ワークショップ「東大生がつくるSDGsの授業」(2021年8月29日)開催

カテゴリー: イベント

  東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを昨年度に引き続き開催いたします。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生達が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業が揃っておりますので、是非ご参加ください。 チラシPDF

1.日時

2021年8月29日(日)14時~17時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします) ※授業ではペアワークやグループワークの場面が多くあります。可能な限りカメラをオンにして参加していただければ幸いです。 ※参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

3.対象者

高校生 [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

14:00~14:30 司会挨拶:伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 吉田莉々(東京大学教養学部 2年) 黒瀬淳平(東京大学教養学部 1年) 15:20~15:40 休憩 15:40~16:30 目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を 考える〜」 辻美波(東京大学教養学部2年) 山本佳明(東京大学教養学部1年) 16:30~17:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

6.お申し込み

以下の申込フォームよりお申込ください。 https://forms.gle/yTDgas3DAy9nVj2n9 ※締切 8/11(水)23:59 ※定員を超える申し込みがあった場合は抽選となります。

お問合せ先

主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 2021-sdgs@kals.c.u-tokyo.ac.jp  

「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2021年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「模擬国連で学ぶ国際関係と合意形成Ⅰ」(2021年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。2019年度Aセメスターから毎期開講しており、今回が4期目の開講となりましたが、受講者は6名(2年生3名、3年生1名、4年生2名)でした。 担当教員:中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構) 担当TA:八尾佳凛(教養学部教養学科国際関係論コース)

1.授業概要

国際社会で生じる問題は、自然現象ではなく社会現象である以上、一人一人の力によっ てわずかながらでも良くすることもできるし、さらに悪くしてしまうこともあります。本学の学生には、この点を意識し、自分の頭で国際問題の解決策を考えられるようになってほしいと考えています。 そこで、この授業では、「模擬国連(Model United Nations)」というアクティブラーニングの⼿法を⽤いて、国際問題の解決法を考えました。多様な利害・価値観に配慮することの重要性を理解するには体感してみることが早道ですが、模擬国連の会議では、⼀⼈⼀⼈が⽶国政府代表や中国政府代表などの担当国になりきって国際問題について話し合います。⽴場を固定されている点ではディベートと同様です。しかし、相⼿を論破することで勝利を⽬指すディベートと異なり、模擬国連会議では合意形成が⽬的であるため相⼿の利害・価値観を尊重したうえでの妥協が重要になります。この点を重視し、授業内では対⽴の激しい議題・担当国を設定して、 ロールプレイ・シミュレーションに取り組みました。

2.授業の目的・到達目標

目的 国際社会本講義で学んだ概念と事例を使いこなして、現在の世界における問題の構図や原因、解決法を自分の頭で考えられるようになる。 到達目標 ①国際問題の構造や原因を説明できる【レポート1,2で評価】 ②国際問題をめぐる多様な⽴場(利害・価値観)を説明できる【レポート1,2で評価】 ③国際問題の解決における妥協の重要性を説明できる【レポート1,2で評価】 ④国連の資料を⾃ら調べて国際問題の分析に⽤いることができる【レポート1,2で評価】 ⑤国際問題の解決策について、選択肢を複数挙げて⽐較衡量したうえで、妥当と考えられるものを説得的に示すことができる【レポート1,2で評価】

3.授業の流れ

ガイダンスー模擬国連から学べること(第1回) 模擬国連によって一般に学べること・学べないこと、そして、本授業の模擬国連から学べること・学べないことを確認しました。そして、学べないことについて補完する方法を検討するとともに、学べることを意識して一学期間過ごすことの重要性を再確認しました。なお、今セメスターも、前々セメスター・前セメスターに続き、全回ZOOMミーティングを用いたオンライン授業となりました。 模擬国連会議:イラク戦争(第2回~第7回) 2003年3月のイラク戦争開戦直前の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第2回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第3回から第6回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(査察継続派)、フランス(査察継続派)、ロシア(査察継続派)、英国(即時開戦派)、米国(即時開戦派)の5つの常任理事国に「中間派」のチリを加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1人で担当しました。現実の会議と異なり決議案が投票にかけられ、即時開戦を避けつつも、査察期限を明確に設け、その結果次第では武力行使への道が開かれる内容の決議案が採択される結果となりました。 第7回では、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート1に取り組みました。TAを務めてくれた学生が前年度の受講者であったことから、前年度の模擬国連会議との比較といった観点から議論することもできました。 模擬国連会議:DPRKの核開発(第8回~第12回) 2017年9月のDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)による6度目の核実験後の国連安全保障理事会のシミュレーションを行ないました。第8回で議題概説を行ない、担当国を決定した後、第9回から第11回まで会議を行ないました。実際の国連安全保障理事会の構成国のうち、中国(圧力強化消極派)、フランス(圧力強化積極派)、ロシア(消極派)、英国(積極派)、米国(積極派)の5つの常任理事国に日本(積極派)を加えた6ヶ国を設定し、1ヶ国を1人で担当しました。現実の会議と同様、経済制裁の強化を盛り込んだ決議案が採択される結果となりました。 第12回では、イラク戦争の際と同様、まず、このような会議の内容について、担当国の立場から振り返り、自国の利益をどの程度反映できたか、より適切な政策立案・議論・交渉等はなかったかを検討しました。そのうえで、個人の立場から会議を振り返り、国際社会全体の利益のために、どのような方法があり得る(た)のかを議論しました。2つのふりかえりを踏まえて、受講者は授業外でレポート2に取り組みました。 まとめー模擬国連から学んだこと(第13回) 各自が模擬国連から学んだことについて、①国際関係の知識・技能面、②合意形成の知識・技能面の両面からふりかえりました。教員からは、2000年代のイラク情勢が2010年代以降のDPRK情勢、ひいては大量破壊兵器全般をめぐる問題に、どのような影響を与えているかを問題提起し、受講者間の議論を促しました。また、来セメスター以降の模擬国連の授業をよりよくしていくための方法を検討しました。 授業スケジュール

4.受講者の感想

  • Policy Paperを準備する中で、公式会合の発言では出てこないようなより深い利害関係や、意図などをある程度汲み取ることができた。また、各国の態度は多いに国内情勢の影響・拘束を受けることがわかった。
  • 安心供与のような国際関係論の理論を使いつつ学べた。
  • 自国にとってはあまり重要性の高くない国・地域の課題について、安保理におけるプレゼンスや大国との関係性を維持しながら関わる必要があることを学んだ。
  • 五大国とそうでない国のどちらも経験したことで、国連安保理において様々な国がどういったモチベーションをもって臨んでいるのか少し体験できた。
  • 交渉の中ではしばしば妥協することが必要となる。ゆえに、これ以上は譲ってはいけないというボトムラインを設定し、それを会議中も明確に意識することが重要だと学んだ。
  • オンラインのため、対面での交渉に伴う緊張感のようなものを味わえなかった。言葉だけでなく、表情や仕草からも相手の意図を察知する経験が積めればなおよかった。
  • Policy Paperで問いがすでに立てられていて、またフローチャートみたいな形で授業が展開されていて、参加している身としても授業の流れが非常にわかりやすかったです。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンライン授業でポスターセッションアレンジ版で発表

オンライン授業での学生による成果物発表、どのようにされていますか?少人数のクラスであれば、Zoomのメインセッションでグループもしくは学生が交代で画面共有などして発表するかもしれません。大人数でのクラスの場合、いくつかのグループに分けてブレイクアウトルームを設定し、そのグループ内で発表してもらうこともあるかもしれません。 対面授業での発表形式の一つに、ポスターセッションがあります。ポスターセッションは、学生が一人ずつ、もしくはグループでポスターを作り、ポスター発表と他のポスターへのコメントを授業中に行う活動です(+15 minutes pp.40-41)。特に、グループでポスターを作成した場合は、一人のメンバーを説明者としてポスター前に配置し、残りのメンバーは他のグループのポスターを閲覧して内容を検討するやり方を行うこともあります。 今回は、グループでポスターを作成した時のポスターセッションのやり方を援用した、オンライン授業での学生による成果物発表のやり方を紹介します。

発表方法の概要

ここでは、クラスに5グループ(1グループ3〜4名)ある授業での発表方法を想定します。各グループで作成している成果物の中間発表を行い、各グループの成果物について進捗状況の共有や工夫している点、困っている点を発表を通じて共有し、他グループの学生からコメントをもらったり、他グループの成果物の良い点に気づけるような機会を設定します。さらに、それらを踏まえて自分たちの成果物の改善点を明らかにすることを目的とします。またグループのメンバー全員が発表に関わってもらえるよう、全員に発表機会を与えることも目指します。 これらをまとめると、発表方法を検討する際の要件は下記になります。
  • クラスには、5グループ(1グループ3〜4名)ある
  • 他の学生からのコメントを得られるようにする
  • なるべく多くのグループの様子を見てもらえるようにする
  • 全員が何かしらの発表や質問への回答を行える
  この要件を満たすため、ポスターセッションのやり方を援用し、次のような発表を行うことにしました。
  • クラスを3つの大グループにわける→1グループ4名の場合、1つの大グループに同じグループの学生が2名いる場合もあり、その時は1人は発表、もう1人は発表の補足や質問への回答を行う
  • それぞれの大グループには、5グループの学生が一人ずつ入る→1つの大グループは、グループA, B, C, D, Eの各メンバーで構成される
  • 大グループごとにブレイクアウトルームを設定する
  • ブレイクアウトルームでは、5グループの学生が順番に発表し、その発表に対して互いにコメントし合う
  • 大グループでの発表・相互コメントの後、自分のグループに戻り、得たコメントや質問、他グループの成果物に対する感想や参考になる点を共有し、自分たちの成果物の改善点について議論する
なお、大グループでの発表については、相互評価を行えるチェックシートを使います。その詳細については、こちらをご覧ください。

授業前の準備

発表時間を決める

1コマで発表を行う場合、どのくらいの時間を発表時間に使えるか、時間配分を検討します。たとえば、90分の授業のうち、中間発表に使える時間が50分だとすると、1グループ10分が持ち時間になります。その10分のうち、4分で発表、6分で質問・相互コメントを行う…といった設定を行います。 今回は、中間発表後に各グループに戻ってコメント共有をしますので、たとえば、90分を次のように配分します。
時間配分 授業内容
15分 導入(学習目標・授業の流れの説明、発表方法の説明など)
55分 中間発表(大グループでの発表、質問・相互コメント)
15分 各グループでの情報共有
5分 まとめ、次回授業の予告など
導入は実質10分の予定ですが、ブレイクアウトの準備のため余裕を持って15分としました。中間発表も同様に、実質50分ですが余裕を持って55分を想定しています。

大グループでの運営方法を決める

3つの大グループに分かれた後、発表がスムーズにいくような運営方法を検討しておく必要があります。1グループあたり「4分で発表、6分で質問・相互コメント」であることを学生に伝えることはもちろんのこと、発表順や進行役を決めておくことも欠かせません。 また、この形式を取る場合、TAがいるかどうかが運営に大きく影響します。TAがいる場合は、大グループに入ってもらい、進行役を担ってもらうとよいでしょう。TAがいない場合が大変です。教室ですと、教員一人でも問題なく進められますね。オンライン授業ですと、大変です。 実は今回は、TAがいない状況でこの発表方法を実施しました。なにかトラブルがあった場合、あるいは発表運営がうまくいかない場合にすぐにフォローできるようにしておかねばなりません。そのため、今回は、3台の端末(パソコン/タブレット)を使いました。3つの大グループのうち、1つのグループはメインセッションで発表などしてもらい、残りの2グループを2つのブレイクアウトルームに割り当てます。3台の端末のうち、2台の端末でそれぞれのブレイクアウトルームに参加し、状況をモニタリングすることにしました。

相互評価のためのチェックシートを用意する

相互コメントの観点を明確にするため、相互評価チェックシートを用意しました。これについての詳細は、こちらをご覧ください。

成果物の共有方法を決める

学生は、自分のグループで作成した成果物について発表します。その成果物をどのようにほかの学生たちと共有するかを決めておきます。成果物の内容・種類によっても共有方法は異なると思いますが、たとえば、発表時に画面共有で提示してもらう、というのも一つの方法です。 今回は、Google Driveにすべての成果物がありましたので、授業開始前の時点の成果物を「中間発表用フォルダ」にコピーし、相互閲覧できるようにしました。その時、コピーした成果物の編集権限を「閲覧のみ(コメント可)」に設定しました。これは、中間発表前までの成果物と、その後の改善した成果物との違いがわかるようにするためです。授業の最終回で学生たちが学習プロセスを振り返ることを予定していたため、中間発表時点での成果物が確実に残るようにしたのです。

授業中の運営

中間発表用の大グループを設定する

中間発表では3つの大グループにわかれます。授業開始後、各グループから最低1人のメンバーがそれぞれの大グループに入るよう、ブレイクアウトを設定します。

中間発表の様子をモニタリングする

3台の端末を駆使して(?)、それぞれの大グループの様子をモニタリングします。うまく進んでいない場合は、適宜介入します。 またトラブルなど起きた場合は、「ヘルプを求める」を押してもらうように学生に伝えておきます。ヘルプを求められた場合は、その大グループにいき、対処します。

時間管理について通知する

発表を時間どおりに進めるため、1グループ目の発表時間が終わる頃にブレイクアウトの機能を使って全員にメッセージを通知します。同様に、次のグループに移るぐらいの時間にも通知を出します。

各グループのブレイクアウトを設定する

中間発表後、各グループに戻って情報共有しますので、そのためのブレイクアウトを設定します。TAがいない場合は、ブレイクアウトを設定している間は、「中間発表でもらったコメントや他グループの様子をふり返ってください。グループに戻ったらどんなことを共有するか考えておいてください。」と学生に伝え、考える時間を作ります。

授業後にやること

授業中は、中間発表に対して、教員から十分にフィードバックすることができません。そのため、授業後に各グループの成果物にコメントなどするとよいでしょう。また、各ブレイクアウトルームの様子を各端末でレコーディングすることもできます。各ブレイクアウトルームでの中間発表をレコーディングしておき、授業後に改めて様子を確認したり、フィードバックの参考にすることもできるでしょう。

この方法を使った感想

多くのグループの発表に触れられる

この方法を試行した授業での成果物は、ほかのグループの成果物を見ることで自分たちの成果物の質を高められる性質のものでした。そのため、なるべく多くのグループの成果物を見る機会を作ることが、最終的な成果物作成に有用でした。 学生からの授業後のコメントでもほかのグループの進捗や成果物が参考になったという意見が得られており、この方法で中間発表を行ったことで、その目的は達成できたと考えられます。

全員が発表の機会を持てる

オンライン授業に限らず対面授業においても、グループワークに積極的に参加しない、フリーライダーになってしまう問題があります。全員が発表することは、自分のグループの活動内容を把握し、グループワークを自分事と捉えられる機会になりえます。その点において、この方法は良いなと思いました。

グループの数が多い場合どうするか

今回は、クラスに5つのグループがありました。もし、10以上のグループがあった場合、どのように運営するのかについては検討が必要です。特に、大グループの組み方を工夫する必要があるのですが、場合によっては大グループ自体が5つなど多くなる可能性もあります。大グループが多くなると、TAがいたとしても発表運営が難しくなるでしょう。 グループの数が多い場合は、授業の学習目標到達のために、何を優先するかを見定めて運営方法を決める必要があります。たとえば、より多くのグループに触れることを優先するのか、それとも全員が発表する機会を優先するのかで、運営方法が変わってきます。それらが学習目標到達のためにどのように影響するのかを検討して運営方法を決めるのがよいでしょう。 一方で、対面授業の場合は状況が変わります。対面授業では、教員が一人で授業運営していたとしても、それぞれの大グループの様子を俯瞰的に見ることが可能です。もちろんグループ数にもよりますが、オンライン授業とは異なり、グループの数が多くなっても運営しやすいと考えられます。

モニタリングが大変

上記のグループの数が多い場合や、TAの活用にも関連することですが、複数のブレイクアウトルームをモニタリングするのはなかなか大変です。3台の端末の音量を小さくしたり、大きくしたりして、優先的に視聴するブレイクアウトルームを切り替えてモニタリングするのですが、トラブルが生じたりすると混乱しがちです。TAや、手助けしてくれる人がいる方が、安心です。

TAがいたほうが良い

大グループでの発表運営を円滑に行うためには、TAがいたほうがよいです。大グループの数によっては、教員一人でも運営できます。大グループが多くなればなるほど、TAがいたほうが、トラブル時に対処しやすくなりますし、安心です。また発表に対するフィードバックという観点でも、TAがいて学生の発表にコメントしてもらえるようにしておくと、学生の学びを深めることに繋がると思います。   今回は、ポスターセッションのやり方を援用したオンライン授業での発表方法を紹介しました。発表の目的や、学習目標との関連によって、どのような方法がいいのかを検討・決定していくことが重要だと思われます。

オンライン授業で相互評価

オンライン授業で相互評価を行うにはどのようにすればよいでしょうか?学生どうしの教え合い・学びあいの手法の一つとして、相互評価があります。相互評価は、レポートのピア・レビューとして行われることが多いですね(+15 minutes p.23)。 ここでは、オンライン授業での学生による口頭発表の相互評価を行う方法について紹介します。

授業前の準備

やり方を考える

発表の方法を決めた後、相互評価の方法を決めます。 発表は、個人なのかグループなのか、1人(1グループ)あたりの発表時間はどれくらいなのか、何を発表してもらうのか…といった発表の概要を決めた後、相互評価を行う時間と手順を来ます。 実際にオンライン授業で行った際は、こちらの記事で紹介したポスターセッションアレンジ版での発表の際、相互評価を行いました。具体的には、1グループが口頭で発表した後、学生一人ひとりが評価シートに記入する時間を設け、さらにその後でコメント・議論を行うという流れで実施しました。

評価シートを作る

発表内容や方法にあわせて、相互評価に用いる評価シートを作成します。 評価シートは、発表の目的によっても項目が変わってきます。今回はポスターセッションアレンジ版での発表の際を具体的には取り上げます。この時は最終的な学習成果物の中間発表という位置づけでした。そのため、学習成果物の質的な評価の項目に加えて、改善したほうが良い点といった自由記述の項目も設定しました。 また、学習成果物の質的な評価の項目は、すでに授業で扱った内容に基づいて設定しました。今回の授業では、最終的な学習成果物は「教材づくり」でした。教材開発の理論やポイントを授業でも扱っていましたので、中間発表の評価項目には教材開発のポイントを押さえているかどうかを相互評価してもらいました。

評価シートの配布方法を決める

今回は、グループでの成果物の発表に対する相互評価でしたので、グループごとに評価シートとなるGoogleスプレッドシートを設定しました。そのスプレッドシートに評価シートをコピーして、発表者以外の学生や教員が評価できるようにしました。少しわかりにくいので例を出します。 こちらの画像のように、発表を行うグループごとにスプレッドシートを用意し、さらにその中に評価者ごとにシートを作り(画像下部の「評価者名」のあたり参照)、相互評価できるようにしました。スプレッドシートなので、多肢選択式の評価を行う時は「データの入力規則」を設定すれば、プルダウンで選択肢を選択できます。雛形となるシートを作った後、評価者の人数分そのシートをコピーすれば相互評価の準備は完了です。 ※選択肢をプルダウンで設定する方法はこちらをご覧ください。

学生への教示内容を決める

相互評価の手順をどのように学生に伝えるかを考えます。グループごとに評価シートがあることや、学生自身がどの評価シートを使えばよいのか…といったことが少し複雑ですのでわかりやすく手順を説明できるようにしっかりと考えておきます。

授業中の運営

学生に相互評価の手順を説明する

発表の仕方と併せて、相互評価の方法を学生に伝えます。また発表や相互評価の目的も伝えます。今回の場合では、「教材設計の理論やポイントに則って教材を開発できているか(質を確保できているか)の確認と改善点を明らかにすること」を目的としていました。

評価シートのリンクを共有して開いてもらう

相互評価の手順とともに、評価シートのリンクを共有して開いてもらいます。実際の評価シートを見てもらうことで、手順もよりわかりやすくなります。

トラブルがあれば対応する

うまく評価シートを開けない、誤った評価シートを使ってしまう等あれば、都度対応します。

この方法を使った感想

発表を能動的に聞ける

集中して聴ける場づくりのコツとして、発表へのコメントを求めるというものがあります。相互評価はまさにこれにあたります。評価シートを書くために能動的に他者の発表を聞く姿勢になります。 また、学生からは、他者の発表を聞いて評価することで、自分たちの学習成果物の改善点に気づくことができたといった感想が得られました。能動的に発表を聞き、相互評価を行うと、評価される側は意見を得られますし、評価する側も自身の学びをふり返り気づきを得られます。

評価シートの記入時間を考慮する

評価シートの項目が多すぎると、たとえそれが「はい」「いいえ」での選択式だったとしても想定以上に時間がかかります。評価シートの記入時間を多めに確保しておいたり、評価項目の数を絞っておくといった工夫が必要です。 学習成果物によっては評価の観点を明示することが必要な場合があります。できればそれらの観点を評価シートに組み込むのが理想ではありますが、評価項目の数を絞りたい時は、観点を別途学生に伝え、コメントのみを記入してもらう、という方法もあるでしょう。

フィードバックのタイミングでツールを選ぶ

今回の授業では、相互評価の内容をすぐに学生にフィードバック(共有)したいという希望がありました。そのため、Googleスプレッドシートを直接学生たちと共有し、評価してもらう方法を選びました。 相互評価の結果を学生とすぐに共有する必要がない場合であれば、Googleフォームなどフォームを使って評価やコメントを送信してもらう方が楽かもしれません。その場合、授業後に、フォームで送られた内容をグループや個人ごとに分けたり、共有したり…といった作業が必要になります。 フィードバックのタイミングや作業の手間を踏まえて、相互評価のツールや手順を検討するとよいでしょう。