2020年度Sセメスターは駒場キャンパス全体でオンライン授業となり、KALSのTAも通常の授業支援ではなく、オンラインでの授業支援となりました。Sセメスター終了後、アクティブラーニング部門のスタッフとTAでオンライン授業支援業務を振り返り、
メリット/デメリット、オンライン授業の可能性や限界等について検討しました。
前回は第1弾として、TAから挙げられたオンライン授業支援のメリットについてお伝えしましたが、今回は第2弾として、TAから挙げられたオンライン授業支援での
デメリットについて紹介します。Zoomを用いたオンライン授業でアクティブラーニングの手法を導入する場合、ブレイクアウトセッションという機能を使用して学生をグループにわけ、ワークやディスカッションを行うことがあります。TAからは学生をグループに分けた後、つまりブレークアウトセッションでの授業支援が難しいと感じたという声が聞かれました。今回は、特に
グループワークのオンライン授業支援のデメリットについて紹介します。
デメリット1:グループに分かれた後のタイムマネジメントが難しい
教室での授業では、教室にある大きな時計をみながらタイムマネジメントができますし、他のグループの進捗も把握できるでしょう。しかしながら、ブレイクアウトセッションに分けると、各セッションに「閉じた」状態でワークやディスカッションが進み、その他のグループの様子を伺い知ることはできません。ホストが「あと〇分です」とメッセージを送ることはできるので残り時間をアナウンスすることはできますが、メッセージが明示される時間が短く、活発にワークしているグループは見逃すこともあるかと思います。そのような場合、どういったことが対策となるでしょうか?
対策1-1:グループ内でタイムマネジメントをする人を決める仕組みをつくる
ブレイクアウトセッションに分かれたワークやディスカッションの場合、教員が学生に対し「まず、タイムマネジメントをする人を決めてからワークを始めてください」等の明確な指示をだすことが対策として挙げられます。オンライン授業では、教員が役割を明示しない場合、教員にとっては学生の役割把握が困難であり、学生にとっては役割を決定することが困難になります。そのような場合、少なくともタイムマネジメントをする人さえ決めておけば、その人は、残り時間がどの程度時間が残っているかはわかりますし、グループの進捗について把握することもできるでしょう。
対策1-2:時間をアナウンスするために教員・TAが巡回し、ブレイクアウトルーム内のチャットで伝える
ブレイクアウトセッションに分かれたら、セッション内メンバーでのチャットは可能です。その機能を利用し、教員やTAがセッションに入り、チャットに「あと〇分です」と書き込むと、セッションにいるグループのメンバー全員が目にしますし、メッセージが消えることもありません。教員やTAがグループを巡回できるように、ホスト以外の教員やTAを共同ホストにし、自由にセッションを巡回できる設定が必要です。
対策1-3:他のツールを併用する
ブレイクアウトセッションに分かれた後、「あと〇分です」といった簡単なメッセージを全体に伝えたい場合、ホストが全体にメッセージを送る以外に、Zoom以外のツールを使って連絡することも対策になります。学生のメールアドレスを把握しているならば、メールでの連絡でもよいでしょう。また、Slack(
https://slack.com/intl/ja-jp/)などのチャットツールもビジネスの現場ではよく使われています。しかし、Zoomに慣れ始めた学生の皆さんにまた新たなツールの使用を強いることは負担にもなるので、これらの導入には丁寧な説明と使用方法のレクチャーが必要でしょう。
デメリット2:グループに分かれた後の状況把握が難しい
教室での授業におけるグループワークの場合、教員やTAは全体を見て「あのグループはディスカッションが円滑ではなさそうだ」「あのグループはワークが少し難航しているかもしれない」等と察し、グループに足を運び、声をかけることができます。しかし、オンライン授業では、教員やTAも、各ルームでワークやディスカッションしているグループの状況を事前に把握できずに各ルームを巡回することになるので、「介入すべきグループに介入すべきタイミングで入ることができない」逆に「介入の必要がないグループに介入してしまう」といった現象が起こり得ます。また、同時並行で行われている他のルームのワークに関する進捗は把握できません。このような場合、どのような対策が考えられるでしょうか?
対策2-1:教員やTAの巡回の頻度を上げる
オンラインでの授業では、各ルームに入らなければグループの状況を把握できないため、把握のために巡回の頻度を上げることが対策となり得ると思われます。問題がないと判断したルームへの滞在時間を短くし、問題がありそうなグループを把握したら、教員やTAの巡回頻度を多くしたり、滞在時間を長くする等、適切な介入が可能になるでしょう。
対策2-2:教員に質問・連絡・相談できるツールやタイミングを準備する
教員に質問、連絡、相談できるツール(例:google form等)を作成し、セッション内でのグループワーク中でも教員に連絡できる手段をつくっておくことは、対策となるでしょう。授業時間中あるいは時間外に相談時間を確保するのも有効です。例えば、授業が終わった後すぐにZoomを閉じるのではなく、「質問がある方はこのまま残っていただいて結構です」とアナウンスすれば、授業内容や課題に関する質問もできますし、グループワークを行っていく上での悩みを相談することも可能になります。それでも、他の学生がいる場では相談しにくい場合もあると思いますので、困ったとき、わからないときに教員が対応できるということを、学生に示しておくことが大切ではないかと考えます。具体的には、授業スライドの最終ページに「個別の相談や質問はXXX@
kals~にご連絡ください」等と連絡先を提示したり、Zoomでのオフィスアワーの時間帯を設定してアナウンスすること等が挙げられます。これらは、グループに分かれた後の状況把握の難しさに対する対策のみならず、受講生全体の状況把握に対しても有効でしょう。
以上、グループワークのオンライン授業支援における2点のデメリットとそれぞれへの対策について、挙げました。
KALS TAの5名が感じた上記のデメリットは、教員も感じた点ですが、教員が授業運営の仕組みを工夫することによって対策できるものも多いと感じました。
お問合せ先
教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門
小原優貴、伊勢坊綾、中村長史
kals[at]
kals.c.u-tokyo.ac.jp