対策
3. オンラインでできる理解度調査
(1) 投票とピア・インストラクション
授業のキーワードを理解しているかを問うような多肢選択問題を出し、Zoomの「投票」機能を用いて受講者に解答してもらうことができます。結果は、その場ですぐにわかるので、正答率が低い場合には、解説をしなおすことができます。こうした機会を定期的に設けると、受講者の集中力を維持しやすくなる効果もあります。教員にとっては、受講者が本当に理解しているのかを試せるような問題・選択肢を作ることが必要になります(バークレイ、メジャー [2020] pp.103-108)。
より体系的に行なうには、ピア・インストラクション(peer instruction)と呼ばれる手法を用いることができます(Mazur 1997)。①キーワードについての解説、②多肢選択問題での理解度確認、③<正当率が70%を超える場合>簡単に解説をして次の話題に移る、<正答率が30%-70%の場合>無作為のペアや数人のグループで、なぜ当該選択肢を選んだのかを説明し合い議論をしてもらう。その後、再度投票を行なう、<正答率が30%未満の場合>キーワードについてより丁寧に改めて解説をした後、再度投票を行なう、といったように、正答率に応じて授業の進行を変えれば、ついてこられない受講者を極力減らせます。ペアやグループでの議論を行なう場合には、Zoomのブレークアウトセッションを利用できます。
(2) チャット
Zoomの「チャット」機能を用いれば、授業内容でわからないことがある受講生に、授業中でも教員やTA宛てに伝えてもらうことができます。操作を誤ると、教員やTA宛に送ったつもりのものがクラス全体に流れてしまう可能性があるので、この機能を用いる場合には、授業のなかでも「チャット」機能の使い方について学ぶ機会を設けるのがよいと思われます。もちろん、受講者に抵抗がないのであれば、全体宛に質問を送ってもらうこともできます。
Zoomの「チャット」以外では、Slidoを用いる方法もあります。①他の受講者も質問に対して「いいね」を付けられるので、採りあげるべき質問に優先順位をつけることができる、②受講者が匿名でも送ることができる、③遅れて参加した人も参加前の質問をみることができるといった点を重視する場合には、導入を検討する価値がありそうです。Zoomに慣れるので精一杯の受講者が多い場合には、しばらく様子をみて、慣れた頃から導入するのがよいと思われます。
課題3. 画面の向こうの受講者は授業についてこれているだろうか…
課題2でも記しましたように、オンラインでは、学生の雰囲気を「察する」ということが非常に難しくなります。このことは、初回のみならず、オンラインである限りは一定程度ついてまわる問題です。画面の向こうの受講者は、果たして授業の内容についてこれているのか、教員の側も不安になります。果たして、どういったことができるでしょうか。
⇒対策3をご覧ください。
対策
2. オンラインでできる背景知識調査(2020年4月8日配信)
(1) 挙手
「高校時代に倫理を履修していた人はいますか」や「人道的介入という言葉を聞いたことがある人はいますか」程度の簡単な質問であれば、Zoomでも「挙手」機能を使って尋ねることができます。ただし、受講者数が多い場合(目安としてZoomの参加者リストを一瞥では把握できない程度)には、「投票」を用いた方がよいかもしれません。
(2) 投票
はい/いいえのみでは答えられず、選択肢が複数あるような質問の場合は、受講者数に限らず、「投票」を用いると便利です。
(3)アンケート
Zoom以外の手段を併用することもできます。Googleフォーム等を用いて受講者の背景知識を尋ねるアンケートを作成し、そのリンクをITC-LMS等で共有すれば、当該クラスの受講者からのみ回答をもらうことができますし、教員の側の集計も効率的に行なえます。
(4)小テスト
アンケートでは、受講者が自身の背景知識の有無を判断することになりますが、初回の授業で小テストを行なえば、教員が客観的に判断することができます(アンブローズ他 [2014] pp.43-45; デイビス [2002]p.33; 池田他 [2001] p.77)。期末試験と似た問題で出題し、学期を通じての受講者の成長を確かめるという方法もあります(バークレイ、メジャー [2020] pp.69-75)。
ITC-LMSで実施するのが一般的です(バークレイ、メジャー [2020] pp.71, 77)。 なお、実施に際しては、あくまでも開講時点での受講者の学力を知るためであるという実施目的を明確に伝え、成績評価には含まないようにすることが必要です。
課題2. 初回からオンライン!受講者の背景知識がわからない…
初回の授業では、受講者がどのような知識を既に持っているのかを確かめながら進めることが多いかと思われます。教室では、受講者の仕草や反応から、雰囲気を察して難易度を調整することができますが、オンラインでは、この「察する」というのが非常に難しくなります。だからといって、そのまま進めてしまうと、受講者にとっては難しすぎたり易しすぎたりしたまま授業の回が重ねられることになってしまいます。では、この段階で、どういったことができるでしょうか。
⇒対策2をご覧ください。
初回からオンライン! 受講者がいつも以上に緊張している…
初回の授業では受講者はいつも緊張しているものですが、いきなりオンライン授業となると緊張感が増します。特に、今年度の新入生は友人を作れる機会が極端に少なく、不安な気持ちが強いと思われます(アクティブラーニング部門では
「新入生のためのZoom講習会」を実施し、Zoomに慣れると同時に友人づくりの機会を提供しています)。こうした心理状況で学習に集中するのは、なかなか大変です。教員として、どういったことができるでしょうか。
⇒対策1をご覧ください。
趣旨
Zoomの利用方法を一通り理解された先生方におかれては、次はオンラインでも受講者の学びを促すような授業設計・実施
ができるのかと頭を悩ませられる段階かと思われます。教室での授業に比べて学生の反応を捉えにくいことを考慮すれば、オンラインでは、より双方向的な仕掛けが求められます。オンラインでこそアクティブラーニングが必要だといえます。
そこで、この「オンラインでこそアクティブラーニング」のページでは、オンライン授業に際しての「課題」を挙げ、それへの「対策」と「実践例」を紹介していきます。もっとも、本部門教員の多くにとっても、オンライン授業は、まだまだ未知の領域です。ここでは、マニュアルというよりも、先生方の授業設計・実施における意思決定のお役に立つような情報を紹介していくサポートブックを目指していきます。
連載
各記事は、https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/online_class/よりご覧いただけます。
アクティブラーニング手法を用いたオンライン授業の設計や実施に役立つ情報を、随時更新していきますので、定期的にご覧いただけますと幸いです。オンライン授業に関する先生方・
TAの皆さんのご意見やご経験も参考にさせていただきたいと思っております。
アクティブラーニング手法を用いたオンライン授業の設計や実施にあたって知りたいこと、具体的な実践状況や工夫・課題など、先生方・TAの皆さんからの情報提供をお待ちしております。是非こちら(https://forms.gle/DnnwewznyeM4XiPEA)までお寄せください。
お問合せ先
教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門
kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp