第3回模擬国連ワークショップ(2021年9月12日)

カテゴリー: イベント

先日終了しました下記のワークショップにつき、当日の模様を簡略ながらご報告します。 日時:2021年9月12日(日)14時~17時 場所:ZOOM 参加者数:57名 登壇者: ■ 中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教)セッション1・2 ■ 小山淑子(東洋大学国際学部 准教授)セッション2 ■ 室田大樹(青山学院高等部教諭)セッション1

1.目的

「学習者の学びを促すための模擬国連の授業への効果的導入について学ぶ」という目的のもと、より具体的には、下記の到達目標を定めました。 ①模擬国連の教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション1に相当) ②模擬国連の実施の手順を説明できるようになる (セッション1に相当) ③他のロールプレイの教育手法としての特徴を説明できるようになる (セッション2に相当) ④他のロールプレイの実施の手順を説明できるようになる (セッション2に相当)

2.概要

【1】趣旨説明(14:00~14:10 ) ワークショップの目的や構成を確認した後、各人の参加動機を改めて言語化していただきました。 【2】 セッション1「模擬国連導入事例から学ぶ」(14:10~15:20) 模擬国連の概要と東京大学教養学部の授業への導入例について授業担当教員の中村からお話した後、青山学院高等部での導入例について同校の室田大樹教諭からお話いただきました。高校・大学それぞれでの導入例を検討する趣旨でしたが、導入目的を明確化する必要があり、模擬国連はあくまでも手段であるという最重要の点は共通していることを再確認する機会となりました。

セッション1の様子

【3】セッション2「ロールプレイ導入事例から学ぶ」(15:40~16:50) セッション1で確認したように、模擬国連はあくまでも手段です。授業の目的によっては、他の手法がより適していることもあります。そこで、小山淑子先生から、演劇等をとりいれた模擬国連以外のロールプレイ手法についてご紹介いただきました。模擬国連はあくまでも手段であるため、授業の目的により適したロールプレイがあれば、それを学ぼうという趣旨でしたが、模擬国連との異同を意識した小山先生のお話のおかげで、模擬国連の特徴を改めて確認する機会ともなりました。

セッション2の様子

【4】まとめ(16:50~17:00) まとめでは、本日学んだことや疑問に思ったことと、それを踏まえて翌日以降に各人の現場に持ち帰るものとを確認しました。

3.参加者の感想

参加者の方々からは、以下のような感想が寄せられました。一部抜粋します。
  • 実際に授業で使用されている資料も提供いただけたので、実践に向けてかなりハードルが下がりました。
  • 基礎的なことから、具体的な事例・運用方法まで、十分な情報を得られました。ロールプレイをどのように授業に取り入れることができるのか、イメージしながら学習することができました。
  • 高校や大学での実践事例を紹介してくださって、具体的にイメージが沸いてきました。
  • 先生方が試行錯誤しながら、模擬国連などの手法を授業に取り入れている点についてもうかがえて、ありがたく思いました。
  • 「高校・大学教員を参加者とする」模擬国連などご企画いただけると、高校・大学生のように気づきが大きくなるかもしれない、と思いました。

4.次回予告

次回も今回同様、①模擬国連導入事例共有、②模擬国連以外のロールプレイやシミュレーションの導入事例共有を主な内容として開催していく予定です。模擬国連導入のハードルを下げる工夫をより知りたいといった声もありましたので、次回はそうしたTipsについても共有できればと考えています。皆様のご参加をお待ちしております。

お問合せ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中村長史) kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:アクティブで双方向的な授業のヒント」開催報告

2021年9月8日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:アクティブで双方向的な授業のヒント」を開催しました。定員を超える方々の申込みがあり、当日は13名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

3月に開催したオンラインワークショップでは、「オンライン授業では学生の様子がわかりにくいこと」や「学生の状態を把握しにくいこと」、「学生からの反応がないこと」、「学生との信頼構築」など、教員と学生とのコミュニケーションや双方向性の確保に関する課題が多く挙げられました。 そこで、本ワークショップでは、オンライン授業における学生の状況把握やコミュニケーションといった双方向性を保ち、授業をアクティブにするためのポイ ントや手法について理解すること、具体的な手法や研究知見を参考にしつつ、グループでのディスカッションやワークを通じて情報共有や課題解決を目指すことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いの自己紹介とワークに取り組みました。ワークでは、教員と学生とのコミュニケーションや双方向性の確保に関する3つの課題への対処法について、参加者の経験やアイデアに基づきGoogleスライドを使いながら議論しました。全体での共有の後、ミニレクチャではTPACK(Technological Pedagogical Content Knowledge)の枠組みを紹介し、テクノロジに関する知識だけでなく教育学的な知識も重要であることを確認しました。そして、ワーク2では、ジグソー法を使ってアクティブラーニングに関する教育学的な知識を学ぶことを伝え、各自が担当する資料を決めました。 休憩を挟んで後半は、ジグソー法を用いたワーク2を行いました。まず、アクティブラーニングの手法、アクティブラーニングに関連する理論や知見、授業運営のポイントの3つの資料のグループに分かれてエキスパート活動を行いました。その後、ワーク1のグループに戻ってジグソー活動を行い、ワーク1と同じ課題への対処法を検討しました。 最後に全体で議論内容を共有し、オンライン授業と対面授業との接続やワークショップ全体のふり返りを行ってワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップでは、どのグループも活発に議論していました。参加者からは、「同じ悩みを共有しているあらゆる分野の先生方とお話しできてよかったです」や「さまざまな先生が色々ご苦労されていることを知って孤独感からは解放されました」といったコメントがあり、本ワークショップが、オンライン授業で陥りやすい教員の孤独感の解消の一助となったと思われます。 また、「自分の授業を振り返り、改善点は多々あるはずだと自覚はあったものの、想像以上に改善方法を学ぶことができました」や「授業のデザインが重要だということは初めて意識するようになりました」、「様々なテクノロジーを組み合わせればオンラインの特徴を生かしたアクティブラーニングができることがよくわかり、そのショーケースとして、このワークショップは非常に参考になりました」といった声が聞かれ、ワークショップそのものや内容が、授業デザインや授業改善、オンライン授業におけるアクティブラーニングの導入に役立った可能性が示されました。 一方で、「グループワークの時間が短く感じた」、「参加者同士の対話を長く」といった声が聞かれました。グループワークでは参加者どうしの意見交換が非常に活発で、それゆえ、時間が足りないという感想に繋がったものと思われます。また、さらに実践的な内容を望む声もいくつか聞かれました。こうしたご意見は、今後のワークショップや情報発信の検討に役立てていきたいと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

ワークショップ「第2回東大生がつくるSDGsの授業」(2021年8月29日)開催報告

カテゴリー: イベント

先日開催しました下記のワークショップに関して、当日の模様を簡略ながらご報告します。 チラシPDF 日時:2021年8月29日(日)14時~17時 場所:オンライン 参加者数:28名

1.目的

アクティブラーニング部門では、2021年度Sセメスターに、全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」という授業を開講しました。本イベントは、その授業の中で特に優れた授業案を設計した学生たちが、高校生を対象とした授業を実施するもので、2020年度に続き、第2回目の開催となりました。

2.概要

新型コロナウイルスの流行状況を踏まえて、オンライン(Zoom)での開催でしたが、講師の学生たちは可能な限り双方向性を保つために、授業案を設計してイベントに臨みました。

3.プログラム

14:00~14:30 司会挨拶:伊勢坊綾(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:20 SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 吉田莉々(東京大学教養学部 2年) 黒瀬淳平(東京大学教養学部 1年) 15:20~15:40 休憩 15:40~16:30 目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を考える〜」 辻美波(東京大学教養学部2年) 山本佳明(東京大学教養学部1年) 16:30~17:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

4.ワークショップの内容

(1)SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 「俯瞰的に見るSDGs〜17の目標間の関係性を考える〜」では、SDGsの成立背景とその理念を念頭に置きながら、社会におけるSDGsの捉え方を考えました。SDGsは個別の目標が極めて真っ当なことを言っているが故に、それぞれの目標が17つ全体としてどの様に達成されるべきかという視点が抜けがちです。目標間のシナジーとトレードオフに着目することで、SDGsというある意味では「不完全な」ゴールを達成していく方法について取り扱いました。授業では、レクチャーに加えて、Jamboard等のオンライン教材を使用したブレイクアウトセッションを挟み、インプットとアウトプットのバランスを重視したスタイルにしました。 (2) 目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を考える〜」 目標4が日本では達成済み扱いではあるものの、実はさまざまな面で格差が残っていることに高校生たちに気づいてほしいと思い、「隠された格差」というタイトルで授業を行いました。まず最初に、目標4の概要や意義、他のSDGsの目標とのつながりについて、チャット機能で発言してもらいながら確認しました。次に、ブレイクアウトルームに分かれて、自分たちの身近なところから、「質の高い教育」とは何か、そこから取り残されてしまう人はどのような人かを考えてもらいました。その後、話し合った内容をグループごとに発表し、考えを共有する時間を設けました。最後にはまとめを行い、気づいた身近な格差について高校生が考えをより深められるようにしました。

5.授業を行った学生の声

授業を行った学生に、参加者の反応はどのようなものであったか、そして授業を実施した感想を聞いてみました。 (1)SDGs全体を扱う授業「俯瞰してみるSDGs〜17の目標間の関係性に迫る〜」 参加して下さった皆さんが、SDGsが完璧なものではないという視点が斬新で面白かった、と言ってくれたお陰で、自分たちの授業で伝えたかったメッセージを届けられた気がして非常に達成感がありました。また、大学生の自分にはない視点で意見を言ってくれる高校生が沢山いて、自分自身も大変刺激になりました。 SDGsのことを深く学べただけでなく、どの様な準備を行えばより伝わる授業が出来るのかを実践的なワークショップを通じて学ぶことが出来、非常に勉強になりました。SDGsへの興味が深まっただけでなく、それらをどの様に解釈して発信していくか、という視点も必要だなと気付かされました。授業を受けるだけでなく、授業を作るという過程に隠された多くの学びがあることは意外だったし、今後の自分の学習姿勢でも大切にしたいです。(吉田莉々) 受講生の皆さんがSDGsについて興味を持ち、新しい観点や考え方を積極的に学び考える姿勢が印象的でした。受講生の方々とは少しの年の差しかありませんが、自分たちの想定していた反応とは全く異なる意見や、高校生だからこそ出てくる観点というのも多く、非常に勉強になりました。 限られた時間で授業をするためには膨大なプロセスを踏み、試行錯誤をしなければならないということが驚きでした。また、実際に授業をしてみると予想していなかった反応が返ってきたりするので、対応が難しかったです。一方で、授業を通して伝えたかった「SDGsは完璧なものではない」という観点を受講生の皆さんに伝えられたことは達成感があり、とても良かったです。(黒瀬淳平) (2)目標4(教育)を中心に扱う授業「隠された格差〜『誰一人取り残さない』を考える〜」 高校生の、学びたいというまっすぐな思いに心動かされました。授業中は積極的に発言してくれて本当に嬉しかったです。グループワークではそれぞれ興味分野や問題意識は違えど、お互いをリスペクトしあい、他のメンバーの意見から自分の考えを深めようとする姿勢から私自身が多くの刺激をいただきました。 初めて授業設計を行ってみて、その難しさ・奥深さを知り、これまで自分が受けてきた無数の「授業」が、どれほどの労力と愛情をこめてつくられてきたのかについて考える機会になりました。SDGsに関しても、各目標のつながり、その中での目標4の意義など、これまであまり触れてこなかった多くのことを学ぶことができました。(辻美波) 高校生の皆さんが、グループ活動でお互いに活発に学び合う姿が印象的でした。さまざまな地域・高校から参加してくださっていることによって、私たちからだけでなく、受講生どうしからも新しい考え方や気づきを多く得られていたと思います。また自分自身も、高校生の皆さんからそういったものを得ることができ、大変勉強になりました。 授業を設計する時は、受講生に何を伝え何を学んでほしいのか、それをどう表現するのかを考え続け、実際に授業をしている際は、受講生がどのような反応をしているか、それに私たちはどう対応しどう伝えるかを考え続けていました。終えてみると、授業の中にコミュニケーションがあるというより、授業の設計から実施まで全体が一つのコミュニケーションだったと感じ、SDGsや授業作りに加えてたくさんの学びを得られました。そしてなにより、とても楽しかったです。(山本佳明) 文責:アクティブラーニング部門 伊勢坊 綾

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教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 kals[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp