AL NEWSLETTER Vol.10, No.4(2025年3月発行)

ワークショップ 第5回東大生がつくるSDGsの授業(2025年3月23日開催)

カテゴリー: News, イベント

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構EX部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを2020年度より開催しております。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業ですので、是非ご参加ください。 

※チラシのPDFはこちら

日時

2025年3月23日(日)13:00-16:00

場所

東京大学駒場Iキャンパス 17号館2階KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)
駒場Iキャンパスへのアクセス・キャンパスマップ:https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/visitors/maps-directions/index.html
※赤門がある本郷キャンパスでの開催ではございませんのでご注意ください。

対象・定員

高校生(定員30名)
※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

12:30開場 ※12:50までに会場にお越しください。
13:00-13:30 駒場キャンパスツアー 
13:30-14:00 趣旨説明(中澤明子 東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授) 
14:00-14:50 授業「さまざまな立場で考えるSDGs」(中山昊 教養学部1年) 
14:50-15:00 休憩
15:00-15:40 ミニレクチャ(中村長史 東京大学大学院総合文化研究科 特任講師) 
15:40-16:00 まとめ(中村長史) 

お申込み

以下のフォームより必要事項をご記入の上、ご登録ください。
https://forms.gle/PBTHge6gGfFaNn5e7

申込締切

2025年3月16日(日)23:59 3月20日(木)23:59 ※締切延長しました!

連絡・注意事項

  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングの試行錯誤〜つくって学ぶ授業を事例にして考える」(2025年3月19日開催)

カテゴリー: News, イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施をテーマとした「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。これまで、アクティブラーニングの授業デザインの方法や、生成AIの活用などをテーマにワークショップを実施し、東京大学の教員を対象にアクティブラーニングに関する知見を伝えてきました。 

また、授業を開講し、アクティブラーニングの授業モデルを開発してきました。その成果の一つである「つくって学ぶアクティブラーニング」をまとめ、このたび書籍として出版する運びとなりました。 

今回の駒場アクティブラーニングワークショップでは、書籍の出版を記念し、内容をより深めるワークショップを開催します。特に、アクティブラーニングを実践する際の試行錯誤に焦点を当て、「どのような工夫をしているか」、「どのような困難があり、それにどのように対処しているか」について情報提供を行います。ワークショップでは、書籍の執筆者による実践例の紹介に加え、フロアとのディスカッション、参加者自身の授業実践について考えるワークや意見交換を行います。 

今回は、東京大学の教員に限らず、他大学や小・中・高等学校に所属する教員の皆様、さらには教育関係者の皆様にもご参加いただけるワークショップです。ぜひ奮ってご参加ください。

チラシPDFはこちら

日時

2025年3月19日(水)13:30〜16:30 

場所

東京大学 駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS
駒場Iキャンパスへのアクセス・キャンパスマップ:https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/visitors/maps-directions/index.html

対象

大学教員、小・中・高等学校教員、教育関係者

定員

30名
※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

13:30 開会挨拶・趣旨説明
13:45 自己紹介・導入ワーク
14:00 実践事例紹介
※実践事例紹介者:重田勝介(北海道大学・教授)、標葉靖子(実践女子大学・准教授)、福山佑樹(関西学院大学・教授)、中村長史(東京大学・特任講師)、中澤明子(東京大学・特任准教授)
14:50 休憩 
15:00 グループディスカッション
16:10 ふり返りワーク
16:25 閉会の挨拶 
16:30 終了 
(16:40 情報交換会:参加者・登壇者が互いの授業実践や工夫・悩みなどについて自由に語らう情報交換会を行います。)

司会・進行: 中澤明子(東京大学・特任准教授)、中村長史(東京大学・特任講師)
※参加者数などによりプログラムに変更が生じる可能性がございます。

申込方法

以下のフォームより必要事項をご記入の上、ご登録ください。
https://forms.gle/uQx9AbwSpBqZnLTR8

申込締切

連絡・注意事項

  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

AL NEWSLETTER Vol.10, No.3(2024年12月発行)

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業での生成AI活用の試行錯誤と学習活動のデザイン」(2024年9月13日)開催報告

カテゴリー: News, イベント

教養教育高度化機構EX部門では、東大で授業を担当されている先生方を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「授業での生成AI活用の試行錯誤と学習活動のデザイン」を開催しました。当日は、14名の方が参加されました。その様子をご報告します。

目的

2023年度の開催では、授業での学習を深める生成AIの活用について検討・議論を行いました。今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げました。授業での生成AIの活用について、講師自身の取り組み、とくに昨年度の実践を踏まえて改善した今年度の実践、学習活動をデザインする際の注意点・課題を共有し、生成AIを活用する際の学習活動や教材(ワークシートなど)のデザインについて参加者考えるワークを行い、参加者どうしで共有・議論することを目的としました。

内容

ワークショップの趣旨説明を行った後、自己紹介と導入ワークを行いました。導入ワークでは、参加者が、授業をする時に大切にしているポイントを生成AIに尋ね、得られた回答について自分考えと合致するもの、そうでないものを考えてもらい、自己紹介と合わせてグループで共有しました。

その後、ミニレクチャとしてアクティブラーニングでの生成AIの活用の方針と昨年度からの実践での試行錯誤を講師の中澤が説明しました。具体的には、生成AIを使用した学習活動を行うためのワークシートの変更と今年度の実践での学生の反応や講師の感想を共有しました。休憩を挟んで後半は、学習活動と教材をデザインする際のポイントを確認した上で、参加者自身が自分の授業の1コマもしくは課題を想定して、どのような目的で生成AIを使い、どのようなワークやワークシートを用意するのかを考えました。その後、参加者は考えた内容をグループで共有し、互いにコメントし合いました。最後にワークショップのふり返りとして、参加者が新たに出てきた疑問・知りたいことをグループで共有し、ワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケート(13名が回答)では、どのような場面で活用しようと考えているかについて「次学期の授業で活かしたい」、「授業で叩き台のアイディアを出すときに活用したい」など、具体的な記述が見られました。一方、後半のワークをより充実することや、3時間というワークショップの所要時間が長く感じたといった改善点も挙げられました。今後も引き続き先生方に有用な情報を提供していければと思います。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください  

EXセミナーの開催(11月20日、12月4日)

教養教育高度化機構EX部門では、11月20日・12月4日に東京大学の教職員・学生を対象としたEXセミナーを開催いたします。

以下のとおり、AIの教育利用について2名の講師の方にお話しいただきます。
ご都合つく方はぜひご参加いただけますと幸いです。

なお、本セミナーは、全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「AI社会を生き抜くための教育・学習を考える」第7回・第8回授業を学内に限り聴講可能とするものです。質疑応答などにおいては履修生優先となる旨を予めご了承ください。

■第1回EXセミナー(11月20日(水)5限 17:05-18:35)
講師:讃井康智 氏(ライフイズテック株式会社 取締役 CEAIO)
タイトル:生成AIの教育利用の現状と課題〜AIネイティブ世代の可能性を引き出す教育とは〜
場所:駒場Iキャンパス17号館 2階 KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)
お申込み:https://forms.gle/ir9MeutkW7YLs3BW7

■第2回EXセミナー(12月4日(水)5限 17:05-18:35)
講師:田中冴 氏(東京大学大学院 学際情報学府 博士課程1年)
タイトル:人間の学びの道具としてAIを利用するー学習支援システム開発研究の視点から
場所:駒場Iキャンパス17号館 2階 KALS(駒場アクティブラーニングスタジオ)
お申込み:https://forms.gle/kjqhPnivz52CsCdW9

■主催・お問い合わせ
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門
担当:中澤(dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp [at]を@に変更してお送りください)


2024年度Sセメスター 授業「オープン教材をつくろう!」で作成した学生の教材を公開しました

カテゴリー: News

2024年度Sセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材をつくろう!」で学生が作成した、オープンエデュケーションについて学べる教材を公開しました。

この授業では、学生は3つのグループ分かれてオープンエデュケーションやオープン教材(Open Educational Resources)に関するスライドもしくはテキスト教材を作成しました。そのうち、ウェブサイトでの公開を希望するグループの教材を公開しました。

以下よりご覧ください。

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(1)(2024年度 Sセメスター)

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(2)(2024年度 Sセメスター)

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(2)(2024年度 Sセメスター)

はじめに

2024年度Sセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材をつくろう!」で学生が作成した教材の公開第2弾です。

授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

あなたにピッタリのオープンコンテンツを見つけよう!

学びの宝箱グループの安部正健さん、A. S.さん、Z. H.さん、山本笙太さんが作成した教材「あなたにピッタリのオープンコンテンツを見つけよう!」です。

オープン教材(Open Educational Resources)は、一般的にはアクセスできるだけでなく再編集なども可能なものを指します。しかし、この教材では、「アクセスできること」に焦点をあてています。再編集は許可されていなくても、「誰もがアクセスして学べる教材」は多数あります。それらに焦点を当てています。実際にそういった教材を見つけられることを目標に挙げています。作成者である学生の感想を紹介します。

教材をつくるのはこの授業が初めてでした。私は教える内容を学ぶところから始めました。そして、教材づくりそれ自体の手法も学びました。 教材づくりを通じて感じたのは、教材をつくることで対象の自分の理解も深まるということです。やはり、他者に教えられる状態になるためには、いろいろな角度から対象をきちんと理解する必要がありました。また学習者の疑問点を想定してわからない箇所が無いように工夫したり、誤解が無いように言葉をひとつひとつ吟味していったり、レイアウトやデザインを最後まで調整をしていく経験は骨が折れるものでしたが、逆に言うと今まで使ってきたたくさんの教材は、製作者の試行錯誤の結晶だということがわかりました。 最後に、この授業ではグループで教材を制作しました。「学びの宝箱」のメンバー全員が協力して本教材を完成させることができました。メンバーにも、先生にも恵まれました。ありがとうございました。(安部正健)

この授業をきっかけにOCWに興味を持ち、Courseraを受講するプログラムに参加することにしました。また、学習目標の設定を動作で行うことやガニェの9教授事象について学べたことも大変良かったです。SDGsについての出前授業を高校生向けに行う機会があり、授業設計の際に構造が見えるようになりました。 これからも、本授業で得た学びをたくさん活かしていきたいと思います!(A.S)

「オープン・エデュケーション」について、学習者としてのみならず教材作成者として関わってみて、5Rに代表される足枷にさえ感じられたオープン教材であるための諸要素が実は重要な役割を占めていることを痛感しました。また、一般的に役立てられる教材作成や教授法の知見も学べて、とても有意義な授業でした。ありがとうございました。(Z.H.)

学校教育に留まらない教育の可能性が広がり求められてきてもいる中で、オープンエデュケーションの発想を学んだことは有意義でした。教材作成の理論を知ることで、今まで使ってきた教材に施されていた工夫にも気がつくようになり楽しかったです。(山本笙太)

教材は以下よりご覧ください。

あなたにピッタリのオープンコンテンツを見つけよう! by 安部正健,A. S.,Z. H.,山本笙太 is licensed under CC BY-NC 4.0

オープン教材をつくろう!:学生による教材の公開(1)(2024年度 Sセメスター)

はじめに

2024年度Sセメスターも全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材をつくろう!」を開講しました。

授業では、全部で3グループがオープンエデュケーションに関する教材を作成しました。そのうち、公開を希望するグループの教材を公開することになりました。

7月中旬に授業が終了した後、教材の著作権や内容について授業担当教員等で確認し、必要な場合は学生たちが修正しました。これらを経て、最終版の教材を公開します。 授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

A Crash Guide to Moocs: Unlocking the World of Open Education

Louis HORIGOMEさん、Kaho SHIMIZUさんが作成した教材”A Crash Guide to Moocs: Unlocking the World of Open Education”です。

これまで公開してきた教材は、すべて日本語で作成されたものでしたが、この教材はなんと全編英語です!!作成したお二人の強みを活かした仕上がりになっています。テキスト教材でデザインにも注意を払っていますし、さまざまな情報をコンパクトにまとめてわかりやすいものになっています。なお、教材の表紙には、グループ名”H₂S”が記載されています。なぜこのグループ名にしたのかの理由も興味深いのですが、少し切ない話にもなるので割愛します。作成者である学生の感想を紹介します。

I’ve been using leaning materials without thinking too much about how they were made. Troughout this course though, by creating materials myself and learning the essentials such as the 9 steps of instruction, I realised that it completely changed how I see learning materials. I have a much better understanding of how I should be using them and what the different sections are intend for.
The following is the final version of our work. If you are familiar with the essentials of creating teaching materials, it might help to try to find them in our work, to further understand our intentions. I really hope you’ll enjoy! (Louis HORIGOME)

This was my first experience creating educational materials, and I aimed to make them enjoyable and easy to read, so that learning would be a pleasant experience. Although this material was originally created in Japan, I took on the challenge of translating it into English with the hope of reaching a wider audience. I sincerely hope that these materials contribute to a more fulfilling learning environment and happier study experiences for many people. (Kaho SHIMIZU)

教材は以下よりご覧ください。

A Crash Guide To Moocs: Unlocking the World of Open Education by Louis HORIGOME and Kaho SHIMIZU is licensed under CC BY-NC-ND 4.0

大阪大学・関西大学を訪問しました

EX部門では、生成AIやメタバース・VRといった先端技術の教育活用について検討しています。その参考とするため、今年度は取り組みを行っている大学を訪問し、情報収集・意見交換を行っています。またEX部門に関連する取り組みについても併せて情報収集を行っています。

9月11日に、大阪大学全学教育推進機構、関西大学教育推進部、関西大学国際部を訪問しました。

大阪大学全学教育推進機構では、生成AIの教育活用に関する大阪大学の取り組みについてお話を伺いました。また、EX部門に関連する取り組みとして、初年次少人数セミナー型導入科目「学問への扉」についてもお話を伺いました。関西大学教育推進部では、ラーニング・コモンズやライティング・ラボの取り組みについての意見交換・見学を行いました。関西大学国際部では、教育DXの取り組みやメタバース・VRを活用した教育実践についてお話を伺いました。

大阪大学の先生方との会議
関西大学教育推進部への訪問
関西大学国際部への訪問

今回の訪問では、共通する課題・困難があることがわかったことに加え、EX部門の今後の取り組みについて参考となる情報を得られました。訪問先の先生方につきましては、お忙しい中、ご対応くださり誠にありがとうございました。

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業での生成AI活用の試行錯誤と学習活動のデザイン」(2024年9月13日開催)

カテゴリー: News, イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。

2023年度の開催では、授業での学習を深める生成AIの活用について検討・議論を行いました。今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げます。

ワークショップでは、授業での生成AIの活用について、講師自身の取り組み、とくに昨年度の実践を踏まえて改善した今年度の実践、学習活動をデザインする際の注意点・課題を共有します。さらに、生成AIを活用する際の学習活動や教材(ワークシートなど)のデザインについて参加者考えるワークを行い、参加者どうしで共有・議論します。 

昨年度のワークショップに参加された方も、今回初めての方もぜひご参加ください。

チラシPDFはこちら

※本ワークショップでは、アクティブラーニング手法については紹介しません。手法などについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2024年9月13日(金)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS

会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付
  • 13:30〜13:45 開催挨拶、趣旨説明
  • 13:45〜14:00 自己紹介、導入ワーク
  • 14:00〜14:45 ミニレクチャ、ディスカッション
  • 14:45〜14:55 休憩
  • 14:55〜16:10 個人ワーク、グループディスカッション
  • 16:10〜16:25 ワークショップのまとめ、ふり返り
  • 16:25〜16:30 閉会の挨拶

司会・進行:中澤明子(EX部門 特任准教授)、中村長史(EX部門 特任講師)

※参加者数などによりプログラムに変更が生じる可能性がございます。

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。
https://forms.gle/JqcLBRdZQqmgWVK8A

申込締切

2024年9月1日(日)23:59

連絡・注意事項

  • 生成AIを使ったワークを行います。ChatGPT、Copilot、Geminiなどいずれかのテキスト生成AIを使えるようご準備ください(例:ChatGPTのアカウントを作っておく、Edgeをインストールしておく等)。
  • 当日はパソコンを使いますので、ご自身でお持ちいただくPCか、会場の貸出しPCをお使いください。貸出しPCを使う場合は、ECCSクラウドメールにログインできるようにしておいてください
  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村)
dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する:事例の共有と検討」(2024年3月19日)開催報告

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、東大で授業を担当されている先生方を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する:事例の共有と検討」を開催しました。当日は、19名の方が参加されました。その様子をご報告します。

目的

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。昨年9月には、駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催しました。

今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げました。活用事例の共有や、アクティブラーニングの授業デザインや効果的な実施のポイントを踏まえ、参加者自身が生成AIの活用を検討し、ほかの参加者との意見交換を交えながら議論することを目的としました。

内容

ワークショップの趣旨説明を行った後、自己紹介と導入ワークを行いました。導入のワークでは、差参加者はワークショップへの参加動機を生成AIに尋ね、得られた回答に賛成/反対なのかや感想を考えてもらい、グループで共有しました。その後、ミニレクチャとしてアクティブラーニングの定義やアクティブラーニングで生成AIを活用する際のポイント、活用事例を講師の中澤が説明しました。説明の最後に導入ワークは紹介した活用事例の活動であったことを述べ、参加者は活用事例の学習活動を体験して感じた良かった点や課題をグループで議論しました。

ディスカッション後は、中村長史特任講師、岡田晃枝特任准教授から、授業での活用事例を紹介していただきました。岡田先生は初年次ゼミナール文科での活用、中村先生は全学自由研究ゼミナールでの活用を説明しました。

休憩を挟んだ後半は、授業デザインワークを行いました。授業デザインの流れを確認したうえで、参加者自身の授業目的・学習目標を思い出してもらい、授業をアクティブにする方法やアクティブにするために生成AIを使えそうか、どのように使うかを参加者が考えました。個人で考えた後、参加者は考えた内容をグループで共有しました。

最後に、教える方法は学習目標に到達するための手段であり、生成AIも手段に過ぎないことや、生成AIの利用が始まっているからこそ「人間ChatGPT」、つまり他者に問うことや対話することの意義が見直されることを説明しました。そして、ワークショップのふり返りとして新たに出てきた疑問・知りたいことを付箋に書き出してグループで共有し、ワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケート(17名が回答)では、「本ワークショップで学んだことを自分の授業準備・実施で活用できると思う」という質問に対して、まったく当てはまらない〜かなり当てはまるの5件法で尋ねたところ、17名中11名がかなり当てはまる、6名がまあまあ当てはまると回答しました。 一方、ワークショップで改善したほうがよい点については、時間配分や、具体的な生成AIの活用に関するワークの要望が挙げられました。今後もワークショップの開催やウェブサイトなどを通じて、アクティブラーニング、生成AIの活用について先生方に有用な情報を提供していければと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください  

「オープン教材」をつくろう!:学生による教材の公開(2)(2023年度Aセメスター)

はじめに

2023年度Aセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習『「オープン教材」をつくろう!』で学生が作成した教材の公開第2弾です。

授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

「オープン教育・教材」について知ろう!

Y.Aさん、蔵田渉さん、T.Tさんが作成した教材『「オープン教育・教材」について知ろう!』です。

教材では、自作のペンギンのイラストがガイド役を務めます。教材では、事前・事後テストを含みますが、この教材では、教材中にそれが埋め込まれています。たとえば、8ページ目下にある黄色字の「①オープンとはどういう状態を指すのでしょうか?」などです。教材の作成者である学生の感想を紹介します。

教材1つをとっても、ライセンスやガニェの9教授事象など考慮するべきことが想像以上に多く、物を作ることの難しさを実感した。だが、同時に自分たちで考えた物が出来上がってゆくことへの期待感は何にも代えがたく、物作りの面白さも難しさ以上に体験することができた。
この教材が、自分で興味のあることを調べるという活動への第一歩になれば幸いです。(Y.Aさん)

これまでの人生でたくさん見てきた教材を、決められたテーマで作るという活動は自分にとって新鮮でした。視覚的な工夫や情報量、項目の順番など、学習目標を達成出来る教材を作るには考えることがたくさんありましたが、それをチームメイトと話し合って進めていくのが楽しかったです!(蔵田渉さん)

過去に外国語の独学のためにオープン教材を用いたことがあったので、オープン教材に興味を持ち、教材作成にチャレンジしました。 作成に当たり「自分ならこの教材上の情報をどうインプットするだろうか」という視点を常に持ち、細部に気を遣うのは大変ではありましたが、とても良い経験になりました。(T.Tさん)

教材は以下よりご覧ください。

「オープン教育・教材」について知ろう! by Y.A, 蔵田渉, T.T is licensed under CC BY-NC-ND 4.0

授業「オープン教材をつくろう!」で作成した学生の教材を公開しました

カテゴリー: News

2023年度Aセメスターに開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「オープン教材」をつくろう!で学生が作成した、オープンエデュケーションについて学べる教材を公開しました。

この授業では、学生は5つのグループ分かれてオープンエデュケーションやオープン教材(Open Educational Resources)に関するスライドもしくはテキスト教材を作成しました。そのうち、ウェブサイトでの公開を希望するグループの教材を公開しました。

以下よりご覧ください。

「オープン教材」をつくろう!:学生による教材の公開(1)(2023年度Aセメスター)

はじめに

2023年度Aセメスターも全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習『「オープン教材」をつくろう!』を開講しました。

授業では、全部で5グループがオープンエデュケーションに関する教材を作成しました。そのうち、公開を希望するグループの教材を公開することになりました。

1月中旬に授業が終了した後、教材の著作権や内容について授業担当教員等で確認し、必要な場合は学生たちが修正しました。これらを経て、最終版の教材を公開します。 授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

MOOCとOCWって何だろう?〜オープンエデュケーション教材の強みと課題〜

佐野真途さん、Y.M.さん、金井貴広さんが作成した教材「MOOCとOCWって何だろう?〜オープンエデュケーション教材の強みと課題〜」です。

授業では自分たちのグループ名を考えてもらったのですが、このグループは「だんご3兄弟」という名前でした。それを受けて、教材では串団子のイラスト(自作)がガイド役として登場し、学習を伴走します。作成者である学生の感想を紹介します。

教材を作るということは一見とても簡単に思えますが、構成は勿論のこと、色や文字の大きさひとつで学習者に与える影響が大きく変わる、大変難しいものだと知ることが出来ました。
そういった中でも構成や伝え方等をできる限り工夫しました。(Y. M.さん)

教材の作り方について丁寧なレクチャーがあったので、教材作成を円滑に進めることができました。また、他の受講生と頻繁に意見交換を行い、教材の質を高めることができました。私たちが作成した教材では、MOOC、OCWという取り組みについて、事前知識がない人でも関心を持って学べるように工夫されています。是非ご活用ください。(佐野真途さん)

教材は以下よりご覧ください。

MOOCとOCWって何だろう? 〜オープンエデュケーション教材の強みと課題〜 by 佐野真途, Y.M., 金井貴広 is licensed under CC BY-NC-ND 4.0

ほかにも公開を準備しているグループがありますので、順次公開いたします。

AL NEWSLETTER Vol.9, No.4(2024年3月発行)

AL NEWSLETTER Vol.9, No.3(2023年12月発行)

カテゴリー: ニュースレター

AL NEWSLETTER Vol.9, No.2(2023年9月発行)

カテゴリー: ニュースレター

AL NEWSLETTER Vol.9, No.1(2023年6月発行)

カテゴリー: ニュースレター

EX部門ウェブサイトを公開しました

カテゴリー: News

EX部門ウェブサイトを公開しました。

EX部門の活動を知りたい場合は「活動を知る」、開講授業を知りたい場合は「授業で学ぶ」、授業の方法や実践などを知りたい場合は「授業を実践する」をご覧ください。

2022年度以前のAL NEWSLETTER

カテゴリー: ニュースレター

教養学部の教員を対象にした調査を実施しています

生成AI(ChatGPT, Bing AI, Bardなど)の利用が様々な場面で行われています。教養教育高度化機構Educational Transformation (EX)部門、GFD (グローバル・ファカルティ・ディベロップメント・イニシアチブ)では、教育・研究活動で生成AIを利用する教員や学生を対象とした教育・学習支援の在り方を検討しています。 

そこで、教養学部所属あるいは教養学部の授業を担当されている先生方を対象に生成AIへの認識や利用状況の実態などを2024年2月上旬からウェブフォームを用いて調査しています。調査で得られた回答を教育・学習支援の検討に役立てたいと考えています。

調査結果については、本ウェブサイトなどで公表する予定です。

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する:事例の共有と検討」(2024年3月19日開催)

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。昨年9月には、駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催しました。

今回の駒場アクティブラーニングワークショップでも、引き続き生成AIの活用を取り上げます。ワークショップでは、2名の教員が活用事例を紹介します。また、アクティブラーニングの授業デザインや効果的な実施のポイントを踏まえ、参加者自身が生成AIの活用を検討し、ほかの参加者との意見交換を交えながら議論します。

昨年9月に参加された方も、今回初めての方もぜひご参加ください。

チラシPDFはこちら

※本ワークショップでは、アクティブラーニング手法については紹介しません。手法などについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2024年3月19日(火)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS 会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付
  • 13:30〜13:45 開会挨拶、趣旨説明
  • 13:45〜14:00 参加者どうしの自己紹介
  • 14:00〜14:20 ミニレクチャ
  • 14:20〜15:00 事例報告:岡田晃枝(EX部門 特任准教授)、中村長史(EX部門 特任講師)
  • 15:00〜15:10 休憩
  • 15:10〜16:10 授業デザインワーク
  • 16:10〜16:30 まとめ、閉会の挨拶
司会・進行:中澤明子(EX部門 特任准教授) ※参加者数などにより変更が生じる可能性がございます

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/6bbTAz5t3Lb47t4WA

申込締切

2024年3月10日(日)23:59締切

連絡・注意事項

  • 生成AIを使ったワークを行います。ChatGPT、Bing AI、Bardなどいずれかのテキスト生成AIを使えるようご準備ください(例:ChatGPTのアカウントを作っておく、Edgeをインストールしておく等)。
  • 当日はパソコンを使いますので、ご自身でお持ちいただくPCか会場の貸出しPCをお使いください。貸出しPCを使う場合は、ECCSクラウドメールにログインできるようにしておいてください。
  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

ツール:アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート

本シートは、授業デザインの考え方に基づいたポイントや、アクティブラーニングを導入する際のポイントについて、授業デザイン前・中・後、授業後のタイミングにわけて、質問に答える形式あるいはチェックリストの形式で確認できるようにいたしました。

PDFの形式ですが、入力できるように設定しており、印刷物だけでなくパソコン上でも使用いただける仕様になっています。

授業設計・運営の参考にしていただければと思います。

冊子:オンラインでもアクティブラーニング

カテゴリー: 書籍

オンラインでもアクティブラーニング

2020年度から2年間のオンライン授業でのアクティブラーニングについて、ウェブサイトやニュースレター、ワークショップなどで発信してきた内容を中心にまとめたものです。

第一部では、授業形態を問わず授業デザインの基本的な考え方や授業をアクティブにする授業デザイン、オンライン授業をアクティブにするポイント、オンライン授業でのTA(Teaching Assistant)を掲載しています。

第二部では、アクティブラーニング手法について、実際にオンライン授業で行う際の手順や注意点、実践した感想を掲載しています。

冊子:+15 minutes 実践編

カテゴリー: 書籍

+15 minutes 実践編

アクティブラーニング手法の具体的な実践例を紹介しています。

冊子:+15 minutes

カテゴリー: 書籍

アクティブラーニングの手法の解説および実践紹介の冊子をダウンロードいただけます。

+15 minutes

アクティブラーニング手法を紹介しています。

初版

第2版

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」(2023年9月8日)開催報告

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、東大で授業を担当されている先生方を対象に駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」を開催しました。当日は、14名の方が参加されました。その様子をご報告します。

目的

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。 そこで、今回の「駒場アクティブラーニングワークショップ」では「生成AI」を取り上げ、学習を深める生成AIの活用を検討することを目的としました。

内容

ワークショップの趣旨説明や参加者どうしの自己紹介を行った後、生成AIの概要(定義、生成AIサービスの特徴)と文部科学省や東京大学での対応方針のミニレクチャーを行いました。また参加者が実際に生成AIを操作するワークに取り組み、生成AIサービスごとの特徴を把握したり、得られた回答例の共有を行いました。 次に、一般的な授業デザインの方法のミニレクチャーを踏まえて、参加者が自身の授業について学習目標・評価方法・学習内容を検討しました。休憩を挟んだ後、アクティブラーニングでの効果的な生成AI活用のポイントと、生成AI活用事例のミニレクチャーを行いました。活用事例では、4つの活用方法が紹介されました。 その後、それまでのレクチャー内容を踏まえて、先ほど考えた自身の授業をアクティブにする方法と生成AIの活用を参加者が検討しました。また検討した内容をグループで共有し、互いにコメントし合いました。 最後に、ワークショップのふり返りとして、ワークショップを通じて新しく知ったことを書き出して共有してワークショップを終えました。 ふり返りワークの様子

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケートでは、「本ワークショップで学んだことを自分の授業準備・実施で活用できると思う」という質問に対して、まったく当てはまらない〜かなり当てはまるの5件法で尋ねたところ、14名中10名がかなり当てはまる、4名がまあまあ当てはまると回答しました。またどのように活用しようと考えているかについては、「授業で時間がなくて説明できないことを調べさせ小レポートの提出機会を設け、リテラシーと深い理解の両方を高める」、「ディスカッションのポイントを生成A Iを使って出してみるなど、学生が授業テーマについて深めく考えるためのツールとして使いたいと思います」といった具体的な内容が書かれていました。 一方、「本ワークショップによって、今後の授業への不安が軽減された」については、かなり当てはまる3名、まあまあ当てはまる9名、どちらとも言えない2名の回答でした。アクティブラーニングや生成AIの活用に関する不安はすべて解消されたわけではないと思いますし、今後もワークショップの開催やウェブサイトなどを通じて、アクティブラーニング、生成AIの活用について先生方に有用な情報を提供していければと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください  

駒場アクティブラーニングワークショップ「ジグソー法を授業で活用する」(2023年3月17日)開催報告

カテゴリー: イベント

2023年3月17日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、駒場アクティブラーニングワークショップ「ジグソー法を授業で活用する」を対面で開催しました。当日は 10 名の方が参加されました。当日の様子を報告します。

目的

本ワークショッフは、アクティブラーニングの手法の一つとしてよく知られるジグソー法を取り上げ、ジグソー法の基本的なやり方や効果、アクティブラーニング部門が開講した授業でのジグソー法導入の実例に関する情報提供とご自身の授業での活用について検討することを目的としました。

内容

アクティブラーニングの授業モデル開発として部門開講授業で検討してきたジグソー法の手順に則っ て、ワークショップそのものもジグソー法を用いて実施しました。具体的には、
  1. 個人での問いの思考
  2. 資料の読解
  3. エキスパート活動(資料ごとのグループで内容の確認、説明内容の検討)
  4. ジグソー活動(担当資料の相互説明、問いに関する議論)
  5. 個人での問いの思考
という手順で休憩やミニレクチャを挟みつつワークショップを進めました。 ワークショップの様子
資料は、ジグソー法の背景、バリエーション、効 果・メリットの三種類を用意しました。「どのような目的・場面でジグソー法を活用できそうか」という問いについて、個人での問いの思考(手順1, 5)、ジグソー活動でのグループでの議論(手順4)を行いました。ジグソー活動での議論内容を全体で共有した後、ミニレクチャではジグソー法の活用の実例として、部門開講授業の事例を紹介しました。その後、個人での問いの思考(手順5)では、参加者自身の授業について、どのような目的・場面でジグソー法を活用できそうかを思考してもらい、その内容をグループで共有しました。最後に、ワークショップのふり返りとしてジグソー法について新しく知ったことを書き出してもらいました。
ふり返りワークの様子

当日の様子と参加者の反応

ワークショップ後のアンケート(5名が回答)の結果を簡単にご紹介します。 「今後の授業準備・実施に役立つものでしたか」、「本ワークショップで扱った内容をご自身の授業で活用できると思いますか」については、とてもそう思うが3 名、そう思う1 名、どちらとも言えない 1 名という回答でした。 「本ワークショップへの参加を周りの教員に勧めた いと思いますか」に対しては、とてもそう思う 3 名、そう思う 2 名でした。全体的に好評価を得たと考えられるものの、「本ワークショップは、ご自身の授業準備・実施に関連していると思いましたか」 という質問について、そう思わないという回答が1 名ありました。ご自身の授業目的を踏まえた検討の結果、このように感じられたのかもしれません。 ジグソー法は、分野を問わず活用可能な手法です。また、学生による発表をジグソーグループの枠組み(異なるグループのメンバーから成るグループで発表)で行うこともできます。授業目的や学習目標に応じて授業手法の選択をすることは当然ではありますけれども、その授業手法の選択肢としてジグソー法を加えてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

教養教育高度化機構EX部門(旧アクティブラーニング部門) アクティブラーニング普及促進プロジェクト dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください    

駒場アクティブラーニングワークショップ「アクティブラーニングで生成AIを活用する」(2023年9月8日開催)

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構EX部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。

東京大学では「AIツールの授業における利用について」が公表されており、授業における生成AI利用の注意点がまとめられています。生成AIの授業での利活用は、こうした方針を踏まえながら行うことが求められます。  そこで、今回の「駒場アクティブラーニングワークショップ」では「生成AI」を取り上げます。授業での生成AI活用は、学生の学習を深めるために使うことが大切です。本ワークショップでは、学習を深める生成AIの活用を検討するため、まずアクティブラーニング型授業をデザインする際のポイントと、アクティブラーニングでの生成AIの活用事例を紹介します。そして、アクティブラーニングの観点からご自身の授業を検討し、授業目的・学習目標に適した生成AIの活用について、ほかの参加者との意見交換を交えながら議論します。

チラシPDFはこちら

※本ワークショップでは、アクティブラーニング手法については紹介しません。手法などについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2023年9月8日(金)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS 会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付
  • 13:30〜13:50 開会挨拶、趣旨説明
  • 13:50〜14:05 参加者どうしの自己紹介
  • 14:05〜14:40 ミニレクチャ、ワーク
  • 14:40〜14:50 休憩
  • 14:50〜16:10 ミニレクチャ、ワーク
  • 16:10〜16:30 まとめ、閉会の挨拶
※参加者数などにより変更が生じる可能性がございます

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/iShdH4vmsL28Bds17

申込締切

2023年8月27日(月)23:59締切

連絡・注意事項

  • 生成AIを使ったワークを行います。ChatGPT、Bing AI、Bardなどいずれかのテキスト生成AIを使えるようご準備ください(例:ChatGPTのアカウントを作っておく、Edgeをインストールしておく等)。
  • 当日はパソコンを使いますので、ご自身でお持ちいただくPCか会場の貸出しPCをお使いください。貸出しPCを使う場合は、ECCSクラウドメールにログインできるようにしておいてください。
  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影いたします。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構 EX部門アクティブラーニングチーム(担当:中澤・中村) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 EX部門

「オープン教材」をつくろう!:学生による教材の公開(2022年度Aセメスター)

はじめに

2021年度に引き続いて、2022年度Aセメスターも開講しました。 授業では、全部で6グループ(うち2グループは一人ずつ)がオープンエデュケーションに関する教材を作成しました。そのうち、公開を希望するグループの教材をここで公開することになりました。 1月中旬に授業が終了した後、教材の著作権や内容について授業担当教員等で確認し、必要な場合は学生たちが修正しました。これらを経て、最終版の教材を公開します。 授業での講義や議論、調べた内容に基づいて、学生なりにオープンエデュケーションについてまとめた教材です。至らぬ点もあるかと思いますが、ぜひご覧いただき、またご自身のオープンエデュケーションに関する学習に役立てていただけますと幸いです。

教材① Open Education for Everyone

中村莉久さんが作成した教材『Open Education for Everyone 〜「誰もが」学ぶ新しい教育』です。オープンエデュケーションの定義や事例といった基本的な内容がまとめられています。 中村さんからは、授業や教材づくりについて次の感想が届いています。
オープンエデュケーションという取り組みについて時に話し合いなどを介して、様々な視点から学ぶことができた。また教材づくりでは、どうまとめるかを考えながら知識の伝え方を学ぶことができた。
教材は下記リンクよりご覧ください。 教材はこちらから。

教材② それOERっぽくね?

Yさん、AGさん、福井雄真さん、たつきさんという4人によるグループが作成した教材『それOERっぽくね?』です。Open Educational Resourcesの定義を踏まえた上で、自分たちなりに観点を設けてウェブ上のサービスを評価するという教材です。 グループの皆さんからは、次の感想が届いています。
法的概念の理解が必要だと感じた。理解の一助になれば幸いです。(Y)
アクティブラーニングの取り入れられたこの授業では、一般的な教室とは空間から異なる場所で、他の学生との意見交換も頻繁に行いながら学習が進み、楽しんで受講できました。作成した教材は短いスライドで簡潔にまとめることが意識されているので、OERを初めて学ぶ方に役立てていただければと思います。(AG)
OERについて予備知識の無いところから受講を開始し、チームの方々や他の受講者の方、そして担当頂いた先生のご助力のおかげで公開することができました。お礼申し上げます。授業を通じては、OER”的”なものは身近に既に存在している一方、OERの定義や存在意義を十分に満たすものは中々見つかりづらいという点に驚きました。学習者の皆様とも、この教材を通じて私の驚きを共有できれば幸いです。(福井雄真)
統一感のあるデザインをこころがけました。オープン教材は身近なところに転がっているが、その度合いはさまざまであることがわかりました。(たつき)
教材は下記リンクよりご覧ください。 教材はこちらから。

おわりに

教材をご覧いただき、ありがとうございました。また、いかがでしたでしょうか? これらの教材は、授業で理解した内容を学生なりにまとめたものです。学術的な定義を扱いつつも、独自の視点でまとめ直しています。異なる解釈がある点や、別のまとめ方ができる点もあるかと思います。いずれの教材も、CCライセンスを明記しており、その範囲内でご利用いただけます。OER(Open Educational Resources)では、教材の改善が行われますし、それにより教育改善が促される可能性があります。ここで公開している教材についても、教材の改善や教育改善に資することができれば良いなと考えています。

お問い合わせ

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 中澤明子

駒場アクティブラーニングワークショップ「ジグソー法を授業で活用する」(2023年3月17日開催)

カテゴリー: イベント

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催しています。 今回は、アクティブラーニングの手法の一つとしてよく知られるジグソー法を取り上げ、ジグソー法の基本的なやり方や効果、アクティブラーニング部門が開講した授業でのジグソー法導入の実例に関する情報提供をした後、ご自身の授業で活用することについて検討を行います。 授業をアクティブにされたい方、ジグシー法を取り入れてみたい方、すでに導入しているけれども効果を高めたい方といった幅広い皆様にご参加いただき、次セメスターの授業準備の参考にしていただければと思います。 ※本ワークショップでは、ジグソー法に焦点をあてており、ほかの手法については紹介しません。ほかの手法やアクティブラーニングのポイントについて知りたい方は、以下の情報をご覧ください。

日時

2023年3月17日(金)13:30〜16:30

場所

駒場Iキャンパス 17号館 2階 KALS 会場へのアクセスはこちらのページよりご確認ください。 ※当日は、アルコールによる手指消毒、換気等の感染拡大予防対策を実施の上、開催いたします。なお、COVID-19の感染状況によってはオンラインでの開催に変更する可能性がございます。

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

プログラム

  • 13:00〜13:30 受付開始
  • 13:30〜13:50 開会挨拶、趣旨説明
  • 13:50〜14:00 参加者どうしの自己紹介
  • 14:00〜14:35 ジグソー法のミニレクチャ、体験
  • 14:35〜14:45 休憩
  • 14:45〜16:20 ジグソー法の体験、ミニレクチャ、授業での活用を考える
  • 16:20〜16:30 まとめ、閉会の挨拶
※参加者数などにより変更が生じる可能性がございます

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/Kq8PozGua9JwLMKw5

申込締切

3月5日(日)23:59締切

注意事項

  • 部門ウェブサイトや刊行物などでの活動報告のためワークショップの様子を撮影することがあります。参加者の表情等がわからないように撮影・使用いたしますのでご了承いただければと思います。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • ワークショップにご参加される方による録音・録画はお控えくださいますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門    

SGDsを学べる授業をつくろう(2022年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」(2022年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は、受講生は7名(2年生2名、3年生3名、4年生2名)でした。 担当教員:中澤明子・中村長史(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

概要

持続可能な開発目標(SDGs)は、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継として2015年の国連総会で採択され、17の目標が定められています。MDGsが途上国の貧困削減や社会開発に焦点を当てていたのに対し、SDGsは世界中の国々の経済・社会・環境といったより広い問題を扱うものです。その広さゆえ総花的であるという批判もある一方、多くのアクターを巻き込めるという利点も指摘されています。 この授業では、このようなSDGsについて高校生が効果的に学べるオンライン授業を設計してみることで、SDGsについての自分自身の学びを深めることを目指します。

授業の目的・目標

この授業の目的は、SDGsについて高校生が効果的に学べるオンライン授業を設計してみることで、SDGsについての自分自身の学びを深めることでした。他者に教えることそのものや、オンライン授業を設計する過程での調査や議論は、本人にとって最も身につく学びとなります。また、この授業では「効果的に学べる」ためにアクティブラーニングという手法を用いたオンライン授業を設計することを目指しました。 授業の目標は、以下の6点でした。
  1. SDGsが作成された背景について説明することができる
  2. SDGsの意義について説明することができる
  3. SDGsの課題について説明することができる
  4. SDGsの17の目標について説明することができる
  5. 学習者の学びを深める授業の方法について説明できる
  6. SDGsについて学習者の学びを深める50分間のオンライン授業を設計することができる

授業の流れ

本授業は、大きく二つの内容から構成されています。

第1部:SDGsを学ぶ

第2回〜第4回の授業は、SDGs概説として、SDGsに関する講義と議論を行いました。 第2回授業では、SDGsの全体像を把握することを目的としました。まずSDGsの各目標とターゲットを確認しました。その後、各目標やターゲットの関係(結びつきの強弱)と理由を考えて個人で書き出し、それをグループで共有して関係性を話し合って示しました。さらに、関係性を参考にしながらSDGsの意義と課題について議論し、内容をクラス全体で共有しました。 第3回授業では、SDGsの17の目標間の関係を再考することを目的としました。17(も)の目標か定められた経緯を踏まえた上で、17の目標間にどのような関係性があるのかを複数の観点から示した図を引用しつつ、説明しました。また、17の目標間にシナジーやトレードオフがあるかどうかをグループで考えました。 第4回授業では、SDGsの特定の目標について理解することを目的に、目標1(貧困をなくそう)と目標10(人や国の不平等をなくそう)に焦点を当てました。貧困や不平等の現状をデータで確認した後、そうした事態を招いている原因や、対策としての開発援助のありかたについてグループで議論しました。  

第2部:SDGsを教える

第5回以降の授業では、高校生がSDGsについて学べる授業をつくりました。 第5回・第6回授業は、授業設計概説として、授業設計の理論や手順を説明しました。第5回では、授業づくりに必要な知識を確認した後、授業設計の手順の概要を説明しました。その後、ジグソー法を用いて授業設計手順の詳細を相互説明し、練習として「食堂の使い方を理解する授業」を考えました。第6回授業では、教え方に焦点を当て、学習意欲を高める方法やアクティブラーニングの技法について説明とディスカッションを行いました。 第7回・第8回授業からは、授業のデザインをグループごとに開始しました。授業づくりのワークシートに沿って、「高校生40名が、SDGsについて学べる50分間のオンライン授業」の授業案を考えました。 第9回の中間発表では、グループごとに作成した授業案を発表しました。また発表した内容に対して、「よりよい授業にするには」という観点から相互評価を行い、互いにコメントしました。中間発表後は、相互評価に基づきグループごとに改善点の確認と議論を行いました。 第10回・第11回では、中間発表に基づいた授業案の修正と、講義スライドづくりを行いました。最終発表では、最終的な授業案に加えて、50分間の授業を行う時に使う講義スライドや教材を発表します。そのため、授業案で考えた授業の流れや講義・活動を、講義スライドという形で具体化しました。 第12回では、最終発表を行いました。グループごとに最終的な授業案と講義スライドを提示して発表し相互評価しました。実際の授業は50分間ですが、最終発表では10分間で講義スライドを提示しながら受講生が授業の概要を発表しました。発表後には「よりよい授業にするには」という観点から相互評価を行いました。 第13回の授業では、授業のふり返りを行いました。前半は最終発表に対する相互評価の結果をグループごとに確認し最終発表について良かった点・改善点を話し合いました。授業の後半では、この授業の学習目標である、SDGsの背景・意義・課題についてグループに分かれて考えを整理しました。どのグループも授業全体を踏まえて議論・整理していました。その後、13回の授業を通した一人ひとりの学びを振り返る時間を設けました。具体的には、大福帳を開いて過去の自分の疑問などを確認しながら、授業を通じて何ができるようになったのかを学生一人ひとりが考え、その内容をペアで共有して授業を終えました。  

受講者の感想

第1回授業からの変化

第1回授業と第13回授業終了時とで、SDGsに対する考えや関心の変化、気付きがあったかどうかを尋ねたところ(回答者5名)、次の感想がありました(一部抜粋)。
  • SDGsを所与のものや最終ゴールとしてではなく、世界中の課題を解決するための通過点、今後時代に合わせて別の目標や方法に改善されうるものとして捉えるようになった。
  • SDGsのそれぞれの目標には関連性があることがわかった。
  • 授業前は、SDGsに対して「何となく良いもの」という印象を持っていたが、もちろん意義はある一方で、さまざまな課題点も孕むものであるということに気付かされた。
  • 少なくとも自分が発表で扱った目標に対する理解は深まり、SDGsに関する知識も初回よりは格段に身についたと思います。
  • ただの理想論だと思っていたが、政治的妥協やステークホルダーなどの具体的数値目標や活動などの地に足のついた活動であることが分かった。ただSDGsと口にしたり知識としてもつだけではなく、やはり自分も活動しないとなと感じた。
学生たちなりに、SDGsに対する考えに変化があり、また学習目標である意義と課題についての理解が深まったようです。

SDGsの理解に対する授業づくりの影響

授業づくりがSDGsへの理解を深めることに対して役立ったかどうかを聞いたところ次の感想が得られました。
  • 教えるためには自分が理解していなければならず、授業づくりの中で概論や具体例に触れ、SDGsへの理解が深まった。
  • 自分で理解していることを前提として授業を設計しなければならなかったので、自分でSDGsを理解することとSDGsに関する授業設計を行うことは全くの別作業であると思った。実際に自分の頭の中で体系的にSDGsのそれぞれの目標を整理できる授業設計演習はSDGsへの理解を深めることに大変役立った。
  • 50分の授業1つを設計するという特性上、扱えたのは1つの目標のみだった。そのため、授業で取り上げた目標に対する理解は深まったといえるが、SDGs全体の理解に寄与していたか、と言われると少し微妙な印象を受けた。ただ、時間的制約がある中では仕方のないことだと思うし、全体としてはとても有意義な時間だったと感じている。
  • 誰かに教えるためにはまずSDGsに関する知識を身につけ、生徒にも分かりやすいよう身につけた知識を噛み砕く必要があると感じ、実践しようと試みた。その結果、自分自身のSDGsへの理解も深まったと思う。
  • 授業内で使う具体例を調べる過程でより詳細な情報や周辺情報、自分がターゲットにした目標以外の目標との関係を知ることになった。さらに、分かりやすい授業にしようという中で、SDGsに関する知識が自分の中で一度整理されたこともよかったと思いました。
授業をつくる過程で、自分で調査をすることにより、SDGsに関する情報を得て理解を深めたという記述がありました。一方で、50分の授業をつくったため、授業の中で扱える量に限りがあり、SDGs全体の理解というよりは授業で取り上げた目標への理解が深まったという意見がありました。たしかに、50分の授業では扱える量が少ないため、設定する学習目標によっては一つの内容を深く掘り下げるにとどまってしまうかもしれません。この授業では、SDGsが作成された背景や意義と課題について説明できることが学習目標に含まれています。これらの学習目標と50分の授業づくりとの関連や、授業づくりの焦点の明確化には検討の余地があるかもしれません。 この授業の成果報告として「第3回 東大生がつくるSDGsの授業」を2022年9月に開催しました。1名の受講生がオンラインで実際に高校生に授業を行いました。開催報告はこちらからご覧いただけます。
 

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子・中村長史) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

未来の学びを考える【文献講読編】(2022年度Sセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える【文献購読編】」(2022年度Sセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は8名(2年生5名、3年生1名、4年生2名)でした。 担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

授業の概要

小学校から大学まで、教育・学習を取り巻く状況は日々変化しています。2000年以降、大学では「アクティブラーニング」や「国際化」などの取り組みが多く行われるようになりました。また初等中等教育(小学・中学・高等学校)でも、「アクティブラーニング」や「GIGAスクール構想」などの取り組みが行われています。それでは、未来の学びはどうなるのでしょうか。 この授業では、教育・学習に関する文献を読み、文献の内容や自身の経験(過去・現在)の意味を理解した上で、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について自分なりに考えます。考えた内容をレポートにまとめて提出します。

授業の目的・目標

目的は、本授業の目的は、文献の内容や自身の経験(過去・現在)の意味を理解した上で、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について自分なりに考えることです。 目標は以下の4点でした。
  1. 教育・学習に関する文献を読み内容を説明できる
  2. 自分の教育・学習経験を、文献の内容と関連づけて示せる
  3. 「未来の学び」について、クラスのメンバーと議論し、自分の意見を示せる
  4. 文献や自身の経験、学期を通じた議論を踏まえ、自分なりの未来(10年後を想定)の学びのあり方を示せる

授業の流れ

本授業は、大きく三つの内容・活動から構成されています。

1. 学習前の準備

教育・学習に関する文献を読む前の準備として、授業のガイダンス(初回)と「未来の学び」プレ議論(第2回)を行いました。 「未来の学び」プレ議論では、21世紀型スキルやキー・コンピテンシーなどの新しい能力についいてミニレクチャーをした後、「10年後の未来(の学校)では、①生徒は、何を身につける必要があるか?、②教師は、どんな役割を担うのか?、③地域・社会、家庭・保護者、学校・生徒との関係は?」について、ワールドカフェ形式で議論を行いました。議論の後、クラス全体で内容を共有しました。また、ディスカッションの問いを補完する内容として、OECD Learning Compass 2030の内容を紹介しました。

2. 文献講読と「未来の学び」議論

第3回〜第9回の授業では、未来の学びを考える手がかりとなる情報を集めることを目的として、教育・学習の文献をジグソー法で講読し、未来の学びに関する問いについて議論を行いました。読んだ文献は次のものです。
  • 第3回:美馬のゆり・山内祐平(2005)「未来の学び」をデザインする:空間・活動・共同体. 東京大学出版会 の一部
  • 第4回:A.コリンズ・R. ハルバーソン 著、稲垣忠 編訳(2020)デジタル社会の学びのかたち Ver.2. 北大路書房 の一部
  • 第5回:溝上慎一(2018)学習とパーソナリティー「あの子はおとなしいけど成績はいんですよね!」をどう見るか. 東信堂、溝上慎一(2020)社会に生きる個性:自己と他者・拡張的パーソナリティー・エージェンシー. 東信堂、松下佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター(2015)ディープ・アクティブラーニング:大学授業を深化させるために. 勁草書房 の一部
  • 第6回:奈須正裕(2021)個別最適な学びと協働的な学び. 東洋館出版社 の一部
  • 第7回:三宅なほみ・東京大学 CoREF・河合塾 編著(2016)協調学習とは:対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業. 北大路書房 の一部
  • 第8回:山内祐平 編(2010)デジタル教材の教育学. 東京大学出版会、重田勝介(2014)ネットで学ぶ世界の大学MOOC入門. 実業之日本社、ジョナサン・バーグマン、アーロン・サムズ 著、上原裕美子 訳、山内祐平・大浦弘樹 監修(2014)反転授業:基本を宿題で学んでから、授業で追う応力を身につける. オデッセイコミュニケーションズ の一部
  • 第9回:脇本健弘・町支大祐 著、中原淳 監修(2015)教師の学びを科学する:データから見える若手の育成と熟達のモデル. 北大路書房、千々布敏弥(2021)先生たちのリフレクション:主体的・対話的で深い学びに近づく、たった一つの習慣. 教育開発研究所、奈須正裕(2021)個別最適な学びと協働的な学び. 東洋館出版社 の一部
各回で読む資料を三種類用意し、担当資料を決めて読みました。読んだ後、資料ごとにグループを作りエキスパート活動を行いました。その後、ジグソーグループを組んでジグソー活動を行いました。第3回以降の授業は対面授業で行ったため、ジグソー活動での議論の内容をホワイトボードに記入し、それをクラス全体に共有・発表してもらいました。

3. 「未来の学び」を考える

第10回以降の授業では、これまでの自身の経験や文献・議論の内容を踏まえて一人ひとりが「未来の学び」に関する自分の考えを深めていきました。 まず、第10回の授業では、自身の教育・学習に関する経験を、ブロックを使って可視化して相互に説明した後、それまでの授業で扱った文献の内容との関連づけを行いました。文献に出てきたキーワードやトピックをカードにし、ブロックの作品の学びに置くことで関連づけを行いました。この詳細については、こちらのページをご覧ください。 第11回、第12回の授業は、ワールドカフェ風のグループディスカッションを行いました。一人ひとりが、他の人たちに意見をもらいたい問いを提示し、それについてグループメンバーを変えながら複数回の議論を行いました。 この授業の最終的な学習成果物は、全授業終了後に提出してもらうレポートでした。第13回の授業は、最終成果物に向けた状況共有として、その時点で考えている未来の学びを各自が発表し、相互にコメントしあいました。その後、13回の授業全体のふり返りとして、各自が大福帳を見直し、「自分が授業内容に対して何を感じたのか」、「どんな疑問・質問を持っていたのか」、「その疑問・質問は解消されたのか」、「13回の授業を通じて、自分は何ができるようになったのか」を一人ひとりが考え、内容をペアで共有して、授業を終えました。

受講者の感想

最終授業後にアンケートに回答してもらいました(回答者 8名)。 「第3回〜第9回のジグソー法での文献講読は、教育・学習に関するトピックや内容の理解に役立った」(とてもあてはまる〜全くあてはまらないの5件法で回答)については、「とてもあてはまる」5名、「あてはまる」3名でした。また、「授業を受ける前と比べて、教育・学習への興味関心が高まった」という質問については「とてもあてはまる」5名、「あてはまる」3名でした。これらの結果から、授業により内容の理解が深まったことに加え、興味関心が高まったことが窺えます。 一方、「第11回、第12回のワールドカフェ風ディスカッションは、自身の未来の学びを考えるのに役立った」については、「とてもあてはまる」6名、「あてはまる」2名でした。加えてワールドカフェ風ディスカッションへの感想を自由記述で聞いたところ、「回によって新しい視点や議題が登るため、おもしろい。(原文ママ)」、「たくさんの意見を短時間で効率よく収集できること」、「一つの問いに対しても、各セッションにおける他の議論を活かすことができたのが良かった。」、「学生たちが各自異なるテーマを取り上げていたので、自分が普段重きを置かなかったテーマに関しても改めて考えを深めるきっかけとなりました。」といった肯定的なものがあった一方、「ホストの人同士はお互いの考えを聞けない。」、「表面的な乾燥に終わってしまうことも想定される(原文ママ)」、「自分と同じタイミングで司会をやる人の意見が聞けなかったり、別グループの人とのディスカッションができなかったりと、文字通り全員の意見が聞けなかったのが少々物足りなかったです。」といった改善点が挙げられました。特に今回の授業では、受講者が8名と少人数だったため、ワールドカフェ風ディスカッションの利点を最大限に活かすことができませんでした。次に実施する際は、セッション数を増やしたり時間を長くとる等の改善を行いたいと考えています。

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業をアクティブにするためのふり返り」【開催報告】

カテゴリー: イベント

2022年9月14日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、駒場アクティブラーニングワークショップ「授業をアクティブにするためのふり返り」を開催しました。当日は、5名の方にご参加いただきました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

アクティブラーニング部門では、昨年度末に「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」をウェブサイトで公開しました。今回のワークショップでは、授業デザイン確認シートに基づいて、アクティブラーニングの観点から授業づくりの方法やポイントを確認します。また、これまで行った授業あるいはこれから行う授業のデザインを、アクティブラーニングの観点からふり返り、参加者どうしで共有し授業をアクティブにするための検討やより良い授業にするための意見交換を行うことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者どうしで自己紹介を行いました。自己紹介では、ワークショップで知りたいことや興味があること、達成したい目標を共有いただきました。 次に、授業づくりのステップを確認しました。学習目標の立て方や、あわせて評価方法も決めること、その後に教え方を検討するという流れを確認しました。その後、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」の「授業をつくる前」に参加者自身の授業のデザインについて記入しました。 休憩を挟んだ後、アクティブラーニングの定義についてミニレクチャを行いました。また、アクティブラーニングの手法として知っているものを書き出したり、授業をアクティブにするための工夫やうまくいったと感じた取り組みを共有していただきました。その後、アクティブラーニングのためのポイントや授業構成の仕方のミニレクチャを行いました。それを踏まえて、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」の「授業をつくりながら」に参加者一人ひとりが検討した内容を記入しました。それから、記入した「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」をグループに分かれて共有し、チャックの観点に基づいて互いにコメントしました。 グループでのワーク後は、ワークショップ全体をふり返り、ワークショップで感じたこと(新しく知ったこと、印象的だったこと、もっと知りたいと思ったこと、疑問・質問)を書き出しました。最後に閉会の挨拶を行ってワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

当日は、参加者5名と少人数ではありましたが、グループでの議論の時間を多くとり意見交換を十分におこなっていただけたように思います。また、ワークショップ後のアンケートでは、「本ワークショップで扱った内容をご自身の授業に活用できると思いますか」、「本ワークショップによって、今後の授業をアクティブにできそうですか」という質問に対して参加者全員が「とてもそう思う」と回答くださいました。加えて、本ワークショップで学んだことをどのように活用しようと考えているかという質問について、学生が一人で考える時間をもう少し与えたいや、小テストやワークをGoogleドキュメントに書き込むといった具体的な回答がありました。 また、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」の改善点も挙げられましたので、今後はシートを改善し第2版を公開したいと考えています。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

はじめての「大福帳」

これまで、アクティブラーニング部門のウェブサイトなどで「大福帳」についてご紹介してきました(オンライン授業で大福帳を使うオンライン授業で大福帳を使う:運用のふり返りと改善)。

今回は、2022年度Sセメスターにアクティブラーニング部門で開講した全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」で、初めて「大福帳」を使った中村長史先生(アクティブラーニング部門 特任助教)に「大福帳」のメリットなどをお伺いしました。

「大福帳」を使ったメリット

中澤 大福帳を使ってみて感じたメリットはありますか?

中村 メリットとしては2つあるかなと思っています。1つ目は学生に対して“見守ってるよ感”を出すのはメリットかなと思ったんですよね。僕たちのやってた授業って、そんなに人数も多くなかったですし、かなりアクティブラーニングの授業で、もちろん授業中もかなりコミュニケーションを学生と取れてたと思うんです。けれども、次の授業までの間にもコミュニケーションを取る機会があるっていうのは、すごく良かったんじゃないかなと。学生からしてもきっと“見守られてる感”みたいなのがあって良かったんじゃないかなと思ってます。

もう1つは、学生にとっても僕たち教員にとっても、授業で学んだことを振り返って可視化する機会になることです。これは、僕が想像してた以上に大きいんだなと思っていて。アクティブラーニング型の授業だから、そういう機会をわざわざ明示的に設けなくても大丈夫だろうという気持ちがどこかにあったんですけれども、実際やってみると、―まあ学生がどう感じているかは学生に聞かないと分からないですけども―僕自身が、自分が授業でやったことについてのフィードバックをある種もらうわけなので。それを基に、じゃあ次の授業こういうふうにしようって、すぐに反映できるという意味で良かったなと思ってます。学期末のアンケートも活かすようにしてるつもりなんですけど、それを活かせるのは次の年なので。すぐにフィードバックがある、活かせる機会があるという意味で良かったのかなと思ってますね。

中澤 これまで、他の授業ではコメントペーパーやミニッツペーパーを使用されたことはないんですか?

中村 毎週課題を出して、課題に対してコメントすることはあるんですけども、学生が授業を受けた感想についてコミュニケーションを取るってことはなかったんですよね。それをできたのが、2つ目のメリットですよね。1つ目の“見守ってるよ感”は、課題にフィードバックをしてたら感じられるんでしょうけれども。実は、自分が学生の時にミニッツペーパーを書いたことがあるんですが、その時にフィードバックを特に先生がなさらなかったんで、毎回ただ書かされてるだけと感じたんです。「めんどくさいな、またこの時間に書くんでしょ」と、惰性でやってたのが頭にあったので、自分が教員になってからも敬遠してたんです。今回、中澤先生と一緒にやる授業の中で導入してみて、効果を確かめられたということです。学生が本音を書いてるかどうかは分かんないですけど、彼ら彼女らの感想っていうものが出てきて、それについてこっちもフィードバックする過程で考えられるっていうのは良かったなって思ったってことですね。

中澤 ミニッツペーパーは、出席代わりで出させてるっていう先生が多いですよね。確かに、学生のメリットっていう点だと少ない感じはしますね。

「大福帳」のデメリットや運用の工夫

中澤 逆に、デメリットとか、改善点は何か感じられましたか?

多人数への対応

中村 人数が多いと大変だなと思いました。他にもいろんな授業とか業務がある中で、どこまでそこに時間を割けるかっていうのは、人数が増えた時にはちょっと分からないなと思ってて。これまでにもずっとやってこられて人数が多い時もあったと思うので、何か工夫されてることとかがあれば逆に教えてほしいですね。

中澤 そうですね。大福帳は先行研究でも色々なことが言われていて。人数が多い場合とかだと「見ました」というスタンプを押すとか。コメントは書かなくても、さきほどの“見守ってるよ感”を出す簡易的な方法を取るのは一つの手だっていうのはありますね。人数が多い場合はそういうものでもいいのかなと思いますね。あとはコメントをする人数をあらかじめ決めておくとか。

中村 ああ、なるほど。

中澤 たとえば、100人学生がいたら毎回20人ずつコメントを書き、他の学生はスタンプにするのも一つの手かなと思いますし。あるいは、質問にはコメントを書いて、感想だけの場合はスタンプでというやり方もあるのかなと思いましたね。

中村 ありがとうございます。今そのお話聞いてて、僕が最初に挙げた2つのメリットってのは、どっちも活かせるなと思って。スタンプであっても見てることには変わりはないので、“見守ってるよ感“っていうのは感じてもらえると思いますし。それから、教員が詳細にコメントするしないにかかわらず、学生が書くこと自体には変わりがないので、学生自身の振り返り、イメージ的に可視化できることにはなりますし。コメントしないにしても読むことには変わりはないので、教員にとっての振り返りや授業改善に活かすこともできるので。そういう意味では、人数が多い場合は無理に全員にコメントバックしようとせずに、おっしゃったようなやり方でやっても、同様の効果を得られるのかなと思いました。

学生からのコメントや質問を共有する

中村 あと今思い出したのは、一つ自分なりに工夫したことがあって。学生から出てきたコメントや質問でいいなと思ったものを、次の授業の冒頭で紹介するようにしていて。そうすると取り上げられてうれしいって気持ちも、もしかしたらあるかもしれないし。あと同じクラスメイトから出てきたもので、「あ、こんなこと考えてる人もいるんだ」みたいなことで他の学生の刺激にもなると思ったので。それは、自分なりに工夫をしてみたつもりですね。そうしないと何か学生から、何か毎回書かされて、書けって言われるから書くみたいな、なんかちょっとそういう、義務だから書くみたいなになっちゃうともったいないなと思ったので、そういう仕掛けをしてみたつもりです。

中澤 そうですね。私は、学生が大福帳に書いた質問のうち、これは全員に共有しておいたほうがいい質問だなっていう場合は授業で紹介しますね。ただ、授業で紹介できるのって時間の都合で1つだけだったりとかするので、Googleスプレッドシートに質問とそれに対する回答を書き出して、それを共有するっていうふうにもしてますね。

中村 あ、なるほど。

中澤 他の人から出てきた質問で皆さんにも知ってもらいたいことはここに載ってるので見てくださいと案内をします。どの程度見ているかは分からないですけど、スプレッドシートに質問と回答が蓄積されているということですね。

中村 それはすごくいいですよね。次の年に授業をする際にも、去年どんな反応があったかなって見る時も、そうやって整理されてるといいので。確かにそれはちょっと僕もやってみようかなと思います。

中澤 そうですね。あと、そういったことができるのはオンラインでの大福帳だからだと思っていて。これが紙の、―対面だと昔は紙でやってたんですけど―そうするとなかなか手書きでコメントを書くのも大変なので。学生も大変だと思うんですけど。

中村 回収も大変ですもんね、大人数だと。それ用のTAさんがいたりとかね。

中澤 そうそうそう。授業時間中に大福帳を書く時間を取らなくちゃいけなかったりするので。オンライン大福帳というのも、それ自体がメリットかなと思いますね。

あらゆる授業で活用できる

中澤 どのような授業で活用できそうというアイデアはありますか?

中村 そうですね。導入する前の僕の感覚としては、大人数の、ちょっと工夫してても一方向にどうしてもなりがちな授業で導入するといいんじゃないか、もう何ならそれだけで導入しとけばいいんじゃないのって思ってたんです。それ以外のいわゆるアクティブラーニング型の授業の場合は、それをするまでもなく学生とコミュニケーションを取ったりする機会もあるし、と思ってたんですけど。今回、少人数のアクティブラーニング型の授業で導入してみてとても効果を実感できたので、今となってはどの授業でも導入するといいのではないかなと思いますね。どの授業で導入する必要性も高いんじゃないかなと思ってます。気になってたのは、人数が多いとちょっと先生が大変っていう問題ですけど。それも工夫次第で乗り越えられる、同様の効果を得られるってことも分かったので。そういう意味で、今となってはすっかり大福教、大福教? 大福帳。大福教とか言っちゃった(笑)。大福帳信者になってしまったかもしれない。

中澤 ミニッツペーパーだとやっぱり1回限りで終わっちゃうのは悲しいなって、すごく私は思っていて。13回分が載ってるっていうのは、こちらにとっても学生にとってもいいし。やはりそれが大福帳のメリットなのかなっていうのは思いますね。

中村 そうですよね。逆に言うと、ミニッツペーパーでも問題ないですよってなる場合は、その先生の授業をちゃんと構造化できてますかみたいなことがあるのかなって、今伺ってて思ったんですよね。ある程度構造化されてると、学生の反応がその回によってどうなるのかっていうのが気になるわけなので。ぶつ切りだと、困るっていうところがありますから。そういう意味でも、自分の授業がちゃんと構造化されてるのかしらっていう判断する一つの材料かもしれないです。

中澤 確かに、13回の大きな流れでの授業づくりがどうなってるかっていう、点検にもなりますね。

中村 そうですよね。

中澤 今回の授業では、最終回の授業で大福帳を読み返してみましょうという時間をつくって、学生に授業自体の振り返りをしてもらったんですけど。なかなかミニッツペーパーだとそれが難しいかなっていうことがありますよね。Googleフォームで毎回コメントを出してもらって、それを何らかの形で見てもらうとかは、もしかしたらできるかもしれないけですが。大福帳はプライベート感があるというのも、私は個人的にはいいかなと思いますね。

中村 そうですね。連絡帳みたいな感じがあっていいかもしれないですね。

中澤 そうですね、交換日記みたいな感じで。

中村 交換日記みたいな、そうそう。

中澤 あと何か補足などありますか?

中村 そうですね。これを読んでる先生も、大福帳は自分の授業では関係ないかなと思ってる人も、1回ちょっとだまされたと思って。そんなに手間は思ったほどはかからないので、やってみるといいんではないでしょうかというのが、1回初めてやってみた僕からのメッセージです。

中澤 そうですね、私はもう大福帳信者で、どんな授業でも基本使ってしまっているので、新しい視点から話を聞けて良かったです。ありがとうございます。

中村 ありがとうございました。

同期型ハイブリッド授業でのアクティブラーニング:初年次ゼミナール文科 岡田晃枝先生インタビュー(2)

SセメスターにKALSで同期型ハイブリッド授業を実施されていた岡田晃枝先生(大学院総合文化研究科 准教授)に、授業の様子や授業運営のポイントをお伺いしたインタビューのつづきです。一つ目の記事は、こちらからどうぞ。

授業運営の様子やポイント

対面授業と変わらない運営を心がける

中澤 ファシリテーションはどうでしたか?

岡田 ハイブリッドになったことで大きく変えるということはしませんでした。その日だけ変えると、オンライン参加の子たちが「自分のせいで」と萎縮してしまったり、教室で受けてる子たちが、自分がハイブリッドをお願いしたらこんなふうに授業の構成変わるんだと思うと不安になるかなと。ですからあえて変えないようにして、いつも通りの授業を行えるようにと考えました。私の場合は、全体に対して私とTAからのワンポイントアドバイスと、学生どうしのグループディスカッションを交互に行うというのがルーティンの形です。授業の回によって構成が違うといったことはなくて、毎回ほぼ同じ流れなので、同期型ハイブリッド授業があるかないかで授業回を入れ替えるような必要はなくて、その点では楽でした。もしかしたら講義型の授業で、グループディスカッションを取り入れる回と取り入れない回があるような場合は、オンライン参加の子がいるかどうかで構成を変える必要が出てくるのかもしれないですね。手間やトラブルのリスクを考えると、オンライン参加の子がいる時にはグループディスカッションを入れずに講義だけにしたいと思われる先生もいらっしゃると思うので、そうなると13回全体の流れが、オンライン参加の子がいるかいないかで変わってきますよね。コロナ欠席の学生が出るかどうかは授業直前にならないとわからないことが多いから、それだと大変だろうなと思いますし、授業全体の構成という面から見ると好ましい状況ではないですよね。

そう考えると、今後もハイブリッドでの対応が継続的に必要になるのであれば、いつどの回でハイブリッドが入っても大丈夫なように備えておくことが必要になるかもしれないですね。でもその結果、全部が講義型の、受動的な学びの授業ばかりになるのは学部教育全体から考えて良いことではないと思います。

中澤 対面だとグループディスカッションの様子を見に行ったりされると思うんですけれども、同期型ハイブリッド授業の場合は、どのようにされていましたか?

岡田 教卓に自分のパソコンとKALSのパソコンを用意して、KALSのパソコンでブレイクアウトルームに入っていました。ブレイクアウトのほうに入るパソコンと、全体を見るパソコンの2台を置いていたということです。

教室の中のグループは観察していれば声や学生たちの行動で介入が必要かどうかわかりやすいですよね。先ほど言ったようにオンライン参加の学生がいるグループのテーブルをウェイティングルームにセットしていたので、そのグループの声は教室内にいると聞こえません。だから教室全体を見回しながら、ブレイクアウトルームに入っているほうのパソコンで時折小さい音声でウェイティングルームのグループの状況を確認していました。ただ、隔てているのがガラスなので視覚的な観察はできますし、扉を半開きにしていたので教室内を机間巡視するついでにウェイティングルームのグループにも直接声を掛けられる状況でもあったので、それほど問題はなかったです。

別の教室で行った時は、オンライン参加の学生がいるグループのテーブルを、他のグループから少し話して教卓の近くにセットすることで、ディスカッション用のミーティングオウルのマイクで私の声も拾えるし、グループディスカッションの時にそのグループが使っているPCのモニターを教卓から確認できたので、教室が狭ければ狭いなりに、グループディスカッションと全体での講義の移り変わりをうまくやる工夫は可能でした。

中澤 グループディスカッションのモニタリングやフィードバックは普段教室で行ってるのと同じような感じでできたというところですか?

岡田 そうですね。グループのところに行ってできましたし、時々教卓のパソコンでモニタリングもできたので、そういった意味ではいつも以上に観察ができたように思います。

同期型ハイブリッド授業に求められること

中澤 同期型ハイブリッド授業の運営などについて、改善したほうがよいと感じていることはありますか?

TAの育成

岡田 実は、対面授業になったことによってTAたちは結構苦労している面があります。2020年度に全面オンライン授業が始まったときに、それまでと全く勝手が違うからTAたちは苦労しているだろうなと思って、初年次ゼミ文科の授業TAたちにどんなサポートが必要かを尋ねるアンケートをしたところ、なんとオンラインになってものすごく楽になりましたという回答が多かったんです。何が楽になったかというと、機器のセッティングでした。初年次ゼミ文科はプレゼンテーションが重要な授業ですので、毎回機材ボックスの鍵を開けてパソコンをつないで、モニターに出力できるようにして・・・とやっていても、とくに1号館なんかでは機材トラブルがけっこう発生していて何度もパソコンを操作し直したり接続し直したり、それでもトラブルが解決しないで時間を食ったあげくスライドなしで発表といったようなこともあったようです。機器に詳しいTAの方が少ないですから、自分が悪いのか持ち込んだパソコンが悪いのか、それとも教室の機械が故障しているのかわからなくて、非常勤講師控室に教室機材点検の依頼も出せないでそのままになってしまったという話も聞きました。さらに、せっかく先生のパソコンをつないで動作確認していても、学生が自分のパソコンをつないでほしいと言ってきて、接続しようとしたら特別な端子が必要で非常勤講師控室に走った、なんていう報告もありました。機材トラブルによる授業の中断というのは履修生にとって大きな損失なので、TAたちはそれをとても恐れていたけれど、対面授業の教室ではそれなりの頻度で生じていたんですね。それがZoomでの画面共有になったらなくなった、ほんとに楽だと言ってきたんです。

中澤 そうなんですね。

岡田 今回対面授業になったことによって、それが復活しただけではなく、ハイブリッドになったらさらに別の機材も接続しなくちゃいけなくなるんですよね。そういった意味で、TAたちの苦労は計り知れない。授業内容と研究の専門性から先生たちはTAを選んでいるので、文系の院生だととくにそれと機器関連の知識・経験とが一致しないことが多くて、授業形態の多様化はTAたちには負担になります。それに備えて学術的な専門性だけでなく臨機応変な機器対応もできるようにTA全体の底上げをすることが適切なのか、あるいは複雑な機器対応の部分だけ切り取って別の人をあてがうのが適切なのか。もちろん大学・学部のほうでもそれを認識してくれていて、業者さんに加えて特定の機器専門のTAも学内に待機するようになってはいます。授業を受けながらその授業での機材関連のサポートをしてくれる学生に謝金を支払うクラスサポーターという制度もできていて、それも面白い人材の利用の仕方だと思いますが、そういう下支えをする人たちをどう育てていくかですよね。特定の人だけができるようになるのではなくて、できるだけ多くの学生たち、院生たちが何かあった時にすぐに機器の接続を確認して直したり、授業で使える便利なツールを機器が苦手な先生に提示できるようになるのがいいのだとはと思うんですが、それは一体どの組織や部署の役割なのか、どの範囲を対象にするのか、ですね。

それに関連して、授業の中でミーティングオウルを使って接続をしてると、他の授業で使ったっていう子もいましたが、初めて見る子もいて、声を出したらカメラが回るというのにものすごく興味を示して自分も試させてくれと言ってくる子もいました。ミーティングオウルだけでなく、授業でどんどんいろんなツールを取り上げて、学生たちに使う機会をあげるとか、その仕組みを知る機会をあげることが、長い目で見るとそういった人材を育成することにつながるのかなという気もしています。

グループへの介入の程度を同じにする

中澤 TAの仕事ですけれども、グループディスカッションのファシリテーションや介入は、ハイブリッドになったから変わったっていうところはなさそうでしょうか?

岡田 私の授業に関してはないですね。今学期実施した同期型ハイブリッド授業では、オンライン参加の学生が入ったグループはどの授業も1グループだけだったので。そこに近づいてTAや私がコメントをしたりすれば、カメラにも入りますしマイクも音を拾うので、オンラインの子にもちゃんと反映されました。TAのミニ講義も、私の講義パートと同じくいつもどおりに行いました。

中澤 なるほど。

岡田 KALSでのハイブリッド授業では、オンライン参加の学生がいるグループはウェイティングルームに置き、対面参加の学生だけのグループはスタジオに配置した、と先ほどお話しました。私の授業のTAはとても優秀かつベテランなので、私がとくに指示をしなくても、スタジオ教室の中のグループだけでなくウェイティングルームのグループにも同じ回数、足を運んで、オンラインで接続している学生にもきちんと観察と声かけをしてくれました。でも慣れていないTAだと、もしかしたらスタジオ教室の一角にとどまってしまってウェイティングルームの子たちに目を配るのを忘れてしまうといったこともあるかもしれません。ハイブリッドのところにはこんなふうに関与して欲しいと教員から指示する必要があったかもしれません。

抵抗なく同期型ハイブリッド授業を行えるように

中澤 ほかには何かありますか?

岡田 KALSは環境が良過ぎます(笑)。KALSの環境を使ってスムーズなハイブリッド授業が行えたとしたら、それをどうやって通常の教室に落とし込んでいけるかというところ、そこの橋渡しが重要なのではないかなと思います。私が担当している初年次ゼミナール文科では、自分で研究計画を立てて少しずつ研究を進めて、それを授業に持ち寄ってお互いにコメントし合うのがとても重要な部分です。コロナで欠席した場合、濃厚接触からの発症のような場合、下手すると2回、3回連続で教室に来れない学生も出てきます。その場合に、資料配布と質疑応答という対応で十分にフォローできるのかどうか、私は不安に思っています。なので、ハイブリッドの授業がもっと楽に行えるといいですね。もちろん、学部も色々とお世話をしてくださっていて、困ったら頼れるベースはかなりできているとは思うんですけども、誰かを頼らなくても、機械に慣れていない先生でもハイブリッド授業をもう少し抵抗なく導入できるように、アクティブラーニング部門の先生たち中心に、ハイブリッド導入のハードルを下げるような発信をしていただくといいんじゃないかと思います。同期型ハイブリッドで授業をするのに適していないタイプの授業、あるいはそう思い込まれているような分野の授業なんかもあると思うので、そういったところに同期型ハイブリッドを入れたときの効果的な授業方法や運営のフォローになるような情報を発信してもらえるとうれしいです。

授業の様子

中澤 オンラインで参加されてた学生からの感想や学習環境に対するフィードバックはありましたか。

岡田 今のところは特に問題や不満は出てきていないですね。KALSとは別の教室で同期型ハイブリッド授業を行ったときには、終了の合図をしてもオンライン参加の学生がいるグループはディスカッションが終わらなくて、議論が盛り上がってるからもうちょっと時間をくださいと言われてしまいました。対面でやるのと同じぐらいの熱量で参加できていたようでした。

中澤 ありがとうございます。今日、お話をお伺いして、岡田先生が学生のことを第一に考えられて授業を運営されていることがとてもよくわかりました。また、抵抗なく同期型ハイブリッド授業を行うための授業方法・運営に関する情報発信という宿題をいただきました。今後のアクティブラーニング部門の活動の中で取り組みたいと思います。

同期型ハイブリッド授業でのアクティブラーニング:初年次ゼミナール文科 岡田晃枝先生インタビュー(1)

2022年度は原則対面授業となりました。とは言え、COVID-19への感染や濃厚接触者になる等により、オンライン授業も併用されています。とりわけ、教室で行われる対面授業を同時にオンライン配信する、同期型ハイブリッド授業(ハイフレックス授業とも言われることがあります)を経験された先生も少なくないのではないでしょうか。同期型ハイブリッド授業では、どのようにアクティブラーニングを取り入れることができるでしょうか?

SセメスターにKALSで同期型ハイブリッド授業を実施されていた岡田晃枝先生(大学院総合文化研究科 准教授)に、授業の様子や授業運営のポイントをお伺いしました。

授業の概要

中澤(聞き手、アクティブラーニング部門教員) KALSをお使いいただいた授業は、初年次ゼミナール文科注1を2コマだったと思います。授業の概要を教えていただけますか?

岡田 ハイブリッド授業を実施したのは金曜1限の授業でしたね。「紛争と介入をめぐる諸問題」というタイトルの初年次ゼミナールです。国際政治の中で中核的に重要なイシューである武力紛争に注目するのですが、その中でも第三国や地域機構、国際機関など、紛争当事者ではなく他のアクターによる当該紛争への関わりのほうに主眼を置き、自分でテーマを設定して研究発表をする授業です。理想主義的な平和観を持っている大学の1年生は安易に「正しさ」を求めたり、十分な観察なしに「効果があった」「不十分だった」といった短絡的な結論に陥りがちです。そうならないよう、複数のアクターの視点から現象を見る努力をし、国際政治の現実を見据えつつ結論を導き出せるように、教員やTAからいろいろなヒントを与えつつ、学生個々に研究を進めてもらいます。外国語の資料を含め、広い範囲でたくさんの資料を各自で探し、それらをできるだけ客観的な視点で丁寧に確認して議論を立ててもらいます。

とはいっても、みんな何かしら自分が考える「正しさ」というものが心の中にあって、紛争の片方の当事者に同情的・共感的なスタンスを取ってしまいがちです。断片的な情報から予断を持ったり先入観にとらわれたりといったことも起きやすいテーマです。ですから、自分が考えた研究計画に客観的に突っ込みをしてもらうことがとても重要になってきます。もちろん全体発表で私やTAが突っ込みをすることもありますが、そうすると「ダメだから先生が指摘したんだ」と考えてその部分を簡単に削除して別のテーマに飛びつくといった傾向が往々にして見られます。立てた仮説を簡単に捨ててしまわず、批判的なコメントをされても何とか立証できないかと別の資料を探したり再度ロジックを点検したりと真剣に考える癖をつけるためには、まずは学生同士でのピアレビューが効果的だと思います。批判的かつ建設的なコメントをするつもりで他の人の発表を聞く練習をすれば、自分の研究も客観的に振り返ることにつながりますから、二重の意味で勉強になります。ですから私が担当する初年次ゼミナールではピアレビューを非常に重視しています。少しずつ確実に研究を進めてもらいたいですし、絶対にコメントをしなくてはいけない状況を作ることも大事なので、毎回、全体を3-4人のグループに分け、そのグループ内で全員が研究計画と進捗状況を発表し、批判的かつ建設的にコメントをし合います。

中澤 ピアレビューやグループディスカッションでの相互コメントが授業の核ということですね。

学習環境の設定の大切さ

中澤 同期型ハイブリッド授業を経験された感想はいかがでしょうか?

岡田 講義パートとグループディスカッションのパートの両方が滞りなく行えるようにするための環境を、KALSという空間を活かしてどう作るかが焦点でした。アクティブラーニング部門の先生たちに相談に乗っていただきながらレイアウトや接続手順を決め、そのおかげで授業をスムーズに実施できました。コロナに感染して心細い中、オンラインで参加する学生が聞き取れなくて置いてけぼりになってしまうような結果にならないためにも、KALSをよく知り、機器に精通し、さまざまな形態の授業例を見ているアクティブラーニングの「プロ」の先生に相談できるというのはとても心強かったです。

中澤 ありがとうございます。

岡田 KALSは、ウェイティングルームとスタジオがありますね注2。オンライン参加者のいるグループのテーブルを、ガラス戸で教室と隔てられたウェイティングルームに配置することで、他のグループの音声が入らない形でグループディスカッションをさせることができました。他のグループがいる教室との間が全面のガラスだったので、当該グループが孤立感を感じることもありませんでした。

マイクスピーカーや複数のパソコンがあったので、全体で私やTAが話す部分とグループディスカッションとで使うマイクスピーカーを手元で切替えることで、スムーズに場面転換ができたという点もありがたかったです。一度その環境で授業を行ったことで、各機器の特性、とくにミーティングオウル注3の「癖」を把握できたので、KALS以外の教室でのハイブリッド授業の際に応用が効きそちらもスムーズに行うことができました。

中澤 学習環境や機材の設定で、気を付けたり、意識されたことっていうのはありますか?

岡田 ミーティングオウルは学期開始前に試行的に使ってみた上で、実際に教室で使った先生たちからの情報もいくつか収集していました。そこで他のグループの音声を拾ってしまってうまく機能しないという話を聞いていたのです。それが先ほどお話した「他のグループの音声が入らない形」につながります。声の大きさを制御しにくい学生もいますから、その点にはとくに注意しました。

それからグループにオンライン参加の学生と対面参加の学生がいる場合に教室のモニターをどのようにセットするかという点も結構重要だと思います。KALSの場合はウェイティングルームに可動式の大きなモニターがありましたから、オンライン参加の学生が含まれるグループにはそのモニターを使わせることで、ソーシャルディスタンスを保ちつつ、無理のない姿勢で、活発に意見交換させることができました。

授業運営の様子やポイント

中澤 オンライン参加の学生とのコミュニケーションや、グループディスカッションでの介入など、授業運営で気を付けられたことや工夫はありますか?

オンライン参加の学生の不安を取り除く

岡田 先ほども言いましたが、オンライン参加の学生は、自分だけ教室に行けないということで強い不安を感じていると思うんですよね。例えば先生に余計な手間をかけてるんじゃないかとか、自分のせいで授業の手順が変わって他の学生に迷惑をかけているんじゃないかとか、そういうところを気にする学生たちは多いみたいです。ですからコロナに感染しても授業に参加できるくらいの健康状態であったり、濃厚接触のために健康に問題はないのに外出できないといった場合は遠慮なくオンラインの申請をして欲しいとITC-LMSのオンライン授業欄に書き、最初の授業時にもそう伝えていました。それから、教室だけでなくSlackも利用してできるだけ学生たちとコミュニケーションを取るようにして、オンライン参加の要求をするハードルをできるだけ下げるための工夫をしていました。コロナ感染や濃厚接触で授業を欠席するという通知をしてきた学生に、ハイブリッドで受けられますよって私から言ってあげたケースもありましたね。そうすると、もう熱が下がっていた子とか、濃厚接触で自分は元気だった子はとても喜んで、ぜひお願いしますと言ってくれました。ハイブリッドで参加させてほしいと学生が言ってこれるような関係構築の種を蒔いておくのがとても大事だと思いました。


注1
初年次ゼミナール文科についてはこちらをご覧ください。
http://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/programmes

注2
KALSの構成はこちらをご覧ください。
https://dalt.c.u-tokyo.ac.jp/kals/facilities/

注3
ミーティングオウルは360度カメラとマイク、スピーカーの一体型機材。

(2)につづく。

【再募集】ワークショップ「第3回 東大生がつくるSDGsの授業」(2022年9月4日)開催

カテゴリー: イベント

*お申込み締切を9月2日(金)まで延長いたします。 *8月26日(金)まで提示されていたお申込みフォームに不備がございました。同日までにお申し込みいただいた方は、お手数をお掛けしまして大変恐縮ですが、再度フォームへの記入をよろしくお願い申し上げます。   東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門では、高校生を対象としたSDGsに関するワークショップを2020年度より開催しております。東京大学教養学部で開講している全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「SDGsを学べる授業をつくろう」において特に優れた授業案を設計した学生が授業を実施いたします。SDGsの理解が深まるような工夫が施された授業ですので、是非ご参加ください。 チラシPDF

1.日時

2022年9月4日(日)14時~16時

2.場所

ZOOM (URLはお申し込み者にお伝えします) ※お申込みいただいたにもかかわらず、ZOOMのURLについて連絡が来ない場合は、お手数をお掛けしまして恐縮ですが、下記のお問い合わせ先までご一報ください。 ※授業ではペアワークやグループワークの場面が多くあります。可能な限りカメラをオンにして参加していただければ幸いです。 ※参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

3.対象者

高校生 [定員40名]

4.参加費

無料

5.プログラム

14:00~14:30 趣旨説明:中村長史(東京大学大学院総合文化研究科 特任助教) 14:30~15:30 授業「貧困ってなに?知らないことは解決できない」:宮部裕貴(東京大学教養学部 2年) 15:30~16:00 まとめ:中澤明子(東京大学大学院総合文化研究科 特任准教授)

6.お申し込み

以下の申込フォームよりお申込ください。 https://forms.gle/9yb7pSensaw3rc8Y6 ※締切 9/2(金)23:59

お問合せ先

主催:東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

駒場アクティブラーニングワークショップ「授業をアクティブにするためのふり返り」(2022年9月14日開催)

カテゴリー: イベント

昨年度、一昨年度は、オンライン授業でのアクティブラーニングの導入に焦点をあてたワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング」を開催してきました。2022年度より原則対面授業となりましたが、授業によっては、オンラインを活用したりハイブリッドで行うものもあるかと思います。そこで、今年度は、オンラインや対面といった授業形態にかかわらず授業でのアクティブラーニングの導入・実施を取り上げる「駒場アクティブラーニングワークショップ」を開催することとなりました。 アクティブラーニング部門では、昨年度末に「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」をウェブサイトで公開しました。今回のワークショップでは、授業デザイン確認シートを使って、これまで行った授業、あるいは、これから行う授業のデザインをふり返り、授業をアクティブにするための検討やより良い授業にするための意見交換を行います。 授業デザインの基本的な事項を確認されたい方、授業をアクティブにされたい方、すでにアクティブラーニングを導入しているけれどもさらに考えを深めたい方といった、幅広い皆様にご参加いただき、次セメスターの授業準備の参考にしていただければと思います。 チラシPDF なお、本ワークショップでは、いくつかのアクティブラーニング手法・事例を深く掘り下げて紹介することは行いません。参加者どうしで具体的な手法やテクノロジーの活用方法などを議論の過程で共有することはあります。個別のアクティブラーニング手法や事例について知りたい方は、以下のページで情報を発信していますのでご覧ください。  

プログラム

  • 14:00-14:15 開会の挨拶・趣旨説明
  • 14:15-14:40 自己紹介
  • 14:30-15:10 ワーク、ミニレクチャ
  • 15:10-15:20 休憩
  • 15:20-16:20 ワーク、相互コメント
  • 16:20-16:35 休憩
  • 16:35-16:55 質疑応答、全体ディスカッション
  • 16:55-17:00 閉会の挨拶、アンケート
(司会進行:教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 中澤明子・中村長史) ※参加人数などによりプログラムに変更が生じる可能性がございます。

日時

2022年9月14日(水)14:00〜17:00

場所

Zoomミーティングでのオンライン開催 ※参加者に後日URLをお知らせします

対象

東京大学所属の教員

定員

20名 ※定員を超える応募があった場合は、抽選となります。

参加費

無料

申込方法

以下のフォームより必要事項を入力の上、ご登録ください。 https://forms.gle/7MTokugPH9vkzQPU7

申込締切

9月4日(日)23:59締切 9月11日(日)23:59締切(締切延長)

注意事項

  • 授業デザイン確認シートへの記入や共有を行いますので、これまでにご自身が行った授業、あるいはこれから行う授業のシラバスや概要がわかる資料をお手元にご用意ください。
  • ワークショップや教材の評価・改善、事業内容・成果の学内外・学会等での報告のためアンケート調査を実施いたしますのでご協力いただけますと幸いです。
  • オンラインツールを使った個人やグループでのワークを行いますので、パソコンでの参加を推奨します。
  • 参加者のプライバシーへの配慮の観点から、録音・録画は一切お控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

主催

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構アクティブラーニング部門

「オープン教材」をつくろう!(2021年度Sセメスター、Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」(2021年度Sセメスター、Aセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は、Sセメスターが20名(2年生15名、4年生5名)、Aセメスターが18名(2年生15名、3年生1名、4年生2名)でした。 担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

概要

インターネットには、さまざまな教材(テキストや動画など)があふれています。また自分で教材を作成して公開することも容易になっています。 「オープン教材」は、インターネットで公開されている、大学や個人などが作成した誰でも自由に使える教材のことです。なぜこのような教材がインターネットで公開されるようになったのでしょうか。そして、わかりやすい教材を作るには、どのような点に気をつけ、どのように作成すればよいのでしょうか。 この授業では、オープンエデュケーションと教材設計の理論や手順について学んだ後、オープンエデュケーションに関する教材をつくります。教材づくりを通じてオープンエデュケーションに関する理解を深めます。

授業の目的・目標

本授業の目的は、オープン教材やその背景となるオープンエデュケーション(教育のオープン化)、教材設計の理論・方法について理解することでした。また、それらの知識をより深く理解するため、オープンエデュケーションやオープン教材について学べ、インターネットで誰でも自由に使えることを想定した教材(オープン教材)を作成しました。 目標は、以下の6点でした。
  1. オープンエデュケーションやオープン教材の定義を説明できる
  2. オープンエデュケーションやオープン教材の事例を列挙できる
  3. 教材設計の理論と手順、注意点を説明できる
  4. グループで作成する教材を設計できる
  5. グループで教材を作成できる
  6. 教材設計の理論に基づいて他者の教材を評価できる

授業の流れ

本授業は、大きく三つの内容・活動から構成されています。

1. オープンエデュケーションの概要

Sセメスターでは、第2回、第3回の授業において、オープンエデュケーションやオープン教材の定義や事例に関する講義と議論を行いました。 Aセメスターでは、Sセメスターの内容に加えて、第4回の授業においてオープンエデュケーションの第一人者である重田勝介氏(北海道大学情報基盤センター准教授)によるゲスト講義を行いました。ゲスト講義では、オープンエデュケーションの最新の動向について国内外のプロジェクトや事例の紹介や意義と課題について紹介いただきました。

2. 教材設計の理論・手順

教材設計の理論と手順についてジグソー法を用いながら学びました。教材設計の理論と手順を3つの資料に分けて内容を説明し、それぞれをジグソー資料として学生に読んでもらいました。担当している資料ごとにエキスパート活動を行い、どのように他者に説明するかを議論してもらった後、ジグソーグループに分かれて相互説明を行いました。ジグソーグループでは、相互説明の後で「教材をつくる際に最も重要だと思うこと」について議論してもらいました。最後に議論した内容をクラス全体で共有しました。 また、教材をつくる上で重要となる、第三者の著作物の使用やライセンスについても扱いました。教材をつくり公開する際には、自分たちがつくった教材にどのようなライセンスを持たせるかを考えることが必要になります。オープン教材として公開するには、再編集などを許可する必要がありますし、その場合、教材の中で第三者の著作物を使用する際に注意がもとめられます。CCライセンスやパブリックドメインといった、教材の作成と公開に関わる著作権やライセンスについて、ワークを交えながら学びました。 ※オンライン授業でのジグソー法については、こちらをご覧ください。  

3. 教材の設計・作成

Sセメスターでは第6回以降、Aセメスターでは第7回以降の授業で、教材の設計と作成を行いました。 何もないところから教材をつくるのはとても大変です。またこの授業では、オープンエデュケーションやオープン教材について理解を深めることを目的としています。これらの理由から、オープンエデュケーションやオープン教材について学べる教材をつくることを目指しました。さらに、教材を使用する場面や対象者を絞りやすくするため、教員が4つのストーリー(右図)を用意し、学生はその中から一つのストーリーを選びストーリーに示されている課題を解決する教材を作ることにしました。これにより、教材の学習目標や対象者を検討しやすくしました。個人もしくはグループでストーリーを選択した後、設計書の作成を行いました。設計書はワークシートになっており、すでに学習した教材設計の理論・手順に沿った項目で構成されています。学習目標や教え方などの各項目について、個人やグループで考え、ワークシートへの記入を行いました。 設計書の作成を行った後、中間発表を行いました。中間発表では設計書の内容を発表し、教材設計の理論・手順に基づいた評価シートを使って相互評価を行いました。互いに良い点や改善したほうがよい点などをコメントしあい、設計書の改善につなげました。 中間発表後は、修正した設計書に基づいて教材を作成しました。そして、作成した教材を最終発表で共有し、相互評価を行って授業を終えました。 なお、Sセメスターはすべてオンラインでの授業、Aセメスターは中間発表までをオンラインでその後は対面で授業を行いました。  

受講者の感想

Sセメスター

「教材づくりが、オープンエデュケーションへの理解を深めることに対して、役立った/役立たなかったか」についての履修者からの感想をいくつか紹介します。まず、「教材を作る上で内容に誤りがあってはならないので、しっかり確認する必要があり、その点で理解が深まった」や「教材を作る中で、自らオープンエデュケーションの資料を探し、 まとめなければならなかったので、そうしているうちに理解が深まりました」のように作成過程で内容を調べることでより深く知ることができたという感想がありました。次に、「教材作りにおいて初めて学んだことを人に説明しなくてはならない立場になるのでもう一度学び直すきっかけになった」や「自分で作る際に復習することもあり、理解を深めることに役立ったと感じております」のように、教材作りが授業前半で扱ったオープンエデュケーションの内容を復習する機会となり、理解が深まったという感想が見られました。ほかにも教材づくりが内容の理解に寄与していることが窺える感想が多数ありました。

Aセメスター

13 回の授業終了時、受講生にアンケート調査を行いました(回答者 15 名)。授業前半のオープンエデュケーションやオープン教材の定義等に関する授業と、授業後半の教材設計書・教材づくりがそれぞれオープンエデュケーションについて理解するのに役立ったかどうか(とてもあてはまる〜まったくあて はまらないの 5 件法での回答)については、11 名かが「とてもあてはまる」、4 名が「ある程度あてはまる」と回答しました。また、教材づくりがオープンエデュケーションへの理解を深めることに対しての感想として「とても役立ちました。実際にオープンエデュケーションについてのオープン教材を作成する中で、改めて授業で学んだ内容を振り返ったり、 それでも理解しにくいところは自分で調べて考えたりできました」、「話を聞くだけではあまり頭に入りませんし、すぐ忘れてしまうと思うので、実際に教材を作ってみるというのは定着するという意味で役に立ったと思います」といったものが見られました。これらは S セメスターの感想とも共通しており、教材づくりを通じた理解が示唆されます。 Sセメスターと異なるのは、授業後半で行う教材づくりを対面授業で行った点です。対面授業の際は、オンラインで参加する学生もおり、ハイブリッド授業(教室とオンラインとで同時に授業を進行) を実施しました。とりわけ、グループワーク、グループディスカッションをハイブリッド授業で行うのには工夫が必要でしたし、ネットワーク不調で学生がコミュニケーションとれないといったこともありました。そのため、対面(教室)とオンラインとでコミュニケーションがとりにくいといった声が見られました。ハイブリッド授業でアクティブラーニング型授業をどのように行うかについては、今後の検討課題になると思われます。
 

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

「未来の学びを考える」(2021年度Aセメスター)

全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」(2021年度Aセメスター)の授業の様子を紹介します。受講者は14名(1年生5名、2年生6名、3年生3名)でした。 担当教員:中澤明子(総合文化研究科・教養学部附属教養教育高度化機構)

授業の概要

小学校から大学まで、教育・学習を取り巻く状況は日々変化しています。2000年以降、大学では「アクティブラーニング」や「国際化」などの取り組みが多く行われるようになりました。また初等中等教育(小学・中学・高等学校)でも、「アクティブラーニング」や「GIGAスクール構想」などの取り組みが行われています。それでは、未来の学びはどうなるのでしょうか。 この授業では、「未来の学び(10年後を想定)がどうなるか」について、教育・学習の過去や現在の状況を理解した上で自分なりに考えます。そのために、教育・学習の理論やトピックや、ゲスト講義による教育・学習の事例を学んだ後、自身の教育・学習に関する経験をふり返り、グループでの議論と発表を行いました。 また、第1回から第8回まではオンライン授業、第9回から第13回は対面授業で実施しました。

授業の目的・目標

目的は、本授業の目的は、教育・学習について過去や現在の状況を理解した上で、未来の学びがどうなるかを自分なりに考えることです。 目標は以下の4点でした。
  1. 教育・学習に関する理論や定義について説明できる
  2. 過去や現在の教育・学習に関するトピックや事例を列挙できる
  3. 自分の教育・学習経験を、理論や事例と関連づけて示せる
  4. 教育・学習の理論や事例を踏まえ、自分なりの未来(10年後を想定)の学びのあり方を示せる

授業の流れ

本授業は、大きく四つの内容・活動から構成されています。

1. 未来を考える手がかり:教育・学習の理論やトピック

未来の学びを考える手がかりとして、教育・学習の理論やトピックについて学びます。 第2回から第5回の授業では、ジグソー法を用いて教育・学習の理論やトピックへの理解を深めました。扱った理論・トピックは、学習観、空間・活動・共同体、新しい能力、アクティブラーニング、学校でのテクノロジ活用、オンライン環境での学び、ノンフォーマルな学び、大人の学びといったものでした。 ジグソー法を用いた授業のやり方については、こちらの記事をご覧ください。

2. 未来を考える手がかり:学びの事例

未来の学びを考える手がかりとして、教育・学習の事例について学びます。 第6回から第8回の授業では、ゲスト講師をお招きし、学びの事例について講義していただきました。 第6回は西武台新座中学校の河野芳人教諭によるアクティブラーニングやテクノロジ活用の事例、第7回は森秀樹 昭和女子大学准教授によるワークショップやプログラミング教育の事例、第8回は福山佑樹 関西学院大学准教授によるゲーム学習の理論と実際についてご講義いただきました。

3. 未来を考える手がかり:自身の経験をふり返る

第9回の授業では、自身の教育・学習に関する経験を、ブロックを使って可視化して相互に説明した後、それまでの授業で扱ったトピックや事例との関連づけを行いました。 本授業では、未来の学びを考えるヒントは、過去や現在の事例や自身の経験、理論やトピックにあると考えます。そこで、自分自身がどのような経験をしてのかを思い出し、その経験を本授業で学んだ内容と関連づけ、経験を抽象的に捉える活動を行いました。この詳細は、こちらの記事にまとめましたのでご覧ください。

4. 未来の学びはどうなるのか:議論と最終発表

第10回から第13回の授業は、未来の学びに関するグループでの議論と発表を行いました。 誰の学びについて考えたいかという希望に応じて受講者を4つのグループに分け、グループごとに未来の学びについて議論してもらい、その内容を最後に発表してもらいました。 第10回から第12回の授業では、グループで議論した後、ほかのグループとの進捗共有を行いました。そこでも意見交換が行われ、一つの未来の学びについて多様な視点から議論できるように工夫しました。 また、最終発表の形式は自由としました。スライドを使ったプレゼンテーションでもいいですし、スキット(劇)やイラストでもよいのです。ただし、「どこで、誰が、何を、どうやって学んでいるのか」と「社会状況や背景」という要素を内容に含めること、時間は3〜5分程度という条件を付しました。 最終発表では、スライドによるプレゼンテーション、スキットでの発表がありました。発表の内容は、中学校の授業における個別最適化、10年後の高校における総合的な探究の時間、高校生や様々な属性の大学生や社会人の学校以外の場での学び、10年後の大学といったものでした。 そして、発表後には、13回の授業を通じた自分自身の学びを大福帳を通してふり返りました。

受講者の感想

  • 最後に大福帳を振り返ってみて、自分がどんなことに興味を持っていたのか、それに対して今の自分がどういう考えや答えを出しているのかを考えるのがすごく面白かったです。日記をつけるのにも近いような感覚でした。
  • 毎週書くときは面倒くさいなあと思うことも正直ありましたが、今振り返ってめちゃくちゃいいなと思いました。自分でやるとなると継続性が怪しいので、全授業で大福帳システムがあればなあ!と思いました。
  • 大福帳を書くことによって授業の復習をする必要が生まれ、各週の内容の整理が可能になる。また、授業で聞くことができなかった質問や後に生まれた疑問点などを教員に遠慮なく聞ける機会としての意義があったと思う。感想を書くにあたって自身の経験と結びつけることができたこともメリットの一つであった。デメリットとしてはgoogledocsがタブレット系端末での使い勝手がよくなく、記入の際はパソコンを使うので問題ないがフィードバックを閲覧したいときに毎度パソコンを立ち上げる必要があった。
  • 自分の2Aで取っている授業の中で、他にもディスカッションを要求する授業がある一方で、これが一番受講者と活発な議論を交わせた授業でした。その理由を考えるに、「ジグソー法を用いることによって各人が半ば強制的に役割を与えられ、発言する必要性があったこと 」、「対面でのディスカッションやグループ発表が設けられていたこと」によって、目標に向けて協力し合うベースが作られていたこと などがあるかなと思いました。 主体的に取り組めたおかげで、授業内容もよく身についたと思います。
  • 大学に入って初めて講義形式ではない授業を受けられたことがとても印象的でした。またKALSの存在も知らなかったので、大学内にこういった施設があることも知ることができました。

問い合わせ先

教養教育高度化機構 アクティブラーニング部門(担当:中澤明子) dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp

つくることで、ふりかえる

皆さんは、ご自身の経験をどのようにしてふり返りますか? 日記などの記録を読み返したり、映像の記録を見たり、出来事を思い出して誰かに話す…など、様々な方法をとられているかと思います。ここでは、作品をつくって行うふり返りを紹介します。

概要

アクティブラーニング部門で開講した、2021年度Aセメ開講の全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える」、2022年度Sセメ開講の全学自由研究ゼミナール/高度教養特殊演習「未来の学びを考える【文献講読編】」では、それぞれ第9回、第10回の授業において、学生自身が経験した教育・学習経験をふり返り、それまでの授業で扱った教育・学習の理論や知見・事例と結びつけてその意味を考える活動を行いました。

やり方

活動は次の手順で行いました。

ワークショップをデザインする際のモデルに「TKFモデル」というものがあります。「T:つくって、K:かたって、F:ふりかえる」という流れでワークショップの活動を構成するというものです(茂木2014)。本授業では、このモデルを援用して、上記の流れで授業を進めました。どのように各ステップを行い、どのような様子だったのか説明します。

(1)つくる

これまでの自分の「学び」について最も印象に残っている場面をブロックでつくるよう伝えました。おもしろかったことやインパクトがあったことなど、「印象に残っている」ということの定義も学生に任せました。学生たちは、約7分間で作品をつくりました。高校や大学入学後の出来事で自分の学びになった経験を表現する学生もいれば、これまでの自身の学びのプロセス全体をつくる学生もいました。

(2)かたる①

次に、つくった場面をほかの人に説明してもらいました。いつ、どこで、何をしている場面かの情報を含んで説明するよう伝えました。また、説明者の左隣に座っている学生が「なぜ印象に残っているか」、「その時、どんな気持ちだったか」、「さらに聞きたいこと」を説明後にインタビューするように伝えました。

(3)ふりかえる①

これまでの授業で扱ったトピックと作品とを関連づけます。トピックカードを事前に用意しておき、関連するものを作品の周囲に配置してもらいました。また、関連すると考える理由や補足説明をふせんに書き出して貼付してもらいました。トピックカードを配置するには、トピックの内容を思い出さなければなりません。どの学生も、それまでの授業の資料を何度も読み返し、懸命に内容を思い出そうとしていました。

活動で使用したブロックとトピックカード

(4)かたる②

どんなトピックカードを置いたのか、なぜ関連してると考えたのかをほかの人に説明してもらいました。

(5)ふりかえる②

作品とトピックとの関連づけについて、未来の学びを考える上でヒントになりそうなことがあったかどうかを考えてもらいました。

学生の反応と感想

作品づくりと可視化

学生たちの様子をみていると、ブロックで作品をつくりあげ、それを媒介として自身の経験を説明できていたように思えます。また、作品について質問することで、経験の語りを深めていたように思われました。実際のところ、作品づくりについて学生たちはどのように感じていたのでしょうか?

2022年度Sセメの授業において、この活動について質問してみました(6名の学生が回答)。

「ブロックで作品を作るのが大変だった」という質問に対して、「まったくあてはまらない」〜「とてもあてはまる」の5件法で尋ねたところ、1名の学生がとてもあてはまる、3名がある程度あてはまる、2名があまりあてはまらないと回答しました。大変さを感じた学生が多かったようです。

また、「自分の経験をブロックで可視化できた」という質問に対しては、とてもあてはまる、ある程度あてはまるともに3名ずつが回答しており、全員が可視化できたと感じていたようです。

総じて、大変さを感じつつも、経験を可視化できたと感じていたことがわかります。

授業内容のふりかえり

トピックカードとの関連づけの際、予想以上に学生たちが資料を何度も確認し、授業内容をふりかえっていました。この活動は自身の経験のふりかえりや意味づけをねらいにしていましたが、学習内容をふりかえるのにも有効だったのではと感じます。

学生にこれまで扱った文献・トピックとの関連づけは大変だったかを尋ねてみたところ、とてもあてはまる1名、ある程度あてはまる1名、どちらでもない2名、あまりあてはまらない2名と、回答がわかれました。

一方、ブロックでの作品づくりは自分の教育・学習経験のふり返りに役立ったという質問については、とてもあてはまる3名、ある程度あてはまる2名、どちらでもない1名となりました。役立ったと感じている学生がほとんどでしたが、どのような経験を取り上げたかで意味あるものになるかどうかが決まると思われます。意味あるものになるよう、つくる作品の観点を細かく設定する(例:自分にとってポジティブな経験など)ことが必要かもしれません。

この授業では、最終的に未来の学びがどうなるかについて考え発表します。「未来の学びについて考えよう」といきなり言われてもなかなかできません。未来は過去・現在と繋がっており、過去や現在の経験には未来を考えるヒントがあります。未来の学びを考えるための手がかりとして、過去・現在を参考にするためにこの活動を行いました。ブロックで作品をつくることで自分の中のメージを具体化し、さらに他者に説明することでそのイメージが吟味されます(茂木2014)。

また、本授業では、トピックカードとの関連づけを行うことで、教育学的な観点から自身の経験を捉え直すことができると考えました。学生の感想では、「自分の経験を客観視すると自分の学習経験がどのような意味を持っていたか分かりやすくなりました。そのような形で具体的に認識すること自体がとても意義あることと感じました」といった記述があったことから、活動のねらいを達成できたのではと思います。

皆さんも、「つくって・かたって・ふりかえる」活動を授業に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献

茂木一司(編集代表)(2014)協同と表現のワークショップ ―学びのための環境のデザイン―[第2版].東信堂

※本記事は、AL NEWSLETTER Vol.7, No.4 の記事を加筆・再構成したものです。

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:オンライン授業の経験から対面授業を考える」(開催報告)

2022年3月9日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:オンライン授業の経験から対面授業を考える」を開催しました。当日は15名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

これまで2回にわたって開催したオンラインワークショップでは、オンライン授業に焦点を当て、課題解決や双方向性の確保について検討しました。一方、2022年度は対面授業の実施が見込まれています。オンライン授業の経験は、対面授業のデザインや運営にも活かせるところが多いと考えられます。 そこで本オンラインワークショップでは、オンライン授業の経験に基づいて、対面授業をアクティブにするための授業設計や運営について検討しました。ご自身のオンライン授業の取り組みをふり返りほかの参加者と共有し、授業デザインの基礎や授業をアクティブにする際のポイント・留意点を確認した上で、対面授業に活かせる要素や手法などについて議論し、対面授業に活かしてもらうことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いの自己紹介とワークに取り組みました。ワークでは、オンライン授業のふり返りとして、満足した取り組み、手応えがあった取り組み、課題の解決方法を書き出し、ほかの人と共有して相互にコメントを行いました。 休憩を挟んだ後半は、対面授業について考える手がかりとミニレクチャで伝えました。ミニレクチャでは、一般的な授業デザインの流れを説明した後、アクティブラーニングを取り入れる際のポイントとして、インプットとアウトプット、個人とペアやグループの学習活動のサイクルを回すことを紹介しました。また、アクティブラーニング型授業の進め方の例や、オンライン授業・対面授業・ハイブリッド授業の違いやハイブリッド授業の実施のポイントを説明しました。 その後、二つ目のワークとして、「オンライン授業のうち、対面授業に活かせるところ」、「対面授業の課題や不安、悩みの解決策」を個人とグループで考え議論しました。 最後に全体で議論内容を共有しました。また、個人でワークショップのふり返りとして、ワークショップで新しく知ったことや気づいたことを「五・七・五」で表現してもらいました。

当日の様子と参加者の反応

「ヒントになる内容が多い」、「ワークがあり、アウトプットしながら進めることができた」、「他の分野の方と交流できたお陰で、自分の授業計画を十分に振り返ることができた」、「不安が緩和しました」といった感想をいただきました。 一方で、グループワークの時間が短いことや、ツールの操作説明の仕方といった改善点も挙げられました。ワークショップで使用したツールやワークのルールに戸惑われた方もいらっしゃいましたため、今後のワークショップデザインや運営で改善していきたいと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」作成

アクティブラーニング部門では、「アクティブラーニングのための授業デザイン確認シート」を作成いたしました。

本シートは、授業デザインの考え方に基づいたポイントや、アクティブラーニングを導入する際のポイントについて、授業デザイン前・中・後、授業後のタイミングにわけて、質問に答える形式あるいはチェックリストの形式で確認できるようにいたしました。

PDFの形式ですが、入力できるように設定しており、印刷物だけでなくパソコン上でも使用いただける仕様になっています。

皆さまの授業設計・運営の参考にしていただけますと幸いです。

冊子「オンラインでもアクティブラーニング」発行

アクティブラーニング部門では、冊子「オンラインでもアクティブラーニング」を発行いたしました。   本冊子は、この2年間のオンライン授業でのアクティブラーニングについて、本ウェブサイトやニュースレター、ワークショップなどで発信してきた内容を中心にまとめたものです。 本冊子は、第一部と第二部に分かれています。
  • 第一部:授業をアクティブにする授業設計と運営
  • 第二部:オンライン授業でのアクティブラーニング手法と実践
  第一部では、授業形態を問わず授業デザインの基本的な考え方や授業をアクティブにする授業デザイン、オンライン授業をアクティブにするポイント、オンライン授業でのTA(Teaching Assistant)を掲載しています。 第二部では、アクティブラーニング手法について、実際にオンライン授業で行う際の手順や注意点、実践してみての感想を掲載しています。 本冊子は、この2年間のオンライン授業に関する当部門の取り組みを集約した内容になっています。オンライン授業に焦点をあてていますが、対面授業でも活用可能な内容が盛り込まれています。 皆さまの授業設計・運営の参考にしていただけますと幸いです。

音声プログラム「アクティブラーニングの部屋」

これまで、本ウェブサイトやニュースレターなどを通じてアクティブラーニングに関する情報を発信してきました。また、ワークショップを開催し、多くの教員の皆さまからご質問・ご意見を承ってきました。様々な情報発信・共有をしてきたつもりではありますが、十分にお答えできていない点やお伝えしきれていない点があります。 そこで、音声プログラム「アクティブラーニングの部屋」を作成いたしました。 このプログラムは、これまでお伝えできていなかった点を「音声」の形でお届けするものです。第1回の音声プログラムでは、この2年間のオンライン授業をふり返り、苦労した点やうまくいった点、対面授業に活かせそうな点をアクティブラーニング部門の特任教員3名でお話します。 ラジオを聴くような感じで、お聴きいただけますと幸いです。    

オンライン授業で大福帳を使う:運用のふり返りと改善

こちらの記事では、オンライン授業での大福帳を使用・運用方法を紹介しました。実際に一学期間(2021年度Sセメスター)運用してみてどうだったのか、学生の感想を紹介しながら、ふり返りたいと思います。またふり返りを受けての改善点についても紹介します。

学生の感想

授業の最終回に、受講した学生に対して大福帳について感想を尋ねました。学生に提示した質問は「この授業では、大福帳を使いました。大福帳を使った感想(メリット、デメリット、使い勝手など)を教えてください。」です。16名の学生から回答を得られました。得られた回答を内容ごとにカテゴリ化しました。一人の学生の記述に、二つ以上の内容が含まれる場合は、それぞれを別々のカテゴリに入れました。 以下では、どのような感想があったのかを紹介します。

ふり返りの機会

授業の内容を整理し、ふり返る機会になったという記述が6件見られました。たとえば、下記のような記述です。
  • 落ち着いて授業を振り返る助けになったかと思います.
  • 授業が終わったらそのままのような状態がなく、必ず1回振り返りをする機会があったのはすごく良かった。
  • 授業内容を整理することができて良かった。
このように、毎回の授業後に大福帳にコメントを記入することで、その日の授業の内容を整理する機会になっていたようです。大福帳を活用する目的の一つに、授業内容の理解と定着が挙げられます。授業内容を整理し、ふり返ることで深い理解に至れる可能性が、ほかの大福帳の実践と同様、今回の運用において示されました。

やり取りの一覧性

大福帳では、第1回から第13回の授業までの学生のコメントと教員からのコメントを一覧として見ることができます。この特徴について7件の記述が見られました。たとえば、下記のような記述です。
  • 手軽だし今までの自分の感想が一眼で見られるのでよかった。
  • 自分が各授業回で何を考えていたかをあとから見られて振り返りには適している。
  • 前回(あるいはもっと前)に何を学習したか、簡単に思い出すきっかけになるので、毎回のアンケートとそれに対するフィードバックよりも良いと思った。
  • 改めて大福帳を振り返ってみると、懐かしいなと思いつつ、学習の進歩が知ることができて良かったです。
このように、過去の自分のコメントを確認したり、学習内容を思い出すきっかけとして見る学生がいたようです。どのように学習を辿ってきたのかがわかるのは、自分自身の学びを自覚することになるのでよかったのではと思います。

教員とのコミュニケーション

大福帳では、学生がコメントを書くだけでなく教員も返事を書きます。そのやり取りに対する記述が2件見られました。
  • 全体の授業内で発言するのがあまり得意でなく、大福帳で先生とやりとりができたのはとても良かったです。
  • メリットとしては、毎回フィードバックをもらえる
大福帳は、学生と教員との個人どうしのやり取りになるため、授業中に質問できなかった学生が大福帳を使って質問したり、意見を述べることが可能です。また、コメントや質問に対する返事を書くことは、フィードバックを与えることになります。間違った理解をしていると思ったら返事の中で補足説明を行うこともあります。このように学生と教員とのコミュニケーションを行えるのは、やはり大福帳の大きな特徴です。学生もそれを実感していたようです。

大福帳の設問内容

今回運用した大福帳では、下の画像のように「新しく知ったこと」、「質問、もっと知りたいこと、そのほかコメント」の2つについて、毎回学生が記入していました。これについて、下記のような記述が7件見られました。
  • 教材作りに入ってからは新しく何かを学ぶというより作業が中心で大福帳に書く内容が少し困った。
  • 作業のパートなどで特に新しいことが起こらないときは書くことに困った。
大福帳を運用した授業では、授業の後半はグループでの議論や作業が中心になります。そのため、「新しく知ったこと」という質問に戸惑う学生が多くいたようです。もちろん、作業をする中で何かを新しく知ることもあると思いますが、そうでない場合が多かったということになります。 どのような設問にするかは要検討です。

提出の手間と操作性

今回の大福帳は、Google ClassroomとGoogleスプレッドシートを用いて運用しました。大福帳提出の手間や操作性について、4件の記述がありました。たとえば、下記のような記述です。
  • ファイルを毎回提出するのは若干手間に感じた。
  • 単純にスプレッドシートへの入力がしにくかったというのはありました
提出の際にGoogle Drivemのファイルを探す手間や、スプレッドシートに慣れていないといった点が操作性の課題として挙げられました。一方で下記のような記述もありました。
マイドライブから提出することに慣れると、スマホからも提出できたので便利だった。
ファイルの選択といった操作に慣れると、記入や提出が容易になるようです。

スケジュール

提出までの期間について、下記の1件の記述がありました。
もう少し猶予があると夜型の人間としては嬉しい。
この授業では、授業が水曜、大福帳の提出締切を金曜にしていました。この期間が短いという指摘です。これについては、締切まで時間があれば良い/悪いという問題でもないように思えます。教員としては授業の内容を忘れぬうちに、なるべく早くふり返りをして欲しいという想いもあります。難しいところです。

運用の改善

学生からのフィードバックを受け、運用を改善すべく、2021年度Aセメスターに開講する同一授業での大福帳の運用を下記のように変更しました。

設問内容

グループでの作業中心になると「新しく知ったこと」への記入が難しくなるとのことでしたので、設問を変更しました。 具体的には、「新しく知ったこと」を、「新しく知ったこと、作業のみの場合は その日やったことや感想」という設問に変更し、作業のみ行った授業回でも、学生自身が何をしたのかという、自身の経験をふり返られるようにしました。まだ作業のみの授業回はないので、この変更により戸惑いがなくなるかどうかはわかりません。今学期も学生に感想を求め、検証してみたいと思います。

提出方法

ファイルを探す手間や、スプレッドシートの操作性といった課題が挙げられました。スプレッドシートでの運用から、エクセルファイルの配布での運用に変更しました。 第1回授業時に、エクセルファイルで作成した大福帳のテンプレートを、Google Classroomの「課題」で「全員にコピーを作成」で学生に配布し、記入、提出してもらいます。ファイルへの記入については、
配布したエクセルファイルをGoogleスプレッドシートで編集してもよいし、ファイルをダウンロードしてパソコンで記入してからファイルをアップロードして提出でもOK
と学生に教示して、学生自身のやりやすい方法で記入・提出してもらうことにしました。この方法についても、学生に意見を聞いてみたいと思います。

おわりに

今回は、一学期間運用した大福帳について、学生の感想をもとに変更した内容を紹介しました。この変更が本当に「改善」となったのかどうかは、現時点ではまだわかりません。また学生に感想を尋ね、運用が改善されたのかどうかを確かめたいと思います。

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:アクティブで双方向的な授業のヒント」開催報告

2021年9月8日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:アクティブで双方向的な授業のヒント」を開催しました。定員を超える方々の申込みがあり、当日は13名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

3月に開催したオンラインワークショップでは、「オンライン授業では学生の様子がわかりにくいこと」や「学生の状態を把握しにくいこと」、「学生からの反応がないこと」、「学生との信頼構築」など、教員と学生とのコミュニケーションや双方向性の確保に関する課題が多く挙げられました。 そこで、本ワークショップでは、オンライン授業における学生の状況把握やコミュニケーションといった双方向性を保ち、授業をアクティブにするためのポイ ントや手法について理解すること、具体的な手法や研究知見を参考にしつつ、グループでのディスカッションやワークを通じて情報共有や課題解決を目指すことを目的としました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いの自己紹介とワークに取り組みました。ワークでは、教員と学生とのコミュニケーションや双方向性の確保に関する3つの課題への対処法について、参加者の経験やアイデアに基づきGoogleスライドを使いながら議論しました。全体での共有の後、ミニレクチャではTPACK(Technological Pedagogical Content Knowledge)の枠組みを紹介し、テクノロジに関する知識だけでなく教育学的な知識も重要であることを確認しました。そして、ワーク2では、ジグソー法を使ってアクティブラーニングに関する教育学的な知識を学ぶことを伝え、各自が担当する資料を決めました。 休憩を挟んで後半は、ジグソー法を用いたワーク2を行いました。まず、アクティブラーニングの手法、アクティブラーニングに関連する理論や知見、授業運営のポイントの3つの資料のグループに分かれてエキスパート活動を行いました。その後、ワーク1のグループに戻ってジグソー活動を行い、ワーク1と同じ課題への対処法を検討しました。 最後に全体で議論内容を共有し、オンライン授業と対面授業との接続やワークショップ全体のふり返りを行ってワークショップを終えました。

当日の様子と参加者の反応

ワークショップでは、どのグループも活発に議論していました。参加者からは、「同じ悩みを共有しているあらゆる分野の先生方とお話しできてよかったです」や「さまざまな先生が色々ご苦労されていることを知って孤独感からは解放されました」といったコメントがあり、本ワークショップが、オンライン授業で陥りやすい教員の孤独感の解消の一助となったと思われます。 また、「自分の授業を振り返り、改善点は多々あるはずだと自覚はあったものの、想像以上に改善方法を学ぶことができました」や「授業のデザインが重要だということは初めて意識するようになりました」、「様々なテクノロジーを組み合わせればオンラインの特徴を生かしたアクティブラーニングができることがよくわかり、そのショーケースとして、このワークショップは非常に参考になりました」といった声が聞かれ、ワークショップそのものや内容が、授業デザインや授業改善、オンライン授業におけるアクティブラーニングの導入に役立った可能性が示されました。 一方で、「グループワークの時間が短く感じた」、「参加者同士の対話を長く」といった声が聞かれました。グループワークでは参加者どうしの意見交換が非常に活発で、それゆえ、時間が足りないという感想に繋がったものと思われます。また、さらに実践的な内容を望む声もいくつか聞かれました。こうしたご意見は、今後のワークショップや情報発信の検討に役立てていきたいと思います。  

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

オンライン授業でポスターセッションアレンジ版で発表

オンライン授業での学生による成果物発表、どのようにされていますか?少人数のクラスであれば、Zoomのメインセッションでグループもしくは学生が交代で画面共有などして発表するかもしれません。大人数でのクラスの場合、いくつかのグループに分けてブレイクアウトルームを設定し、そのグループ内で発表してもらうこともあるかもしれません。 対面授業での発表形式の一つに、ポスターセッションがあります。ポスターセッションは、学生が一人ずつ、もしくはグループでポスターを作り、ポスター発表と他のポスターへのコメントを授業中に行う活動です(+15 minutes pp.40-41)。特に、グループでポスターを作成した場合は、一人のメンバーを説明者としてポスター前に配置し、残りのメンバーは他のグループのポスターを閲覧して内容を検討するやり方を行うこともあります。 今回は、グループでポスターを作成した時のポスターセッションのやり方を援用した、オンライン授業での学生による成果物発表のやり方を紹介します。

発表方法の概要

ここでは、クラスに5グループ(1グループ3〜4名)ある授業での発表方法を想定します。各グループで作成している成果物の中間発表を行い、各グループの成果物について進捗状況の共有や工夫している点、困っている点を発表を通じて共有し、他グループの学生からコメントをもらったり、他グループの成果物の良い点に気づけるような機会を設定します。さらに、それらを踏まえて自分たちの成果物の改善点を明らかにすることを目的とします。またグループのメンバー全員が発表に関わってもらえるよう、全員に発表機会を与えることも目指します。 これらをまとめると、発表方法を検討する際の要件は下記になります。
  • クラスには、5グループ(1グループ3〜4名)ある
  • 他の学生からのコメントを得られるようにする
  • なるべく多くのグループの様子を見てもらえるようにする
  • 全員が何かしらの発表や質問への回答を行える
  この要件を満たすため、ポスターセッションのやり方を援用し、次のような発表を行うことにしました。
  • クラスを3つの大グループにわける→1グループ4名の場合、1つの大グループに同じグループの学生が2名いる場合もあり、その時は1人は発表、もう1人は発表の補足や質問への回答を行う
  • それぞれの大グループには、5グループの学生が一人ずつ入る→1つの大グループは、グループA, B, C, D, Eの各メンバーで構成される
  • 大グループごとにブレイクアウトルームを設定する
  • ブレイクアウトルームでは、5グループの学生が順番に発表し、その発表に対して互いにコメントし合う
  • 大グループでの発表・相互コメントの後、自分のグループに戻り、得たコメントや質問、他グループの成果物に対する感想や参考になる点を共有し、自分たちの成果物の改善点について議論する
なお、大グループでの発表については、相互評価を行えるチェックシートを使います。その詳細については、こちらをご覧ください。

授業前の準備

発表時間を決める

1コマで発表を行う場合、どのくらいの時間を発表時間に使えるか、時間配分を検討します。たとえば、90分の授業のうち、中間発表に使える時間が50分だとすると、1グループ10分が持ち時間になります。その10分のうち、4分で発表、6分で質問・相互コメントを行う…といった設定を行います。 今回は、中間発表後に各グループに戻ってコメント共有をしますので、たとえば、90分を次のように配分します。
時間配分 授業内容
15分 導入(学習目標・授業の流れの説明、発表方法の説明など)
55分 中間発表(大グループでの発表、質問・相互コメント)
15分 各グループでの情報共有
5分 まとめ、次回授業の予告など
導入は実質10分の予定ですが、ブレイクアウトの準備のため余裕を持って15分としました。中間発表も同様に、実質50分ですが余裕を持って55分を想定しています。

大グループでの運営方法を決める

3つの大グループに分かれた後、発表がスムーズにいくような運営方法を検討しておく必要があります。1グループあたり「4分で発表、6分で質問・相互コメント」であることを学生に伝えることはもちろんのこと、発表順や進行役を決めておくことも欠かせません。 また、この形式を取る場合、TAがいるかどうかが運営に大きく影響します。TAがいる場合は、大グループに入ってもらい、進行役を担ってもらうとよいでしょう。TAがいない場合が大変です。教室ですと、教員一人でも問題なく進められますね。オンライン授業ですと、大変です。 実は今回は、TAがいない状況でこの発表方法を実施しました。なにかトラブルがあった場合、あるいは発表運営がうまくいかない場合にすぐにフォローできるようにしておかねばなりません。そのため、今回は、3台の端末(パソコン/タブレット)を使いました。3つの大グループのうち、1つのグループはメインセッションで発表などしてもらい、残りの2グループを2つのブレイクアウトルームに割り当てます。3台の端末のうち、2台の端末でそれぞれのブレイクアウトルームに参加し、状況をモニタリングすることにしました。

相互評価のためのチェックシートを用意する

相互コメントの観点を明確にするため、相互評価チェックシートを用意しました。これについての詳細は、こちらをご覧ください。

成果物の共有方法を決める

学生は、自分のグループで作成した成果物について発表します。その成果物をどのようにほかの学生たちと共有するかを決めておきます。成果物の内容・種類によっても共有方法は異なると思いますが、たとえば、発表時に画面共有で提示してもらう、というのも一つの方法です。 今回は、Google Driveにすべての成果物がありましたので、授業開始前の時点の成果物を「中間発表用フォルダ」にコピーし、相互閲覧できるようにしました。その時、コピーした成果物の編集権限を「閲覧のみ(コメント可)」に設定しました。これは、中間発表前までの成果物と、その後の改善した成果物との違いがわかるようにするためです。授業の最終回で学生たちが学習プロセスを振り返ることを予定していたため、中間発表時点での成果物が確実に残るようにしたのです。

授業中の運営

中間発表用の大グループを設定する

中間発表では3つの大グループにわかれます。授業開始後、各グループから最低1人のメンバーがそれぞれの大グループに入るよう、ブレイクアウトを設定します。

中間発表の様子をモニタリングする

3台の端末を駆使して(?)、それぞれの大グループの様子をモニタリングします。うまく進んでいない場合は、適宜介入します。 またトラブルなど起きた場合は、「ヘルプを求める」を押してもらうように学生に伝えておきます。ヘルプを求められた場合は、その大グループにいき、対処します。

時間管理について通知する

発表を時間どおりに進めるため、1グループ目の発表時間が終わる頃にブレイクアウトの機能を使って全員にメッセージを通知します。同様に、次のグループに移るぐらいの時間にも通知を出します。

各グループのブレイクアウトを設定する

中間発表後、各グループに戻って情報共有しますので、そのためのブレイクアウトを設定します。TAがいない場合は、ブレイクアウトを設定している間は、「中間発表でもらったコメントや他グループの様子をふり返ってください。グループに戻ったらどんなことを共有するか考えておいてください。」と学生に伝え、考える時間を作ります。

授業後にやること

授業中は、中間発表に対して、教員から十分にフィードバックすることができません。そのため、授業後に各グループの成果物にコメントなどするとよいでしょう。また、各ブレイクアウトルームの様子を各端末でレコーディングすることもできます。各ブレイクアウトルームでの中間発表をレコーディングしておき、授業後に改めて様子を確認したり、フィードバックの参考にすることもできるでしょう。

この方法を使った感想

多くのグループの発表に触れられる

この方法を試行した授業での成果物は、ほかのグループの成果物を見ることで自分たちの成果物の質を高められる性質のものでした。そのため、なるべく多くのグループの成果物を見る機会を作ることが、最終的な成果物作成に有用でした。 学生からの授業後のコメントでもほかのグループの進捗や成果物が参考になったという意見が得られており、この方法で中間発表を行ったことで、その目的は達成できたと考えられます。

全員が発表の機会を持てる

オンライン授業に限らず対面授業においても、グループワークに積極的に参加しない、フリーライダーになってしまう問題があります。全員が発表することは、自分のグループの活動内容を把握し、グループワークを自分事と捉えられる機会になりえます。その点において、この方法は良いなと思いました。

グループの数が多い場合どうするか

今回は、クラスに5つのグループがありました。もし、10以上のグループがあった場合、どのように運営するのかについては検討が必要です。特に、大グループの組み方を工夫する必要があるのですが、場合によっては大グループ自体が5つなど多くなる可能性もあります。大グループが多くなると、TAがいたとしても発表運営が難しくなるでしょう。 グループの数が多い場合は、授業の学習目標到達のために、何を優先するかを見定めて運営方法を決める必要があります。たとえば、より多くのグループに触れることを優先するのか、それとも全員が発表する機会を優先するのかで、運営方法が変わってきます。それらが学習目標到達のためにどのように影響するのかを検討して運営方法を決めるのがよいでしょう。 一方で、対面授業の場合は状況が変わります。対面授業では、教員が一人で授業運営していたとしても、それぞれの大グループの様子を俯瞰的に見ることが可能です。もちろんグループ数にもよりますが、オンライン授業とは異なり、グループの数が多くなっても運営しやすいと考えられます。

モニタリングが大変

上記のグループの数が多い場合や、TAの活用にも関連することですが、複数のブレイクアウトルームをモニタリングするのはなかなか大変です。3台の端末の音量を小さくしたり、大きくしたりして、優先的に視聴するブレイクアウトルームを切り替えてモニタリングするのですが、トラブルが生じたりすると混乱しがちです。TAや、手助けしてくれる人がいる方が、安心です。

TAがいたほうが良い

大グループでの発表運営を円滑に行うためには、TAがいたほうがよいです。大グループの数によっては、教員一人でも運営できます。大グループが多くなればなるほど、TAがいたほうが、トラブル時に対処しやすくなりますし、安心です。また発表に対するフィードバックという観点でも、TAがいて学生の発表にコメントしてもらえるようにしておくと、学生の学びを深めることに繋がると思います。   今回は、ポスターセッションのやり方を援用したオンライン授業での発表方法を紹介しました。発表の目的や、学習目標との関連によって、どのような方法がいいのかを検討・決定していくことが重要だと思われます。

オンライン授業で相互評価

オンライン授業で相互評価を行うにはどのようにすればよいでしょうか?学生どうしの教え合い・学びあいの手法の一つとして、相互評価があります。相互評価は、レポートのピア・レビューとして行われることが多いですね(+15 minutes p.23)。 ここでは、オンライン授業での学生による口頭発表の相互評価を行う方法について紹介します。

授業前の準備

やり方を考える

発表の方法を決めた後、相互評価の方法を決めます。 発表は、個人なのかグループなのか、1人(1グループ)あたりの発表時間はどれくらいなのか、何を発表してもらうのか…といった発表の概要を決めた後、相互評価を行う時間と手順を来ます。 実際にオンライン授業で行った際は、こちらの記事で紹介したポスターセッションアレンジ版での発表の際、相互評価を行いました。具体的には、1グループが口頭で発表した後、学生一人ひとりが評価シートに記入する時間を設け、さらにその後でコメント・議論を行うという流れで実施しました。

評価シートを作る

発表内容や方法にあわせて、相互評価に用いる評価シートを作成します。 評価シートは、発表の目的によっても項目が変わってきます。今回はポスターセッションアレンジ版での発表の際を具体的には取り上げます。この時は最終的な学習成果物の中間発表という位置づけでした。そのため、学習成果物の質的な評価の項目に加えて、改善したほうが良い点といった自由記述の項目も設定しました。 また、学習成果物の質的な評価の項目は、すでに授業で扱った内容に基づいて設定しました。今回の授業では、最終的な学習成果物は「教材づくり」でした。教材開発の理論やポイントを授業でも扱っていましたので、中間発表の評価項目には教材開発のポイントを押さえているかどうかを相互評価してもらいました。

評価シートの配布方法を決める

今回は、グループでの成果物の発表に対する相互評価でしたので、グループごとに評価シートとなるGoogleスプレッドシートを設定しました。そのスプレッドシートに評価シートをコピーして、発表者以外の学生や教員が評価できるようにしました。少しわかりにくいので例を出します。 こちらの画像のように、発表を行うグループごとにスプレッドシートを用意し、さらにその中に評価者ごとにシートを作り(画像下部の「評価者名」のあたり参照)、相互評価できるようにしました。スプレッドシートなので、多肢選択式の評価を行う時は「データの入力規則」を設定すれば、プルダウンで選択肢を選択できます。雛形となるシートを作った後、評価者の人数分そのシートをコピーすれば相互評価の準備は完了です。 ※選択肢をプルダウンで設定する方法はこちらをご覧ください。

学生への教示内容を決める

相互評価の手順をどのように学生に伝えるかを考えます。グループごとに評価シートがあることや、学生自身がどの評価シートを使えばよいのか…といったことが少し複雑ですのでわかりやすく手順を説明できるようにしっかりと考えておきます。

授業中の運営

学生に相互評価の手順を説明する

発表の仕方と併せて、相互評価の方法を学生に伝えます。また発表や相互評価の目的も伝えます。今回の場合では、「教材設計の理論やポイントに則って教材を開発できているか(質を確保できているか)の確認と改善点を明らかにすること」を目的としていました。

評価シートのリンクを共有して開いてもらう

相互評価の手順とともに、評価シートのリンクを共有して開いてもらいます。実際の評価シートを見てもらうことで、手順もよりわかりやすくなります。

トラブルがあれば対応する

うまく評価シートを開けない、誤った評価シートを使ってしまう等あれば、都度対応します。

この方法を使った感想

発表を能動的に聞ける

集中して聴ける場づくりのコツとして、発表へのコメントを求めるというものがあります。相互評価はまさにこれにあたります。評価シートを書くために能動的に他者の発表を聞く姿勢になります。 また、学生からは、他者の発表を聞いて評価することで、自分たちの学習成果物の改善点に気づくことができたといった感想が得られました。能動的に発表を聞き、相互評価を行うと、評価される側は意見を得られますし、評価する側も自身の学びをふり返り気づきを得られます。

評価シートの記入時間を考慮する

評価シートの項目が多すぎると、たとえそれが「はい」「いいえ」での選択式だったとしても想定以上に時間がかかります。評価シートの記入時間を多めに確保しておいたり、評価項目の数を絞っておくといった工夫が必要です。 学習成果物によっては評価の観点を明示することが必要な場合があります。できればそれらの観点を評価シートに組み込むのが理想ではありますが、評価項目の数を絞りたい時は、観点を別途学生に伝え、コメントのみを記入してもらう、という方法もあるでしょう。

フィードバックのタイミングでツールを選ぶ

今回の授業では、相互評価の内容をすぐに学生にフィードバック(共有)したいという希望がありました。そのため、Googleスプレッドシートを直接学生たちと共有し、評価してもらう方法を選びました。 相互評価の結果を学生とすぐに共有する必要がない場合であれば、Googleフォームなどフォームを使って評価やコメントを送信してもらう方が楽かもしれません。その場合、授業後に、フォームで送られた内容をグループや個人ごとに分けたり、共有したり…といった作業が必要になります。 フィードバックのタイミングや作業の手間を踏まえて、相互評価のツールや手順を検討するとよいでしょう。  

オンライン授業でジグソー法を行う

「ジグソー法(ジグソー・メソッド)」は、あるトピックやテーマについて複数の視点で書かれた資料をグループに分かれて読み、自分なりに納得できた範囲で説明を作って他の人とその情報を交換し、交換した知識を統合してテーマ全体の理解を構築する手法です(+15 minutes p.34)。具体的な実施手順は、こちらの動画をご覧いただくとわかるかと思います。 教室で行われる授業では、複数の資料を紙に印刷してそれぞれの資料を担当する学生(エキスパートグループ)に配布し、読み込んでもらった後、グループを組み替えて(ジグソーグループ)、テーマについて議論を行います。 オンライン授業でもジグソー法を実践することはできるでしょうか。ここでは、具体的な方法をお伝えします。

授業前の準備

資料の準備と問いの設定

エキスパートグループで使う資料を準備します。またジグソーグループで議論するテーマや問いを考えます。これらは、教室で行う場合と同様です。

ジグソーグループでの議論のアウトプット方法を考える

教室で行う授業の場合は、ジグソーグループで議論した内容をワークシートや模造紙、ホワイトボードなどに書き出すことが多いと思います。オンライン授業で行う場合も、アウトプットしてもらうことがあるでしょう。特に、オンライン授業で各グループの進捗状況を把握するには、何らかのアウトプットをしてもらい、教員やTAがそれを見て把握することが、介入に有効だと思われます。 たとえば、Google ドキュメントやGoogleスライドなどを学生と共有、共同編集可能な状態にして、そこに議論した内容を書き出してもらうことができます。あらかじめ、議論してもらう問いを記入しておくと、ブレイクアウトでグループにわかれ、教員の指示が届きにくくなったとしても、学生はスムーズに議論を進められるでしょう。 また、議論をオンライン上にアウトプットする際、対面授業での議論とは異なる注意点があります。それは、「しっかりと口頭で議論してからGoogleドキュメントなどにまとめること」です。学生のグループによっては、口頭での議論を行わずに、問いに対する自分の考えをGoogleドキュメント上に書き出したり・・・といった状態になるかもしれません。もちろん思考の可視化という点では有効ではありますが、議論して考えを深めるという点では十分ではないと思われます。 そのため、「まず最初に口頭で議論してからドキュメントにまとめる」という指示を出したり、あるいは、ドキュメントにまとめる役割の人を設けたりするとよいでしょう。

資料の共有方法、アウトプットのファイルの共有方法を考える

どのように資料などを共有するかを考えましょう。 多くの場合は、LMSにアップロードするのではないかと思います。ご自身の授業の環境にあわせて方法を考えてみてください。

授業中の運営

手順の説明

ジグソー法は、エキスパート活動とジグソー活動とでグループの組替えを行います。少し複雑になりますので、手順をしっかりと学生たちに伝えることが大切です。 たとえば、下記のような図を使うとわかりやすいかもしれません。 クリエイティブ・コモンズ・ライセンス このジグソー法の手順を説明するイラストは クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。 ※ 本ウェブサイトのコンテンツのうち、このイラストについては、CC-BY 4.0 の下で利用いただけます。どうぞご自身の授業などでお使いください。

資料の選択

学生に資料を選択してもらいます。資料のタイトルを提示し、必要であれば口頭で説明した上で、担当を希望する資料を選んでもらいます。 その時、Zoomなどの表示名を変更してもらうとよいでしょう。たとえば下の画像のように、「資料名_氏名」といった表示名にしてもらうと、誰がどの資料を希望しているのか、担当しているのかがすぐにわかります。 人数に偏りがある場合は、別の資料に変更してくれるボランティアを募るなどして調整しましょう。

ブレイクアウトルームの準備

エキスパート活動のブレイクアウトの準備を行います。表示名を参考に、同じ資料の学生どうしでグループを組むように設定します。1グループ 3〜4名だと、学生も話しやすいでしょう。 TAがいる場合は、TAにブレイクアウトの準備を行ってもらうと、すぐにブレイクアウトの活動=エキスパート活動に移れます。TAがいない場合は、自分が担当の資料を読んでもらい、その間に教員がブレイクアウトを準備すると、時間のロスがなくなります。

エキスパート活動のアウトプット

エキスパート活動では、資料の内容について、何が書かれていたかの確認や、ジグソー活動でどのように説明するか、といったことを議論します。エキスパート活動でも議論内容をメモできるドキュメントを用意しておくと、ジグソー活動での説明を行いやすくなります。

ジグソー活動の説明とブレイクアウトルームの準備

エキスパート活動が終わったら、いったんクラス全体(メインルーム)に戻り、ジグソー活動に移ることを説明します。 そして、教員はジグソー活動のブレイクアウトルームを準備します。各資料が組み合わさるように、表示名を参考にしてグループを組みます。TAがいない場合は、時間のロスを防ぐため、「ジグソー活動で自分の資料についてどのように説明すればよいか考えて準備する」ことを学生に指示し、その間にブレイクアウトルームを準備します。 そして、ジグソー活動に移ってもらいます。

この方法を使った感想

学生を待たせない工夫

初めてオンライン授業でジグソー法を行った時は、ブレイクアウトの準備に手間取り、学生が待機してしまうことがありました。途中で、学生への指示(資料を読む or 説明の準備)をするようにしたので、「学生がボーッと何もしない時間」というのをなくすことができました。

学生の状況がわかる

予備端末でブレイクアウトルームを巡回すると、グループでの話し合いの様子がわかります。また、アウトプット(Googleドキュメントなど)の状況を確認することでも、進捗やどのような議論が行われているのかを把握することができます。 対面授業とは異なるやり方ではありますが、必要最低限の状況は把握できそうです。

反転授業として行える

各自の資料の読み込みを事前学習として行い、授業ではエキスパート活動の議論から始めることもできます。特に、資料を読むだけでなく調べ学習も必要な場合は、事前学習として資料の読み込みと調査を行ってもらうとスムーズに授業を進められそうです。

資料の媒体を選ばない可能性

教室でジグソー法を行う時は、プリント教材、テキスト教材を資料として使うことが多いのではないでしょうか。一方、オンライン授業の場合、学生たちの手元にはパソコンやスマホがありますので、資料として使える媒体が多様になるでしょう。 たとえば、動画をエキスパート活動の資料として各自の端末で視聴してもらう・・・といったことを行えます。教室で行う場合は複数のパソコン等の端末が必要になりますし、手間という観点では、オンライン授業でのジグソー法のほうが少ないかもしれません。

人数が多いとブレイクアウトルームの準備が大変

今回は、15〜20名のオンライン授業でジグソー法を使いました。エキスパート活動、ジグソー活動ともに5〜6グループでしたので、ブレイクアウトルームの準備は容易でした。 人数が多くなると、その準備が大変になりそうです。TAに準備してもらったり、学生を待たせない工夫がより重要になるかもしれません。

オンライン授業でも十分行える

「オンライン授業でジグソー法」と聞くと、「できるのかな?」「無理じゃないの?」と感じられる方もいるかもしれません。実際にやってみると、オンライン授業でも十分に行えるということを実感しました。 オンライン授業では、対面授業以上に授業をアクティブにすることが大切です。講義ばかりですと、学生の集中力は持ちません。そんな時にジグソー法はとても有効だなと感じました。講義しようと思っている内容を分割してジグソー法で学生どうしで情報共有や意見交換してもらうことで、学生は集中して授業に参加できます。 また学生どうしの説明について内容の正確性に不安があるのであれば、補足資料として講義動画を用意しオンデマンド配信することもできます。 オンライン授業での講義・説明をアクティブにする方法として、ジグソー法を使ってみてはいかがでしょうか?  

オンライン授業で大福帳を使う

「大福帳」は、学生が授業をふり返ったり、学生と教員がコミュニケーションできる手法で、出席の促進や積極的な受講態度、信頼関係の形成、授業内容の理解と定着を図れます(参考:「+15 minutes」p.26)。 教室で行われる授業では、13回の授業分の記入欄を作ったカードを学生に配布し、学生がコメントを記入して提出、そこに教員が短い返事を書いて次回授業時に返却…ということを繰り返します(参考:13回用の大福帳(Excelファイル))。 それでは、オンライン授業では、大福帳は活用できないのでしょうか。オンライン授業は、教員と学生のコミュニケーションが不足しがちです。オンライン授業でも大福帳を取り入れることで、学生の理解度や質問を把握して回答でき、さらにコミュニケーション機会を得ることもできるでしょう。 須曽野ら(2006)は、ウェブでコメントを読み書きでき、学習者どうしもコミュニケーションできる「電子大福帳」を開発しています。向後(2007)は、eラーニングシステムのテスト機能を使った「e大福帳」をeラーニング授業に導入し、学生が感じる孤独感の軽減などの効果を述べています。一方で、自分の履歴を一覧で確認できないといった改善点を挙げています。また、伊豆原・向後(2009)では、大福帳の機能を「レビューシート」という名前でLMSに実装してeラーニング授業で利用し、授業評価への効果を検討しています。さらに、早川(2017)は、「オンライン版大福帳」のウェブアプリケーションを開発しており、サービスとして提供しています。  

オンライン大福帳に必要な要件

「オンライン版大福帳」は便利に使えそうです。しかしここでは、大学で提供されているプラットフォームを使うことを目指したので、今回は使わないことにしました。(補足:オンライン版大福帳は、LMSとの連携も行えるそうです。これを行えば、大学で提供されているLMSでも利用できそうです。) ここで求めるオンライン大福帳の要件は下記になります。
  • 大学で提供されているプラットフォームを使って行える(登録などのレクチャーを減らしたい!)
  • 学生がコメントなどを記入できる
  • 教員が返事のコメントを記入できる
  • 学生のコメント、教員のコメントの履歴が1枚にまとまっている
  • 大福帳を閲覧できるのは、その学生と教員だけ
  • 終了した回のコメントは編集できないようにしたい
  これを満たす方法はないものか…エクセルを毎回提出してもらう方法、Google スプレッドシートを提出してもらう方法、LMS(東大の場合ITC-LMS)の掲示板での投稿など、様々な方法を考えました。そして最終的に、Google ClassroomとGoogle スプレッドシートを使った大福帳を試すことにしました。

Google Classroomを使った大福帳の実施手順

手順について説明します。 1.Google スプレッドシートで大福帳のテンプレートを作成する   2.【初回授業】Google Classroomの課題で大福帳のテンプレートを配布する   3.提出された大福帳にコメントを書く 4.すでに終わった授業回のコメント欄のセルを「保護」し、教員のみに編集権限を設定する   5.大福帳(課題)を返却する 6.【2回目以降の授業】Google Classroomで大福帳提出の課題を設ける →すでにスプレッドシートは初回授業で配布してますので、Google ドライブ上の初回授業で使った大福帳のスプレッドシートを提出するように指示します。 7. 3.〜5.を行う

この方法を使った感想

実際にこの方法を試してみて、気づいた点、良いなと思った点を紹介します。

スプレッドシート(テンプレート)の配布が容易

Google Classroomの「課題」では課題作成のページで、Google スプレッドシートをどのように提供するかを選択できます。そこで「各生徒にコピーを作成」を選択すると、テンプレート(Google スプレッドシート)が自動的に学生のGoogleドライブにコピーされ、そこに学生は記入など行えます(参考ページ)。 配布後に体裁を整える指示をしたり、コピーして保存することを求めるといったことをしなくて良いので楽だなと感じました。

権限の自動変更が便利

Google Classroomでは、課題の提出や返却を行うと自動的にドキュメントの権限が変更されます。課題提出後は教員だけが編集可能になります。その際に、コメント欄(セル)の「保護」を設定することができます。 これは、単にスプレッドシートを共有するだけではなかなか難しいので(教員がオーナーで各学生と共有すればできますが手間が発生します)、Google Classroomを使うことで得られるメリットだと思います。

返事のコメント記入の負担軽減

この方法での大福帳に限らず、電子的な大福帳を行う場合はすべて当てはまりますが、紙ベースの大福帳よりも返事を書くのが早く、楽にできます。今回は受講者20名ほどの授業で使いました。大講義の場合は、定型文を用意するなどすることで、負担増加を抑えられるでしょう。

コメントの分量に制限がない

また分量を気にしなくてよいのも利点です。手書きの場合だとコメント欄の「枠」が決まっていましたが、その制限がなくなるので学生も教員も長文のコメントを記入できます。 しかし、長過ぎるコメントは、読む側の学生のことを考えると避けたほうがよいでしょう。

Google Classroomのメイン使用

この大福帳を運用するならば、授業で使うプラットフォームはGoogle Classroomになるでしょう。大学が提供するLMS(東大の場合ITC-LMS)と併用することもできますが、複数のプラットフォームを行き来することになってしまいますし、使用するプラットフォームは一つにしておいたほうが混乱は少なくなると思います。 教員がGoogle Classroomを使ったことがない場合などは、このやり方はハードルが高くなるかもしれません。 また中国からのアクセスができないといった状況もありますので、授業によっては利用できないことがありそうです。

今後の予定

この大福帳は、Sセメの授業で使い始めたばかりです。運用上の課題など出てきましたら追記します。 また、学生にも使い勝手など感想を聞いてみたいと思っています。その結果もいずれこのサイトでお知らせします。  

参考文献

  • 須曽野仁志・下村勉・織田揮準・小山史己(2006)授業での学習交流を目指した「電子大福帳」の開発と実践. 三重大学教育実践総合センター紀要, 26, pp.67-72
  • 向後千春(2007)eラーニング授業でコミュニケーションカード「e大福帳」を使う. 日本教育工学会研究報告集, JSET07-5, pp.297-300
  • 伊豆原久美子・向後千春(2009)eラーニング授業におけるレビューシートの利用が授業評価に及ぼす効果. 日本教育工学会論文誌, 33(Suppl.), pp.53-56
  • 早川美徳(2017)オンライン版「大福帳」を用いた授業改善. 大学ICT推進協議会 年次大会論文集 https://axies.jp/report/publications/papers/papers2017/
 

オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:1年間のふりかえりと課題解決のヒント」

2021年3月10日、東大で授業を担当されている先生方を対象に、オンラインワークショップ「オンラインでこそアクティブラーニング:1年間のふりかえりと課題解決のヒント」を開催しました。定員を超える方々の申込みがあり、当日は17名の方が参加されました。ここでは、当日の様子を報告します。

目的

本ワークショップは、1年間のご自身の取り組みをふり返り、授業でうまくできたことや課題を思い出して共有し、さらにオンライン授業をアクティブにすることについて検討することを目的としました。また、本ワークショップを通じて、オンライン授業をアクティブにすることについてのヒントを参加者が持ち帰り、2021年度のオンライン授業への不安軽減を目指しました。

内容

趣旨説明の後、参加者はグループ(ブレイクアウトルーム)に分かれて互いに自己紹介を行いました。そして、オンライン授業の課題をグループごとに共有しました。「アクティブラーニング」や「アクティブにすること」についてのミニレクチャを挟んだ後、課題の分類と解決方法についての議論を行い、グループごとに議論の内容を発表しました。最後に、オンライン授業をアクティブにすることについてミニレクチャを行い、ワークショップを終えました。
  1. 開会の挨拶・趣旨説明 14:00-14:10
  2. 自己紹介 14:10-14:25
  3. ワーク(課題の共有と分類)、ミニレクチャ(アクティブにするとは?) 14:25-15:20
  4. 休憩 15:20-15:35
  5. ワーク(課題解決の議論と発表)、ミニレクチャ(課題解決のヒント) 15:35-16:25
  6. 閉会の挨拶 16:25-16:30

当日の様子と参加者の反応

ワークショップでは、どのグループも活発に議論していました。参加者からは、「同じ問題に悩んでいることがわかってほっとした」や「いいアイディアをもらった」といった感想が聞かれました。オンライン授業の運営は孤独になりがちです。本ワークショップでの課題共有や議論がそれを解消する一つの機会になったのであれば幸いです。 ワークショップ後にアンケートを実施しました(参加者17名のうち14名が回答)。「本ワークショップに満足されましたか」という質問に対しては全員の方が「とてもあてはまる」もしくは「ややあてはまる」のいずれかに回答されました(とてもあてはまる/ややあてはまる/あまりあてはまらない/まったくあてはまらないの選択肢から1つ選択)。また、「授業のふり返りに役立った」、「2021年度の授業準備・実施に向けて役立つものだった」、「本ワークショップへの参加を周りの教員に勧めたいか」という質問についても、全員の方が「とてもあてはまる」もしくは「ややあてはまる」のいずれかに回答されました。これらのことから、本ワークショップの目的はある程度達成されたと考えられます。 一方で、「2021年度の授業をアクティブにすることができそうか」、「不安が軽減されたか」という質問に対しては「あまりあてはまらない」という回答がありました。併せて、教員の実践状況にあわせたワークショップ(たとえば初級編や上級編など)や、手法の実践方法や事例といった、より個別テーマを深めるワークショップのご要望もありました。こうした結果を踏まえ、今後は、授業をアクティブにすることに寄与し、授業への不安軽減につながるワークショップを企画していきたいと考えています。 また、運営という観点では、グループワークにおける作業手順や時間の伝達といった点において不備がありました。ワークショップ中に改善できる点は改善しましたが、改めてオンラインでのワークショップ運営の困難さを痛感しました。今後のオンラインワークショップの運営に活かしたいと思います。

お問い合わせ

教養教育高度化機構アクティブラーニング部門 dalt[at]kals.c.u-tokyo.ac.jp ※[at]を@に書き換えて送信してください

オンライン授業でのアクティブラーニングに関するAL NEWSLETTERを公開しました!

アクティブラーニング部門では、AL NEWSLETTERを発行しています。 この度、オンライン授業におけるアクティブラーニングの課題や対策・工夫、授業支援、学びを深めるポイントなどについて執筆したAL NEWSLETTERを公開しました。 こちらよりご覧いただけます!! 2021年度の授業を考えるご参考にしていただければ幸いです。

全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業」

授業概要

アクティブラーニング部門では2016年度より全学自由研究ゼミナール「学生がつくる大学の授業―反転授業をデザインしよう!」を開講しました。 反転授業とは、「授業と宿題の役割を『反転』させ、授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ、教室では知識確認や問題解決学習」などのアクティブラーニング活動をおこなう授業形態を意味します(重田 2013)。教室を「教わる場」から「より学ぶ場」に転換するアクティブラーニングを取り入れた教授・学習法のひとつといえます。 この授業では、学生が知識伝達型の授業を「反転授業形式」にデザインすることで、学生主体の学びのあり方について理解を深めるとともに、教授者の視点を得ることで、学習者としてより深く効果的に学ぶ方法を身につけることを目指しました。

授業の流れ

この授業では、前半で、反転授業の概要(特徴、教育効果、メリット・デメリット等)、授業デザインの技法、アクティブラーニング手法について、講義やワークを通じて学びました。中盤では、反転授業のコンテンツとなる知識伝達型の授業(ミニレクチャ)を受け、内容理解を深めました。ミニレクチャは、アクティブラーニング手法を取り入れた授業を展開している2名(文系1名、理系1名)の先生方に実施いただきました。後半は、ミニレクチャのコンテンツに関する反転授業を、理系2チーム・文系2チーム(1チームあたり2人)にわかれてデザイン・実践し、最後に、各チームの制作した反転授業を、フィードバックシートを用いて相互評価しました。​
表1 「学生がつくる大学の授業」概要
授業回 授業スケジュール
第1回 ガイダンス
第2回 反転授業とは
第3回 反転授業のデザイン方法
第4回 アクティブラーニング手法
第5回 ミニレクチャ(1)理系
第6回 ミニレクチャ(2)文系
第7回 反転授業デザイン(1)
第8回 反転授業デザイン(2)
第9回 コンテンツ制作(1)
第10回 コンテンツ制作(2)
第11回 対面授業(1)文系
第12回 対面授業(2)理系
第13回 振り返り
 

学生たちの活動

この授業では、受講生は、授業デザインの技法、アクティブラーニング手法、動画制作の技能を学び、(1)授業デザインシート、(2)動画教材(約6分)、(3)対面授業の配布物(スライド、ワークシート等の補助教材)を制作し、(4)対面(模擬)授業(30分)の実施に取り組みました。 授業デザインの技法やアクティブラーニング手法は、講義で学んだだけで身につけられるものではないため、実際に体験してみたり、繰り返し練習する機会を毎回の授業で設けて、実践力を高められるようにしました。

学生たちの反応

授業後のアンケートなどでは、受講生から下記のような感想が得られました。 ・アクティブラーニングを取り入れた授業は、学⽣の思考や積極的発言を促すことを学んだ ・(教員中心で)予定調和的に教えるのでもなく、(学生中心で)まったく指導しないのでもない教え方を実践するのが難しかった ・授業づくりを通じて、授業(ミニレクチャ)の内容に対する理解が深まった ・教員の意図や期待により意識的になり、自身の学習態度が変わった ・受講している他の授業でも、より意見を述べるようになり、教員から授業改善のアイディアを聞かれるようになった

参考文献

重田勝介(2013). 反転授業 ICTによる教育改革の進展. 情報管理, 56 (10): 677-684. (小原優貴・福山佑樹・吉田塁)