オランダは国土のおよそ1/4が海面下に位置しており、そのうちのほとんどはポルダーと呼ばれる干拓地です。オランダのランドマークとなっている風車はそれらの土地から水を汲み出すための装置で、これが止まると大変なことになってしまいます。治水は水管理委員会という独立行政機関によって行われており、海岸地域の国土は基本的に国や自治体が管理している国有地です。運営は国営事業として行われ、土地を賃借制度という形で管理し用途を画一的に指定することが出来ます。これによってオランダの整った景観が実現されており、またこのシステムこそオランダがデザインを基幹産業として育成することに成功した鍵でした。農業や工業といった産業を主と出来なかったオランダがデザイン先進国として発展することができた背景には、こういったインフラの整備が欠かせなかったのです。
そしてオランダのデザイン産業にも同じようなクラスタが形成されています。中身はというと、自治体がある区画に対して都市計画を立てるとき、その設計やデザインの仕事を国内の若手デザイナーや建築家へと斡旋するというのが基本的な構造です。
もちろん一方で国は、国内外で活躍できるデザイナーを育成するための支援制度を整え、デザインスクールなどへの補助を行います。そして公共事業のような雇用を創出することによって、新進気鋭のデザイナーが活躍する場所を提供するのです。これは先ほど述べたように国や自治体が土地を管理しているからこそ可能になるのであり、日本でこのシステムが実現できるかと言えば相当に難しいのではないかと思います。
こちらのサイトは、ライデン大学医療センターで用いられている照明技術を紹介しています。
政府主導で回っているこのサイクルはもちろん完全なものではありません。若手デザイナーから成長し、ある程度名が売れるようになれば、自分の作品を自由に作ることが出来ないということに不満が出てきますし、雇用は若手デザイナーへと斡旋されるので、国内での仕事がなくなり必然的に国外へと活動の場を移していくようになります。とはいえ、このような循環型の産業構造も、サステイナビリティを体現したひとつの形だと考えることができるのではないでしょうか。奈尾先生の考えるサステイナビリティは、人工物のサイクルと自然物のサイクルをそれぞれ完全に独立させるというもので、今まで私たちが漠然と捉えていたものとは少し違った視点を提示されました。その話をされていたときの文脈はエネルギーの循環や食料の問題に関してのトピックでしたが、このような産業構造のサステイナビリティを考える上でも重要になってくることだと思います。
今回の講義では、都市計画の変遷をたどり、オランダ・モデルの都市計画の概要が説明されました。都市環境を持続可能なものとするためには、その空間で行われるサイクルも持続可能なものでなければならず、そのサイクルには産業も含まれる。今のオランダのデザイン産業がそのようなサイクルの中で出来上がったものだということには驚きました。人口も不動産の所有形態も違う日本で、このケースを直接あてはめることは難しいかもしてませんが、日本に持続可能な産業クラスタを形成するためにはどうすればよいのか考えてみたいと思います。
(文責:永島)
まずは「1.社会経済活動、GHG(Green house gas: 温室効果ガス) 排出」のフェーズで、人間社会の社会経済活動によって温室効果ガスの排出量が決まる(温室効果ガスの種類によっては自然由来のものも存在する)。
そして「2.炭素循環、大気中濃度」のフェーズに入り、大気中に排出された温室効果ガスは、大気、海洋中を循環しながら、大気中濃度を決定していく。
大気中の炭素濃度によって、「3.温暖化・気候変動」フェーズにあたる気温の上昇、海面上昇が引き起こされる。
その後、「4.人間社会、生態系への影響」フェーズに入り、海抜の低い地域の水没や種の絶滅、食料生産や水資源の変化といった影響が現れる。
それらに対し、5.から7.は人間社会の対応があげられている。「5.適応策」では、温暖化・気候変動した世界にあわせて適応するための政策や技術を進めることを示す。高潮や洪水に対する護岸整備、品種改良や遺伝子組み換えによる温暖化した気候下での作物の確保などがあげられる。
また「6.緩和策」は、温室効果ガスの排出量を抑制し、CO2 濃度を小さくするための政策、技術の導入を示し、省エネや再生可能エネルギーの推進、森林管理による吸収源の確保、排出量取引などの経済メカニズムの活用等が含まれる。
「7.社会システム」は、企業の取り組みや、人々の社会的価値観やライフスタイルの変化、教育など、国民・社会のあり方を表すフェーズである。社会の変容を経てまた1.のフェーズに入り、温室効果ガスの排出量は随時変化していく。
このように、これらの7 つのフェーズのサイクルを時間と共にらせん状に繰り返していきつつ、低炭素社会へと向かっていくものとする。
この温暖化マッピングを用い、温暖化研究の課題と研究成果に関する俯瞰的な分析が行われている。
出典:IR3S/TIGS 叢書No.2「サステイナブルな地球温暖化対応策」 (文責:山口ゆ)今回講演していただく住明正教授は地球温暖化問題に中心的に取り組んでこられました。 そこで、地球温暖化が引き起こされる流れとそれに対する人間社会の変遷をまとめたいと思います。
- 人為的な GHG 排出量と発生源はどう推移していくか?
- 炭素の大規模循環、濃度変化や、温暖化に関わる環境変動要因はどうなっているか?
- いつどのような気候変化、海面水位変化を生じるか?
- どのレベルの気候変化で人類・生態系に危機が生じるか?
- どのような適応政策が必要か?技術によってどこまで適応可能か?
- どのような緩和政策が必要か?技術によってどこまでGHG 排出を抑制できるか?
- 価値観、ライフスタイルをどう変化させられるか?
まずは「1.社会経済活動、GHG(Green house gas: 温室効果ガス) 排出」のフェーズで、人間社会の社会経済活動によって温室効果ガスの排出量が決まる(温室効果ガスの種類によっては自然由来のものも存在する)。
そして「2.炭素循環、大気中濃度」のフェーズに入り、大気中に排出された温室効果ガスは、大気、海洋中を循環しながら、大気中濃度を決定していく。
大気中の炭素濃度によって、「3.温暖化・気候変動」フェーズにあたる気温の上昇、海面上昇が引き起こされる。
その後、「4.人間社会、生態系への影響」フェーズに入り、海抜の低い地域の水没や種の絶滅、食料生産や水資源の変化といった影響が現れる。
それらに対し、5.から7.は人間社会の対応があげられている。「5.適応策」では、温暖化・気候変動した世界にあわせて適応するための政策や技術を進めることを示す。高潮や洪水に対する護岸整備、品種改良や遺伝子組み換えによる温暖化した気候下での作物の確保などがあげられる。
また「6.緩和策」は、温室効果ガスの排出量を抑制し、CO2 濃度を小さくするための政策、技術の導入を示し、省エネや再生可能エネルギーの推進、森林管理による吸収源の確保、排出量取引などの経済メカニズムの活用等が含まれる。
「7.社会システム」は、企業の取り組みや、人々の社会的価値観やライフスタイルの変化、教育など、国民・社会のあり方を表すフェーズである。社会の変容を経てまた1.のフェーズに入り、温室効果ガスの排出量は随時変化していく。
このように、これらの7 つのフェーズのサイクルを時間と共にらせん状に繰り返していきつつ、低炭素社会へと向かっていくものとする。
この温暖化マッピングを用い、温暖化研究の課題と研究成果に関する俯瞰的な分析が行われている。
出典:IR3S/TIGS 叢書No.2「サステイナブルな地球温暖化対応策」 (文責:山口ゆ)
- 人為的な GHG 排出量と発生源はどう推移していくか?
- 炭素の大規模循環、濃度変化や、温暖化に関わる環境変動要因はどうなっているか?
- いつどのような気候変化、海面水位変化を生じるか?
- どのレベルの気候変化で人類・生態系に危機が生じるか?
- どのような適応政策が必要か?技術によってどこまで適応可能か?
- どのような緩和政策が必要か?技術によってどこまでGHG 排出を抑制できるか?
- 価値観、ライフスタイルをどう変化させられるか?
昭和46年6月 東京大学理学部物理学科卒業 昭和48年3月 東京大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程終了 昭和48年4月 気象庁東京管区気象台調査課 昭和50年4月 気象庁予報部電子計算室 昭和54年2月 ハワイ大気象学教室助手 昭和56年5月 気象庁予報部電子計算室 昭和60年4月 東京大学理学部地球物理学教室助教授 平成3年7月 東京大学気候システム研究センター教授 平成7年10月 東京大学気候システム研究センターセンター長を兼任(16年3月まで) 平成17年8月 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構地球持続戦略研究イニシアティブ統括ディレクターを兼任 平成18年11月 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構・教授(特任教授を兼任)
Linking the lecture, you’ll be able to find the difference between your thought/the first impression and the fact comes from scientific surveys, researches and his speech. Maybe, you can find how to sustain good terms with your friends. We all hope you to learn about sustainability with us in this great opportunity.
(Report by Kitamura)
TSCPでは東京都環境確保条例を排出枠購入によらずに削減を達成することを目標としています。
対策を早期に実施する方が、東京都環境確保条例が求める平均の削減量に寄与が大きくなることから、TSCPではソフト面での対策を初期段階で徹底するとともに、各部局からTSCP促進費として光熱水費用の一部を上乗せ徴収して、各局のハード面でのエネルギー消費量削減対策に対する初期費用の一部に充当する仕組みを作ってハード面の対策の前倒しを促進しました。
ハード面の対策は実施する前にその有効性を検討する必要がありますが、大学においては異なる部屋であっても照明系は照明系でまとめるなどして配線が複雑になっているので、実際にそれぞれの部屋や機器がどの程度のエネルギーを消費しているのかを把握するのはとても困難です。
そのため、季節や時間帯に寄るエネルギー消費量の差からそれぞれの用途における消費量を推測することになります。大まかに言えば実験系3割、空調3割、照明2割、その他2割のエネルギーを消費しています。
このため全体の7割を占める非実験系での削減方法は一般にも応用可能ということができます。
上で述べたような計測の難しさをふまえてTSCPでは主に2つの異なるアプローチでハード面の対策を行っています。
1つは主に大型の機器を含む、多くのエネルギーを消費するシステムに対して短期計測でエネルギーの消費量をモニターして、より最適なシステムを構築して運用改善するという方法です。
もともと2台の熱源設備で運用していたシステムに対して、新館を設置したことに伴って1台増加で設置していたのですが、短期計測の結果2台の熱源設備を用いて熱を旧館と新館の間で融通させれば十分ということが分かり、最適化した結果冷房期間で約70tonのCO2の削減に成功した大型熱源設備の運用改善がこの方法を用いた例としてあげられます。
もう1つは台数が多いものなど、短期計測が困難なものに対して、ベンチマークを設定する方法です。
この方法は例えば個別の部屋の熱源設備(つまりエアコンなど)に対して適用されています。
一般にエアコンは定格能力に近い負荷で運用するほど成績係数が上昇する傾向があるので、部屋の広さに対して定格能力が大きすぎるエアコンはエネルギーをより多く消費してしまいがちです。
このため全ての部屋の熱源設備の実態調査を行って、その結果に基づいて床面積あたりの機器容量原単位に対して上限を設定し、高効率機器への更新による効率向上分をさらに増加させるようにしました。
以上のようなハード面の対策の他に、全部局から教職員を1名ずつTSCP-officerとして選任して意識啓発活動の推進役としたり、全建物に共通して対策可能な空調の設定温度や共用部分の照明の間引きなどを依頼したり、意識啓発用のポスターのアイデアを学生に募集したりなどといったソフト面での対策も進めています。
以上のようなソフト、ハードの対策等の結果、TCSP2012の目標である、非実験系のCO2排出量15%削減は達成される見込みだということです。
磯部先生は今後の取り組みの展望についても具体的に、その障壁なども含めてお話しくださいました。
個人的には、ハード面の対策をする前に実態調査や短期計測をするということが実は大変ということが予習のときには見えなかった部分で大変興味深いと思いました。
磯部先生本当にありがとうございました。
(文責:青木)