概要

2007年5月に駒場キャンパス17号館に開設された「駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)」では、教養学部・情報学環・大学総合教育研究センターの共同プロジェクトとして、東京大学が掲げる<理想の教養教育>を目指した新しいタイプの授業が実践されている。従来の教室で行われている、板書あるいはプロジェクタとノートによる聴講型の授業に対して、KALSで行われる授業では、データ・情報・映像などの様々なインプットに対して、読解・ライティング・討論を通じて分析・評価を行い、その成果を統合的にアウトプットする能動的な学習活動、すなわち「アクティブラーニング」に重点が置かれる。授業中に”その場”での協調学習を採り入れることによって、学生の能動的な授業への参加を促進している点も、KALSで行われる授業の特徴である。

KALSは、最先端の情報コミュニケーション技術(ICT)を活用して、アクティブラーニングの効果を最大限に引き出す設計がなされている。KALSで実施される授業は、ICTを活用したアクティブラーニングによって、学生自らがデータ・情報を整理して課題を見つけ出し、その解決を目指して様々な視点から課題に取り組むことにより、広い視野から問題に対応する能力を養うことを目標としている。 KALSを利用した新たな教育手法の開発は、「ICTを活用した新たな教養教育の実現」として2007年度から文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に選定されており、現在、2名の常駐スタッフが授業の運用を支援すると共に、NHKアーカイブスの映像資料を利用した「基礎演習」、蛋白データや分子動力学シミュレータ等の先端研究の成果を採り入れた「全学自由研究ゼミナール:生命科学β」などの講義を実施している。

理想の教養教育、そのモデル空間

現代の国際社会は、長引く紛争や深刻な食糧問題、エネルギー資源の枯渇や地球規模の環境汚染など、国や民族を越えて解決しなければならない様々な課題を抱えています。一方、課題の解決に役立つべき学問の分野では、学術・研究の極度な細分化が進み、学問の全体像を捉えることが困難になっています。そのような状況のなかで、東京大学は、広い学問的視野に立って様々な課題を解決することのできる人材を育てるために、「理想の教養教育の追求」を目標に掲げて様々な教育プロジェクトを推進しています。そのひとつとして、2007年5月に新しい教養教育を実践するための施設「駒場アクティブラーニングスタジオ(KALS)」を開設しました。理想の教養教育では、学生自らが、複雑な情報を整理して本質的な課題を見つけ出し、その解決を目指して、様々な視点から能動的に課題に取り組む「アクティブラーニング」を大切にします。KALSは、最先端のICT技術を使って、そのような学習を実現する空間であり、東京大学が社会に提示する、理想の教養教育のひとつのモデルでもあります。 東京大学は、若者に感動を与える、魅力あふれる理想の教養教育の実現を目指して、これからもさまざまな努力を重ねていきます。