_school/05europe/index05.html) こうして見ると将来的にロシア語を話せない人が増えると考えられる。現在は中央アジアの指導者層同士は母国語並みに操れるロシア語でコミュニケーションをとれているが、将来的に共通の言語がなくなったら協力関係に支障をもたらすのではないかと危惧される。 (文:文科三類二年 濱中)

ソ連の歴史教科書における日本の戦後

カテゴリー: 中央アジア散歩

本来はウズベキスタンの現在の歴史の教科書について書きたかったのだが、手に入らなかったため文科省内にある教育図書館所蔵の”Новейшая история для 10 класса”(10年生のための現代史)(1973)を参照した。 「日本」という題で4ページ半にわたる章がもうけられており、さらに「戦後の改革」「戦後の経済成長」「外交」「労働運動 」「日本国民の平和のための闘争」といった小見出しで分けられていた。 やはり社会主義的イデオロギー色が濃いことは否めない。中小企業の労働者が大企業に苦しめられていることや格差に関する記述が多く見られる。 「急速な工業の発展は科学技術革命だけでなく日本のプロレタリアートの残酷な搾取によって説明される。国家機関が巨大コンツェルンの繁栄に協力し、免税をしたり、利益になるような注文を割り当てたり、大規模に経済改革を変更したりして国が経済における重要な役目を果たしている。」 「増大する小作農の土地に対する闘争の影響のため政府は農地改革(1946〜1949)の導入を急いだ。地主には耕作地が3町残され、残りは国が買い取り農民に売却した。農地改革は小作人の数を減らし自作農を2倍に増やした。富裕な農民は顕著に財産をふやした。高い土地代のため多くの下流、中流階級の農民は土地を所有することはできなかった。」 基本的にどの資本主義国についても批判的に書かれている。しかしアメリカを絡めた批判が多いことが特徴的である。 「日本の民主化と非軍備化に関する連合国列強の決定にも関わらず、アメリカの占領政権は独占企業と地主と強く結びついた反動的な代表者からなる政権を形成した。その後、彼らは統治の指導者となり、現在は独占企業に支援を受けた自由民主党として政権を握っている。アメリカの支援のもと政府は以前の国家機構を維持し左翼を罰し労働運動を抑圧した。政府は政治力によって日本の独占企業の地位の復興を促し国内のアメリカの影響の案内人となった。」 「サンフランシスコ会議の後、自由民主党は陸海空軍設置に着手した。これは明らかに憲法に反している。(中略)アメリカ帝国主義は日本を軍備化することを選んだのである。」 今の日本の歴史の教科書や、参考として読んだ今のロシアの歴史の教科書とは、だいぶ趣きが異なるのは確かではある。しかし、かといってこの教科書に書かれていることが嘘八百だとは思わない。普通の教科書では切り捨てられがちな弱者に焦点を当てている点は特筆すべきであろう。ただ自国の政治、経済が腐っていることを棚に上げて批判している点は問題があるが‥。 (文:文科三類二年 濱中)

「理想の教育棟」内覧会

カテゴリー: KOMCEE建設

平成23年7月25日(月)、26日(火)の両日に教養学部総務課が中心となり、学部教職員向けに内覧会が開催されました。 また、理想の教育棟の名称ですが、 21 Komaba Center for Educational Excellence(21 KOMCEE)と変更になりました。

"It's part of my life , actually."(Hijiri Tomiyama)

Hi, I’m Hijiri Tomiyama. As my friends explained already, we held the exibition of Hibakushas’ testimonies at the University of Tokyo. Our group wanted to show Hibakushas’ a kind of  philosophical views of  their experiences through this work.  So we tried to choose pictures which express their cheerful faces and  phrases which quote their positive statements.   There are those who hate the war or the atomic  bomb itself , and those who hate the Japan and America because of their mistakes , and many of  them tell that they are distressed by a feeling of  guilt about their survival.In fact,we don’t experience the atomic bomb , so we can only image their  physical and mental pain and feel so sorry. Their conflicts are too complicated for us to  understand completely. They are tormented  by the fact that even though a lot of their family and friends died , they still survive.                They say  “we were lucky enough”. However , in spite of their hard experiences ,  they have to get over it and continue to live in this world.  One of Hibakushas’ said that “It’s part of my life , actually”.  We cannot and don’t want to believe that such a cruel event  was real , but for them , it was a crucial part of their life .  But it seems that they are accepting their experience  as reality for me. When we heard their testimonies ,  we feel not only their grief but also their strength                        from their attitude. Thank you for your reading.

About the exhibition-"distance"

Hi I’m Mizuki, a second-year student of the University of Tokyo. I’m going to write a short description of the works of my group in this article.     Many survivors of nuclear bombing say it’s couldn’t be understood by a person didn’t experience. How we should face this distance.   The upper statement is English translation of what we made as an introduction of our works when we exhibit them. This is the most important point of it and that’s all. I do not want to discuss in detail it in this article, and also I do not think I could. We can argue that this sense of impossibility was the very motive to make these works. The work in the left named “Yakeato” is made of two form board. One is printed with an experience of a survivor and put behind, and another is put in front of the board with experience. The front board was melted by roasting and has many holes.     The work in the right named “Zanshi” is made of one board. It’s also printed with an experience of another survivor. However, the letters are extremely pale so that you cannot read them without coming close almost touching it. We do not intend to insist one just explication, of cause. We want to depict the complexity and diversity which we cannot describe definitely but exist certainly.   Thank you for your reading. M.U.  

The Exhibition at the Gallary(Miki Okamoto)

Hello, I’m Miki Okamoto. As Yuta wrote yesterday on this blog, we exhibited testimonies of hibakushas at a gallery in our campus. Yuta has already written about the process of this exhibition and carried some pictures on this blog. So I’d like to introduce a work 0f our group. Our group used four pictures to show visitors the incurable scar on the body of hibakushas. They are still suffered from physical pain over 66 years since August 1945. Time does’t cure thier pain. One of the hibakushas said that “I still suffer from this scar. I always feel a piercing pain as if someone poked me with knife or pencil.” In addition, the endless mental damage of hibakushas compares to the testimony which was written in helical manner. The shape of spiral indicates that hibakushas can’t diminish their scar on their body but also they can’t escape from their awful memory of atomic bomb infinitely. They still suffer from continuous pain both physically and mentally. We wanted to tell visitors this fact and want them to think about pain of hibakushas again and more carefully. We tend to turn away from horrible scar of this tragic incident but we want to say that everyone should look this fact with profound consideration. I hope that this work will give everyone opportunity to think of it again.

Eternity of the Memory - an Exhibition at the Gallary

Hi. I’m Yuta Ikeda.  Last week, we exhibited testimonies of hibakushas at a gallary in our campus.  I’m going to write about it. Thanks to Shinpei Takeda, a director of the film “HIROSHIMA NAGASAKI DOWNLOAD”, we watched the videos of interview to a hibakusha, conducted by him.  We made a script from the interview, writing down one word to another onto manuscript paper.  We discussed how to exhibit testimonies, advised by Mr. Takeda.  After some discussions, we decided to cover all the wall with lots of manuscript papers, to design the background by manuscript papers themselves, and to make six works of art expressing what we were inspired.  (Please have a look at photos.)   Now I’ll introduce a work by our group, one of the six groups.  As you see in the photo below, we drew a phrase “To think about the Abomb, the first thing I remember is the scene of the brother and his sister. Then I can’t say any more. I always pray for them that they rest happily in the heaven. I saw tens and hundreds of suffering people, but I especially remember the boy picking up retten noodle, not eating it himself but having his sister eat.” in a shape of an infinity sign.  We tried to express that each one has something that is not forgotten but remains in one’s heart.  The speaker seems to be living a completely new life, but he has such a feeling that lasts silently at the bottom of his heart.  It repeats, being recalled from time to time.

 

What I think is important in conveying the memory is, to express “us presently facing to the memory of hibakusha”.  We should input something by hibakusha’s memory, digest them, and output not directly what we input but actively adding what we interpreted, in some case. Y.I.

映画『白い汽船』

カテゴリー: 中央アジア散歩

前回書いた通り、アテネフランセでのソ連映画特集で観たもう1本の映画を紹介したいと思う。 1976年にキルギスで制作された作品で、タイトルは『白い汽船』。監督はボロトベク・シャムシエフという人で、キルギスを代表する作家だというチンギス・アイマートフの同名の小説が原作で、そのアイマートフが脚本も担当している。 主人公は、街からはすこし離れたキルギスの山のなかに住む7歳の少年。山といってもこのあいだの『灰色の狼』とはまったく違う、森にかこまれ小さな川が家のちかくを流れるというような牧歌的な風景が広がる。少年は働きにでたきり戻ってこない両親の帰りを待ちながら、やさしい姉や祖父に意地悪な義理の祖母、そして叔母夫婦などと山で暮らしている。そんな少年の、小学校入学前後の日々を描いた作品である。 本当に素晴らしい映画だった。名作といっていいと思う。映像、色彩の感覚もとてもよく、現実と想像・夢との織りまぜ方も実に巧み。主人公の少年はもちろん、そのまわりの人物の描き方もよかった。 主人公の少年は無邪気で奔放、とても想像力が豊かだ。家のまわりの野原を駆けまわったり川で泳いだりして遊び、手伝いをさぼって遊んでいたのを厳しい義理の祖母にとがめられれば、手に持っていた双眼鏡に「双眼鏡、おまえもいけないぞ。おまえが誘ったんだから」と話しかけたりする。少年が祖父に学校へ通学するカバンを買ってもらってはしゃぎまわるところに始まり、はじめはそんな明るい少年の様子が中心に描かれるが、話が進んでいくとだんだんと少年の悩やむ様子や心の揺れうごき、少年のまわりで起こる様々な揉め事などが見えてくる。遊んでいた最中にお父さんに会いたいといってふと涙をながす少年(もっとも、子どもの常でつぎの瞬間にはまた遊びに夢中になるのだが)、子どもができないことへの怒りから叔母に暴力をふるう叔父と、そのことに心を痛める祖父と少年。義理の祖母は叔父と共謀して、自分の娘である叔母を離婚させて叔父と少年の姉を結婚させることを企み、その結果少年をいつもやさしく世話していた姉は街へ逃げてしまう。そして、やさしかった祖父が権力者の叔父(祖父からすれば娘婿)と衝突して仕事を失ってしまい、少年は大きなショックをうける。悪人の叔父と義理の祖母によってやさしい祖父や姉が苦しめられるという単純な構図ではあるが、叔父も仕事上かつてほどの力がなくなったことや子どもができないことに苦しんでいたりなど、人物造形が巧みで描き方もうまい。 映像的にも、みるべきところがたくさんあった。木々と草原の緑や川の水、青空と太陽の明るいイメージ、夜や物陰の暗闇などの暗いイメージと話にあわせた色彩の使いわけがなされ、それぞれの場面でみても映像としてとてもきれいなものが多かった。途中で祖父が語る民間伝承として「母鹿の伝説」というものが挿入されたが、この場面では赤や白をうまく使って民話の幻想的・神秘的で少し残酷な雰囲気をうまく表現した映像となっていて素晴らしかった。また、双眼鏡を通してみた湖に浮かぶ白い汽船(タイトルの元となったモチーフである)、水の中を潜る少年など様々な「装置」をうまく使った映像もみられた。少年が自分が魚になる想像をすれば少年が魚になってまわりの家族などに囲まれて泳ぐ映像が挿入されるなど、現実と少年の空想の混ぜ方も巧みで、ラストは様々な悩み事に苦しんだ少年が熱にうかされ、現実とその空想の境目があいまいになっていくような映像で終わる。 繰りかえしになるが、本当によくできた素晴らしい作品だった。子どもの想像力をあつかった映画の名作は、アルベール・ラモレスの『赤い風船』やビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』など多数あるが、そんな名作の1本にこの『白い汽船』も加えていいのではないかとさえ思う。タルコフスキーやパラジャーノフの作品などソ連ではかなり高いレベルの映画がつくられていたというのはよく言われることだが、ソ連のなかでも中央アジアにここまで良い作品があったというのはまったく知らなかったので今回かなり驚かされた。しかし、これだけ絶賛してきたこの映画『白い汽船』だが、今回はたまたま特集で上映ものの、日本ではDVDもビデオも発売されておらず、普通には観ることができない。もっと評価され多くの人に観られるべき作品だと思うので、いつかDVD・BD化されることを切に願う。そして、またこの作品に限らず現代のものも含めて中央アジア映画がもっと日本で広く観られるようになり、日本人の中央アジアへの関心も高まればと思う。 (文:文科二類二年 川名)

6月30日・内見してきました

カテゴリー: ZEBLOG

6月30日に理想の教育棟の内見に同行しました。 こちらはスタジオ教室(中)の様子です。 どのようにZEB関連の技術が盛り込まれているか、建設状況レポートブログの中で解説しておりますのでぜひご覧下さい。 (文と写真: 教養教育高度化機構 チーム形成部門 坂口菊恵)

6月30日・内見してきました!2

カテゴリー: KOMCEE建設

この記事では、1階以上の教室設備をご紹介します。 こちらがスタジオ教室(中)です。壁一面がホワイトボードになっているのです! これは別のスタジオ教室です。扉の周りまで、ホワイトボードがはられています。 天井には地下水を利用した放射冷暖房のためのパネル、LED照明、湿度計・照度計といった省エネルギーを実現するためのさまざまなセンサーが並んでいます。 窓には太陽光を適切な量だけ取り入れるように採光を制御するルーバー(小さな穴の空いた板)が設置されています。夏と冬ではルーバーの回転向きが逆になるそうです。建物に入れるようになったらチェックしてみて下さいね。 ルーバーを間近で見たところです。穴の空いた板を少し距離を置いて貼り合わせることで、角度によって効果的に採光を調節できるようになっているんですね。 すき間からはM.M.ホールの上の屋上緑化が見えます。 窓ガラスに取り付けられた温度センサーです。窓は断熱効果を高めるために二重、三重になっているため、外気側と室内側では温度が大きく異なります。そのため、温度センサーは外側と内側の両方に設置されています。 スタジオ教室(中)の外、廊下側はミニ倉庫になっていて機材を収納することができるのですが、その周りの壁は樹脂のボードが金属の枠で覆われたパネルになっていて、磁石や画鋲で掲示物をはることができるようになっています。 スタジオ教室(大)です。こちらも壁の一面がホワイトボードになっています。ホワイトボードの向きがスタジオ教室(中)とは逆ですね。 スタジオ教室(大)の廊下側の壁面です。廊下側に倉庫がないので、ガラス張りの面が広くなっています。 スタジオ教室(中)も、出入り口は同じようにガラス張りになっており、中の授業の様子を廊下から見て取ることができます。 こちらは太陽光パネルです。廊下の窓から見える位置のためか、平置きになっていますね。 こちらはエントランスの上階に位置するラウンジから望んだシンボル・ツリーのクスノキです。 なかなか迫力があります。 M.M.ホールの吹き抜けを横から見たところです。 オープンスタジアムを2階のキャットウォークから見たところです。 身体運動の解析などに使われる部屋であり、壁面が鏡になっています。 一階に降りてみました。鏡には取っ手が付いていて開くようになっており、後ろはもの入れになっています。 オープンスタジアムの天井部分です。 カメラなどの機材がつり下げられるように、すのこ状になっています。 エントランスホールの側面のガラス壁です。換気のための細長い窓がつけられています。 エントランスホールの天井と側面です。 明かりは間接照明になっていて、壁面はマグネット・画鋲で掲示のできるパネルになっています。 いかがでしたでしょうか。 什器(机、椅子など)が入った状態をお伝えできるのは9月中旬以降となる見込みです。楽しみにお待ち下さい! (文と写真: 教養教育高度化機構 チーム形成部門 坂口菊恵)

6月30日・内見してきました!

カテゴリー: KOMCEE建設

私が理想の教育棟の内部に入るのは、昨年の12月末以来です。 内装ができてきてからははじめてです。現在は電気系統の配線ができてきたところで、機材もまだ設置されていないものが多いですが、内部の様子を一足先にご覧下さい! これは地下1階、オープンスペースアリーナ横の前の広間(ホワイエ)です。 カフェテリアに導くように照明が配置されているんですね。 奥にはカフェテリアの厨房が見えています。 これがカフェテリアの照明オブジェ、「木漏れ日プレート」。 たくさん集まると、こんな感じです。一つ一つは、小さいんですね。 こちらがオープンスペースアリーナに設定されている照明オブジェ「輝迸(きほう)」です。 外の景色とマッチしていてきれいですね。 これがレクチャーホールの中です。収容人数は18号館ホールより少し少なめ(固定席215席+スタッキングチェアー)で、室内が明るくても液晶プロジェクターの画像がくっきり見えるジェットブラックスクリーンを設置しています。 スピーカーはまだ付いていないようです。 床の金属の円盤の中にはコンセントが収納されていて、電源を取ることができます。 スクリーンが上がっていれば、レクチャーホールから地下広場を見渡すことができます。 戸を開けて外に出ることができるんですね。 地下1階ホワイエに設置されているエコ見える化ディスプレイです。ほんの少しですが、左右に動かすことができます。 理想の教育棟のコンセプトの一つである「ZEB (Zero Energy Building)」にもとづき、建物の消費・発電電力や節電状況のデータが表示される予定です。 オープンスペースアリーナにも2面ディスプレイがあります。 DVDを映したり・・・ ウェブサイトを表示したり。 あらかじめ特定の機器を備え付けてあるのではなく、使用者が持って来た機器をなんでもつなげるように配慮されています。 こちらはM.M.ホールを下から見上げたところです。横にシンボル・ツリーのクスノキが見えます。 全体的にはこんな感じです。外の景色がきれいですね。 ただこのホールはガラス張りなだけに、空調無しでは少々蒸し暑かったです。 次に続きます! (文と写真: 教養教育高度化機構 チーム形成部門 坂口菊恵)

日本における中央アジア映画、そして映画『灰色の狼』

カテゴリー: 中央アジア散歩

中央アジアの映画というのはなかなか日本ではお目にかかれない。日本版のDVDが販売されている作品は数えるほどしかなく、DVDがすでに廃盤になってしまったものやVHSでのみかつて販売されていたものを含めてもごくわずかしかない。劇場での上映についても、普通に日本の配給会社が配給契約をむすんで劇場公開されるということは少なく、映画祭(東京国際映画祭や東京フィルメックス、アジアフォーカス福岡国際映画祭など)やその他なんらかの特別上映企画(各国大使館や国際交流基金の協力で中央アジア映画に的を絞った特集上映も何度か行われている)など限定的なかたちでのみ上映されるということが多い。 しかし、中央アジアで全然映画がつくられていないのかというと、決してそうではない。ソ連時代には、各共和国ごとに映画会社がつくられ、国家の奨励の下で盛んに映画制作が行われていた。そして、ソ連崩壊、各国の独立の後も(政情の変化などで映画産業が一時的に衰退した地域もあったが)映画制作はつづけられており、カンヌやベルリンといった国際映画祭に出品されて国際的な評価を得る作品、監督も多数あらわれている。 このように、質、量ともにけっして低いレベルではないわりに日本ではなかなか観られる機会の少ない中央アジアの映画だが、6月17日から6月30日までアテネフランセ文化センターでおこなわれている「ソビエト映画アーカイブス スペシャル」(http://www.athenee.net/culturalcenter/program/s/ss.html)という特別上映企画では、中央アジア映画の中でも特に観られる機会の少ないソ連時代の作品が数作上映された。その上映された数作の中から、ここでは『灰色の狼』という作品について書きたいと思う。 『灰色の狼』は1973年にキルギスで制作された作品で、監督の名はトロムーシュ・オケーエフ。キルギスの映画だが、カザフスタンの作家アウエーゾフの短編小説が原作になっているという。 舞台は荒涼とした山あいの地域、主人公は日本でいうところの小学校低学年くらいの年齢の少年で、両親とは幼くして死に別れ、伯父と祖母に育てられている。物語は伯父が仕留め残した狼の子どもを少年が伯父の反対を押しきって家に引きとり育てはじめるところから始まり、そこから主人公と狼との関係や主人公と周囲の人々の暮らしの様子が描かれていく。 一言でいえば、厳しいリアリズムの映画である。夏は乾燥し、冬は冷えこみ地面が雪におおわれるという過酷な自然環境。荒れた土地で植物が育たないため人々は羊の放牧で暮らしているが、狼の群れに襲撃をうけて羊を食い荒らされるということもたびたび起こる。主人公の少年が愛情をこめて育てていた狼も映画の後半には脱走し、クライマックスでは戻ってきたその狼が少年を襲って瀕死の状態に追いこみ、けっして狼は人にはなれないのだという伯父の厳しい言葉の通りになる。この映画で描かれる人間と自然との関係は、このようにとても厳しい。しかし、それだけでなく、人間という生きもの自体や人間同士の関係というものについても厳しいまなざしが貫かれる。まず、伯父の主人公の少年に対する態度はとても厳しい。これは子どものいない伯父が少年を家の跡継ぎとして強い男に育てたいということのなのだが、伯父の不器用さから二人の関係は主人公にとっても伯父にとってもあまり幸せとはいえないものになってしまう。また、伯父は生活に苦しさから地主の羊を盗むという罪をおかし、自分をいっそう追いつめる結果に招く。少年に対してやさしかった祖母は次第に病気で弱っていき、少年が家出をしたときに助けてくれた伯父の友人も政治犯として追われており、ラストシーンは瀕死の少年を看病していた彼が警察に連れていかれる場面だった。 ズームイン・ズームアウト、パンやカメラの移動、カット割りといった撮影技術は非常にシンプルで特に凝った技巧は使われていなかったが、リアリズムに徹した描き方をするこの映画ではむしろそれでよかったと思えるふうでもあった。映画としての質は同時代の他の地域、ソ連以外の地域とくらべても遜色はない、いやむしろ中央アジアの風土をうまく描いた佳作、良作の類に入る作品と言っていいのではないかと思う。 さて、『灰色の狼』についての感想は以上だが、今回のこのアテネフランセの特集からはもう1本『白い汽船』という作品(これもキルギスの作品)についても紹介したいと思うので、次回はその作品について書きたいと思う。 (文:文科二類二年 川名)

ラグマン作ってみました

カテゴリー: 食文化

こんにちは!食文化班の福井と間下です。 先日、ウズベキスタンの伝統料理・ラグマンを作ってみたのでその報告をしたいと思います。 まずは「ラグマン」とは何か説明しましょう。 ラグマンとは、ウズベキスタンをはじめとする中央アジア地域、および中国のウイグル自治区などで 日常的に食べられている麺料理で イメージとしては、トマトとラム肉のスープを使った讃岐うどんという感じです。 また、ラグマンという名前からもわかるように、ラーメンのルーツとなった料理であるとも言われています。 *** 今回、大鬼からこの写真を託された。 大鬼とは、ゼミを統括する岡田先生のことである。 ウズベキスタンで大鬼が食べたこれを日本で再現してみよというのが今回の指令。 我々は戦慄した。 「こんなものが作れるのか?」 しかし我々は作らねばならなかった。大鬼の指令には逆らうことは許されない。 我々は足早にオオゼキ下北沢店に向かった。 今回用意したのはこちらの材料である。 秘伝のスパイスは大鬼がウズベキスタンより持ち帰った本格派であり さらに本場のナンのおまけつきだ。その点実に気前が良い。 (なお、秘伝のスパイスはクミンシードであることが後で判明した。) 見たこともない材料達を前にして、 これでお料理系男子への仲間入りだ。我々は希望に胸を躍らせていた。 おもむろに包丁をとり、 タマネギ、青唐辛子、にんにく、ピーマン、パプリカ、ズッキーニといった野菜を切り始めた。 そして炒めた。 今回、フライパンの容量の関係でにんにく青唐辛子、たまねぎ、パプリカ、羊肉は別々に炒めることとなった。 まずにんにく青唐辛子で油(今回はサラダ油を使用した)に香り付けをした後 たまねぎをきつね色になるまで炒める。 そこにパプリカとピーマンを入れ さらにその後羊肉をいためた(羊肉はブロックのものがよかったが、今回は手に入らなかったのでスライスのものを使用した) このとき同時に、鍋には1500ccの水とローリエ、コンソメを入れ煮立たせる。 時計を見れば、すでに夜の1時過ぎ。 立ち上るローリエの良いにおいに「中央アジアの香りがするッ!」と狂喜乱舞していた。これが巷で言う深夜テンションである。 そしてついに、スープと野菜が邂逅するときが来た。 ぐつぐつと煮込まれていく野菜たちに我々は夏に向かうウズベキスタンへの思いを重ねていた。 鍋からは湯気とともに、美味しそうなにおいが立ち上る。食欲へきつい一撃を加える。 我々は今か今かと煮込み終わるのを心待ちにしていた。 そして、キッチンタイマーがついにその時を告げた。 さあ、盛りつけである。 人は顔が9割と言われるが、盛りつけも同じである。失敗は許されない。 別にゆでておいた讃岐うどんにできあがった具とスープを盛りつける。 細心の注意を払い、具をOn The UDONした。 さあ、みたまえこの類似性を。 我々は大鬼の指令を見事遂行することができた。 遂行された任務ほど語るに足らないものはない。 とは言うものの、食べた感想も記しておきたい。 まず、少々水を入れすぎたため少し味が薄くなってしまった。 さらに、青唐辛子を入れすぎたせいで少々味が辛くなってしまった。 やはり、きちんと各々の材料の分量は守らなければならない。 報告はここまでで終わりとしよう。 反省は色々とあった。 だが、我々は確かにこの料理の中にウズベキスタンの空気を感じることができた。 また一歩ウズベキスタンに近づいたのだ。 我々は作り続ける。遙かなるウズベキスタンを目指して。 ※次回はプロフに挑戦します。 (文、写真:文科二類二年 福井・理科二類二年 間下)

ゼミブログはじめました。

カテゴリー: 全般

はじめまして!このブログは全学自由研究ゼミナール 中央アジア散歩の面々が、活動報告や調べたことを発表していくブログです。 政治・経済から食文化や表象文化まで、様々なカテゴリーについて執筆していく予定です。夏休みの現地滞在記なども書く予定です。 よろしくお願いいたします! (文:理科二類二年 間下)

光る理想の教育棟!?

カテゴリー: ZEBLOG

みなさん、こんばんは! ちょうど五月祭を目前に控え、一時は落ち着いた駒場も、また少しずつ慌ただしくなっていますね。 私たち「理想の教育棟」ZEB広報班も五月祭に出展……できたら良かったのですが、今回は建物が未完成ということで、泣く泣く諦めました。 でも、もしかしたら、次回の五月祭や今秋の駒場祭で、何かのブースを出せるかもしれません。そのときはよろしくお願いします! さて、先ほど「未完成」と書きましたが、理想の教育棟の建設はすでに終盤に入っています。 今まで理想の教育棟の外周を覆っていた壁も取り外され、ついにその全体像がよく見えるようになりました。 なんといっても目立つのは、大きなガラス張りのMMホール! 天井にいくつもの輪っかが浮かんでいる様子は、近未来的でわくわくしますね。 ところで皆さん、夜中にこの理想の教育棟を見たことはありますか? なんとこの理想の教育棟……夜になると試験点灯で光るんです! 七色の光を発するMMホールに、びっくりした人もいるかもしれません。 その幻想的な光景は、すでに少しずつ話題になっているようです。 あの照明は一体何? ……その疑問は、こちらの記事を読んでいただくとして。 ここでは、あの照明にもエコな配慮がされていることをお伝えしましょう。 実はあの光、全てLED(発光ダイオード)照明になっています。 LEDは、近年では美術館から鍾乳洞まで、様々な場所に導入されています。 白熱電球よりも寿命が長いのに消費電力は少ない、環境に優しい照明。 実際に、白熱電球をLEDと取り替えるだけで、消費電力を半減できた所もあります。 理想の教育棟がZEBであることの、一つの象徴です。 もし夜に理想の教育棟の前を通るときは、光の美しさだけではなくて、 その背後にあるエコな視点にも、ぜひ思いを巡らせてみてくださいね。 (文:漆原)

The difficulties of world peace(Yasuaki Otake)

Hi! I’m Yasuaki Otake. Last Tuesday, Mr. Takeda(from ministry of foreign affairs) came to our seminar and taught us about “disarmament education”. That was very fantastic and after listening to his talk, two questions occurred to me. First, ”The negotiations among countries for disarmament will actually lead to world peace? ” Related to this matter, Mr. Takeda said ”Today, the activities for disarmament are taken all over the world. However, it’s not sure that the disarmament leads to world peace”. And in my opinion, even if many countries disarm, it will not always lead to world peace. It is sure that disarmament seems to be fantastic for people today, but there are not only countries but also many other organizations (like NGO,UN and so on ) which act as the subjects in the world. And the country can’t always control the people in that country. Also, the country can’t always control the whereabouts of weapons cut. Then, after the disarmament, many subjects (including terrorists) may have a mighty military strength and the might of the country may fall down, moreover that may arouse people’s anxiety. So, that’s why I think so. Second question is as follows, “About disarmament conference, there is a common humanity?” Mr. Takeda said, “When we negotiate other countries, we often appeal to the heart of the other party.” However, about the negotiation of disarmament, is it possible? For example, there are many countries which are about to start the war against the next countries, or there are many countries which regard the revenge or the holy war as the humanity. Can we persuade such countries to throw away their weapons? I think it is difficult to appeal to the heart of those who have other senses of values. Anyway, his talking was very interesting and I got interested in the Ministry of Foreign Affairs. Thank you for your reading.

ホール試験点灯

カテゴリー: KOMCEE建設

5月20日の19時ごろから、ホールの照明が試験点灯されました。 今までに見たことのないような形の照明に、どのようになるのか施工の段階から気になっていました。 (5月9日撮影) ここから点灯の様子をお伝えします。 全面ガラス張りのホール。美しい照明が目を引きます。 天井から吊るされた円形の照明に、側面から上方を照らすカラフルな照明が調和し、芸術的な趣を呈しています。 夕暮れのキャンパスで刻々と色の変化する様子に、多くの学生が足を留めて見上げていました。 なお、「理想の教育棟」では、全館で省エネルギーの LED 照明が採用されています。 照明を含めた ZEB 技術については、本サイトのこちらをご参照下さい。 また、照明をデザインされた石井さんの特別インタビューも公開されています。ご一読をお勧めいたします。 最後に、照明の変化する様子を動画で撮影しましたのでご覧下さい。 (音が出ます) [youtube]http://www.youtube.com/watch?v=xKv62vEAFb0[/youtube] (写真・文 刀根直樹)

工事経過を振り返る

カテゴリー: KOMCEE建設

5月も半ばに入り、汗ばむような陽気の日も増えてきました。「理想の教育棟」は完成間近となっています。ここでは、1月ごろからこれまでの経過を写真で振り返ります。 (2011年1月19日) (2011年1月20日) (2011年2月2日) (2011年2月12日) (2011年2月21日) (2011年3月1日) (2011年3月23日) (2011年4月26日) (2011年5月20日) (写真・文 刀根直樹)

Private activities would be effectively powerful (Yuta IKEDA)

Hello.  I’m Yuta Ikeda. As Mirai wrote here, We were lucky to listen to Mr. Takeda on Tuesday.  I’ll write two points which impressed me. First, the Japanese government is now trying to systemize a lot of activities of NGOs, universities, city offices, and mass media, and so on, using the system like “Special Communicators for a World without Nuclear Weapons”.  Those actors have been independently tackling the problem about disarmament, telling wartime memory, etc.  What the government can do is, as Mr. Takeda said, to amplify these activities as whole.  By collecting information and connect each activity organically, the activities will be so efficient.  I have been thinking that everyone wants to somewhat take action, and that, in fact, there are many kinds of activities, but that each is so independent that they don’t have ebough power. I was impressed by the idea that the government can use the private power. Second, I have been wondering whether being emotional telling the experience of the war works good or not.  Is being an argument based on emotion effective so as to tell the story or to improve disarmament?  Being emotional has both good and bad aspects, but, as Mr. Takeda said, the role of hibakushas may be to move others’ emotion.  After all, diplomacy is both logical and emotional.  So, hibakushas dispassionately speaking their experience is moving, which is one of the effective tools to hand stories down from generation to generation and from Japan to all over the world. We are thinking about how to tell hibakusha stories.  I think hibakusha story is more or less sentimental.  It is true that stories won’t be common if they are too emotional and ideological.  However, being emotional and, at the same time, moving is what is needed, which is rather effective to tell the story. I’d like to think about these themes farther.

Japanese action for disarmament (Mirai Tanikawa)

Hello! I’m Mirai Tanikawa. On 5/17, we invite Mr. Yoshinori Takeda, who works in Ministry of Foreign Affairs, especially for disarmament and non-proliferation. He spoke frankly about Japanese foreign policy and the present condition. He told us that MOFA is promoting nuclear disarmament, non-proliferation and nuclear security, by using advantages as the only atom-bombed country, ultimately for Japanese security. Although he admitted that disarmament not always results in peace, he would believe that if it’s done carefully enough, MOFA’s policy helps Japanese and the world peace. What I can do is small, but I, as a member of this seminar, will deeply think and study about peace, nuclear weapons and atomic bomb victims, and broadcast using a sense as a student, believing that it will become a tiny power for peace.

建物工事完成間近

カテゴリー: KOMCEE建設

5月に入り、理想の教育棟の建物の工事が完成間近です。先週は工事用のフェンスが取り除かれて、日曜日には舗装工事が行われほぼ建物の外観は完成する予定です。その後は、電気設備などの内装工事が行われる予定です。 「理想の教育棟」という名前に注目されがちな建物ですが、その建築計画には東京大学駒場地区キャンパス計画に基づいて工事が実施されています。 ■駒場地区キャンパス計画要綱によれば、駒場Ⅰキャンパス整備には4つの目標があります。 1.最先端の教育研究施設の整備 教育・研究の高度化に対応した最先端の施設・設備を擁する最適の大学キャンパスを実現する。 2.「開かれた大学」の理念の具体化 都市の一部としての大学の存在意義を認識し渋谷の文化ゾーンに隣接するという駒場Ⅰキャンパスの特性を活かして、学生・教職員の福利厚生を図りつつ、一般社会の文化的関心に大学として適切に応えるため、必要な整備を行う。 3.恵まれた自然環境の活用 武蔵野の面影を残す林、清涼な湧き水など恵まれた自然環境を最大限活用するとともに、この自然環境を基にして外部空間の骨格の整備を図る。 4.合理的更新システムの確立 アカデミック・プランの将来の発展に伴い必要となる施設計画の実現を可能とする建築面積の余裕を確保するとともに、教育研究活動を支障なく継続しつつ、必要に応じて絶えず施設の更新を可能とするシステムを確立する。 これらの目標がどのように実現されていくのか、大学に所属する人々が考えることが大切だと思います。 東京大学「キャンパス計画要綱」の施行について(平成22年10月1日) http://www.u-tokyo.ac.jp/fac03/b07_02_j.html (文と写真:林一雅)

Waltz with Bashir(Heajin Kim)

After watching ‘Waltz with Bashir’ – the meaning of Memory

This is the animated documentary into the horrors of the 1982 Lebanon War, based on the director Ari Folman him self’s experience and the interviews from his old friends and comrades. The story begins with the scene of 26 vicious dogs chasing Ari’s one old friend. They conclude it has a connection to their Israeli Army mission invading Palestine. But unlike Ari’s friend who remembers what had happened and haunted by guilt, Ari cannot remember a thing, and he decides to meet his old friends and comrades, delving into the memory he has forgotten. Throughout the film, Ari finally gets to recall what had happened and what he had done at the Sabra and Shatila refugee camps. So why was Ari so desperate about delving into his erased memory, maybe knowing it would be a painful one? Why was it so important to him and what is he trying to say through this film? Being curious about these, I came to rethink about the meaning of ‘MEMORY’: What does memory mean to us who has not experienced the war or massacre, and what does it mean to the people who have suffered? Why do we need to remember the pains that may even seem irrelative to us and how do we need to deal with that memory? WAR is something like a MOVIE. In the film, there is a scene people watching the battlefield with bullets flying over and people dying out, just like the audience watching a movie. When we watch a movie, the way we interpret that movie or the most impressive scene differs depending on people. Just like that, the war is remembered in his or her own different way. Some would forget eventually, some would remember only the part they want to remember, and some would live with the distorted memory. Therefore, even though what people remember, the images they have about the battleground may be a fact, but we cannot determine it is the ‘truth’. Still, I do believe memory is something actually matters and something we should remember and share because there is something we should NOT forget in any case, the PAIN. Anyone who is related to the war or massacre lives every day with torment. Sometimes it is too painful to live with it, so they forget or intentionally erase those happenings. It may be just one page of the history book to the people without experience, but it is a REALITY to them and it is still going on. The tragedy someone might have felt, the pain someone might have borne, and the loss someone might have gone through. These are something that should not be faded away and something that we should not try to erase. So, what does memory mean to us without experience? Why is it important to us? I believe it is because the memory leads us to the place where we should be. When we do not have any memory, we fill those empty spaces with a vision, but when that space is filled with facts, the stories of people suffered of suffering, we finally get to know what it was like and how cruel people can get. Therefore, memory is the point where we can try to share the tragedy and sympathize, the point we think over our history, and the point we promise ourselves that we should not repeat the same mistake ever again. And why is it important to people with experience? The process of delving into the memory is painful and making them recall those times again might raise some ethical problems. Thus, I don’t blame people who erased their memories or people who don’t want to talk about it anymore, but I do believe, people can feel catharsis by sharing their torment together, and it can be a way to heal their pains. At some point in their lives, they may run into the situation that reminds them of the battlefield, or the moment memory haunting them back. At that point, I just want them to know that they are not alone. There are people with same or similar experience out there in the world, and people who are willing to understand their pain and trying to share it with them. Including us, no one can change what already happened in the past. But we CAN change the future. The future is ours and we are responsible for making world without war, world with peace. When we do not look back our past, we are tend to make the same mistakes, so not to go over the same tragedy, we should learn from the past and memory, and this would be the reason why Ari was so desperate to get his lost memories back.

Who are we?(Ryosei HATAKEYAMA)

Hello! I’m Ryosei.

Let me make a summary here of this week’s activities.

 

First , we parted into six groups to analyze the following materials(*) and shared reports on how voices of hibakusya (victims of  atomic bombs in Hiroshima and Nagasaki) are broadcasted in Japan.

(*)

①Hiroshima Peace Memorial Museum (text and video): http://www.pcf.city.hiroshima.jp/frame/Virtual_e/visit_e/westTestimo.html ②Nagasaki Atomic Bomb Museum (text): http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/peace/english/survivors/index.html ③National Peace Memorial Halls for the Atomic Bomb Victims of Hiroshima and Nagasaki (text, audio and video): http://www.global-peace.go.jp/en/ ④Asahi Newspaper (text – currently call for translation volunteers): http://www.asahi.com/hibakusha/e/ ⑤Chugoku Newspaper (video): http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/staticpages/index.php?page=20100602155730428_en

This comparison gave us insight into how we can (and should) tell their testimony to others.

 

At the same time we tried to define and make it clear that for what we are learning ‘war , memories and remembering’ , and to whom we should appeal.

Before answering this , we have to question ourselves about  ‘ Who are we? ‘ ‘  To what kind of generation are we belonged in the context of history? ‘

As you know hibakusya are getting older and the number of them is decreasing at a faster pace. So maybe we are in the last generation that can be shared the same time with them. I think this is the central point and the most important premise we should keep in mind.

 

Time is limited but there are piles of issues and attempts to discuss and consider. We are now tackling and struggling with them together , and i’m sure we will have done a good job finally.

Thank you for reading !

授業サイト開設しました

チーム形成部門Early Exposure Lab.(EE Lab.)のひとつ、全学自由研究ゼミナール「平和のために東大生ができること―冷戦を知らない世代が作る軍縮教育モデル」が開講されました。火曜6限、KALSで行っています。

ソーラーパネル

カテゴリー: KOMCEE建設

ソーラーパネル「理想の教育棟」には、次世代の太陽光発電システムが設置されます。 18号館の最上階からは、「理想の教育棟」屋上の様子がよく見えます。写真ですが、上は2月2日段階、下は3月26日段階のものです。ソーラーパネル設置の様子がわかります。 照明・空調・ICT機器など、教育活動に欠かせない電力。太陽光発電システムにも期待がかかります。太陽光発電システムについては、「理想の教育棟」サイト「ZEB技術の紹介」ページに解説があります。 (写真・文は総合文化研究科・修士課程の刀根直樹が担当しました。)

新年度を迎えて

カテゴリー: KOMCEE建設

建設状況ブログの更新間隔が開いてしまったことをお詫び申し上げます。 平成23年度を迎え、駒場キャンパスにも多くの新入学生が通い始めました。サークル勧誘の声も賑やか、キャンパスは4月らしい雰囲気に包まれています。 春の駒場キャンパス 「理想の教育棟」の工事は進み、建物自体の完成も近づいてきました。今年度の冬学期から授業に使用される予定とのことです。(※多くの大学でいう「前期(4月~)」「後期(10月~)」を本学では「夏学期」「冬学期」と呼んでいます。) 写真を撮影していると、友達と談笑しながら「理想の教育棟」を見上げる学生の姿を時おり見かけます。授業で使う日が楽しみになってきます。 4月6日撮影・理想の教育棟 (写真・文は総合文化研究科・修士課程の刀根直樹が担当しました。1月中旬ころから写真撮影係として関わらせていただいております。写真は「理想の教育棟」Webサイトギャラリーページでご覧になれます。)

新学期!

カテゴリー: ZEBLOG

みなさんこんにちは、野崎です。 新学期が始まり、桜が美しい季節ですね。 ZEB広報班のメンバーもこの春それぞれ進級を果たし、 私と間下・藤山は2年生に、漆原さん・大黒さんは3年生になりました。 理想の教育棟は…と言いますと、 すでに外装は完成して、現在は内装・電設の工事が行われています。 春の陽気のキャンパスで、そんな理想の教育棟の姿を目にすると、 広報班が活動を始めてからずいぶん季節が流れたのだなあと実感してしまいます。 これからも私たち広報班はこのブログの運営などの活動を行っていきますので、 お付き合いいただければと思います。 (文・野崎)

ついに公開!

カテゴリー: ZEBLOG

今日は皆さんにお知らせがあります。 なんと……理想の教育棟の公式サイトが、ついに公開されました! もちろん、私たちが作成した”ZEB” のページもあります。 内容は短めですが、その分ZEBのエッセンスがぎゅっと詰まっているはずです! 個々の技術を可愛いイラストつきで紹介していますので、是非ご一読下さい。 (文・漆原)

駒場を「食」べよう!

報告書 全10ページ
koambatabeyou「食」を考える KIRIN・東京大学パートナーシッププログラムの一環として行われた2010年度冬学期 全学体験ゼミナール「駒場の『食』を考える」の受講生によって作成されたパンフレットです。
  • みんなをつなぐ「食」
  • 「食」の悩み3連発!

完成間近

カテゴリー: ZEBLOG

明日、明後日に入試を控え、 東大には前日の下見に訪れる受験生がちらほら。   建設中の謎の建物を見上げて首をかしげている高校生もいましたが、 今年入学する新入生は、この理想の教育棟で講義を受けるかもしれないんですね。 そう思うと、少しだけ実感が湧いてきます。   そんな理想の教育棟の公式サイトですが、そろそろ公開間近とのこと。 半年前から準備してきましたので、いよいよか、と私たちもわくわくしています。 公開された暁には、是非ZEBのページをご一読くださいね。 このブログで伝えきれない様々な技術を、1ページにまとめて紹介しています。   もちろん、公式サイトが公開されたらこのブログでも告知致しますので、 そのときは、よろしくお願いします。 (文・漆原)

理想の教育棟 現場潜入レポート!

カテゴリー: ZEBLOG

駒場はただいま冬学期の試験期間。 ちょうど昨日、自分が受けるべき試験がすべて終了してほっとしている野崎です。 さて、漆原さんの記事にもありましたが、理想の教育棟の工事現場を見学させていただきました! 貴重な写真もたくさん撮らせていただいたので、何枚かご紹介しようと思います。 こちらは、事務所で見せていただいた三層ガラスです。 中は真空になっていて、とても重く、普通のガラスよりもずっと高価なものだそうです。 この厚みで断熱効果を高めるわけですね! 続いて、節電効果が高いと言われるLED照明です。 理想の教育棟の照明はすべてこれと同様のLED照明が使用されます。 こちらは太陽光発電パネルです! これが理想の教育棟屋上に設置されることになります。 こちらは工事中の天井です。 見えづらいかもしれませんが、手前から奥へ縦にはめ込まれているのがLED照明で、 横長にはめ込まれている穴の開いた板が、放射冷暖房システムの金属パネルです。 このパネルを、地下水の熱を利用して適切な温度に保つことで、空調を調節するんですね。 最後にこちらが、窓に取り付けられた可動式ルーバーです。 右側に閉じた状態のルーバーが何枚かあり、 左側のルーバーは回転して開いているのが分かるでしょうか? このルーバーの開閉によって、取り入れる太陽光の量を調節できるのです。 私は今日、実際に目の前で動くのを見ることができて感激でした! このような最新の設備が整った理想の教育棟、完成がますます楽しみになりました。 そしてもうひとつ印象的だったのが、現場でたくさんの方々が作業されていたこと。 大勢の人が関わって、この理想の教育棟はつくられていくのだなあと実感しました。 現場に入らせていただく貴重な機会をいただけて、感謝感謝です! (文・野崎)        

理想の教育棟に入ってきました

カテゴリー: ZEBLOG

気づけばもう2月。 東大は試験期間を迎え、皆教科書片手にバタバタしています。 寒さも一向に和らぐ気配はありませんが、皆様いかがお過ごしでしょうか。   今日は建設中の理想の教育等の内部を拝見してきました! まず圧倒されるのはそのスケール感。 とにかく、廊下が広い! とても過ごしやすそうな空間です。 そして、様々な箇所に見えるZEBにの技術。 天井にパイプが走る中、間に見える放射冷暖房のための放射パネル。 窓に取り付けられた、近未来的な可動式ルーバー。 まさに完成しつつある理想の教育棟の姿に、少し感動してしまいました。 今までは文字で読み、写真で理解しただけのZEB技術ですが、実際に目にすると予想以上のインパクトがあります。 ルーバーが動く様子は外からも眺められたのですが、これを初めて見た人はみんな驚くでしょう。
理想の教育棟、ますます完成が楽しみになってきました。 駒場の皆さんは、是非ご期待下さい。   (文・漆原)

1/17 「大鬼としゃべランチ」ゲスト決定!

カテゴリー: MUTEゼミ

皆さんこんにちは! 1/17の「大鬼としゃべランチ」の統括をやらせて頂く、 文三1年の滝沢頼子です*゜ 寒いですね… 寒くて凍えそうです…;; 私は愛知県出身なんですが、東京の方が寒い気がしてます… さてさて、第三回「大鬼としゃべランチ」のご案内です(・∀・) いよいよ3回目を迎えるこの企画ですが、もう一回どんな企画か説明しようと思います…! 日時:1月17日(月)12:15-12:55 場所:初年次活動センター(イタトマの向かい、アドミニ棟の脇)http://shonenji.c.u-tokyo.ac.jp/ 目的:「学生」と「学問」をつなぎ、学生のその後の主体的学習や進路選択、大学での生活の仕方に反映してもらうこと。 …と目的をこんな風に書いてもいかにもわかりにくいので…笑 わかりやすく説明します(・∀・)★! この企画を行うに至った背景としては、 『逆評定』(サークルが出している授業評価冊子)を見て単位の取りやすさ・点の取りやすさを基準に授業をとり、 自分の興味関心を広げることをしない学生が少なからずいると私たちが感じ、 また自分たちにもそのような一面があると思ったからです…! それは、進振り制度により、自分が行きたい学部に行くために、 とにかく点数を稼ぐ必要がある、というジレンマも少なからず関係していると思いますが…。 難しいところですよね…! また、大学に入り自由度が高くなった、高校とはまるで違う生活をする中で、 こんなはずではないっ;;、この勉強の仕方・大学生活の過ごし方でいいのかー;; 進路決定ってどうすればいいかわからない…;; って思ったりしませんか? そのような学生が駒場の若手教員の話を聞くことで、 何かしら、学問の仕方や進路選択などについて 今までとは違う視点で考えるようになったらいいな、と思いこのイベントを行うことにしました。 そんなかんじです(・∀・)! そして今回のゲストはこの方…! <石井梨紗子 助教> 東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム助教 ◆略歴 東京大学大学院総合文化研究科の国際関係論コース終了後、2002年よりUFJ総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)に勤務。 援助政策研究を行う一方、開発コンサルタントとして東南アジア、アフリカ等でODA案件に従事。 2008年よりマンチェスター大学博士課程在籍。 2010年より現職。 ◆研究領域 行政学、開発援助論 ◆担当専攻 広域科学(広域システム科学) 企画打ち合わせのために石井先生にお会いしてきたのですが、 とても話しやすく、素敵な方でした! 留学のお話やコンサルと勉強の両立、やりたいことにどう取り組んでいくか、 やりたいことをどうやって見つけるかなどなど、 有意義なお話が沢山聞けると思います*゜ みなさん自身の進路選択や大学生活、将来のキャリアなどなどについての疑問に 答えて頂く時間も設けます★! 私も進路選択に悩む一学生なので…笑 17日がとっても楽しみです^^! いらっしゃる方は、takiyori(アットマーク)gmail.com までメールして頂けるとありがたいです。 (自由参加ですが、人数把握を可能な限りしたいので★!) それでは17日に…! 文三1年 滝沢頼子

食ゼミ鍋パーティー&お雑煮レポート

あけましておめでとうございます! \(^^)/ そしてお久しぶりです、野崎です。 今日は、まず12月21日に食ゼミ関係者+αで開催した鍋パの写真から! タラとホタテ、それから白菜、舞茸などの入ったお鍋を、担当教官の渡辺先生、岡田先生、私たち食ゼミ生6人、それから留学生の男の子やチーム形成部門の畠山先生も加わって、総勢10人でおいしくいただきました!(下の写真は私が撮ったので私は入っていません・・・) さて、この鍋パーティーの際に先生から私たちに宿題が出ました。それは、各家庭のお雑煮をレポートせよというものです! ということで、すでに寺井くんもブログを更新していましたが私もお雑煮レポートをしたいと思います。 私の実家は雪深い新潟県長岡市にあります。 新潟県のお雑煮は醤油仕立てで、お餅は四角、鶏肉、人参、大根、里芋、ゴボウ、油揚げが入り、仕上げに小松菜などの菜っぱを入れます。私の家では入れませんが、贅沢に鮭とイクラを入れるところも多いようです。 某SNSにこの写真をアップしたところ、別の地域の友達から「自分のところと全然違う!」とコメントがあり、こんなに具だくさんなのは新潟県くらいだと初めて知って驚きました(^^;) 地域によって全然違うお雑煮を食べているなんておもしろいですね!ほかの食ゼミ生のお雑煮も気になるところです・・・! それでは、皆さん今年もどうぞよろしくお願いします m(_ _)m (文・写真:文三1年 野崎怜香)

あけましておめでとうございます!

カテゴリー: ZEBLOG

皆様、あけましておめでとうございます! 2011年は理想の教育棟が完成する記念すべき年になる(はず)です。 私たちもZEBの技術をどんどん発信していきますので、 本年も何卒よろしくお願いします。   さて、お正月といえば、やっぱりこたつにみかん。 一度入ったら抜け出せないこたつの魅力は、恐るべきものがありますね。 ところで、このこたつ。実は理想の教育棟に導入されるとある技術と、少しつながりがあるのです! それは”放射冷暖房システム”。   通常のエアコンは、空気を温めて、その空気を送風することで部屋を温めます。 しかし、こたつは電熱線を温めるだけで、空気を送ることはしません。熱が直接空気を媒介して伝わるのです。 実際こたつはエアコンよりも電力を使わない、エコな暖房です。 放射冷暖房と聞いてなかなかイメージが掴みづらい方は、 こたつに入ってのんびりすれば、なんとなく感じがわかるかもしれません。
  まだまだ寒い時期が続きますが、皆様お気をつけてお過ごしください。 (文・漆原)

1/8 MUTEゼミ

カテゴリー: MUTEゼミ

あけましておめでとうございます。 2011年一発目の授業がMUTEゼミだった工藤です。 MUTEゼミでは1月中に「大鬼チルドレンとしゃべランチ」という企画を3回行います。 どういう企画かって言うと,東大でいわゆる「大鬼」と呼ばれる先生方のお弟子さん=大鬼チルドレンと仲良くご飯を食べようじゃないかって企画です。時代錯誤社の出している逆評定なんかで「大鬼」と呼ばれている先生方の授業って,学生が避ける傾向にあると思うんですよね。「単位が取りにくい」とか「授業の中身が難しすぎる」とか。そんな声が学生から聞かれます。 でも。授業の裏でどんなことをしているかとか,どんな考えのもとで授業をしているかとか,実際は何も知らないわけですよね。僕もそうですが。じゃあ,大鬼チルドレンである研究生の方や博士課程の方を読んで,ご飯を食べよう。そんでもって,いろんな話を聞いてみよう。という企画です。大鬼の先生の話だけでなく,大鬼チルドレンの方がどのように今の専攻を決めたのかなど,自分たちのキャリア形成にも有用な話が聞けます。というか,どんな話を聞くかは参加者次第です。 「大鬼チルドレンと話がしたい。」という方は,ぜひ1/11,12,17の昼休みに初年次活動センターに来てみてください。 駒場で御飯食べる場所がないって人も来てみてください(笑) それでは,11日,初年次活動センターでお待ちしています。

教育から学びへ:大学教育改革の国際的潮流

報告書 全40ページ
CollegeEducationGP2010年2月19日に教養教育開発機構主催で行われた国際シンポジウムの報告書です。
  • 基調講演 学生中心の学びの推進 南カリフォルニア大学の改革と成果
  • 報告 東大駒場の新しいパラダイム
  • パネルディスカッション 教育から学びへの転換:その課題と方法

我が家のお雑煮

こんにちは、食ゼミの寺井です。あけましておめでとうございます。2011年もよろしくおねがいします。 とりあえず、この食ゼミの目標であるパンフレットの下書きの期限がもうすぐなので、相当あせってます;; 新年第一弾のブログは、我が家のおせちといきたいところだったのですが、色々いそがしくて今年はおせちにありつけませんでした。なので、お雑煮をとりあえず紹介します。僕の実家は兵庫県神戸市なので、かつおだしに塩と醤油を加え味を整えたシンプルなものです。お雑煮は地方によって様々な味つけがあるようで、おすましの所もあれば、白みその所もあるようです。また、いれるお餅もあんこが付いた甘いお餅を使う地方があったりするので、本当におもしろいです。色々試してみたいですね。でも、やはり小さい頃から食べ慣れているので、このシンプルな味付けが自分の口には合うき気がします。ちなみに、具もシンプルに大根、人参、そして食べる直前に水菜をいれます。シンプルだけど、色合いも綺麗だし、あっさりと食べられます。また、あえて煮込まず、食べる直前に水菜を入れることで、シャキシャキとした食感も楽しめます。 食ゼミ生の仲間がどんなお雑煮を実家で食べるのか凄く気になります(笑)

12月13日のゼミ

カテゴリー: MUTEゼミ

こんにちは、MUTEゼミの新井です。 このブログは死んでいるといってもいい状況なので、せめて、毎回のゼミの状況でも伝えていけたらなと思います。 なんでいまさら13日のゼミについてなんだ、と言いますと、投稿の仕方を理解するのに時間がかかってしまいました(笑) 13日は第一回『大鬼チルドレンとしゃべランチ』の当日の流れやその宣伝のためのポスターにのせる内容について話し合ってました。 そして、そこでブログの活用が話題になって僕が今こうして書いているわけです。 ついに来週に迫った『大鬼チルドレンとしゃべランチ』ぜひぜひ皆さんに来てもらって盛り上げたいですね。 ゼミ生の皆さんは友達に宣伝していきましょう。 では、また。

『大鬼チルドレンとしゃべランチ』開催のお知らせ

カテゴリー: MUTEゼミ

大鬼チルドレン(大鬼と呼ばれる教員の下で活動していたり、お世話になった若手研究員たち)と一緒にご飯を食べましょう! 第一回は 日時:12月20日 12時15分~ 場所:初年次活動センター(イタトマの向かい、アドミニ棟の脇)http://shonenji.c.u-tokyo.ac.jp/ 第二回 1月11日 第三回 1月12日 第四回 1月17日 を予定しています。 『駒場の時は何をしていたのか?』など若手研究員の方に質問があれば是非! あの教員に対する愚痴なども大歓迎!

理想の教育棟と太陽

カテゴリー: ZEBLOG

こんばんは、野崎です! 最近すっかり冬になって寒いですね(>_<) この間、空きコマにクラスの友達と会ったのですが、生協購買部の前がひなたになっていてじんわりあたたかく、結構長い間立ち話してしまいました。太陽ってすごいなあ・・・ さて、今回はそんな太陽がZEBにどのように取り入れられているかをご紹介したいと思います! 太陽が関わるZEB技術は、太陽光発電・パッシブソーラー・自然光活用調光の3つです。 太陽光発電は皆さんご存じだと思いますが、パッシブソーラーということばはあまり知られていないと思いますので、少し詳しくご説明したいと思います。 パッシブソーラーとは、太陽光発電のように動力を使って太陽エネルギーを取り入れるのではなく、太陽エネルギーをより自然のまま取り入れて利用するシステムです。動力源が不要なためコストの割に高い効果を得られる、廃熱・排気が出ないため地球環境への負荷が小さいといったメリットがあります。 理想の教育棟では、冬には昼間の日射熱を床に蓄熱する一方、夏には気温の低い夜間に換気して天井内および基礎部分を冷却します。こうすることで、冷暖房に用いるエネルギーを削減できるのです。 ちなみに、太陽光発電などの動力を利用したソーラーシステムをアクティブソーラーといい、パッシブソーラーと対応する用語として使われています。 最後に自然光活用調光についてです。理想の教育棟の照明は照度センサーがついており、自然光の強さに応じて自動調光します。太陽にできるだけ明るさを任せるわけです。 このように、理想の教育棟では太陽エネルギーを最大限利用して電力消費を抑えるしくみになっています! ZEB技術は太陽を利用するもの以外にも色々あるので、次回の記事でまたお伝えします♪ (文・野崎、イラスト・藤山)

学部報のすすめ

カテゴリー: MUTEゼミ

月曜2限にあるこのMUTEゼミですが、ここのところゼミでの話題に学部報という単語が多く出現してきまして、学生のみなさんは学部報を読んでいるのかなと気になったので、この記事を書いています。 単刀直入に言うとみなさん学部報を読みましょう。   http://www.c.u-tokyo.ac.jp/gakunai/gakubuhou/index.html ちなみに、我らが教養学部のホームページでは学部報の目次までしか見れません。 学部報は以下の場所で手に入れることができます。 正門脇、掲示板前、15号館ロビー、アドミニストレーション棟1階、生協書籍部、駒場保健センターなど

今日の食ゼミ

こんにちは、野崎です。 突然なんですが、食ゼミの目的というのがありまして、 それは来年度の新入生に読んでいただく駒場の食についての冊子の作成なんです! 今日の食ゼミでは、冊子にどのような内容をどんな構成で盛り込むかを話し合いました。 食ゼミで学んで伝えたいことはなにか、新入生は何を知りたいのか。 来週の授業には出版と編集の専門の方がいらっしゃるので、そこでアドバイスをいただいて さらに完成へと進めていく予定です。 先週から、担当教官である渡辺先生の研究室から修士1年の橋場さんと、マレーシアからの留学生ペニーさんが加わって、にぎやかになってきました(^^*)2人とも女性なので、紅一点を脱して嬉しいです(笑) みんなで鍋をしよう、なんて話が出るなど、とにかくアットホームな食ゼミです。 来週もがんばります! (文・野崎)

食堂リポート

はい 長老の川原佑也です。ここでは生協の小林さんが話してくだった「食堂事業で大切にしたいこと」についてレポートしたいと思います。 みなさん駒場キャンパスにどれくらいの人がいると思いますか。一学年3000人近くいるので全体では6000人は軽く超えるぐらいはいます。6000人の中の約60パーセントの食を提供しているのがこの食堂なんです。 そんな大量な食をどうやって効率的に確実にそして安全に提供するのかということについて小林さんに伺いました。 まずみなさんが毎日食べるお米。北海道の「ななつぼし」というものを使っているそうです。これを各大学生協が協力して共同購入することで安く確実に使うことができるんです。この「ななつぼし」を作っている農家とは深い交流があるみたいで田植え、稲刈り体験もやっているみたいなので興味がある人は一度生協の人に聞いてみるのもいいかもしれませんね。 そしてほうれん草。ちょっと前まで農薬の話で話題になった野菜ですが食堂の多くのメニューで付け合わせとして使ってるんですね。これ日本じゃなくてタイから輸入しているんです。しかもただ今まであったのを輸入したんじゃなくて独自に生産機構も流通機構も開発した結構すごいプロジェクトなんです。突然ですが皆さんフェアトレードって知ってますか。生産者に確実に適正な報酬がいくように工夫された貿易のことですね。生協のほうれん草もこのフェアトレードを実践してるんです。もともとはとても貧しくて困ってたところに生協がほうれん草作りと加工のノウハウを持ってきて現地の人を雇って貧困を解消する。そんな国際貢献のひとつのプロジェクトとしてあるのがこのほうれん草なんです。ただ食べるだけじゃなくてそのことで世界のこと自分たちのことを知ってほしいという大学生協の人の願いが込められた野菜なんですね。 そうやって皆さんが食べているものの原材料の話を書きましたが実際皆さんが食堂で食べるときも生協の人は取り組みをしてらっしゃるそうです。 食堂ではセットメニューの他にビュッフェや小鉢も多くありますよね。あれは自分たちでその日食べる食をコーディネートしてほしいという「食の自立」を考えて作られたものなんです。いつもおなじ定食だと飽きちゃうからたまには自分のお腹と財布と相談しながら自分オリジナルの定食を作ってみるのもおもしろいかもしれませんね。 またほかにもレシートに自分が食べた栄養素やカロリーを表示することで健康管理もできるようにしてあります。私も最近野菜食べてないなーってレシートを見て思って一階のオークスに挑戦してみた記憶があります。 こんな風に生協はただ食を提供するだけでなくそれを通した食育を提供しようと考えてるんですね。教育かってそんなに敬遠せずに最近野菜たべてるかなとかこのお米おいしいけどどこのなんだろうとちょっと興味を持ったときに気軽に利用できる場所として考えてもらえるといいのかなって思います。

ルヴェソンヴェールより

こんにちわ、「食」ゼミに参加している教養学部文科一類の寺井勝哉です。 これからこのゼミでの活動を随時このブログに更新していきたいと思います。 さて、先日ゼミの一環として、駒場キャンパスにあるフレンチのルヴェソンヴェールでランチをしてきました。ゼミの仲間たちは初めて来たらしいです が、僕自身は夏学期の試験期間中に友人と訪れたことがあり、2回目の訪問でした。1時頃入店したのですが、店内は近所の奥様方や大学関係者の方でずいぶん 賑わっており、学生はやはり少なかったです。やはり、ランチコース800円は学生には厳しいのでしょう。しかし、僕自身の印象としては、ゆっくりとした時 間をすごせることを考えると、時間のある時には利用するのもアリだと思います。例えば、クラスなどのパーティに2階を利用するなど。 今回僕が注文したのは、ウズラをソテーし、付け合わせにきのこなどの野菜をそえたアラカルトのお料理です。ウズラをまるまる一匹使用しており、しっ かり目に焼かれた表面は香ばしく、しかし中は比較的ジューシーでした。骨付きでしたので結構食べにくかったのですが、付け合わせのきのこがいい風味を出し ており、おいしくいただくことができました。また、フランスパンと全粉粒のパンがサーブされましたが、僕は後者がお気に入りでした。 その後、デザートをいただきながらシェフのお話を伺うことができました。シェフは、食事とはただ食べるだけではなく備品や雰囲気なども含めたもっと 包括的なものであるということ強調されており、彼からは料理に対する情熱が感じられました。お国柄ムスリムが多いフランスで修業をされており、ムスリムに 配慮したメニューについても様々な話をしていただけました。大学内に立地していることもあって、週に1度はムスリムの方が来店されるようで、ルヴェソン ヴェールでもお客様の要求には個別に対応するとおっしゃっていました。おそらく、「あそこなら個別に対応してくれる」という安心感をルヴェソンヴェールは 提供しているのでしょう。余談になりますが、シェフのお話で個人的に興味をもったのは、料理にも服などと同様流行があるということです。具体的には、生ク リームなどの動物性脂肪によるこってりとした味付けから素材の味を生かした比較的あっさりとした味付けへの変遷です。近年この手の味付けにこだわるレスト ランが多いのもこのようなことが影響しているのでしょうか。しかし、コクをだすための生クリームの重要性も忘れてはいけないでしょう。シェフは要望に応え てベジタリアン用のコースを作った経験がおありで、限られた食材の中でどう料理していくかといった苦労についても話していただきました。その時の様子か ら、本当に料理が好きなんだなというのが伝わってきて、まさにプロフェッショナルでした。僕の疑問として、野菜だけを使うと、「おいしい」料理に必要なコ クと旨みがどうしても不足するのではないかというのがありましたが、その解決法としては、カブなどを根気よく調理することで得られる野由来のエキスを利用 することなどを挙げていただきました。事前に伝えておけば、いつでも作ってくださるとのことなので、機会があれば是非食べたいと思いました。 寺井 勝哉

ルベソンベール(乾杯)!

はい このゼミ唯一の2年長老川原佑也です。キリンさんの支援のもと先日大学にあるフレンチレストラン、ルベソンベールでランチしてきました。ちなみにルベソンベールって「乾杯」って意味らしいですよ。 私が食べた物はステーキフリット。800円のランチメニューを横目で見ながら躊躇無く頼んだステーキフリット(1800円)。すごかったです。大きな牛のステーキに大量のフライドポテト。どこのアメリカ料理かと思うほどのボリュームたっぷりで、来た瞬間顔がにやけました。先生の話ではフランスの一般的な喫茶店のメニューらしいです。日本でいうところのカツカレーかな。 まあ私の食べたものの話はどうでもいいんですが本題に入ってルベソンベールが駒場にどういう影響をあたえているのかを書きます。外観は結構風格漂う感じで学生がほいほいと入れるような雰囲気ではないんですが中に入ると採光も良く明るい感じで子供連れのお客さんがたくさんいました。値段も800円ならバイト代が入ったら友達連れで行けるかなという感じなんですが学生の姿はありませんでした。振り返って自分が大学入ってからルベソンベールで昼飯食べようと思ったことがあったかなって考えるとほとんどないですね。英語一列のビデオを見て一時期クラスで話題になったこともありましたが、3限の授業を考えるとゆっくりとレストランで食べている暇はなくまた時間がある時でも友達と集まって何かすることを考えると食堂の方が良かったり。 普段の日常生活で恒常的に学生が使うのは厳しいかもしれませんが特別な日のためとなるとがらりと変わります。なんでも事前に連絡をしていれば要望に合わせて料理を出してもらえるのです。アレルギーとか独自の食文化の理由で食べられないものを使わないのはもちろん、その日の目的に合わせて卒業式だったりサークルの代替わりだったりした場合それに合わせて料理を作ってもらえるそうです。そうした取り組みをシェフがしてくださるのも食事を単に栄養の補給と考えずに一つの文化だと考えていらっしゃるだからだそうです。普段は教室で慌てて弁当をかき込んだり食堂でみんなとわいわいやっていても、特別な日にシェフがつくった特別な料理をみんなで楽しむってのも良いものかもしれませんね。

FRESH START@駒場2011のジュニアTA募集【募集〆切変更】

カテゴリー: MUTEゼミ

教養学部教養教育高度化機構チーム形成部門でFRESH START@駒場2011のジュニアTAを募集しています。 締め切りは12月6日】 ※〆切が変更されているので,気をつけてください。 詳しくは公式HPhttp://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/project/freshstart2011.html 応募フォームはhttp://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/project/freshstart2011/juniorta-recruit.html?lang=ja 東大に合格したときにFRESH START@駒場に参加しました!という方は今年もジュニアTAとして参加してみてはいかがでしょうか? MUTEゼミ内ではFRESH START@駒場を新入生限定にするのではなく、2年生向けにしてもいいのではないか?とか、春だけではなく秋バージョンもやってみては?といった意見が出ています。 FRESH START@駒場はものすごくわかりやすい例ですが、このような初年次活動を企画して実際にやってみよう!というのがMUTEゼミの目的です。興味をお持ちの方は月曜2限に17館(KALS)もしくはお昼や放課後に101号館の方へお越しください。

ディスカッション!

カテゴリー: ZEBLOG

本日は、生産技術研究所・野城研究室、企業の方々との意見交換会を行いました。 環境学習をする上で助けとなる、インターフェースについてです。 こういうものはメーカー側だけでなく、学生の意見も取り入れるべきだということで、 僕たちZEB班が学生側の代表として参加させていただきました! 企業の方からは、すでに企業内で実践されているエコ活動に対するポイント制度などが紹介され 理想の教育棟での応用可能性について白熱した議論が展開されました。 駒場生の習性を普段肌身で感じている学生たちが、アイデアを出し合うこと2時間。 現実を見据えながら、様々な理想について考えを巡らす有意義な時間でした。 このように、学生とともに作り上げられている理想の教育棟。 ZEBのwebページ完成も間近です。ご期待下さい! (文・漆原、間下 写真・栄田)

Green Device 2010に行ってきました!

カテゴリー: ZEBLOG

はじめまして、文科三類1年の野崎怜香です! 11月12日に、カメラマンの間下くんと2人で幕張メッセに行ってきました! お目当てはもちろん、鉄オタ・間下くん待望の“鉄道技術展2010”!…ではなく(笑)、 “Green Device2010”です!画像が壊れています。 幕張メッセの大きな展示場いっぱいに企業や県などの団体がブースを出して、 環境にやさしい建物をつくるための技術や商品をPRしていました。 画像が壊れています。 その中に、理想の教育棟のZEBに大きく関わっている東大の野城研究室が、 横浜市と共同ブースを出されるということで、見学に行ったのです。 その内容は、ZEBにも導入されるAI(人工知能)、学ぶクンについてです! 学ぶクンは、目に見えないエネルギー利用やCO2の排出量・環境負荷を測定して表示し、そこから自ら予測・学習して、照明や冷暖房を地球環境と人間の暮らしに最適な状態に自動制御してくれます。 実は、学ぶクンはローソンや横浜市のいくつかの施設にすでに実験的に導入されています。 今回はその成果をまとめたパネルや、AIの本体の展示を見せていただきました。また、パソコンでリアルタイムの施設のデータを閲覧させていただきました。 こんな小さなAIが理想の教育棟のZEBを司るのだなあと思うと、とってもわくわくしました! ほかにも、薄膜型太陽光発電やLED照明などのさまざまな環境技術を目にすることができて、とても楽しい1日となりました。 さて、ここで質問です。 実はローソンや横浜市の施設に導入された学ぶクンと、理想の教育棟に導入される学ぶクンとでは、少し違う点があるのですが、それはなんでしょうか?? その答えは、また次の機会に書きたいと思います。お楽しみに! ヒントは、理想の「教育」棟。 (文・野崎 写真・間下)

駒場でフレンチ!

はじめまして、食ゼミ学生中、紅一点の野崎です(^^) といっても、学生自体が4人ですが・・・(笑) さて、11月18日のお昼に、食ゼミメンバーでルヴェソンヴェール駒場に行ってきました! ルヴェソンヴェールは駒場キャンパス正門を入って左に曲がり、ずっと進んだところにあるフレンチレストランです。キャンパス内にあるものの、なんとなく敷居が高い気がして入ったことがなかったのですが、今回は授業の一環ということで初めて食べに行きました。 行ったのは午後1時ごろだったのですが、女性を中心にけっこうお客さんが入っていました。 ただ、やっぱり学生らしき人はあまりいなかったように思います。 メニューを見ると、ランチは800円の日替わりでA-肉、B-魚、C-パスタの三種でした。 学生には昼食に800円は少し高い気がしますが、たまには友達同士でランチしに来るのも悪くないと思いますよ! とはいえ、この日は授業ですし、先生から好きなものを頼んでよいと言われたので(笑) ブランダード(¥1300)という白身魚を使ったグラタン風のお魚料理と、 イチジクのコンポートとバニラアイスクリーム(¥500) をいただきました! ブランダード写真 ブランダードはフランスでは家庭やカフェでもよく食べられるメニューだそうです。 初めて食べましたが、とっても美味しかったです! デザートをいただきながら、シェフにお話を伺いました。 ルヴェソンヴェール駒場には、キャンパス内という立地上、大学の見学や会議のため訪れる外部の方も多く、国際化が進む昨今は外国から来た方も多くいるそうです。多様なお客さんのなかには、イスラム教の教義で豚肉が食べられない方や、ベジタリアンの方、またアレルギーをお持ちの方もいるそうです。 その方々に対応するため、どこまでならOKでどこからがNGかをきめ細やかに訊ね、それに合わせて料理をつくることも多いとか。 イスラム教の食事に関する規定はとても厳しいので有名ですが、食べるのを許されている「お祈りをしてから殺した鶏や牛」の中でも、お祈りの強さの度合いで段階に分かれていて、それも指定があれば手に入れて料理に使うそうです。 本当に相手に合わせた料理を作ろうと尽力なさっているのですね。 「野菜だけのフルコースを出したこともありますよ!」と楽しそうにおっしゃるシェフに、 料理人としてのプロ意識と、料理で人を幸せにすることへの愛を感じました(^^*) 明日のお昼はルヴェソンヴェール駒場に行ってみてはいかがですか? (文・写真:文科三類1年、野崎怜香)

11月19日・駒場というところ

カテゴリー: KOMCEE建設

駒場キャンパスの銀杏並木も色づいてきました。年に一度の駒場キャンパスの一大イベント「駒場祭」も2日後に控えています。 駒場祭で自分が受け持つ企画がある学生も多いのでしょう。キャンパスの空気も心なしかそわそわしています。 今日は、理想の教育棟が建つ東京大学駒場キャンパスを少しだけ紹介します! 駒場キャンパスは、東京大学に入学した1,2年生全員、そして教養学部と理学部数学科に進学した3,4年生と大学院生が通っています。 留学生の数も多く、キャンパスのあちらこちらで英語や中国語、韓国語など、いろんな言語が飛び交っているのに出くわします。 そんな駒場のメインストリートは、生協があるコミュニケーションプラザから東西に一直線に伸びるこの銀杏並木です。見た目は実に美しいのですが、銀杏のにおいという現実に直面した学生からは「臭い」という感想が少なからず漏れてきます(笑) 理想の教育棟が建つ予定の敷地は、この銀杏並木の東端(コミュニケーションプラザの隣)に位置しており、正門からだと多少距離があります。 しかし、先日から建設現場に高いクレーンが入っているおかげで、正門からそのクレーンの先端を見ることが出来るようになりました。 ということで、正門と理想の教育棟の位置関係がよくわかると思いますので、今日は正門の写真を載せておきますね! (右写真) (写真と文・栄田康孝)

はじめまして!

カテゴリー: ZEBLOG

はじめまして! 理想の教育棟ZEB班リーダーの漆原正貴です。 このブログでは、理想の教育棟ZEB班のメンバーが、 学外の施設に見学に行って学んだこと、 各自でZEBについて調べたことを、 みなさんにわかりやすくお伝えしていきます。 これから先、驚きのZEB情報が続々登場する予定です! 楽しみにお待ちください。

11月15日・冷たい雨の日

カテゴリー: KOMCEE建設

11月も半ば。だんだんと気温が下がり、街にはクリスマスイルミネーションも輝き始める時期です! 今回も前回に引き続き、建設現場南側からの撮影です。 今日は夕方から雨になりました。 撮影したのは午後4時頃。降り始めたばかりだったので、作業員の皆さんもレインコートを着ていません。 工事終了時間は午後5時。このまま作業を続けるか、雨具を着用するか悩ましいところだったかもしれませんね。 日が暮れるに従って見えにくくなる足元。そして、雨で滑りやすくなる手元。こういった環境が変化してすぐの時期は普段より事故が起こりやすいと言われています。電動のこぎりを使って板を切る作業員さんの手つきも慎重です。 そして、この日は我々Web制作班の方でも動きが。 理想の教育棟プロジェクトで中心的に活動しておられる、教養学部の永田敬先生のインタビューが行われました。理想の教育棟が目指す授業の姿など、具体的なお話を聞くことができ、楽しいひとときになりました。 インタビューの模様は、まもなく公開される理想の教育棟の公式ホームページに掲載される見込みです。お楽しみに! (写真と文・栄田康孝)

FRESH START@駒場2011のジュニアTA募集

カテゴリー: MUTEゼミ

教養学部教養教育高度化機構チーム形成部門でFRESH START@駒場2011のジュニアTAを募集しています。 締め切りは11月30日   詳しくは公式HPhttp://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/project/freshstart2011.html 応募フォームはhttp://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/project/freshstart2011/juniorta-recruit.html?lang=ja 東大に合格したときにFRESH START@駒場に参加しました!という方は今年もジュニアTAとして参加してみてはいかがでしょうか? MUTEゼミ内ではFRESH START@駒場を新入生限定にするのではなく、2年生向けにしてもいいのではないか?とか、春だけではなく秋バージョンもやってみては?といった意見が出ています。 FRESH START@駒場はものすごくわかりやすい例ですが、このような初年次活動を企画して実際にやってみよう!というのがMUTEゼミの目的です。興味をお持ちの方は月曜2限に17館(KALS)もしくはお昼や放課後に101号館の方へお越しください。

【潜入取材】工事現場をのぞいてみよう!

カテゴリー: KOMCEE建設

11月12日の夕方のことです。 突然、理想の教育棟の工事現場へ入れていただけることになりました。 教養学部の真船先生と僕を、建物を設計した筑紫先生と安藤建設の担当の方がお二人で案内してくださいました。 工事現場の入り口でヘルメットを装着! いよいよここ(写真1枚目)から中に入ります。 まずご紹介するのは、理想の教育棟の外観で一番目立つ「オープンスペース」部分の建設現場です!(写真2枚目) この場所はガラス張りになる予定です。そしてその内部には、世界的な照明デザイナーの石井リーサ明理さんが設計した「光湧」と呼ばれる照明が取り付けられます。この照明によって、地下1階から地上2階部分に至るこの「オープンスペース」が美しい光に包まれるはずです。 どんな雰囲気になるのか、まだイメージは湧きませんが、とっても楽しみです! そして、地下1階からそびえ立つ「オープンスペース」の床面へ降りていきます。 建築用語ではこのような外に面した地下部分をドライエリアと呼びます。 このドライエリアを中心に広がる地下1階には、200人以上を収容する「レクチャーホール」、まだテナントが決まっていない「カフェテリア」、巨大液晶テレビを備えた「オープンスペースアリーナ」といった施設が設置されます。 個人的には、カフェテリアのテナントがどこに決まるか、とても興味があります(笑) さて、次は2階に上がってみます。 ここは、理想の教育棟の南側、8号館に面した部分で、設計図上では「スタジオ・中」と呼ばれています。(写真3枚目) 17号館に駒場アクティブラーニングスタジオ(通称KALS)という教室があるのをご存じの方もいると思いますが、2階から上の教室はすべてKALSに準じた教室になる予定です。 アクティブラーニングは、理想の教育棟計画でも非常に重要な一角を占めます。まさにこの場所で、近い将来「理想の教養教育」が行われることになります! ・・・僕はもう本郷に進学してしまうので、ここを使う機会がないのが残念! さらに階段を上がり3階です。学生会館に面した北側の広い空間を撮影しています。(写真4枚目) ここは「スタジオ・大」と呼ばれており、大きめのアクティブラーニングスタジオになります。 この上の4階と5階にも、2室ずつアクティブラーニングスタジオが入ります。KALSをさらに発展させた、快適な学習環境の教室が、駒場に一気に8教室も増えることになります! 楽しみですね! そのまま一番まで階段を上って、屋上にやってきました。しかし、この日はまだ屋上の床が出来ておらず、入れるのは階段部分までです。 北側の階段の頂上から駒場キャンパスの1号館方面を撮影しました。(写真5枚目) この場所から南側を撮影できるのも建設中の今だけです。夕日に煙る駒場キャンパスが美しく映えていました。 今回、現場内に入れて頂いて、足場が不安定だったり、鉄筋むき出しで歩きにくかったりする場所がたくさんあり、そんな中で毎日工事をされている皆さんの苦労が身にしみてわかりました。最後まで安全に工事が進むことを祈って、現場潜入レポートを終えたいと思います! お付き合いいただきありがとうございました! (写真と文・栄田康孝)

11月12日・チェック、チェック、チェック!

カテゴリー: KOMCEE建設

今日は、図面と実物を照らし合わせながら建物をチェックしている人を見かけました。 一人がチェック箇所を確認して写真を撮り、もう一人がそれを紙に記録しています。なんだかお二人に不思議な連帯感が漂っていて、撮影しながらついつい「いいなぁ~」と唸ってしまいます。 何かをチェックするとき、なにもかも一人で作業をせず、このように複数人で確認することは非常に重要です。気づかないうちに思わぬミスを起こしていることがあるからです。二人でやれば、ダブルチェックになり、ミスや必要な手順の欠落を防ぐことができます。 現場の作業員の方と話しながら立ち止まって熱心にチェックをされている様子を見ていると、来年からこの施設を利用する学生としても「この人達に任せておけば大丈夫!」という安心感が沸いてきます! さて・・・話が変わりますが、今回から建設現場全景の撮影場所を変更しました! これまでは9号館の屋上(現場の西側)から撮影していたのですが、今後は建物の正面がよく見えるように、8号館側(南側)からの撮影となります。 以前の撮影場所との位置関係は右の写真をクリックしてご確認ください! (写真と文・栄田康孝)

11月8日・火花散る工事現場

カテゴリー: KOMCEE建設

鉄は、ただ組み上げるだけでは互いに接着しません。パーツを組んだら、それを固定する必要があります。その方法の一つに溶接があります。 この日は夕暮れ時の撮影だったのですが、暗がりの中、あちこちで溶接の火花が鮮やかでした。 かなり離れた位置から見てもまぶしいくらいで、念のためカメラには紫外線を遮断するフィルターをつけて撮影に臨みました。 溶接が不適切だと接合部が脆くなり、時には何年も経ってから破壊に至ることもあります。いま現場で行われているこの溶接も、安全のためには妥協が許されない神経の張り詰める作業のはずです。みなさん、溶接しては確認、を繰り返しておられました。 いくらテクノロジーが発達したとはいえ、一つ一つが一品ものであるビルの建設では、自動車の生産のように溶接ロボットなどを使うことはできません。 こうした地道な作業を見ていると、どんなハイテクなコンクリートの建物でも、気の遠くなるような手作業の結果として出来上がるんだなぁ、としみじみ感じます。 (写真と文・栄田康孝)

【飛び出せ東大生!】若手教員・研究者の帰国報告会開催

カテゴリー: MUTEゼミ

飛び出せ東大生! 「グローバル・スタディーズ・プログラム」および 「新分野開拓をめざす若手研究者育成プログラム」帰国報告会 ―駒場では学べないこともある― 日時:2010年 11月22日(月) 14:00~17:30 場所:18号館ホール(駒場キャンパス) 概要: 東京大学のの若手教員や研究員が研究助成を受けて、海外で研究活動・視察を行いました。 この報告会では各人の研究内容についての発表ではなく、海外での研究を通した体験談を語っていただきます。 他では聞けない話をみなさんの今後の活動に是非活かしてください。 【途中入場・退室できます。当日シフトがない時間だけでもご来場していただければと思います】 ■講師紹介 ◆五十嵐(澁谷)智子 [国際社会 学振PD] 派遣先:イギリス・ラフバラ等 研究テーマ:障害のある親の子育てと家族ケアを行う子どもに関する社会学的研究 ◆高野さやか [超域(文人) 助教] 派遣先:インドネシア大 研究テーマ:インドネシアの地方裁判所における法的判断の形成に関する人類学的研究 ◆坂口菊恵 [教養教育高度化機構(チーム形成部門)特任助教] 派遣先:オランダ・アムステルダム大、フローニンゲン大、ライデン大、等 研究テーマ:オランダ主要大学における、リベラル・アーツ教育をサポートする初年次教育の取り組みに関する調査 ◆河村弘祐 [DESK特任助教] 派遣先:マケドニア、ベルギー、アメリカ合衆国 研究テーマ:民族紛争、民主化、国際関与についてのゲーム理論分析 ◆藤井宏次 [相関基礎 助教] 派遣先:ドイツ・Technische Universitaet Darmstadt 研究テーマ:有限温度密度 QCD の動的現象 ◆向井千夏 [生命環境 助教] 派遣先:アメリカ合衆国・Cornell University, College of Veterinary Medicine 研究テーマ:精子の仕組みをナノデバイスへ ◆加藤俊英 [広域システム 特任研究員] 派遣先:ベネズエラ カラカス近郊 研究テーマ:中南米のマメゾウムシにみる生物多様性

11月5日・もうあんなところ

カテゴリー: KOMCEE建設

いつもの撮影場所、9号館の屋上に上って、異変に気づきました。 いつもなら、建設現場に一番近い場所に行かないと、鉄骨の一つも見えなかったのです。 それが、今日は・・・!! ついに屋上から見上げる位置まで建設が進んでいます! 相変わらず高所で平然とされている鳶職の皆さん。自分があの場所に立ったら、いくら命綱があろうと足がすくんで一歩も動けない気が・・・。 そして、神業のクレーンも健在です。クレーンで吊っているあの鉄骨って1本で何トンくらいあるんでしょうか? しかも、それを一気に2つ吊るって・・・! クレーンを操作する人はもちろん、あの鉄骨をバランス崩さないようにクレーンの先にセットする人もスゴイ! 物理は頭ではわかっても、風でバランス崩したりしないのかな・・・とか、何も知らずに見ているこっちはいつもハラハラものです。 さあ、この高さまで組み上がって、撮影する僕の方も別の意味で問題が。これ以上建設が進むと、もう9号館の屋上からは全体を望めなくなります。困った・・・。どこか別の場所を探さなきゃ。 (写真と文・栄田康孝)

【自己紹介】はじめまして!

カテゴリー: KOMCEE建設

はじめまして。このブログを更新しています栄田康孝です! これまでは趣味で駒場キャンパスの写真を撮っていたのですが、「理想の教育棟Web班」のリーダーである木許君に声をかけていただき、今はこちらで写真やビデオ撮影全般を担当しています。(進学先は工学部) わかりやすく親しみやすい記事作りを心がけていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします! さて、せっかくの機会ですし、僕らのチームの仕事内容を簡単にご紹介しましょう。 「理想の教育棟Web制作チーム」は、教養学部・教養教育高度化機構チーム形成部門の部屋を間借りして、日々活動しています。皆様に「理想の教育棟」の全貌を少しでも多くお伝えするため、班内では多岐にわたる活動が行われています。たとえば、関係者の方へのインタビューや、公式Webページの制作、建設現場の写真撮影などです。全体の定例ミーティングも毎週行われます。 また、「理想の教育棟」に設置されるZEB(ゼロ・エナジー・ビルディング)技術は、理想の教育棟が完成した後もモニターを続けていく予定です。そのため、ZEB関連の広報を担当する班は、Web班とは比較的独立して動いていて、こちらは息の長い活動になる予定です。 このように総勢十数名のスタッフで、少しでもわかりやすく理想の教育棟の情報をお伝えするため精力的に活動しています。 駒場の新しいシンボル「理想の教育棟」は来年冬学期には供用開始の予定です! 皆さん是非楽しみにお待ちください!

10月29日・計測の力

カテゴリー: KOMCEE建設

今から4000年以上前、エジプトでクフ王のピラミッドが建設されました。 このクフ王のピラミッド、現代の技術にも引けをとらないほど非常に精密に建造されていると言われています。その後崩れることなく3500年以上にわたって世界で一番高い建造物であり続けられたのは、非常に高度な計測技術を駆使して建造されたからに他ならないでしょう。 建築において、計測することの大切さは、もちろん今も変わりません。特に、日本は地震大国ですから、抜け目なく精密で正確な測定を行いつつ建設しなければなりません。 計測機器を持った人を現場の中で時々見かけたのですが、クレーンを動かしたり骨組みをくんだりする仕事よりはずいぶん地味に映ります。しかし、設計図通りにモノができあがって初めて、事前の構造計算やシミュレーションは意味を持つのです。建物の安全性を保証するためになくてはならない重要な仕事です。 現代建築は、まさに熟練の技巧と最新のテクノロジーの融合と言えます。こんなに身近なところで、我々が知らない間に様々な技術が使われているんだな、と思いました。 さて、全体の骨組みも、たった4日でこんなにくみあがっています!(右写真) 相変わらず頭上ではとび職の方が慎重に、しかし手際よく鉄骨をはめ込んでいきます。もうすぐ、僕が撮影している9号館の高さを超えてしまうことでしょう。 僕は見てるだけですけど、なんだか感慨深いです(笑) (写真と文・栄田康孝)

10月25日・建ち始めました!

カテゴリー: KOMCEE建設

きました! ついに来ました! 敷地の一番北西側のほうから、地上部分の鉄骨が建ち始めました! クレーンで重そうな鉄骨がつり上げられ、とび職の方の手で次々に組み上げられていきます。張り巡らされたロープに命綱を掛け、高所をものともせず淡々と作業を進めておられます。 そして、クレーンもドンピシャの場所にあっさりと鉄骨を下ろしていきます。見てるこちらが拍子抜けするくらいに軽々と組み上がっていくのですが、もちろん素人にはできない芸当です。本当の「阿吽の呼吸」とはこんな仕事を言うんでしょうね。鮮やかすぎます! そして、前回撮影したときに注がれていたコンクリートはすっかり固まり、綺麗な白い地面ができています。 理想の教育棟は地下があるので、おそらくこのコンクリートの下は空洞になっているはずです。(僕らはまだ中に入ることはできないので直接見ることはできません。)このコンクリートの下がどのような空間になっているのか、設計に携わった方々のインタビューからで少しずつ明かされていくことでしょう。どうぞ楽しみにお待ちください! (写真と文・栄田康孝)

10月21日・初めてづくし

カテゴリー: KOMCEE建設

今日は初めてのことが2つあります。 まず一つ。初めて夜に撮影に行きました。 このところだんだんと日没が早くなってきていましたが、暗くて撮れないだろうと思い込んで、夜には行ったことがありませんでした。 しかし、前回夕暮れ時に撮影に行ったときに案外照明が明るいことに気づきました。これはもしかすると夜に普通に撮影できるのではないか。そう思い、今日は三脚など担いで撮影地点に上りました。 結果、三脚なしで普通に撮れるくらい明るかったです。というわけで手持ちで撮影。夜の工事現場ってなんだかとてもCOOLです! そして2つめ。初めてコンクリートを流し込んでいる場面に遭遇しました。 右側の全景の写真を見ていただければわかるのですが、ちょうど写真の中央付近。鉄骨のステージの上の車両からホースが伸びてドバドバとコンクリートが流し込まれています。 それにしても、流し込まれたコンクリートってこんなに平らになるんですね。乾く前のコンクリートがライトに照らされて幻想的な雰囲気を醸し出していました。 (写真と文・栄田康孝)

10月18日・鉄筋の切り方

カテゴリー: KOMCEE建設

今日、ちょっとした発見をしました。 これ(左)です。何をしているところでしょう?? (答え) 鉄筋を切っている (か、曲げている) 知りませんでした! 鉄筋ってこうやって切るんですね-!! ていうか、テコで切ったり曲げたりできるし、実際に現場でそれをやっているんですね! どれくらいの力で切ればいいかとか、物理の入試問題に出そうです(笑) そして、前回の記事で言及した銀色のプレートのようなものはさらに増殖しました。ますます気になります。 つい1ヶ月くらい前までは残暑が厳しかったというのに、もう半袖では寒くなってきました。かくゆう僕もちょっと体調を崩しています。撮影場所に上るだけでハァハァ言っている始末。工事現場の皆さん、ホント強いなぁ・・・。 (写真と文・栄田康孝)

10月15日・銀色のモノ

カテゴリー: KOMCEE建設

銀色のギザギザのアルミのようなものが一面に敷き詰められていました。(ステンレスかな?) これまで鉄筋だらけでとても歩きにくそうに見えたのですが、この上はとっても作業しやすそうです! でも、この金属板、一体何に使うものなのか、謎です。地下の天井になるのかなあ・・・? クレーンは相変わらず9号館の前に陣取っています。一つはまた向こう側に移動したみたいです。 9月はあんなに深く掘っていた基礎部分が、少しずつ地上レベルに近づいてきました。理想の教育棟担当の先生経由で、工期がやや遅れているという情報が入ってきていますが、素人目に見ればこのペースで行けば余裕で来年の冬学期には完成しそうに見えますが果たして・・・。 さて、やや話が逸れますが、建設状況撮影班とは別に、理想の教育棟の建設に関わっている人々にインタビューする班も結成されていまして、そちらの方の活動も少しずつ計画から実行に移されつつあります。取材の内容は、これから少しずつ理想の教育棟ホームページで紹介されていくと思いますので皆様お楽しみに! (写真と文・栄田康孝)

10月5日・コンクリート続々

カテゴリー: KOMCEE建設

コンクリートが注入される現場をまだ見たことがないのですが、日に日に少しずつ嵩が上がってきています。 (ひょっとすると、速く乾くように朝やるのでしょうか? 僕が撮影するのはいつも午後で、朝はまだほとんど撮ったことがないです。) それにしても、ものすごい数の鉄筋です。この鉄筋でコンクリートをしっかり絡め取って、地震や経年劣化から建物を守るのでしょうね! ところで、基礎部分に鉄骨を使うことはないんでしょうか。もしご存じの方がいらっしゃいましたら是非教えてください。 この日はいつも東側の鉄骨の上にあるクレーンがこちら側(18号館側)に移動していました。クレーンが移動する瞬間も見たことがありません。いつ動かすのかな・・・。 思った以上のスピードでぐんぐん建設が進んでいきます。こうやって一つの建設現場をずーっと観察するのは初めての経験で、とても楽しいです! (写真と文・栄田康孝)

10月8日・やはりクレーンは大きかった

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ぬぉおおおお! 9号館の屋上に上がってみてびっくり! な、なんと目の前に巨大なクレーンが。なんと9号館のすぐそばに移動していたのでした。 あのクレーンってこんなに巨大だったのか!と今更ながら実感しました。写真ではその桁外れの巨大さがお伝えできなくて残念です。(こういうときにスイング・パノラマが欲しくなります・笑) こんなに大きな機械を操る人本当にすごいなぁ! カッコよすぎます。 この日は、珍しく友人と連れだって撮影場所に出向いたのですが、彼も口をあんぐり開けて見上げていました。 撮影したのはもう少しで日没という時間でしたが、ライトを点灯しまだまだ現場はフル稼働中でした。お疲れ様です。どうぞ安全第一で!! (写真と文・栄田康孝)

9月28日・雨

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雨になりました。 「雨だったら工事中止」とか・・・は、さすがにないよな・・・ ・・・と思って工事現場付近を通りかかると、やはりいつも通り工事の音は響き渡っています。 これまで、雨の日の工事現場を気にして見たことはありませんでしたが、きっと雨の日なりの苦労があるはず! どんな作業をしているのか見てみたい! との思いで9号館の屋上に急ぎました。(いつも、写真は許可を得て駒場キャンパス9号館の屋上に入り撮影しています。) 工事現場の床には水がたまっており、気持ち悪いし滑りやすいし、きっと相当作業しにくいに違いありません。 でも黙々と、平然と、工事は進んでいきます。塀の外は傘の群れ、内はレインコートの群れです。 いやぁ、プロだなぁ・・・。 (写真と文・栄田康孝)

9月26日・日曜日

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初めて日曜日に撮影に行ってみました。 日曜日の大学は授業がないので、サークルや部活に励む学生が少し居る程度で、とても閑散としています。 そして、工事現場もつかの間の休息中でした。 それにしても、資材はいつも整理して置かれています。 整理整頓。ちょっとしたことだけど当たり前の習慣が、現場の安全を守っているのですね! (写真と文・栄田康孝)

9月22日・匠の技

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暑さもだんだんと薄れ、過ごしやすくなってきました。 相変わらず何十人もの人々が、忙しく働いておられます。 秋晴れの青い空を背に、クレーンが次々に資材を搬入し、急ピッチで建設が進んでいきます。 巨大なクレーンを意のままに操り、寸分たがわず目的の位置に持ってくる技術。 さらに、搬入されたものすごい数の鉄筋や資材を易々と組み上げていく匠の技。 つい撮影の手を止めて見入ってしまいます。 (写真と文・栄田康孝)

9月15日・お久しぶりです

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来た、見た、撮った! というか・・・なんだこれは! 大変申し訳ございません。甘く見ていました。いつの間に!こんなに作業が進んでいるんだ! 僕がのほほんと夏休みを過ごしていたうちに・・・。 建築は偉大です。正直、たった2ヶ月でこんなに様変わりしているとは思いませんでした。 7月23日と比べて10mくらい掘られています。そして、おそらく基礎となる鉄筋が組まれ始めています。 巨大なクレーンも2台稼働中。作業する方の数も一気に増えました。みなさん自分が担当される部分の工事に真剣に、本当にひと時も手を止めずに励んでおられます。日陰もない炎天下の中の作業、本当に頭が下がります。 というわけで、これからは建設現場全景だけでなく、そこで作業されている人にも焦点を当てて行きたいと思います! (写真と文・栄田康孝)

7月23日・掘り始め?

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地面を覆っていた鉄板が取り払われました! そして大きいクレーンが入りました!! 手前の緑色のマシンは何をするものなのか?? 掘り出した土をダンプに搬入するもの、という理解で正しいのか。 もしそうだとしたら、これからどんどん掘り進んでいくのでしょうか・・・? さて、私事で恐縮ですが(笑)学生は夏休みに突入です! ここ1か月を見ているとまだあまり急速な進展はないようなので、夏休みの2ヶ月ほど建設現場レポートはお休みをいただきます。 それでは次は9月にお会いします! (写真・木許裕介 / 文・栄田康孝)

7月14日・ボーリング位置が変わる

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相変わらず暑い日々が続いてます。 土の上にはすっかり鉄板が敷き詰められました。 左側に見える建物は学生会館なのですが、ボーリングの位置がそのすぐそばに移動しました。ボーリングって結構早く終わるものなんだな~。 理想の教育棟では、ZEB(ゼロ・エナジー・ビルディング)で地下水の熱を利用するので地下の様子を調べるのはとても重要なことです。・・・このボーリングがそのためのものかどうかはよくわかりませんが・・・。 (写真:木許裕介 / 文・栄田康孝)

7月6日・ボーリング開始

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暑い暑い7月です。 この年は近年まれにみる猛暑。作業員の皆様、本当にお疲れ様です。 ボーリングが始まったようです。 まだすぐに掘り始めるというわけではないようです。土の上に鉄板が敷かれています。重たい車両が足を取られないようにするためでしょうか。 資材も少しずつ搬入されています。太い土管のようなものが見えます。何に使うのでしょうか? (写真・木許裕介 / 文・栄田康孝)

6月21日・記録開始!

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東京大学駒場キャンパス、旧生協食堂跡です。 既に建物の取り壊しが終了し、整地が始まっています。 数台のショベルカーやトラックが入り、現場の土を掘り返し始めています。地下1階にホールができる予定なので、その建物の基礎はかなり深いものとなります。 これから、まずは建物をしっかり支える基礎を作るため、深く深く地面を掘っていくことになります。 さて、理想の教育棟の設計は類設計室、建設は安藤建設が行うことになっています。設置される教室は、これまで教養学部で蓄積したノウハウを凝縮した、駒場で最も快適で使いやすい空間を目指しています。 また、建物の照明は世界で活躍する照明デザイナーであり東京大学の卒業生の石井リーサ明理さんが担当し、建物の空調は、東京大学生産技術研究所で研究されているゼロ・エナジー・ビルディング(ZEB)の概念を導入。これまでにない超・省エネの建物になります。 (写真・木許裕介 / 文・栄田康孝)

はじめに

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はじめまして!このブログは学内外のみなさまに、2011年完成予定の東京大学駒場キャンパス「理想の教育棟」の建築状況をお知らせするブログです。教養教育高度化機構チーム形成部門の学生チームが編集しています。 学内某所から定点撮影した写真を中心にお送りします。完成をお楽しみに!